タングラム法律事務所

遺留分侵害額請求は兄弟にできる?兄弟姉妹の遺留分を弁護士が解説

遺留分侵害額請求は兄弟にできる?兄弟姉妹の遺留分を弁護士が解説

遺留分侵害額請求は兄弟にできる?兄弟姉妹の遺留分を弁護士が解説

遺留分侵害額請求は兄弟にできる?兄弟姉妹の遺留分を弁護士が解説

遺留分侵害額請求は兄弟にできる?兄弟姉妹の遺留分を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月19日 最終更新日:2026年10月19日

「父の遺言で、遺産のほとんどが兄に渡ることになっていた。兄に遺留分を請求できるのか」「子どものいない兄が亡くなり、遺言で全財産が兄の妻に渡ると書かれていた。弟の自分には何も請求できないのか」――「兄弟」と「遺留分」が関わる相続のご相談では、この2つの場面が混同されていることがよくあります。

この記事では、遺留分侵害額請求を兄弟に対してできる場合と、兄弟姉妹に遺留分が認められない場合の違いを整理し、遺留分の割合・期限、遺留分がない場合に検討できる対処法を、横浜で相続事件を扱う弁護士が解説します。

結論から言うと、親が亡くなった相続で、遺言や生前贈与によって兄弟の一人に財産が集中した場合、他の兄弟は「子」として遺留分を持つため、その兄弟に遺留分侵害額請求ができます。これに対し、亡くなったのが兄弟姉妹本人である場合、相続人となる兄弟姉妹(甥・姪を含む)には遺留分がないため、遺言で他の人に財産が渡っていれば遺留分侵害額請求はできません。

「兄弟」と遺留分侵害額請求の2つのパターン【比較表】

まず、誰が亡くなったのかによって結論が正反対になることを確認しましょう。

項目パターンA:親の相続パターンB:兄弟姉妹の相続
亡くなった人父または母兄弟姉妹(子も親もいない場合)
請求する人の立場被相続人の「子」被相続人の「兄弟姉妹」(または甥・姪)
遺留分あり(民法1042条)なし(民法1042条は「兄弟姉妹以外の相続人」に限定)
典型例「全財産を長男に相続させる」遺言「全財産を妻に相続させる」遺言
主な対処法遺産を多く取得した兄弟へ遺留分侵害額請求遺言の効力を争う、遺言に記載のない財産の遺産分割など

パターンA:親の相続なら兄弟への遺留分侵害額請求ができる

遺留分の割合

民法1042条1項は、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分を認め、直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1と定めています。相続人が複数いる場合は、これに各自の法定相続分を掛けた割合が個別の遺留分になります(同条2項)。親が亡くなった場合の子は「兄弟姉妹」ではなく「子」として相続するため、遺留分があります。

たとえば、母がすでに亡くなっており、父の相続人が長男・次男・長女の3人で、父が「全財産を長男に相続させる」という遺言を残したとします。次男と長女の遺留分は、それぞれ「2分の1×法定相続分3分の1=6分の1」です。仮に遺留分算定の基礎となる財産が3,000万円であれば、次男と長女はそれぞれ500万円を長男に請求できる計算になります(生前贈与や債務がない単純な例です)。実際の計算では生前贈与や負債も考慮するため、詳しくは「遺留分侵害額の計算方法」をご覧ください。

請求の相手方と方法

遺留分侵害額請求は、遺贈や贈与を受けた人に対し、侵害額に相当する金銭の支払を求める権利です(民法1046条1項)。上の例では、遺産を取得した長男が相手方になります。不動産そのものを取り戻すのではなく、金銭で精算するのが現行制度の特徴です。

兄弟間では感情的な対立が起こりやすく、話し合いが進まないことも少なくありません。協議で解決しない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立て、それでも合意できなければ訴訟で解決を図ることになります。

期限は「知った時から1年」

遺留分侵害額の請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効によって消滅し、相続開始から10年を経過したときも同様です(民法1048条)。兄弟との話し合いが長引いている間に1年が過ぎてしまうことのないよう、まずは内容証明郵便で請求の意思表示をしておくのが安全です。

現行の遺留分侵害額請求の規定は、令和元年(2019年)7月1日以降に開始した相続に適用されます。それより前に亡くなった方の相続では、改正前の「遺留分減殺請求」の規定が適用されます。

パターンB:亡くなった兄弟姉妹の相続では遺留分がない

兄弟姉妹が相続人になる場合

亡くなった方に子(その代襲相続人を含む)がいない場合は直系尊属が、直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が相続人になります(民法889条1項)。配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分は、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1です(民法900条3号)。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子である甥・姪が代わりに相続人となります(民法889条2項・887条2項)。

兄弟姉妹には遺留分がない

しかし、遺留分を定める民法1042条は、対象を「兄弟姉妹以外の相続人」としています。そのため、兄弟姉妹は相続人になっても遺留分を持たず、兄弟姉妹の代わりに相続人となる甥・姪にも遺留分はないと解されています。

子のいない夫婦の一方が「全財産を妻に相続させる」という有効な遺言を残していれば、兄弟姉妹は遺言がなければ受け取れたはずの4分の1についても、遺留分侵害額請求をすることはできません。このような家族構成の相続で起こりやすい問題は「子のない夫婦の相続問題」でも解説しています。

なお、家庭裁判所に申し立てて相続権を失わせる「推定相続人の廃除」は、「遺留分を有する推定相続人」を対象とする制度です(民法892条)。兄弟姉妹は遺留分を持たないため、兄弟姉妹に財産を渡したくない場合は、廃除によらなくても遺言で他の人に財産を承継させれば足りることになります。

兄弟姉妹に遺留分がない場合に検討できる対処法

遺留分がないからといって、直ちに何もできないとは限りません。事案に応じて、次のような点を検討します。

  • 遺言の有効性を確認する:自筆証書遺言の方式を満たしているか、作成当時に認知症などで遺言能力を欠いていなかったかを確認します。遺言が無効であれば、遺言がない場合として兄弟姉妹も遺産分割に参加できます。手続は「遺言無効確認訴訟の要件と手続き」をご覧ください。
  • 遺言に書かれていない財産がないか確認する:遺言が一部の財産しか指定していない場合、残りの財産は相続人間の遺産分割の対象になり得ます。
  • 遺言の内容(解釈)を確認する:「遺贈する」「相続させる」の対象や範囲があいまいな場合は、その解釈自体が争点となることがあります。

一方、生前に被相続人の介護などで貢献していた場合でも、寄与分は、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(民法904条の2第3項)。全財産が遺贈されている場合には、寄与分を主張する余地は乏しいのが通常です。

どの方法が取り得るかは、遺言書の内容や作成の経緯によって大きく異なります。当事務所の相続分野の取扱内容は、相続・遺留分侵害額請求・遺産分割のご相談ページでご案内しています。

兄弟姉妹の相続で注意したい相続税の2割加算

兄弟姉妹や甥・姪が相続や遺贈によって財産を取得した場合、相続税額が2割加算される対象になります(国税庁タックスアンサーNo.4157)。遺産分割協議や遺言の効力を争った結果、兄弟姉妹が財産を取得することになった場合には、税負担もあわせて確認しておく必要があります。相続税の具体的な扱いや申告については、税理士または税務署にご確認ください。

兄弟が関わる遺留分の問題を解決する手順

  1. 誰の相続かを確認する:親の相続(パターンA)か、兄弟姉妹の相続(パターンB)かで、遺留分の有無が決まります。
  2. 遺言書と遺産の内容を確認する:遺言書の写し、預貯金・不動産・生前贈与の資料を集めます。
  3. パターンAなら期限内に意思表示をする:知った時から1年以内に、内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示を行います。
  4. パターンBなら遺言の効力・範囲を検討する:遺言の方式・遺言能力・記載のない財産の有無を確認します。
  5. 協議で解決しなければ裁判所の手続へ:遺留分は調停・訴訟、遺言の効力は遺言無効確認訴訟などで争います。

よくある質問

異母兄弟(父親だけが同じ兄弟)にも遺留分はありますか?

亡くなったのが父親で、異母兄弟がその子であれば、異母兄弟も子として遺留分を持ちます。子の相続分は父母の一方のみを同じくするかどうかで区別されないため、遺留分の割合も他の子と同じです。一方、亡くなったのが兄弟姉妹本人である場合は、半血・全血を問わず兄弟姉妹に遺留分はありません。

甥や姪に遺留分はありますか?

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子である甥・姪が代わりに相続人となることがあります(代襲相続)。しかし、甥・姪は兄弟姉妹の立場を引き継ぐものであるため、遺留分はないと解されています。遺言で他の人に全財産が遺贈されていれば、遺留分侵害額請求はできません。

遺言がなければ、兄弟姉妹は遺産を相続できますか?

亡くなった方に子(代襲相続人を含む)も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹は第3順位の相続人になります。配偶者がいる場合の兄弟姉妹の法定相続分は全体の4分の1で、複数いれば等分します。遺言がなければ遺産分割協議に参加でき、遺留分がないことは遺言がある場合にだけ問題になります。

兄弟に遺留分侵害額請求をする期限はいつまでですか?

親の相続で、遺言や生前贈与により兄弟の一人に財産が集中した場合の遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始から10年で消滅します(民法1048条)。期限内に内容証明郵便などで請求の意思表示をしておくことが重要です。

まとめ|兄弟と遺留分の問題は「誰の相続か」で結論が変わる

  • 親の相続では、子である兄弟それぞれに遺留分があり、財産を多く取得した兄弟に遺留分侵害額請求ができる
  • 親が亡くなり子だけが相続人の場合、各自の遺留分は「2分の1×法定相続分」
  • 亡くなった兄弟姉妹の相続では、兄弟姉妹・甥・姪に遺留分はなく、有効な遺言があれば遺留分侵害額請求はできない
  • 遺留分がない場合でも、遺言の有効性や遺言に記載のない財産の有無を確認する価値がある
  • 遺留分侵害額請求は知った時から1年で時効にかかるため、早めの意思表示が重要

兄弟が関わる相続は、感情的な対立から話し合いが難航しやすく、その間に期限が迫ってしまうことがあります。弁護士にご相談いただければ、遺留分の有無と金額、遺言の効力を争う余地を検討したうえで、相手方との交渉から調停・訴訟まで一貫して対応できます。横浜周辺で兄弟間の相続にお悩みの方は、お早めにご相談ください。

兄弟間の遺留分・相続トラブルのご相談

タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分侵害額請求をはじめとする相続紛争について、交渉から調停・審判・訴訟まで数多くのご相談をお受けしております。兄弟に遺産を独占されてお困りの方、遺留分を請求できるか分からない方も、まずはご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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