タングラム法律事務所

チケット不正転売禁止法は買う側にも適用されるか|条文で確認

チケット不正転売禁止法は買う側にも適用されるか|条文で確認

チケット不正転売禁止法は買う側にも適用されるか|条文で確認

チケット不正転売禁止法は買う側にも適用されるか|条文で確認

転売サイトでチケットを買った。定価より高かったけれど、どうしても行きたい公演だった——その後で「買った側も違法になるのか」と不安になり、調べ始める方がいます。ネット上には断定的な説明が並んでいますが、条文を読むと、買う側の扱いは売る側とは違う書き方になっています。

この記事では、チケット不正転売禁止法の条文に即して、買う側がどのような場合に対象になるのか、単に自分で行くために買った場合はどうなるのか、そして刑事の問題にならなくても残るリスクを、横浜の弁護士が整理します。

条文はどう書かれているか

チケット不正転売禁止法(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)は、禁止行為を2つ定めています。

条文 条文の内容 誰の行為か
第3条 何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない 売る側
第4条 何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない 買う側

第9条第1項は、第3条または第4条に違反した者を「一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定めています。買う側にも罰則があること自体は、条文上はっきりしています。

ただし「不正転売を目的として」という限定がある

第4条が禁じているのは、買う行為そのものではありません。「特定興行入場券の不正転売を目的として」譲り受けることです。つまり、また売るために買った場合が対象です。

ここでいう「不正転売」は、第2条第4項で「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」と定義されています。したがって、第4条の対象になるのは、次のような目的をもって買った場合ということになります。

  • 興行主の同意を得ずに
  • 業として(繰り返し転売する意思をもって)
  • 買った価格ではなく、興行主等の販売価格を超える価格で
  • また売るつもりで買った

自分が公演に行くために買った場合は、この条文の対象ではありません。要件の全体像はチケット転売はどこから違法か|不正転売禁止法の要件を条文で整理で解説しています。

「目的」は心の中の事情ですが、外形から推認されます。同じ公演のチケットを大量に買い集めていた、直後に出品していた、といった事情があれば、目的が争われることになります。「自分で行くつもりだった」と述べるだけで当然に認められるものではありません。

刑事の対象でなくても残るリスク

買う側にとって現実的に大きいのは、刑事よりもむしろ次の2つです。

1. 入場できない可能性

文化庁のQ&Aは、不正転売されたチケットを購入した場合について、「チケットが手元に届かない、会場に入れない、入場後に退場を求められるなどのトラブル」が生じ得るとしています。本人確認や同行者登録が必要な公演では、名義が一致しなければ入場できません。

2. 主催者からの請求

同じQ&Aは、「イベント主催者から、損害賠償請求や刑事告訴されたりする可能性」、また主催者のガイドラインや規約違反として「イベント会場への入場拒否や途中退場、損害賠償請求」があり得るとしています。刑事の条文に当たらないことと、規約上の責任を問われないことは別です。

3. 支払った代金が戻るとは限らない

入場できなかった場合に、支払った代金が戻るかどうかは、取引の相手方やサイトの規約によります。定価を超える金額を支払っていれば、その差額をどう扱うかという問題も残ります。

「定価以下」で買った・譲り受けた場合

文化庁のQ&Aは、「定価や定価以下で転売したからと言って、ただちにチケット不正転売禁止法違反となるわけではありません」としています。売る側の要件に「販売価格を超える価格」が入っている以上、定価以下の譲渡はこの法律の禁止行為には当たりません。

もっとも、これも規約違反の問題は別に残ります。手数料の上乗せをどう見るかを含めて、チケットを定価以下で譲るのは違法かで整理しました。

買った側に書面が届くことはあるのか

現在、興行主側が発信者情報開示請求を行っている対象は、基本的に出品した側です。株式会社STARTO ENTERTAINMENTの一連の公表も、対象は転売サイトへの出品です(経緯はSTARTO社のチケット転売対策にまとめました)。

ただし、買い集めてまた売っていた場合は、その出品が第3条の問題になります。「買う側」と「売る側」は、同じ人の中で入れ替わり得るということです。すでに意見照会書が届いている方は、チケット転売で意見照会書が届いたらをご覧ください。この段階の取扱いは当事務所の意見照会対応のページ、弁護士に依頼した場合の費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページにまとめています。

よくある質問

定価より高く買っただけで、罰せられますか。

第4条が禁じているのは「不正転売を目的として」譲り受けることです。自分が行くために買ったのであれば、この条文の対象ではありません。もっとも、主催者の規約違反として入場を拒まれる可能性は残ります。

友人の分もまとめて買いました。これは「業として」になりますか。

同行する友人の分を買うことは、通常、転売を目的とした譲受けには当たりません。問題になるのは、また売るために買い集めた場合です。もっとも、公演によっては同行者の登録が必要で、規約上の制限があります。

買ったチケットで入場できませんでした。売主に返金を求められますか。

取引の相手方に対する請求の問題になり、サイトの補償制度の有無によっても変わります。金額や経緯によっては、少額の請求のために手続の負担が上回ることもありますので、まず取引記録を整理してご相談ください。

買ったことが主催者に知られることはありますか。

本人確認や同行者登録の仕組みがある公演では、入場時に名義の不一致が判明することがあります。その場面で、購入の経緯を尋ねられることは想定されます。

まとめ

  • 第4条は、買う側についても「不正転売を目的として」譲り受けることを禁じている
  • 第9条第1項の罰則は、一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金。併科もあり得る
  • 自分で行くために買った場合は、第4条の対象ではない
  • 刑事の対象でなくても、入場拒否・規約違反による請求・代金が戻らないというリスクは残る
  • 買い集めてまた売っていた場合は、その出品が第3条の問題になる

ご自身の買い方や売り方がどちらに当たるのか、判断がつかない段階でも構いません。すでに書面が届いている場合は、その日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。

チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。

チケットの購入・出品について不安のある方へ

タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある書面をお持ちの場合は、その日付をお知らせください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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