チケット転売で逮捕されるのか|刑事事件になる場合とならない場合
チケット転売で逮捕されるのか|刑事事件になる場合とならない場合
チケット転売を理由に意見照会書や損害賠償の通知が届いたとき、金額の心配と並んで多いのが「逮捕されるのではないか」「前科がつくのではないか」という不安です。夜も眠れないという方も少なくありません。
この記事では、条文が定める罰則の重さ、実際に刑事事件となった例、法定刑を超える量刑が出ることがある理由、そして刑事事件になりやすい事情と、そうでない場合の扱いを、弁護士が整理します。民事の請求を受けている段階で気をつけるべき点にも触れます。
条文が定める罰則
チケット不正転売禁止法(正式名称「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」)は、第3条で特定興行入場券の不正転売を、第4条で不正転売を目的とする譲受けを禁止しています。
これに違反した場合、第9条により1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定められています。なお、2025年6月1日に施行された刑法改正により、それまでの「懲役」は「拘禁刑」に改められています。
もっとも、この罰則が適用されるのは、あくまで「特定興行入場券の不正転売」にあたる場合です。チケットが3つの要件を備えていたか、業として行う有償譲渡といえるか、販売価格を超えていたか。この判断の枠組みはチケット転売はどこから違法かで整理しています。
実際に刑事事件となった例
「法律はあっても、実際に立件されることはないのでは」と考える方がいますが、そうではありません。公表されている例として、次のものがあります。
| 時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 2020年8月 | 人気アイドルグループのコンサートチケットを不正に転売した者に対し、懲役1年6か月(執行猶予3年)、罰金30万円等の有罪判決 | 文化庁の公表資料 |
| 2026年3月26日 | 宝塚歌劇公演チケットの高額転売について、警視庁が1名を書類送検したと公表 | 宝塚歌劇の公式サイト |
後者の公表では、転売サイトの出品者や転売業者への措置を継続し、警察に全面的に協力する方針が示されています。興行主が刑事手続にも積極的に関与する姿勢が明確になってきている、というのが現在の状況です。
「1年以下」なのに1年6か月?
先ほどの2020年の判決を見て、疑問を持たれた方がいるかもしれません。法定刑の上限が1年なのに、なぜ1年6か月という量刑があり得るのかという点です。
これは、複数の罪が併合罪として扱われる場合の仕組みによるものです。刑法第47条は、併合罪のうち2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする、と定めています。1年の1.5倍で1年6か月まで伸びる、という計算です。
一方で、この事案では執行猶予が付いています。刑法第25条第1項は、前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者などが3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により1年以上5年以下の期間、刑の全部の執行を猶予することができると定めています。
刑事事件になりやすい事情
すべての事案が刑事事件になるわけではありません。実務上、次のような事情があると、刑事手続に進む可能性が高まります。
- 出品の件数と期間:多数の公演にわたり、長期間繰り返していたか
- 利益の規模:転売による利益が相当額に達しているか
- 組織性・計画性:複数のアカウントの使い分け、購入代行の募集、名義の借用など
- 興行主の対応:告訴がされているか、警察への協力が行われているか
- 他の罪の併存:入金を受けながらチケットを渡さないなど、別の犯罪に該当し得る行為があるか
逆に、行けなくなった1公演のチケットを1回譲っただけという事案では、そもそも「業として行う有償譲渡」の要件を満たすかという入口の問題があり、刑事手続に進む場面は限られます。
逮捕されるとは限らない
「刑事事件になる=逮捕される」ではありません。刑事手続には、身柄を拘束せずに進める在宅事件という形があります。先ほどの2026年3月の例も、逮捕ではなく書類送検です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 逮捕 | 身柄を拘束して捜査を進める手続。逃亡や証拠隠滅のおそれが要件になる |
| 書類送検 | 身柄を拘束せずに、捜査書類を検察官に送ること |
| 不起訴 | 検察官が起訴しないと判断すること。前科にはならない |
| 略式命令 | 公開の法廷を開かずに罰金を科す手続。本人の同意が必要 |
住居が定まっていて、捜査に応じ、証拠を隠すおそれもない事案では、在宅で進むことが少なくありません。
民事の請求を受けている段階で気をつけること
いま意見照会書や損害賠償の通知が届いている段階の方に、特にお伝えしたい点があります。
意見照会書への回答や、相手方への説明として書いた内容は、後に刑事手続の中で自分の供述として扱われる可能性があります。反省を示そうとして、聞かれていない過去の出品まで自ら列挙してしまうと、「業として」の反復継続性を自ら裏づける結果になりかねません。
民事の交渉と刑事のリスクは、別々に評価したうえで、書く内容を決める必要があります。書面が届いた段階での具体的な対応はチケット転売で意見照会書が届いたらを、開示後の流れはチケット転売で氏名・住所が開示された後をご覧ください。当事務所の対応の流れと費用は、チケット転売の発信者情報開示請求への対応ページでご案内しています。
よくある質問
前科と前歴は、どう違うのですか。
一般に、前科は有罪判決が確定した記録を、前歴は捜査の対象となった記録を指す言い方です。不起訴となった場合、有罪判決を受けたわけではありませんので前科にはあたりません。もっとも、捜査を受けた事実自体は記録として残ります。
示談が成立すれば、刑事事件にはならないのですか。
示談は、検察官が起訴するかどうかを判断するうえで有利な事情として考慮され得ます。ただし、示談があれば必ず不起訴になるというものではありません。事案の規模や悪質性など、他の事情とあわせて判断されます。
会社や学校に知られてしまいますか。
捜査機関が勤務先や学校に連絡するとは限りません。もっとも、逮捕されて身柄が拘束された場合には、欠勤や欠席が生じるため、事実上知られる可能性が高まります。在宅で進む事案では、その可能性は相対的に低くなります。
警察から連絡が来たら、まず何をすればよいですか。
出頭を求められた場合でも、その場ですべてを話す必要はありません。日程を調整したうえで、事前に弁護士に相談し、聞かれる可能性のある事項と手元の資料を整理してから臨むことをおすすめします。
まとめ
- チケット不正転売禁止法第9条の罰則は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科
- 2020年8月には有罪判決が、2026年3月には書類送検の事例が公表されている
- 複数の罪が併合罪となる場合、刑法第47条により長期は1.5倍まで加重される
- 件数・期間・利益の規模・組織性・興行主の対応が、刑事手続に進むかを左右する
- 刑事事件になっても逮捕されるとは限らず、在宅で進む事案も少なくない
- 意見照会書への回答内容が、後に自分の供述として扱われ得る点に注意が必要
刑事のリスクは、事案の規模によって大きく異なります。漠然とした不安を抱えたまま書面に回答してしまうことが、かえって不利に働く場面もあります。横浜のタングラム法律事務所では、発信者情報開示請求を受けた側の対応を数多く取り扱っています。書面が届いている方は、資料を手元にご相談ください。
刑事のリスクが心配な方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書作成から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。