チケット転売の記録を自分で保全する方法|開示請求に備えて残すべき資料
チケット転売の記録を自分で保全する方法|開示請求に備えて残すべき資料
意見照会書が届いてから、あわてて転売サイトを開いても、出品はすでに削除されている。取引の通知メールは整理してしまった。いくらで、何件、いつ売ったのかが、自分でも分からない——この状態で回答書を書くのは、かなり不利です。
この記事では、弁護士に依頼するかどうかにかかわらず、ご自身の手でできる記録の残し方を、何を・どのように・なぜ残すのかという順で整理します。書面が届いた方も、まだ届いていない方も、いま実行できる作業です。
なぜ、自分の記録が必要なのか
相手方(興行主側)は、転売サイトから開示を受けた情報を持っています。こちらに記録がなければ、相手方の主張する件数・金額を、そのまま前提にして話が進みます。
記録が効いてくるのは、次の3つの場面です。
| 場面 | 記録が果たす役割 |
|---|---|
| 意見照会への回答 | 定価以下だった、単発だった、といった事情を根拠づける |
| 開示後の交渉 | 相手方の主張する件数・利益額との食い違いを指摘できる |
| 訴訟になった場合 | 認否の判断材料になり、反論の裏づけになる |
残すべき資料
1. 出品と取引の履歴
転売サイトの会員ページに残っている、出品履歴と取引履歴です。1件ごとに、公演名・出品日・出品価格・枚数・成立の有無・成立日を確認できる状態にしてください。
2. 入金の記録
実際にいくら受け取ったかは、賠償額の検討で最も重要な事実のひとつです。サイト内の売上履歴に加えて、振込先口座の入出金明細を確認してください。手数料が差し引かれている場合、その額も控えておきます。
3. チケットを買ったときの記録
定価がいくらだったかを示す資料です。プレイガイドの購入履歴、購入確認メール、クレジットカードの明細などが該当します。「定価以下だった」と述べるには、定価を示す資料が要ります。
4. 届いた書面そのもの
意見照会書、通知書、内容証明。本体だけでなく、封筒(消印の日付が分かるもの)も残してください。いつ届いたかは、期限の計算で意味を持ちます。
5. サイトからの通知メール
出品完了、取引成立、入金の各通知です。サイト側が履歴を表示しなくなった後でも、メールが残っていれば事実を確認できます。
どのように残すか
- 画面のスクリーンショット:一覧ページと、1件ごとの詳細ページの両方を撮ります。画面全体(サイト名・ログイン中のアカウント名が写る範囲)を撮ると、どこの何の記録かが後から分かります
- PDFでの保存:ブラウザの印刷機能から「PDFに保存」を選ぶと、日付とURLが余白に入る設定にできます
- メールは削除しない:転送や別フォルダへの移動はしても、削除はしないでください
- 紙でも1部:端末の故障やアカウント停止に備えて、重要なものは印刷しておくと安全です
- 保存日を記録する:ファイル名に取得日を入れておくと、後から整理しやすくなります
やってはいけないこと
アカウントの削除
最もよくある失敗です。アカウントを削除しても、運営会社側の記録が消えるとは限りません。消えるのは、ご自身が確認する手段のほうです。開示請求を止める効果はなく、反論の材料だけを失うことになります。
出品の一斉削除
同様に、サイト側の記録は残ります。加えて、書面を受け取った後の削除は、経緯として説明を求められる可能性があります。
メールの一括整理
「見たくないから消す」という気持ちは自然ですが、後で事実を確認する唯一の手段になることがあります。
まだ書面が届いていない方へ
心当たりがあるものの、まだ何も届いていないという段階であれば、記録の整理だけを先に済ませておくのが合理的です。ご自身から興行主やサイトに連絡することは、通常はお勧めしません。連絡そのものが事実の確認材料になり得るためです。
放置した場合に何が起きるかは意見照会書を無視するとどうなるか、書面が届いた段階の全体像はチケット転売で意見照会書が届いたらにまとめています。
集めた記録を、どう使うか
整理した記録は、回答書の作成でそのまま材料になります。記載事項は意見照会書の回答書を自分で書く方法、請求額の検討はチケット転売の損害賠償はいくらか、複数件ある場合の整理は複数回・複数公演のチケット転売をご覧ください。
ご相談の際も、この整理ができているかどうかで、初回にお伝えできる見通しの精度が変わります。この段階の取扱いは当事務所の意見照会対応のページ、弁護士に依頼した場合の取扱いの範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページにまとめています。
よくある質問
もうアカウントを削除してしまいました。取り返せますか。
サイトによっては、運営会社に問い合わせることで取引履歴の開示を受けられる場合があります。もっとも、開示請求の相手方に自分から連絡することになりますので、問い合わせの内容と時期は検討したうえで行ってください。銀行の入出金明細など、サイト外に残っている資料から復元できることもあります。
スクリーンショットは証拠として認められますか。
裁判で提出される資料としては一般的に用いられています。ただし、加工の余地があるものとして扱われますので、撮り方(画面全体を写す、日付が分かるようにする)と、他の資料との整合が重要になります。
記録を残すと、かえって不利になりませんか。
相手方はすでにサイト側から記録を得ています。こちらが持っていないことで有利になる場面はほとんどありません。むしろ、定価以下だった、成立していなかった、といった有利な事実を示せなくなります。
いつまで保管しておけばよいですか。
示談が成立し、示談書を受け取るまでは残してください。訴訟に至った場合はその終結まで必要です。事案によっては年単位になりますので、端末の買い替え時に消えないよう注意してください。
まとめ
- 相手方はサイトから開示を受けた記録を持っている。こちらに記録がなければ、その主張が前提になる
- 残すのは、①出品・取引履歴、②入金記録、③購入時の記録(定価)、④届いた書面と封筒、⑤通知メール
- スクリーンショットは画面全体を、PDFは日付とURLが入る設定で保存する
- アカウント削除・出品の一斉削除・メールの整理は、反論の材料を失うだけである
- 記録は加工せず、そのまま残す。食い違いは説明全体の信用を損なう
記録の整理までをご自身で行い、その先の判断だけを相談する、という進め方も可能です。整理した資料をお持ちのうえ、横浜のタングラム法律事務所までご相談ください。オンラインで全国から対応しています。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
記録を整理したうえで相談したい方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。取引履歴と書面をお手元にご用意のうえ、回答期限の日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。