タングラム法律事務所

遺留分侵害額請求の内容証明を受け取り拒否されたら|時効対策を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の内容証明を受け取り拒否されたら|時効対策を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の内容証明を受け取り拒否されたら|時効対策を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の内容証明を受け取り拒否されたら|時効対策を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の内容証明を受け取り拒否されたら|時効対策を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月26日 最終更新日:2026年10月26日

遺言で財産のほとんどを他の相続人に渡されてしまい、遺留分侵害額請求の内容証明郵便を送った。ところが、数日後に「受取拒絶」の付箋が付いて戻ってきた、あるいは「保管期間経過」で返送されてきた——。遺留分侵害額請求には1年という短い期限があるため、「請求したことにならないのではないか」と焦る方は少なくありません。

この記事では、内容証明を受け取り拒否された場合や不在で戻ってきた場合に、遺留分侵害額請求の意思表示が「到達した」と扱われるのか、そして時効を確実に止めるために何をしておくべきかを、条文と最高裁判例に沿って横浜の弁護士が解説します。

結論として、内容証明を受け取り拒否された場合は、相手方が正当な理由なく到達を妨げたものとして、通常到達すべきであった時に到達したとみなされる可能性があります(民法97条2項)。不在で返送された場合も、事情によっては留置期間満了時に到達したと認められることがありますが(最高裁平成10年6月11日判決)、確実ではないため、1年の期限内に別の方法でも意思表示を重ねておくことが重要です。

遺留分侵害額請求は「相手に届くこと」で効力が生じる

遺留分侵害額請求は、受遺者・受贈者に対して「遺留分侵害額に相当する金銭を支払え」と請求する権利です(民法1046条1項)。この権利は、遺留分権利者が相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき、または相続開始の時から10年を経過したときは消滅します(民法1048条)。

ここで問題になるのが「行使」の方法です。遺留分侵害額請求は、裁判を起こさなくても、相手方に対する意思表示によって行使できると解されています。そして意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じます(民法97条1項)。つまり、1年の期限内に「請求の意思表示が相手に届いたこと」が必要であり、送っただけでは足りないのが原則です。

内容証明郵便に配達証明を付けて送るのが一般的なのは、「いつ、どのような内容の意思表示が相手に届いたか」を後から証明するためです。書き方の基本は遺留分侵害額請求の内容証明の書き方と送付時の注意点で解説しています。

受け取り拒否・不在返送・宛先不明の違い

内容証明が戻ってくる理由は一つではありません。どの理由で戻ってきたかによって、到達の考え方が異なります。

戻ってきた理由到達についての考え方まず行うべきこと
受取拒否(配達時に受け取りを拒まれた)正当な理由のない到達妨害として、到達したとみなされる可能性が高い(民法97条2項)返送された封筒を未開封で保管し、別の方法でも同じ内容を送る
保管期間経過(不在のまま受け取られなかった)事情によっては留置期間満了時に到達したと認められる(最高裁平成10年6月11日判決)が、個別判断期限内に特定記録郵便などで再送し、記録を残す
宛所に尋ねあたらず・転居先不明相手方の支配圏内に届いていないため、原則として到達とは扱われにくい住民票の写し等で現住所を調査し、所在不明なら公示による意思表示を検討

受け取り拒否された場合は「到達したとみなされる」可能性が高い

2020年4月1日施行の改正民法により、「相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす」との規定が設けられました(民法97条2項)。改正前から判例・裁判例で認められていた考え方を明文化したものです。

配達員から内容証明を差し出された相手方が、その場で受け取りを拒んだ場合は、この「正当な理由なく到達を妨げた」場合に当たると考えられます。したがって、受取拒否で戻ってきたとしても、直ちに請求が無効になるわけではありません。

ただし、相手方が後になって「受け取りを拒んだのは家族で、自分は知らなかった」「差出人がわからなかった」などと争う可能性はあります。返送された郵便物は開封せずにそのまま保管し、郵便局の追跡記録や付箋とあわせて証拠として残しておきましょう。開封してしまうと、中に何が入っていたかを証明しにくくなります。

不在で戻ってきた場合は最高裁平成10年判決がポイント

相手方が不在で、郵便局での保管期間(留置期間)が過ぎて差出人に返送された場合は、受取拒否よりも判断が微妙になります。

この点について、最高裁判所第一小法廷平成10年6月11日判決(民集52巻4号1034頁)は、遺留分減殺(現在の遺留分侵害額請求)の意思表示を記載した内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された事案で、不在配達通知書の記載などから受取人が内容を十分に推知でき、受領の意思があれば容易に受け取ることができたという事情のもとでは、遅くとも留置期間が満了した時点で到達したと認めるのが相当と判断しました。

この判決は、当該事案における当事者間のやり取りなど具体的な事情を踏まえた判断です。どのような場合でも不在返送が到達と扱われるわけではありません。相手方との交渉経過、不在配達通知書の記載、相手方が受け取りに行けなかった事情の有無などによって、結論が変わり得る点に注意が必要です。

なお、同じ判決は、被相続人の全財産が一部の相続人に遺贈された場合に、遺贈の効力を争わずに遺産分割協議を申し入れたときは、特段の事情がない限り、その申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれると解すべきだとも判示しています。もっとも、これは事後的な救済の議論であり、最初からこれに頼るべきではありません。遺言の効力を争う場合の注意点は遺留分侵害額請求と遺言無効は同時に主張できる?をご覧ください。

内容証明が届かないときに時効を守るための対処法

受取拒否や不在返送があった場合でも、1年の期限が残っているうちであれば、意思表示を重ねて行うことで「届かなかった」という争いの余地を小さくできます。実務上は次のような方法を組み合わせます。

  • 特定記録郵便・普通郵便での再送:同じ文面を、郵便受けに配達される方法で送ります。特定記録郵便であれば、郵便受けに配達された記録が残ります。受け取りの手続を要しないため、受取拒否や不在による返送を避けやすくなります。
  • メール・LINE・FAX等の併用:相手方と連絡を取り合っている手段があれば、同じ内容を送信し、画面の保存などで送信日時と内容の記録を残します。
  • 送付先の確認:住民票の写しや戸籍の附票で現住所を確認し、実際に住んでいる場所に送ります。勤務先など別の送付先が判明している場合は、そちらへの送付も検討します。
  • 調停申立てだけに頼らない:裁判所の手続案内では、家庭裁判所に調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示にはならず、調停とは別に内容証明郵便等で意思表示をする必要があるとされています。

相手方の所在がどうしてもわからない場合は、簡易裁判所に申し立てて「公示による意思表示」をする方法があります(民法98条)。公示から2週間を経過した時に到達したものとみなされますが、相手方の所在を知らないことに過失があるときは到達の効力が生じないため(同条3項ただし書)、事前に住所調査を尽くしておく必要があります。

期限の起算点や10年の期間制限については遺留分侵害額請求の時効と起算点で詳しく解説しています。

意思表示が到達した後の手続と注意点

意思表示が到達すると、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利(金銭債権)が具体的に発生します。この金銭債権は、一般の債権と同様に消滅時効にかかるとされており、権利を行使できることを知った時から5年(民法166条1項1号)が一つの目安となります。請求の意思表示をしたことで安心して放置するのではなく、交渉・調停・訴訟へと手続を進めることが大切です。

内容証明を受け取り拒否する相手方は、任意の話合いに応じない可能性が高いといえます。その場合は家庭裁判所の遺留分侵害額の請求調停を申し立て、調停がまとまらなければ訴訟を検討することになります。相続人間で対立が深まっている事案への対応は、当事務所の相続・遺留分侵害額請求の取扱分野ページでもご紹介しています。

内容証明が戻ってきた後の対応は、残りの期間によって選ぶべき方法が変わります。期限まで1か月を切っているような場合は、複数の方法を同時に行うことをおすすめします。

よくある質問

Q. 遺留分侵害額請求の内容証明を受取拒否されました。請求はやり直す必要がありますか。

受取拒否は、相手方が正当な理由なく意思表示の通知の到達を妨げた場合にあたると考えられ、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる可能性があります(民法97条2項)。もっとも、後で争われたときに備え、返送された封筒は開封せずに保管し、同じ内容の書面を特定記録郵便などの別の方法でも送っておくことが安全です。

Q. 不在で内容証明が戻ってきた場合、1年の時効は止まっていないのですか。

最高裁平成10年6月11日判決は、内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された事案で、受取人が内容を十分に推知でき、受領も容易であったという事情のもとで、遅くとも留置期間満了時に到達したと認めました。ただし、到達が認められるかは個別の事情によるため、時効期間が残っているうちに別の方法で改めて意思表示をしておくべきです。

Q. 遺留分侵害額の請求調停を申し立てれば、内容証明を送らなくても大丈夫ですか。

裁判所の手続案内では、家庭裁判所に調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示にはならないため、調停の申立てとは別に内容証明郵便等で意思表示をする必要があるとされています。調停を予定している場合でも、意思表示は別途行っておくことが重要です。

Q. 相手の住所がわからず、内容証明を送れません。どうすればよいですか。

まず住民票の写しや戸籍の附票などで現住所を調べます。それでも相手方の所在を知ることができないときは、簡易裁判所に申し立てて公示による意思表示をする方法があり、公示から一定期間(2週間)を経過した時に到達したものとみなされます(民法98条)。ただし、所在を知らないことに過失があると到達の効力が生じないため、事前の調査が必要です。

まとめ

  • 遺留分侵害額請求は、相手方に意思表示が到達して初めて効力が生じ、1年(知った時から)・10年(相続開始から)の期間制限がある(民法1048条)。
  • 受取拒否は、正当な理由のない到達妨害として、通常到達すべきであった時に到達したとみなされる可能性がある(民法97条2項)。
  • 不在で返送された場合も、事情によっては留置期間満了時に到達したと認められる(最高裁平成10年6月11日判決)が、個別の判断となる。
  • 返送された封筒は未開封で保管し、特定記録郵便・メール等の別の方法でも同じ内容を送っておく。
  • 所在不明の場合は、住所調査のうえ公示による意思表示(民法98条)を検討する。

内容証明が戻ってきた場面は、遺留分侵害額請求の成否を左右する分岐点です。期限が迫っているときほど、どの方法を組み合わせるか、証拠をどう残すかの判断が重要になります。横浜の弁護士に依頼すれば、代理人名義での通知や相手方の住所調査、その後の交渉・調停まで一貫して任せることができます。

遺留分侵害額請求の内容証明が届かずお困りの方へ

タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺留分侵害額請求・遺産分割の事案について、交渉から調停・訴訟まで一貫して対応しております。期限が迫る中での意思表示の方法や、受け取りを拒む相手方への対応をお手伝いします。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

遺言・相続の手続を確認する

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。