特定興行入場券とは|チケット不正転売禁止法の対象になる券の3要件
特定興行入場券とは|チケット不正転売禁止法の対象になる券の3要件
意見照会書が届いた方から、「そもそも自分が売ったチケットは、あの法律の対象なのですか」というご質問をいただくことがあります。
これは本質を突いた問いです。チケット不正転売禁止法が禁じているのは、すべてのチケットの転売ではなく、「特定興行入場券」に当たるものの不正転売だけだからです。この記事では、条文が定める3つの要件を一つずつ確認し、あわせて「対象外だった場合に何が残るのか」を、横浜の弁護士が整理します。
禁止されているのは「特定興行入場券」の不正転売だけ
チケット不正転売禁止法(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)第3条は、次のように定めています。
主語が「興行入場券」ではなく「特定興行入場券」である点が重要です。では、何が特定興行入場券に当たるのか。第2条第3項が定義しています。
「いずれにも該当するもの」——つまり、3つの要件をすべて満たして初めて特定興行入場券になります。一つでも欠ければ、この法律の対象からは外れます。
要件1:譲渡禁止を明示し、券面等に表示していること
第2条第3項第1号は、興行主等が売買契約の締結に際して、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつその旨を券面に表示すること(電子チケットの場合は、購入者の端末の画面にチケット情報と併せて表示させること)を求めています。
ここでの「興行主等」とは、興行主のほか、興行主の同意を得て興行入場券の販売を業として行う者(プレイガイド等)を含みます。
要件2:日時・場所と、入場資格者または座席が指定されていること
第2号は、興行が行われる特定の日時及び場所に加えて、入場資格者(入場できる者として指定された人)または座席が指定されていることを求めています。
「日時・場所」と「人または座席」の両方が必要です。日時と場所しか決まっておらず、誰が入るかも座席も指定されていない券は、この要件を満たしません。
要件3:氏名・連絡先を確認する措置と、その旨の表示
第3号は、興行主等が売買契約の締結に際し、券の種類に応じて次の事項を確認する措置を講じ、かつその旨を第1号と同じ方法(券面または画面)で表示していることを求めています。
| 券の種類 | 確認が必要な事項 |
|---|---|
| 入場資格者が指定された券 | 入場資格者の氏名および電話番号・電子メールアドレスその他の連絡先 |
| 座席が指定された券(上記を除く) | 購入者の氏名および連絡先 |
ここでも、「確認する措置を講じた」だけでは足りず、「その旨を表示した」ことまでが要件になっています。3つの要件のうち、実務上もっとも争いになりやすいのがこの部分です。
「対象外」でも、請求が来ないわけではない
ここが、もっとも誤解されやすい点です。
仮にご自身のチケットが特定興行入場券に当たらなかったとしても、それはこの法律による刑事罰(第9条第1項。1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科)の対象にならないという意味にとどまります。
- 民事の損害賠償請求は別の問題です。2026年3月18日の東京地方裁判所の判決は、転売出品を興行主の営業権の侵害と判断したと公表されており(判決の意味はこちら)、不法行為を理由とする請求は法律の対象外でも成り立ちえます
- 興行主や販売サイトの規約違反も別に残ります。予約解除・入場拒否・会員除名といった措置は、規約に基づいて行われます(舞台・ミュージカルの例)
- 発信者情報開示請求そのものは、不法行為が主張できれば進みます
意見照会書が届いたら確認すること
- 手元のチケットの券面・画面:譲渡禁止の表示があったか、氏名・連絡先の確認を行う旨の表示があったか
- 購入時の画面:申込みの過程で、どのような表示があったか。スクリーンショットが残っていれば保存してください
- 座席か、入場資格者か:座席指定だったか、本人限定だったか、いずれでもない立ち見等だったか
- 販売価格と出品価格:定価を超えていたかどうか(第2条第4項の「販売価格を超える価格」の要件)
各要件の全体像はチケット転売はどこから違法かで、資料の残し方はチケット転売の記録を自分で保全する方法にまとめています。回答書の記載事項は意見照会書の回答書を自分で書く方法をご覧ください。届いた書面がどの段階のものか分からない場合は、チケット転売で届く書面の見分け方から確認できます。買い集めて売っていた場合の別の論点は古物営業法との関係にまとめました。当事務所の取扱いは意見照会対応のページ、弁護士に依頼した場合の範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページで扱っています。
よくある質問
券面に「転売禁止」と書かれていませんでした。
第1号の要件を満たさない可能性があります。ただし、電子チケットでは券面ではなく端末の画面への表示で足りるとされていますので、購入時や表示時の画面も含めてご確認ください。
座席が指定されていない立ち見のチケットです。
第2号は「入場資格者又は座席」の指定を求めていますので、座席指定がなくても、入場できる人が指定されていれば要件を満たします。両方とも指定されていない場合は、要件を満たさないという主張が考えられます。
購入時に氏名を入力しましたが、券面に何も書かれていません。
第3号は、確認の措置を講じることに加えて、その旨を表示することまで求めています。表示がなければ要件を欠くという主張の余地があります。もっとも、電子チケットでは画面表示で足りますので、実際の表示内容の確認が必要です。
要件を満たさないと分かれば、開示は止まりますか。
止まるとは限りません。開示請求は不法行為を理由として進められることが多く、この法律の要件を満たさないことは、直ちに請求の理由がないことを意味しないためです。有力な事情ではありますので、回答書に整理して記載する意味は大きいと考えます。
まとめ
- 禁止されているのは「興行入場券」ではなく「特定興行入場券」の不正転売である
- 第2条第3項の3要件(①譲渡禁止の明示と券面等への表示、②日時・場所と入場資格者または座席の指定、③氏名・連絡先の確認措置とその旨の表示)をすべて満たす必要がある
- 要件3は「確認する措置」だけでなく「その旨の表示」まで求めている点に注意
- 対象外であることは刑事罰の対象外という意味にとどまり、民事の損害賠償や規約違反は別に残る
- 手元の券面・購入時の画面は、有利な事実を示す資料になりうるので保存しておく
ご自身のチケットが要件を満たしていたかどうかは、券面や購入時の画面を拝見すれば判断できることが少なくありません。書面が届いている場合は、記載された期限の日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
チケットが法律の対象か判断がつかない方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
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