チケット転売で訴えられたら|自分で答弁書を出す場合の手順と注意点
チケット転売で訴えられたら|自分で答弁書を出す場合の手順と注意点
チケット転売を理由とする損害賠償請求について、話し合いがつかないまま裁判所から封筒が届く。中身は訴状と、期日への呼出状。あるいは、訴訟ではなく「支払督促」という書面が届くこともあります。いずれも、届いてから動ける日数が決まっている書面です。
この記事では、弁護士に依頼せずにご自身で対応する場合を前提に、訴状が届いてからの流れ、答弁書に何を書くのか、支払督促との違い、そしてご自身で進める場合の限界を、横浜の弁護士が裁判所の公表情報に基づいて整理します。
なぜ訴訟にまで至るのか
開示が認められた後、興行主側は通知書や内容証明で支払いを求めてきます。その段階での対応は内容証明が届いたときの対応手順にまとめています。交渉がまとまらなければ、次の手段が訴訟です。
実際に、株式会社STARTO ENTERTAINMENTは2026年3月13日付の公表で、チケット転売の出品者に対して2,000万円を超える損害賠償を求める訴訟を提起したとしています。経緯はSTARTO社のチケット転売対策で整理しました。
訴状が届いてからの流れ
| 順序 | 何が起きるか | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 訴状・証拠の写し・期日呼出状が裁判所から届く | ― |
| 2 | 答弁書を作成し、裁判所と相手方に提出する | 呼出状に記載された日まで |
| 3 | 第1回口頭弁論期日 | 訴状到達からおおむね1か月以上先 |
| 4 | 争点の整理、書面や証拠のやりとりが続く | 事案による |
| 5 | 和解の協議、または判決 | 事案による |
期限の日付は、必ず届いた呼出状の記載を確認してください。この記事の「目安」ではなく、書面に書かれた日が基準になります。
答弁書に何を書くのか
1. 請求の趣旨に対する答弁
「原告の請求を棄却する」「訴訟費用は原告の負担とする」という形で、求める結論を書きます。全部を争わず、一部だけ争う場合は、その旨を書くことになります。
2. 請求の原因に対する認否
相手方が訴状で並べた事実について、一つずつ「認める」「否認する」「知らない」を示します。ここが答弁書の中心です。認めた事実は、後から覆すことが難しくなります。逆に、否認するだけで理由を述べなければ、説得力は生まれません。
3. こちらの言い分(反論の柱)
チケット転売の事案では、次のような点が争いになりやすいところです。
- 発信者の同一性:回線の契約者と実際の出品者が異なるのではないか
- 価格と利益:手数料を含めて定価以下ではなかったか、実際にいくら受け取ったか
- 件数と期間:単発の譲渡か、継続的な出品か
- 損害の額:請求されている金額の内訳が示されているか、その計算に根拠があるか
請求額の考え方はチケット転売の損害賠償はいくらかで整理しています。
4. 第1回期日に出頭できない場合
第1回の期日については、答弁書を提出しておけば、出頭できない場合でもその内容を陳述したものとして扱われる取扱いがあります。もっとも、これは第1回に限られた扱いであり、その後の期日を欠席し続けることはできません。仕事の都合等で出頭が難しい場合は、早めに裁判所へ相談してください。
「支払督促」が届いた場合は別の手続
訴状ではなく「支払督促」という書面が簡易裁判所から届くことがあります。これは債権者の申立てに基づいて裁判所書記官が支払いを命じる手続で、訴訟とは進み方が違います。
裁判所の説明によれば、支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議の申立てをすることができ、異議が申し立てられると通常訴訟に移行します。異議がないまま期間が過ぎると、債権者は仮執行宣言を申し立てることができ、これが発付されると強制執行の申立てが可能になります。仮執行宣言付支払督促を受け取った場合も、2週間以内であれば督促異議を申し立てることができます。
つまり、金額に納得できないのであれば、2週間の間に異議を出すかどうかが分かれ道になります。異議の申立て自体は理由を詳しく書かなくても差し支えないとされていますが、その後は通常の訴訟として主張・立証が必要になります。
ご自身で進める場合の限界
答弁書を出すこと自体は、ご自身でも可能です。裁判所には書式の案内もあります。違いが出るのは、次の2点です。
第一に、どの事実を認め、どの事実を否認するかの判断です。認否は一度示すと動かしにくく、認めた事実を前提に議論が進みます。相手方の主張のうち、法的に意味のある部分とそうでない部分を見分ける作業が必要になります。
第二に、和解の見通しです。この類型の訴訟は、判決に至る前に和解で終わることも少なくありません。どの水準で折り合うのが合理的かは、請求額、争える余地、手続にかかる時間を並べて判断することになります。開示後の交渉をご自身で行う場合の考え方はチケット転売の示談交渉を自分で行う方法にまとめています。支払いが難しい場合の選択肢は損害賠償が払えないときをご覧ください。
開示後の損害賠償請求への対応については、当事務所の損害賠償請求対応のページで扱っています。弁護士に依頼した場合の取扱いの範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページ、判断の基準は弁護士に依頼する費用と判断基準にまとめています。
よくある質問
訴状を受け取らなければ、裁判は進まないのですか。
そうとは限りません。送達の方法にはいくつかの種類があり、受け取りを避けても手続が進む場合があります。届いた書面を放置することは、争う機会を自ら手放すことになります。
答弁書は手書きでもよいのですか。
書式が整っていれば差し支えありません。裁判所には記載例の案内もあります。重要なのは体裁よりも、認否と言い分が明確に書かれていることです。
請求額の一部だけ認めることはできますか。
できます。すべてを否認する必要はなく、争う部分と争わない部分を分けて示すことが一般的です。ただし、どこまで認めるかは結論に直結しますので、慎重に検討してください。
途中から弁護士に依頼することはできますか。
できます。もっとも、既に提出した答弁書や準備書面の内容は前提として残ります。認否を示した後で方針を変えることは難しい場合がありますので、判断に迷う段階でご相談いただくほうが、選べる手は多く残ります。
まとめ
- 訴状が届いたら、呼出状に記載された期限までに答弁書を提出する
- 欠席し、争う意図を明らかにしなければ、請求どおりの判決が言い渡される可能性がある
- 答弁書の中心は認否。認めた事実は後から覆しにくい
- 支払督促は別の手続で、受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てられる
- 意見照会段階の回答書と食い違う主張は、信用されにくくなる
ご自身で対応するか、依頼するかを決めかねている段階でも構いません。訴状や支払督促に記載された期限の日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
訴状・支払督促が届いた方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。期限がある書面をお持ちの場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。