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遺言が「おかしい」と思ったら?遺言無効確認訴訟の要件・手続き・証拠収集

遺言が「おかしい」と思ったら?遺言無効確認訴訟の要件・手続き・証拠収集

遺言が「おかしい」と思ったら?遺言無効確認訴訟の要件・手続き・証拠収集

遺言が「おかしい」と思ったら?遺言無効確認訴訟の要件・手続き・証拠収集を横浜の弁護士が解説

親が亡くなった後、遺言書を開封してみると「こんな内容は聞いていない」「晩年に認知症を患っていた親が、本当にこんな遺言を書けたはずがない」と感じることがあります。特定の相続人や第三者に著しく有利な内容の遺言書が突然現れた場合、その有効性に疑問を抱くのは自然なことです。

遺言書の内容に納得できない場合、一定の要件を満たせば「遺言無効確認訴訟」という手続きを通じて、その遺言が法律上無効であることを裁判所に認めてもらうことができます。本記事では、遺言が無効となる原因の種類、調停・訴訟の流れ、勝訴に向けた証拠収集のポイントについて、相続問題に取り組む横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

遺言書が無効になる主な原因7つ

遺言書が無効となる原因は大きく「形式的な不備」と「実質的な無効原因」の2種類に分類されます。以下の7つが代表的な無効原因です。

番号 無効原因 根拠条文
遺言能力(意思能力)の欠如 民法第963条
自筆証書遺言の形式的不備(方式違背) 民法第968条
公正証書遺言の手続き違反(証人要件等) 民法第969条・第974条
詐欺・強迫による遺言 民法第96条
錯誤による遺言 民法第95条
遺言書の偽造・変造
内容の公序良俗違反 民法第90条

この中で実際の訴訟において最も多く争われるのが①の「遺言能力の欠如」と②の「形式的不備」です。以下、それぞれについて詳しく説明します。

最も多い無効原因①|遺言能力(意思能力)の欠如

遺言能力とは、遺言者が自分の財産の内容や相続人との関係、遺言を作成することの意味と効果を理解し、その意思を遺言として表明できる能力のことをいいます(民法第963条)。認知症や精神障害等により、遺言作成時にこの能力が失われていた場合、その遺言は無効となります。

重要なのは、「認知症の診断を受けていた=遺言能力がない」とは必ずしもいえない点です。遺言能力は成年後見の開始要件となる「行為能力」とは異なり、遺言という比較的シンプルな意思表示ができれば足りるとされる場合があります。成年後見人が付いている場合でも、医師2名以上の立会いのもとで遺言能力が認められれば遺言を作成できます(民法第973条)。

裁判所が遺言能力の有無を判断する際に総合的に考慮する主な要素は以下のとおりです。

  • 遺言作成時点における認知症の診断名・重症度(長谷川式認知症スケールの点数等)
  • 遺言作成日前後の言動・行動の記録(介護日誌・医療記録等)
  • 要介護認定の等級と認定審査票の内容
  • 遺言書の内容が遺言者の生前の言動や意思と整合しているかどうか
  • 遺言作成時の証人・公証人の供述
【参考】長谷川式認知症スケールの目安
30点満点のうち、概ね10点以下では遺言能力が否定される傾向にありますが、スコアはあくまで補助的指標です。裁判所は点数だけでなく、症状の質(見当識・短期記憶・理解力)や遺言書の内容との整合性を含む総合評価を行います。

最も多い無効原因②|形式(方式)の不備による無効

遺言書は、法律が定める方式に従って作成しなければ効力が生じません(民法第960条)。特に「自筆証書遺言」は費用をかけずに手軽に作成できる反面、形式要件を満たさないために無効とされるリスクがあります。

民法第968条は、自筆証書遺言について「遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自書し、印を押すこと」を要件としています。以下のようなケースで形式的不備が問題となりやすい傾向があります。

  • 遺言書の全文または一部がパソコン等で作成されている(財産目録を除く)
  • 日付の記載が「令和○年○月吉日」のように特定の日付になっていない
  • 署名はあるが押印が欠けている
  • 第三者が代筆している(口述筆記も原則として認められない)
  • 訂正・加筆の方式が民法の定める方法に従っていない

なお、2019年の民法改正(民法第968条第2項、施行:2019年1月13日)により、財産目録についてはパソコン等で作成することが認められるようになりました。ただし、財産目録の各ページに署名・押印が必要です。

一方、公正証書遺言は公証人が関与して作成されるため、形式的な無効は生じにくいとされています。しかし、証人の欠格事由(民法第974条)に該当する者が証人を務めていたケースや、代理人による手続きが問題となるケースも見受けられます。

詐欺・強迫・錯誤を理由とする遺言の取消し

詐欺や強迫を理由として遺言を取り消す場合(民法第96条)、特定の相続人や第三者が故意に遺言者を欺いたり、心理的に追い詰めて不本意な遺言を書かせたりしたことを客観的証拠で示す必要があります。遺言者の死後に相続人が詐欺・強迫の事実を立証することは難易度が高く、認められるケースは限られる傾向があります。

錯誤(民法第95条)については、遺言者が重要な事実を誤解したまま遺言を作成したことが必要です。たとえば「特定の相続人がすでに死亡していると誤信して遺言を書いたが、実際は生存していた」といった事例が考えられます。いずれも主観的な事情を客観的に立証する点に困難が伴います。

遺言無効確認訴訟の流れ|調停から地方裁判所まで

遺言の無効を主張したい場合、一般的に以下のような手順で手続きが進みます。

① 証拠収集・事実関係の分析

まず、遺言書の原本の確認と、無効を主張する根拠(遺言能力の欠如・形式不備等)の特定を行います。弁護士とともに入手できる証拠を精査し、訴訟を提起した場合の見込みを評価することが重要です。

② 家庭裁判所への調停申立て

遺言無効確認訴訟は「家庭に関する事件」として、原則として訴訟提起前に家庭裁判所への調停申立てが必要です(家事事件手続法第257条・調停前置主義)。相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。調停で合意が成立すれば、遺言の無効が確定します。

ただし、実務上は当事者間の対立が深刻な場合、調停を経ずに最初から地方裁判所に訴訟を提起することも少なくありません。調停の実効性が見込めないと判断される場合、裁判所が調停前置の例外を認める場合があります。

③ 地方裁判所への訴訟提起

調停が不成立となった場合(または調停前置を経ずに提訴した場合)、地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起します(小額事案では簡易裁判所の管轄になることもあります)。訴訟では、主張と証拠の提出・証人尋問・鑑定等を経て判決が下されます。準備期間を含めると第一審だけで1〜2年以上かかるケースも多く、控訴審まで進む場合はさらに長期化する傾向があります。

④ 遺言無効確認後の遺産分割

遺言が無効と確認された場合、遺産は遺言がなかった状態に戻り、遺産分割協議または調停・審判によって各相続人の取り分を決定します。遺言無効確認訴訟と遺産分割手続きは別の手続きであり、無効確認後の対応も含めた一貫した戦略設計が必要です。

無効主張を支える証拠収集のポイント

遺言無効確認訴訟において、特に遺言能力の欠如を主張する場合、客観的な証拠による立証が勝訴の鍵を握ります。主な証拠と収集方法を整理します。

  • 診療記録(カルテ):遺言作成日前後の認知機能に関する医師の所見・診断内容
  • 介護保険認定記録:要介護度・認定審査票の記載内容(認知機能の状態)
  • 入院・施設入所記録:行動観察・意識状態に関するスタッフの記録
  • 看護記録・介護日誌:日常生活の様子・言動の記録
  • 処方薬の記録:向精神薬・認知症治療薬の服用状況
  • 遺言作成時の証人・公証人の供述:遺言作成当日の遺言者の状態
  • 銀行取引履歴・その他の文書:日常的な判断能力を示す資料

これらの資料は、遺言者の死後は遺族であっても医療機関や施設に開示請求が必要になります。弁護士が職権で照会できる「弁護士法第23条の2に基づく弁護士照会」を活用することで、収集の可能性が広がる場合があります。証拠は早期に収集に着手するほど資料が残っている可能性が高く、時間が経過するほど取得が困難になる傾向があります。

遺言無効確認と遺留分侵害額請求の組み合わせ
遺言が有効である可能性も残る場合、遺言無効確認訴訟と並行して、または補完的手段として遺留分侵害額請求を行うことが有効な戦略となる場合があります。遺留分侵害額請求には「相続開始および遺留分侵害の事実を知った時から1年」の消滅時効があります(民法第1048条)。遺言無効確認訴訟を進めながら、時効を止める措置(内容証明郵便等)を忘れずに行うことが重要です。

まとめ|遺言に疑問を感じたら早めに弁護士へ

遺言無効確認訴訟は、遺言書の内容に納得できない相続人にとって重要な法的手段ですが、その道のりは容易ではありません。特に遺言能力の欠如を理由とする場合、医療記録などの客観的証拠が不可欠であり、証拠収集が遅れるほど入手困難になる資料も増えてきます。

また、遺言無効確認訴訟だけでなく、遺留分侵害額請求や遺産分割手続きとの連携も含めた総合的な戦略を立てることが重要です。横浜の弁護士に早期にご相談いただくことで、証拠保全の方針や手続き選択についてのアドバイスを得ることができます。遺言に少しでも疑問を感じたら、まずは弁護士にご相談ください。

遺言書の有効性に疑問をお持ちの方へ

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。遺言無効確認訴訟・証拠収集の方針・遺留分請求との組み合わせ戦略など、個別のご事情に即した対応方針をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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