実家を相続したら名義変更(相続登記)は必須!義務化の内容と放置リスクを弁護士が解説
2026/04/17
実家を相続したら名義変更(相続登記)は必須!義務化の内容と放置リスクを弁護士が解説
親が亡くなり実家を相続したものの、「登記の手続きはいつかやればいい」「費用や手間がかかるから後回しにしていた」という方は少なくありません。しかし、2024年(令和6年)4月1日から不動産登記法の改正により相続登記が義務化されました。これまで任意とされてきた相続登記が、法律上の義務となったのです。
本記事では、相続登記の義務化の内容と期限、放置した場合のリスク、手続きの具体的な流れ、そして手続きが難しいと感じたときに弁護士へ相談するメリットについて、わかりやすく解説します。実家を相続した方はもちろん、過去に相続した不動産の登記が未了のままになっている方にも、ぜひ参考にしていただければと思います。
相続登記の義務化とは?いつから始まった?
「相続登記」とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことです。具体的には、法務局に対して所有権移転登記を申請することを指します。
これまでは相続登記に期限が設けられておらず、長期間にわたって手続きをしなくても罰則はありませんでした。その結果、全国に「所有者不明土地」が増加し、公共事業の妨げや近隣住民とのトラブルが深刻な社会問題となっていました。国土交通省の調査によれば、所有者不明土地の多くは相続登記の未了が原因とされています。
こうした背景から、令和3年(2021年)に不動産登記法が改正され、令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。この改正は、過去に相続した不動産にも適用される点が重要なポイントです。
2024年4月1日より前に相続が発生していた不動産についても、相続登記が未了の場合は新制度の対象となります。ただし、過去分については施行日(2024年4月1日)から3年以内(2027年3月31日まで)が猶予期間とされています。
相続登記の申請期限は「3年以内」
改正不動産登記法(第76条の2)により、相続(または遺言)によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
「知った日」の起算点は、一般的には被相続人が亡くなったことを知った日と考えて差し支えありません。ただし、遺産分割によって不動産を取得した場合には、遺産分割が成立した日から3年以内という別の期限も定められています(改正不動産登記法第76条の2第2項)。
| 取得の原因 | 申請義務の起算点 | 期限 |
|---|---|---|
| 法定相続・遺言による取得 | 相続(または遺言の存在)を知った日 | 3年以内 |
| 遺産分割協議の成立による取得 | 遺産分割が成立した日 | 3年以内 |
| 2024年4月1日以前の未了分(過去分) | 2024年4月1日(施行日) | 2027年3月31日まで |
遺産分割が長引いているケースでは、まず法定相続分での相続登記を申請しておき、遺産分割が成立した後に改めて持分移転登記を申請するという対応が考えられます。
放置した場合のリスク①:10万円以下の過料
正当な理由なく申請義務を怠った場合、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります(改正不動産登記法第164条)。過料は刑事罰ではありませんが、無視できる軽微なペナルティではありません。
実際の運用としては、登記官が未登記不動産を発見した場合に相続人へ「催告」を行い、それでも応じない場合に過料の手続きへと進むと考えられています。すぐに罰則が適用されるわけではありませんが、義務を放置し続けることはリスクを高めます。
2026年(令和8年)4月1日からは、不動産所有者の住所や氏名が変わった場合の変更登記も義務化されます。変更が生じた日から2年以内に登記をしなければ、5万円以下の過料が科される可能性があります(改正不動産登記法第164条第2項)。引っ越しや婚姻による改姓をした方は注意が必要です。
放置した場合のリスク②:第三者への対抗不可・権利の複雑化
過料よりもむしろ深刻なのが、相続登記を怠ることで生じる権利上のリスクです。
不動産の権利関係は「登記」によって公示されます。相続によって不動産を取得した場合でも、登記をしていなければ第三者に対して「この不動産は自分のものだ」と主張できなくなる可能性があります(民法第177条)。たとえば、他の相続人の一人に多額の借金があった場合、その債権者が当該相続人の法定相続分に相当する持分を差し押さえることがあります。相続登記を放置していると、こうした事態に対抗することが難しくなります。
さらに、相続登記を放置したまま次の相続(二次相続・三次相続)が発生すると、権利関係が複雑に絡み合い、遺産分割協議が非常に困難になります。関係する相続人の数が増え、連絡が取れない相続人が出てきたり、意見がまとまらなかったりするケースも珍しくありません。
「相続人申告登記」制度とは?義務を暫定的に履行する簡易手続き
遺産分割がまとまっていない段階でも相続登記の義務を暫定的に履行できる制度として、2024年4月1日から「相続人申告登記」が創設されました(改正不動産登記法第76条の3)。
相続人申告登記とは、相続人が法務局に対して「自分が相続人である」という旨を申し出ることで、相続登記の申請義務を一時的に履行したとみなされる制度です。通常の相続登記と異なり、戸籍謄本等の必要書類が簡略化されており、費用も抑えやすい点が特徴です。
ただし、相続人申告登記はあくまでも「義務違反とならないための暫定措置」であり、不動産の権利を第三者に主張するためには通常の相続登記が必要です。遺産分割が成立したら、速やかに正式な相続登記へ移行することが重要です。
相続登記の手続きの流れと必要書類
実際に相続登記を申請する際の基本的な流れは以下のとおりです。
①相続人と相続財産の調査
まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本を収集し、法定相続人を確定させます。相続人が誰であるかを正確に把握することが、その後の手続きの基礎となります。
②遺産分割協議または遺言の確認
遺言書がある場合はその内容に従います。遺言書がない場合や遺言書で対象不動産の取り扱いが定められていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が不動産を取得するかを決定します。
③必要書類の収集
相続登記に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 固定資産税評価証明書(登録免許税の計算のため)
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書を添付)
- ※遺言による場合は遺言書(検認済みのもの、または公正証書遺言)
④登記申請書の作成・法務局への申請
申請書類が整ったら、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に申請します。申請は窓口持参のほか、郵送やオンラインでも可能です。登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%が目安です。
横浜で相続登記に関してお困りの場合の弁護士活用
相続登記の手続きは、一見すると自分でできそうに思えますが、実際には戸籍の収集に予想以上の時間がかかったり、相続人の中に連絡が取れない方がいたり、遺産分割協議がまとまらないといった事情で手続きが複雑になるケースが少なくありません。
特に次のようなケースでは、弁護士への相談を検討されることをお勧めします。
- 相続人の一部が遺産分割に協力しない、または連絡が取れない
- 遺産分割の内容について相続人間で意見が対立している
- 遺言書の有効性や内容に疑義がある
- 遺留分の問題が絡んでいる
- 相続財産に負債(借金・保証債務等)が含まれる可能性がある
- 過去の相続(二次・三次相続)が積み重なって権利関係が複雑になっている
横浜を中心に相続案件を手がけている弁護士であれば、法律問題と登記手続きの両面から一体的にサポートすることが可能です。相続登記だけを司法書士に依頼するか、弁護士に総合的な解決を委ねるかは、相続トラブルの有無や複雑さによって判断するとよいでしょう。
まとめ:実家の相続登記は早めの対応が重要
2024年4月の法改正によって相続登記は義務となり、放置すれば過料のペナルティや深刻な権利上のリスクが生じます。過去の未了分についても2027年3月末までという期限があるため、実家や不動産を相続している方は早急に現状を確認することが重要です。
まずは相続登記が済んでいるかどうかを確認し、未了であれば速やかに手続きを進めることをお勧めします。遺産分割の調整が難航しているケースや、相続人が多数いて話し合いが進まないケースでは、早期に弁護士へ相談することで解決への糸口が見えてくることがあります。一人で抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用してください。
実家の相続登記・遺産分割でお悩みの方へ
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