タングラム法律事務所

複数回・複数公演のチケット転売|開示請求と賠償額はどう変わるか

複数回・複数公演のチケット転売|開示請求と賠償額はどう変わるか

複数回・複数公演のチケット転売|開示請求と賠償額はどう変わるか

複数回・複数公演のチケット転売|開示請求と賠償額はどう変わるか

意見照会書に記載されている出品が、1件ではなく何件もある。あるいは、別の公演についても心当たりがある——「回数が多いと、どこまで不利になるのか」というご質問は、この分野で最も答えにくいもののひとつです。

この記事では、出品の回数と公演数が、開示の判断・刑事の要件・賠償額のそれぞれにどう影響するのかを分けて整理し、複数件ある場合に回答書と交渉をどう組み立てるかを、横浜の弁護士が解説します。

回数が効く場面と、効かない場面を分ける

まず、回数の意味は場面ごとに違います。ひとまとめに「多いと不利」と考えると、対応を誤ります。

場面 回数の影響
刑事(不正転売禁止法) 要件そのものに関わる。「業として」の判断材料になる
民事の開示請求 権利侵害の明白性の判断で考慮され得るが、1件でも請求は行われている
民事の賠償額 最も直接的に効く。件数・利益額に比例して積み上がる

刑事の「業として」との関係

チケット不正転売禁止法第2条第4項は、「特定興行入場券の不正転売」を、興行主の事前の同意を得ない業として行う有償譲渡であって、販売価格を超える価格をその販売価格とするものと定義しています。

文化庁のQ&Aは、「業として」を「繰り返し転売する反復継続性の意思が伺える」ことと説明しています。同時に、1回の出品でも、繰り返し転売しようとしていた意思がうかがえる場合には該当し得るともしています。

つまり、回数は「業として」を推認する事情のひとつではあっても、回数が少なければ当然に外れるというものではありません。1回だけの場合の考え方はチケット転売は1回だけでも開示請求されるのかで扱いました。要件の全体像はチケット転売はどこから違法かをご覧ください。

民事の賠償額には、直接効く

ここが実務上いちばん大きいところです。興行主側の請求は、出品1件ごとに積み上げる形で構成されるのが通常です。件数が増えれば、請求額はほぼ比例して増えます。

株式会社STARTO ENTERTAINMENTは2026年3月13日付の公表で、チケット転売の出品者に対して2,000万円を超える損害賠償を求める訴訟を提起したとしています。この規模になるのは、多数回の出品が問題となった事案とみられます。経緯はSTARTO社のチケット転売対策にまとめました。請求額の考え方そのものはチケット転売の損害賠償はいくらかで整理しています。

逆に言えば、件数が正確に把握できていない状態で交渉に入るのは危険です。相手方が主張する件数と、ご自身の記録が食い違っているかもしれません。まず取引履歴を確認してください。

複数の公演・複数の興行主にまたがる場合

出品した公演が複数あり、興行主も異なるという場合、請求は興行主ごとに別々に来ます。一方と示談したからといって、他方の請求が消えるわけではありません。

この場合、注意が必要なのは次の点です。

  • 示談書の効力の範囲:どの出品について、どの当事者との間で解決するのかが特定されているか
  • 支払いの順序:先に応じた相手方への支払いで資力を使い切ると、後の交渉の選択肢が狭まる
  • 回答書の整合性:別の照会に対して述べた内容と食い違わないか

示談書で確認すべき点はチケット転売の示談交渉を自分で行う方法にまとめています。支払いが難しい場合の選択肢は損害賠償が払えないときをご覧ください。

複数件ある場合の回答書の組み立て

意見照会書に複数の出品が列挙されている場合、すべてを同じように扱わないことが要点です。出品ごとに事情が違うのであれば、その違いを述べる意味があります。

確認する項目 なぜ意味があるか
1件ごとの価格と定価の関係 定価以下のものが混ざっていれば、その分は要件から外れ得る
1件ごとの成立・不成立 取引が成立していなければ、得た利益はない
出品の時期の分布 短期間に集中しているか、年単位で散っているか
出品した人の同一性 家族が使った回線が混ざっていないか

回線の契約者と出品者が異なる場合は家族名義の回線に意見照会書が届いた場合、回答書の記載事項は意見照会書の回答書を自分で書く方法をご覧ください。この段階の取扱いは当事務所の意見照会対応のページ、弁護士に依頼した場合の取扱いの範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページにまとめています。

よくある質問

照会書には3件しか書かれていませんが、実際はもっと出品しています。

照会の対象は、相手方が把握し、記録が残っている範囲です。書かれていない出品について、こちらから進んで申告する義務はありません。他方、事実と異なることを述べれば、後で不利に働きます。何を書き、何を書かないかは、回答書を出す前に検討してください。

件数が多いと、刑事事件になりやすいのですか。

「業として」の判断材料にはなります。もっとも、この分野で公表が確認できる検挙事案は限られており、興行主の告訴や捜査協力という端緒が必要です。実際の状況はチケット転売の逮捕事例にまとめました。

複数の公演で、興行主が同じ場合はどうなりますか。

同じ興行主であれば、まとめて1件の請求として構成されるのが通常です。示談も一括で行うことになります。件数が多いほど総額は大きくなりますが、交渉の窓口が一本化される点では進めやすい面があります。

売れ残った出品も件数に数えられますか。

損害賠償の場面では、取引が成立していない出品から得た利益はありません。他方、出品行為そのものをどう評価するかは別の問題として扱われ得ます。1件ごとに成立・不成立を確認しておいてください。

まとめ

  • 回数の意味は、刑事の「業として」・開示の判断・賠償額で、それぞれ異なる
  • 文化庁のQ&Aは、1回でも反復継続の意思がうかがえれば「業として」に該当し得るとしている
  • 賠償額には件数が直接効く。交渉の前に正確な件数を把握する
  • 興行主が複数なら請求も別々。示談書の効力の範囲と支払いの順序に注意する
  • 複数件を同じように扱わず、1件ごとの価格・成立の有無・時期・出品者を確認する

件数が多い事案ほど、事実の整理に手間がかかる一方で、整理の仕方によって結果が変わる幅も大きくなります。取引履歴と書面をお手元にご用意のうえ、横浜のタングラム法律事務所までご相談ください。オンラインで全国から対応しています。

チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。

複数の出品について書面が届いた方へ

タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。書面に記載された出品の件数と、回答期限の日付をお知らせください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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