タングラム法律事務所

相続に関わりたくない|遺産分割から抜ける3つの方法を弁護士が解説

相続に関わりたくない|遺産分割から抜ける3つの方法を弁護士が解説

相続に関わりたくない|遺産分割から抜ける3つの方法を弁護士が解説

相続に関わりたくない|遺産分割から抜ける3つの方法を弁護士が解説

相続に関わりたくない|遺産分割から抜ける3つの方法を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月28日 最終更新日:2026年10月28日

「兄弟の争いに巻き込まれたくない」「遺産はいらないから、もう相続の話から解放されたい」。長年疎遠だった親族との遺産分割や、感情的な対立が続く話し合いに疲れ、相続そのものから距離を置きたいと考える方は少なくありません。突然、家庭裁判所から遺産分割調停の書類が届き、どうすれば関わらずに済むのかを調べている方もいるでしょう。

この記事では、相続に関わりたくない場合にとり得る「相続放棄」「相続分の放棄」「相続分の譲渡」という3つの方法の違い、相続放棄の3か月を過ぎてしまった後の選択肢、借金の扱いや調停から抜ける手続の注意点を、相続紛争を扱う弁護士の立場から解説します。

結論として、相続に関わりたくない場合、相続開始を知ってから3か月以内であれば家庭裁判所への「相続放棄」が最も確実な方法です。3か月を過ぎていても「相続分の放棄」や「相続分の譲渡」によって遺産分割の当事者から抜けることはできますが、これらの方法では被相続人の借金の負担は残るとされているため、借金の有無を確認してから選ぶことが重要です。

相続に関わりたくないときの3つの方法

遺産分割から抜ける方法は、主に次の3つです。名前が似ていますが、効果は大きく異なります。

比較項目相続放棄相続分の放棄相続分の譲渡
期限原則3か月以内なし(遺産分割前)なし(遺産分割前)
手続家庭裁判所への申述放棄の意思表示(書面が一般的)譲受人との合意(書面が一般的)
相続人の地位初めから相続人でなかったことになる相続人のまま相続人のまま
借金(相続債務)負担しない負担が残るとされる債権者との関係では当然には免れない
取り分の行き先他の相続人(順位が変わることも)他の相続人譲る相手を選べる

方法1:相続放棄(3か月以内なら最も確実)

相続放棄は、家庭裁判所に申述して行う手続です(民法938条)。相続放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、遺産分割協議や調停の当事者になることはなく、被相続人の借金も引き継ぎません。「完全に相続から離れたい」という希望には、最もよく合う方法です。

注意点は期限です。相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(民法915条1項)。また、期限内であっても、遺産を処分するなどすると単純承認したものとみなされ(民法921条1号)、放棄できなくなるおそれがあります。

さらに、相続放棄をすると次の順位の相続人(たとえば親や兄弟姉妹)に相続権が移ることがあります。親族関係への影響も考えて判断しましょう。なお、3か月を過ぎていても、事情によっては受理される場合があります。詳しくは相続放棄の期限が過ぎた場合に認められるケースの記事で解説しています。

方法2:相続分の放棄(期限後でも遺産分割から抜けられる)

相続分の放棄とは、遺産に対して自分が持っている取り分(相続分)を手放すことです。民法に明文の規定はありませんが、実務上広く用いられています。家庭裁判所での手続は不要で、期限もないため、相続放棄の3か月を過ぎた後でも利用できる点が大きな特徴です。

相続分を放棄すると、遺産を受け取る権利を失い、遺産分割の当事者から外れることになります。放棄した分は、他の相続人にその相続分に応じて帰属するという考え方が一般的です。

相続分の放棄をしても、相続人の地位そのものは失いません。被相続人の借金などの相続債務は、遺産分割の対象とならず、相続分の放棄の影響を受けないと解されています。借金がある可能性があるときは、相続分の放棄だけで安心しないことが大切です。

相続分の放棄は口頭でも理論上は可能とされますが、後の紛争を防ぐため、署名押印した「相続分放棄証書」などの書面で行い、印鑑登録証明書を添えて他の相続人に渡すのが一般的です。

方法3:相続分の譲渡(譲る相手を選びたい場合)

相続分の譲渡は、自分の相続分を他人に譲り渡すことです。相続分の放棄との大きな違いは、取り分を誰に渡すかを自分で選べる点です。「長年親の面倒を見てくれた兄に全部渡したい」といった場合に適しています。有償・無償のいずれでも可能です。

なお、相続人以外の第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は、その価額と費用を償還して相続分を取り戻すことができます(民法905条1項。1か月以内に行使する必要があります。同条2項)。

無償で相続分を譲渡する場合には、将来の相続への影響にも注意が必要です。最高裁平成30年10月19日第二小法廷判決は、共同相続人間の無償の相続分の譲渡は、相続分に財産的価値がないといえる場合を除き、譲渡した人の相続において民法903条1項の「贈与」にあたると判断しました。たとえば、父の相続で母が子の一人に相続分を無償で譲ると、母の相続の際に特別受益や遺留分の計算で問題になる可能性があります。手続の詳細は相続分の譲渡の方法と注意点の記事をご覧ください。

遺産分割調停の途中で抜けるには

すでに遺産分割調停が始まっている場合でも、相続分の放棄や譲渡をして手続から抜けることができます。家庭裁判所は、当事者である資格を喪失した者を手続から排除することができ(家事事件手続法43条1項。調停にも同法258条1項で準用)、相続分を放棄・譲渡した相続人について排除の決定がされるのが一般的な流れです。

  • 相続分放棄証書(または相続分譲渡証書)を作成する
  • 家庭裁判所所定の脱退の申出書・届出書を作成する
  • 実印で押印し、印鑑登録証明書を添付して家庭裁判所に提出する

書式や添付書類は家庭裁判所によって異なるため、事件が係属している裁判所に確認してください。呼出状が届いた段階での対応は遺産分割調停の呼出状が届いたらの記事でも解説しています。

「何も受け取らない」遺産分割協議との違いと注意点

実務では、遺産分割協議書に「自分は何も取得しない」と記載して署名押印する方法がとられることもあります。いわゆる「事実上の相続放棄」です。ただし、この方法でも相続債務の負担は免れないとされています。また、協議書に署名押印するまでは話し合いに関与し続けることになり、「関わりたくない」という目的からすると負担が残る場合があります。

いずれの方法を選ぶ場合でも、次の点は確認しておきましょう。

  • 被相続人に借金や保証債務がないか(ある場合は相続放棄を優先的に検討)
  • 他の相続人から不当に安い金額で手放すよう迫られていないか
  • 相続税の申告や納税の要否(取得しない場合でも状況により影響が生じることがあります)

相続税・贈与税の扱いは個別の事情によって異なるため、具体的な課税関係は税理士または税務署にご確認ください。

相続人間の対立が深く、自分だけでは判断が難しいときは、当事務所の相続・遺産分割の取扱分野ページもご参照ください。横浜の弁護士として、遺産分割から抜けたいというご相談にも対応しています。

よくある質問

相続放棄の3か月を過ぎてしまいました。もう遺産分割から抜けられませんか?

相続放棄の期間を過ぎていても、相続分の放棄や相続分の譲渡によって、遺産分割の話し合いや調停から抜けることは可能です。ただし、これらの方法では被相続人の借金の負担を免れることはできないとされています。なお、事情によっては3か月経過後でも相続放棄が受理される場合があります。

相続分の放棄をすれば、親の借金も払わなくてよくなりますか?

いいえ。相続分の放棄はプラスの財産を受け取る権利を手放すものであり、相続債務の負担は残るとされています。借金を引き継ぎたくない場合は、家庭裁判所への相続放棄の申述を検討する必要があります。

遺産分割調停の途中でも抜けることはできますか?

可能です。相続分の放棄や譲渡をしたうえで、家庭裁判所に所定の書面(相続分放棄証書・相続分譲渡証書や脱退の申出書など)を提出すると、家庭裁判所が手続からの排除の決定をすることがあります。書式や添付書類は裁判所ごとに異なるため、係属している家庭裁判所に確認してください。

相続分を特定の兄弟に譲ることはできますか?

できます。相続分の譲渡であれば、譲る相手を選ぶことができます。ただし、無償の相続分の譲渡は、最高裁平成30年10月19日判決により、譲渡した人の相続で特別受益となる贈与にあたる場合があるとされているため、将来の相続への影響にも注意が必要です。

まとめ

  • 3か月以内で借金の心配もあるなら、家庭裁判所への相続放棄が最も確実
  • 3か月を過ぎていても、相続分の放棄・相続分の譲渡で遺産分割から抜けられる
  • 相続分の放棄・譲渡では相続債務の負担は残るとされる
  • 取り分を渡す相手を選びたいなら相続分の譲渡。ただし無償の譲渡は将来の相続に影響することがある
  • 調停中なら、家庭裁判所に所定の書面を提出して手続から抜ける

「関わりたくない」という気持ちから、内容をよく確認しないまま書面に署名してしまうと、思わぬ負担や後悔につながることがあります。横浜をはじめ神奈川県内の相続事案でも、弁護士に依頼すれば、借金の有無の調査や方法の選択、他の相続人とのやり取りを任せることができ、精神的な負担を大きく減らせます。

相続の争いから離れたい方へ

タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分侵害額請求など相続をめぐる紛争について、多数のご相談をお受けしております。相続放棄・相続分の放棄・譲渡のどれが適切か、状況に応じてご説明します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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