タングラム法律事務所

遺留分侵害額請求の遅延損害金はいつから?利率と止める方法を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の遅延損害金はいつから?利率と止める方法を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の遅延損害金はいつから?利率と止める方法を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の遅延損害金はいつから?利率と止める方法を弁護士が解説

遺留分侵害額請求の遅延損害金はいつから?利率と止める方法を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月27日 最終更新日:2026年10月27日

遺留分侵害額請求をめぐる話し合いは、遺産の評価や生前贈与の有無で対立し、解決までに1年以上かかることも珍しくありません。その間に「遅延損害金も払ってもらいます」と書かれた書面が届き、請求額が日々増えていくのではないかと不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。反対に、請求する側として、支払を引き延ばされている間の損失を取り戻せるのか知りたいという方もいるはずです。

この記事では、遺留分侵害額請求における遅延損害金について、いつから発生するのか(起算点)、利率は何%か、具体的な計算例、そして請求された側が負担の増加を止めるための方法と、和解の際の注意点を、相続紛争を扱う横浜の弁護士が解説します。

結論として、遺留分侵害額請求によって生じる金銭の支払義務は期限の定めのない債務と解され、支払を請求された日の翌日から、年3%(現在の法定利率)の遅延損害金が生じるのが原則です。請求された側は、争いのない部分の支払、弁済の提供・供託、裁判所への期限の許与の申立てによって、遅延損害金の負担を抑えられる場合があります。

遺留分侵害額請求の遅延損害金とは|改正で「金銭の請求」になった

2019年7月1日に施行された改正民法により、遺留分の制度は「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に改められました。現行の民法1046条1項は、遺留分権利者が、受遺者(遺贈を受けた人)や受贈者(生前贈与を受けた人)に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できると定めています。

遺留分侵害額請求権は、権利を行使する意思表示をすることで金銭債権が発生する「形成権」と解されています。金銭債権である以上、支払が遅れれば、一般の金銭債務と同じく遅延損害金(支払が遅れたことによる損害賠償)の問題が生じます。不動産や株式そのものの返還が問題になった改正前の制度と比べ、遅延損害金の存在感が大きくなった点が、現行制度の特徴の一つです。

遅延損害金はいつから発生する?起算点の考え方

遺留分侵害額請求によって生じる債務には、支払期限が定められていません。民法412条3項は「債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」と定めており、この債務は履行の請求を受けた時から遅滞となると解されています。期間の計算では初日を算入しないため、実際には請求を受けた日の翌日から遅延損害金が計算されるのが一般的です。

ここで注意したいのは、「遺留分侵害額請求をする」という意思表示と、「◯◯万円を支払ってください」という履行の請求は、理論上は別のものだという点です。解説では、具体的な金額を示して履行を請求した時から遅滞になると説明されることが多く、請求する側としては、次の点を意識しておくと起算点をめぐる争いを避けやすくなります。

  • 内容証明郵便で、遺留分侵害額請求の意思表示とあわせて、金額を示した支払請求も行う
  • 金額の算定が難しい場合でも、その時点で見込まれる金額を示し、後に精査する旨を付記する
  • 相手方に書面が届いた日(到達日)を、配達証明などで記録しておく

なお、書面を受け取ってもらえなかった場合の到達の考え方や時効対策は、遺留分侵害額請求の内容証明を受け取り拒否されたときの対処法で詳しく解説しています。

遅延損害金の利率は年3%|計算例と利率の決まり方

遅延損害金の利率は、当事者間に約定がなければ法定利率によります。民法404条2項は法定利率を年3%と定め、同条3項により3年ごとに見直される仕組みになっています。法務省の公表によれば、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間の法定利率も年3%のまま変動しないこととされました。

また、民法419条1項により、金銭債務の遅延損害金は「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率」で定まります。途中で法定利率が見直されても、遅滞が始まった時点の利率が支払完了まで適用される仕組みです。2020年4月1日より前に遅滞に陥った債務については、改正前の年5%が適用される点にも注意が必要です。

遺留分侵害額遅滞期間遅延損害金の目安(年3%・1年365日で計算)
1,000万円180日約14万7,945円
1,000万円1年30万円
3,000万円2年180万円

上の表は単純化した目安です。実際の事案では、最終的に確定した遺留分侵害額を元本として計算するため、交渉や調停の結果、元本が減れば遅延損害金も減ります。調停・訴訟が長期化すると、遅延損害金だけで数十万円から数百万円の規模になることがあり、解決方針を考えるうえで無視できない要素です。

請求された側が遅延損害金の増加を止める方法

遺留分侵害額請求を受けた側にとって、請求額に納得できないことと、遅延損害金が増え続けることは別問題です。最終的に支払義務が認められた金額については、請求の翌日にさかのぼって遅延損害金が付く可能性があるため、早い段階で次のような手段を検討します。

1.争いのない部分を先に支払う

遺産の評価などで争いがあっても、少なくともこの金額は支払うべきだと考えられる部分があれば、先に支払うことで、その部分の遅延損害金の発生を止めることができます。ただし、一部を支払う場合、合意がなければ民法489条1項により費用・利息(遅延損害金を含むと解されています)・元本の順に充当されるのが原則です。元本に充てる趣旨であれば、その旨を書面で合意しておくことが大切です。

2.弁済の提供と供託

債務者は、弁済の提供をした時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れます(民法492条)。相手方が受領を拒んだ場合には、法務局に供託することで債務を消滅させることができます(民法494条1項1号)。もっとも、金額に争いがある場面で一部の金額だけを提供・供託しても、債務の本旨に従った弁済と認められるかが問題となり得るため、弁護士と相談のうえで進めるべき方法です。

3.裁判所に期限の許与を求める

民法1047条5項は、裁判所が、受遺者又は受贈者の請求により、支払の全部又は一部について「相当の期限を許与することができる」と定めています。期限が許与されれば、その期限が到来するまでは履行遅滞とならず、許与された期限の翌日から遅延損害金が生じると解されています。遺産の大半が不動産で、すぐに現金を用意できない場合に検討される制度で、詳しくは遺留分侵害額請求をされて払えない場合の対処法(期限の許与・分割払い)で解説しています。

遅延損害金をめぐる交渉・和解の注意点

実務では、遺留分の紛争は判決まで進まず、交渉や調停で和解するケースが多くみられます。和解では、遅延損害金を厳密に計算して上乗せするのではなく、解決金の額の中で調整したり、早期に支払うことを条件に遅延損害金の全部又は一部を免除したりするなど、柔軟な解決が図られることがあります。

注意すべきなのは、遺留分侵害額(元本)の額だけを合意して、遅延損害金の扱いを決めずに終えてしまうことです。合意書に清算条項がないと、後になって遅延損害金を別途請求される余地が残るおそれがあります。合意書には、支払額・支払期限・支払方法とともに、清算条項を必ず入れるようにしましょう。和解の進め方全般は遺留分侵害額請求を交渉・和解で解決する方法もご参照ください。

なお、遅延損害金を受け取った場合や支払った場合の税務上の取扱いは、遺留分侵害額そのものとは異なる可能性があります。具体的な課税関係については、税理士又は税務署にご確認ください。当事務所の相続分野での取組みや対応範囲については、相続・遺産分割・遺留分の取扱分野ページでご紹介しています。

2019年6月30日以前に開始した相続の場合(新旧の適用関係)

改正後の遺留分侵害額請求の規定は、2019年7月1日以降に開始した相続(同日以降に亡くなった方の相続)に適用されます。それより前に開始した相続には、改正前の「遺留分減殺請求」の規定が適用されます。

改正前の制度では、減殺請求によって遺贈や贈与の効力が失われ、財産そのもの(不動産の共有持分など)が遺留分権利者に戻るのが原則で、受遺者等は価額を弁償して返還を免れることができる仕組みでした。そのため、遅延損害金が問題となる場面や起算点の考え方は、現行制度とは異なります。いずれの制度が適用されるかで主張の組み立てが変わるため、相続開始日をまず確認することが重要です。

よくある質問

Q. 遺留分侵害額請求の通知を出しただけで遅延損害金は発生しますか?

A. 遅延損害金は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求めた時(履行の請求を受けた時)から生じると解されています。遺留分侵害額請求の意思表示と支払の請求は同じ書面で行うことができるため、内容証明郵便で具体的な金額を示して支払を求めておくと、起算点が明確になります。

Q. 遅延損害金の利率は何%ですか?

A. 約定がない場合は法定利率により、現在は年3%です。法定利率は3年ごとに見直されますが、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間も年3%のまま据え置かれています。適用されるのは、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率です。

Q. 請求額に納得できない場合でも遅延損害金はかかり続けますか?

A. 金額に争いがあっても、最終的に支払義務が認められた金額については、履行の請求の翌日から遅延損害金が付く可能性があります。争いのない部分を先に支払う、弁済の提供や供託をする、裁判所に期限の許与を求めるといった方法で負担の増加を抑えることを検討します。

Q. 和解するときに遅延損害金はどう扱えばよいですか?

A. 和解では、遅延損害金を含めた解決金の額を定めたうえで、合意書に「本合意書に定めるほか何らの債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項を入れるのが一般的です。清算条項がないと、後から遅延損害金を別途請求される余地が残るおそれがあります。

まとめ

遺留分侵害額請求によって生じる金銭債務は期限の定めのない債務と解され、支払を請求された日の翌日から、年3%の法定利率による遅延損害金が生じるのが原則です。請求する側は、金額を示した支払請求を書面で行って起算点を明確にし、請求された側は、争いのない部分の支払や弁済の提供・供託、期限の許与の申立てによって負担の増加を抑えることを検討します。和解の際には清算条項を忘れずに入れることが大切です。

遅延損害金は、紛争が長引くほど金額が大きくなり、交渉の進め方そのものに影響します。弁護士に相談することで、遺留分侵害額の適正な算定とあわせて、遅延損害金を見据えた解決方針を早い段階で立てることができます。

遺留分侵害額請求の遅延損害金でお悩みの方へ

タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺産分割・遺留分の事案について、交渉から調停・訴訟まで一貫して対応しております。請求する側・請求された側のいずれについても、遺留分侵害額と遅延損害金を踏まえた解決方針のご提案をお手伝いします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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