相続登記の期限は2027年3月31日|遺産分割未了の場合の対処法
相続登記の期限は2027年3月31日|遺産分割未了の場合の対処法
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月29日 最終更新日:2026年10月29日
「実家の名義が亡くなった親のまま」「兄弟と遺産の分け方で揉めていて登記どころではない」。こうしたご相談は珍しくありません。ところが2024年4月1日から相続登記が義務になり、過去の相続についても期限が設けられました。多くの方にとって、その期限は2027年3月31日です。
この記事では、相続登記の義務化の期限がいつになるのか、期限を過ぎた場合の過料の手続、そして遺産分割がまとまらないまま期限が迫っているときに相続人が自分でとれる対処法を、相続紛争を扱う横浜の弁護士の視点から解説します。
結論:2024年4月1日より前に相続が開始し、その時点で不動産の取得を知っていた相続人は、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する義務があります。遺産分割がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」または「法定相続分での相続登記」により期限内に義務を果たす方法があり、そのうえで遺産分割の協議や調停を進めることになります。
相続登記の義務化とは|期限は「知った日から3年」
相続登記の義務化は、所有者不明土地の問題を解消するための不動産登記法の改正により、2024年4月1日に始まりました。相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。
また、いったん法定相続分で登記した後に遺産分割が成立し、法定相続分を超えて不動産を取得した方は、遺産分割の日から3年以内に、その内容に基づく登記を申請する義務を負います(同条2項)。正当な理由なくこれらの申請を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となります(同法164条1項)。
過去の相続も対象|2027年3月31日が期限になるケース
注意したいのは、義務化が施行日より前に開始した相続にも適用される点です(改正法附則5条6項)。この場合の3年の起算点は、「不動産の取得を知った日」と「施行日(2024年4月1日)」のいずれか遅い日とされています。
| 相続が開始した時期・知った時期 | 申請期限の目安 |
|---|---|
| 2024年4月1日より前に相続が開始し、施行日前から取得を知っていた | 2027年3月31日まで |
| 2024年4月1日より前に相続が開始したが、施行日後に取得を知った(例:後から土地の存在が判明した) | 取得を知った日から3年以内 |
| 2024年4月1日以後に相続が開始した | 相続の開始と取得を知った日から3年以内 |
法務省も、施行日前に相続した不動産で登記をしていないものは2027年3月31日までに登記する必要があると案内しています。祖父母の代から名義が変わっていない土地も対象になり得ますので、まずは登記事項証明書で名義人を確認しましょう。義務化の全体像や放置するリスクは「実家の相続登記義務化と放置リスク」でも解説しています。
期限を過ぎるとどうなる?過料の手続と「正当な理由」
法務省の説明によると、過料が科されるまでの流れは次のとおりです。
- 登記官が義務違反を把握した場合、まず義務者に催告書を送付して登記を促す
- 催告書の期限内に申請がなく、正当な理由も認められない場合に、登記官が裁判所に通知する
- 裁判所が要件を判断し、10万円以下の範囲で過料を科する裁判をする
「正当な理由」の例として、法務省は、相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間がかかる場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われていて不動産の帰属が明らかでない場合、義務者に重病などの事情がある場合などを挙げています。ただし個別の事情による判断であり、相続人同士で揉めているだけで当然に認められるわけではありません。紛争中でも、次の方法で期限内に義務を果たしておくのが安全です。
遺産分割がまとまらない場合に期限内にできる2つの方法
方法1:相続人申告登記
相続人申告登記は、登記名義人について相続が開始したことと、自分がその相続人であることを登記官に申し出る制度です(不動産登記法76条の3第1項)。期限内に申し出た相続人は、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます(同条2項)。他の相続人の協力がなくても、自分の分だけ単独で申し出られるのが特徴です。詳しい手続は「相続人申告登記とは?遺産分割が長引くときの過料回避策」をご覧ください。
方法2:法定相続分での相続登記
相続人全員について法定相続分どおりの共有の登記をする方法です。相続人の一人が、全員のために申請することも可能とされています。登記費用がかかり、遺産分割の成立後にあらためて登記が必要になる場合がある点に注意が必要です。
| 比較項目 | 相続人申告登記 | 法定相続分での相続登記 |
|---|---|---|
| 申請できる人 | 各相続人が単独で可 | 相続人の一人が全員分を申請可 |
| 義務の履行 | 申し出た相続人のみ | 相続人全員 |
| 売却・担保設定 | できない | 共有者全員の関与が必要 |
なお、登録免許税などの登記費用や税金の扱いは、事案によって異なります。税金については税理士または税務署に、登記手続の詳細は法務局にご確認ください。
登記だけでは終わらない|遺産分割の10年ルールにも注意
相続人申告登記などで登記の義務を果たしても、遺産分割の紛争そのものは解決しません。しかも、2023年4月1日施行の改正民法により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなりました(民法904条の3)。施行日前に開始した相続には猶予期間があり、相続開始から10年を経過する時と施行日から5年を経過する時(2028年4月1日)のいずれか遅い時が基準とされています。
つまり、古い相続を放置している場合、2027年3月31日の登記の期限と、2028年4月1日の10年ルールの猶予期限が相次いでやってきます。特別受益や寄与分を主張したい方は、登記と並行して遺産分割を進める必要があります。詳しくは「遺産分割の10年ルール」で解説しています。
なお、2026年4月1日からは所有者の住所・氏名の変更登記も義務化されています(施行日前の変更は2028年3月31日まで)。
期限までに紛争を進めるには|横浜の弁護士に相談するタイミング
相手が協議に応じない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てることが考えられます。調停には数か月から1年以上かかることも多いため、2027年3月31日の直前に動き始めるのでは間に合わない可能性があります。
次のような場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
- 相続人が多い、または数次相続が生じていて、誰が相続人か分からない
- 他の相続人と連絡が取れない、協議を拒否されている
- 遺言の有効性や遺産の範囲に争いがある
- 特別受益・寄与分を主張したい(10年ルールの期限が迫っている)
弁護士に依頼すれば、相続人の調査から交渉、調停の申立てまでを一貫して任せることができます。当事務所の相続案件への取組みは相続・遺産分割の取扱分野ページでご紹介しています。
相続登記の期限に関するよくある質問
Q. 祖父名義のまま何十年も放置している土地も、相続登記の義務の対象ですか?
対象になります。義務化は2024年4月1日より前に開始した相続にも適用され、その時点で相続による取得を知っていた場合は、原則として2027年3月31日が申請期限です。相続が重なっている場合(数次相続)は相続人の調査に時間がかかるため、早めの着手をおすすめします。
Q. 相続人申告登記をしておけば、遺産分割の後は何もしなくてよいですか?
いいえ。相続人申告登記をした後に遺産分割で不動産を取得した方は、遺産分割の日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の3第4項)。また、相続人申告登記だけでは不動産の売却や抵当権の設定はできません。
Q. 期限を1日でも過ぎたら、すぐに過料が科されるのですか?
法務省の説明では、登記官が義務違反を把握した場合、まず催告書で登記を促し、期限内に申請がなく正当な理由も認められないときに裁判所へ通知する流れとされています。ただし、催告を受けてから対応すればよいという制度ではありませんので、期限内に手続をとることが大切です。
Q. 兄弟の一人が登記に協力してくれません。自分だけで手続できますか?
相続人申告登記は、相続人の一人が自分の分だけ単独で申し出ることができます。また、相続人全員について法定相続分どおりの共有の登記を、相続人の一人が申請することも可能とされています。いずれも遺産分割自体は解決しないため、調停も検討します。
まとめ
- 相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続の開始と取得を知った日から3年以内の申請が必要
- 施行日前の相続も対象で、施行日前から取得を知っていた場合の期限は原則2027年3月31日
- 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象。催告書の後に裁判所へ通知される流れ
- 遺産分割がまとまらなくても、相続人申告登記や法定相続分での登記で期限内に義務を果たせる
- 2028年4月1日には遺産分割の10年ルールの猶予期間も終わるため、紛争は並行して進める
遺産分割の紛争は、時間が経つほど証拠が散逸し、主張できることも限られていきます。横浜の弁護士として、期限が迫る前の早い段階でのご相談をおすすめします。
相続登記の期限が迫っている・遺産分割がまとまらない方へ
タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分侵害額請求など、相続人間の紛争について多数のご相談をお受けしております。相続人の調査から交渉・調停まで、登記の期限を見据えて対応いたします。
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