1回だけの不倫でも慰謝料は払う?金額の目安と減額のポイント
1回だけの不倫でも慰謝料は払う?金額の目安と減額のポイント
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月27日 最終更新日:2026年10月27日
「飲み会の帰りに一度だけ関係を持ってしまった」「1回きりで、その後は会っていない」。それにもかかわらず、相手の配偶者から慰謝料を請求する内容証明やLINEが届き、「たった1回でも払わなければならないのか」と強い不安を感じている方は少なくありません。
この記事では、1回だけの不倫が法律上の不貞行為にあたるのか、回数が少ないことが慰謝料の金額にどう影響するのか、そして請求された側が減額を目指すときのポイントと避けるべき対応を、横浜の弁護士が請求された側の視点で解説します。
結論として、1回だけであっても、相手が既婚者と知りながら自由な意思で肉体関係を持った場合には、不貞行為として慰謝料の支払義務を負う可能性があります。もっとも、回数が1回にとどまることや、夫婦が離婚していないことなどは金額を判断する際に考慮される事情であり、請求額をそのまま受け入れる必要はありません。証拠の内容を確認したうえで、適切な金額での解決を目指すことが重要です。
1回だけの不倫でも不貞行為にあたるのか
不貞行為(不倫)の慰謝料は、民法709条・710条の不法行為に基づく損害賠償として請求されます。不倫をした配偶者とその相手方は、共同して他方の配偶者に精神的苦痛を与えたものとして、民法719条1項の共同不法行為者と扱われるのが一般的です。
「不貞な行為」の意味について、最高裁昭和48年11月15日判決(民集27巻10号1323頁)は、離婚原因に関する事案で、配偶者のある者が自由な意思にもとづいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう、と判示しています。この定義には回数や期間の要件は含まれていません。そのため、性的関係が1回であっても不貞行為にあたり得ると考えられています。どこからが不貞行為にあたるのかについては、不貞行為の定義とどこからが不貞にあたるのかを解説した記事もご参照ください。
ただし、慰謝料の支払義務を負うには、相手が既婚者であることを知っていた(故意)か、注意すれば知ることができた(過失)ことが必要です。また、最高裁平成8年3月26日判決(民集50巻4号993頁)は、関係を持った時点で夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には、原則として不法行為責任を負わないと判断しています。2026年6月には、最高裁第二小法廷が、婚姻関係の破綻を信じたことに相当な理由があれば過失は認められないとの判断を示し、審理を高裁に差し戻したと報じられています。
回数が少ないと慰謝料の金額はどう変わるか
不貞慰謝料の金額には法律上の定めがなく、裁判所は事案ごとの事情を総合して判断します。一般に、夫婦が離婚に至らなかった事案では数十万円から100万円程度、離婚に至った事案では100万円から300万円程度が目安としてよく挙げられますが、これはあくまで傾向であり、個別の事情によって上下します。
不貞行為の回数や期間は、金額を判断する際の重要な要素の一つです。裁判例でも、不貞関係が短期間・少数回にとどまったことを、慰謝料を低めに判断する事情として考慮したものが見られます。主な考慮要素を整理すると、次のとおりです。
| 考慮要素 | 金額が低めになりやすい方向 | 金額が高めになりやすい方向 |
|---|---|---|
| 回数・期間 | 1回・短期間で終わっている | 長期間・多数回にわたる |
| 夫婦関係への影響 | 離婚・別居に至っていない | 離婚・別居に至った |
| 婚姻期間・子ども | 婚姻期間が短い | 婚姻期間が長い、未成熟の子がいる |
| 交際の経緯 | 不倫をした配偶者側が主導した | 自ら積極的に関係を求めた |
| 発覚後の態度 | 関係を解消し、誠実に対応している | 関係を続ける、嘘を重ねる |
回数・期間が慰謝料額に与える影響や立証の方法については、不貞行為の期間・回数が慰謝料額に与える影響を解説した記事で詳しく説明しています。
「1回だけ」で慰謝料を請求されたときの減額のポイント
相手方が持っている証拠を確認する
まず、請求書面に書かれている事実関係と、相手方がどのような証拠を持っているかを確認します。LINEのやり取りやホテルの出入りの写真など、何をもって不貞行為を主張しているのかによって、反論できる点や交渉の方針が変わります。
回数・経緯・夫婦関係への影響を具体的に主張する
関係が1回にとどまり、その後は連絡を絶っていること、誘ったのが既婚者側であったこと、夫婦が離婚・別居に至っていないことなどは、具体的な事実として示すことで減額の根拠になり得ます。請求額が相場と比べて高すぎると感じる場合の考え方は、不貞慰謝料の減額が認められるケースと交渉のコツもあわせてご覧ください。
既婚者と知らなかった事情があれば整理する
マッチングアプリや夜のお店などで知り合い、独身と聞かされていた場合には、故意・過失が否定される可能性もあります。既婚者と知らなかった場合の対応については、夜職・パパ活の不倫慰謝料請求への対応(特設ページ)でもご案内しています。
求償権の扱いを含めて解決する
不倫をした配偶者と相手方は共同不法行為者であるため、相手方が慰謝料を支払った後、不倫をした配偶者に負担部分を求償できる場合があります。夫婦が離婚しない事案では、求償権を放棄する代わりに金額を下げるといった調整が行われることもあります。
やってはいけない対応
- 請求を無視・放置する:訴訟を起こされ、答弁書を出さずに欠席すると、相手方の主張を認めたものとみなされるおそれがあります(民事訴訟法159条3項・1項)。
- 事実と異なる説明をする:「1回だけ」と説明した後に複数回の関係を示す証拠が出てくると、信用を失い、かえって不利になるおそれがあります。
- 求められるまま念書や誓約書に署名する:金額や事実関係を確定させる書面にその場で署名すると、後から争うことが難しくなる場合があります。
なお、不貞慰謝料の請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。ただし、支払いを約束するなど債務を承認すると時効が更新されるため(民法152条1項)、安易に支払いを認める発言は避けましょう。
弁護士に相談するメリット
1回だけの関係なら自分で対応しようと考える方もいますが、示談書の内容が不十分だと、後から追加の請求を受けたり、職場や家族への口外をめぐって新たなトラブルになったりすることがあります。
弁護士に依頼すると、相手方との連絡窓口を弁護士に一本化でき、証拠の評価や裁判例の傾向を踏まえた金額で交渉を進めることができます。清算条項・口外禁止条項・求償権の扱いなどを盛り込んだ示談書を作成することで、紛争を確実に終わらせることにもつながります。当事務所の取扱内容は、不貞慰謝料請求の取扱分野ページでご案内しています。
よくある質問
1回だけなら慰謝料を払わなくてよいのですか?
回数が1回であっても、相手が既婚者と知りながら自由な意思で性的関係を持った場合には、不貞行為として慰謝料の支払義務を負う可能性があります。ただし、回数の少なさは金額を判断する際の事情として考慮されることがあります。
1回だけの不倫の慰謝料はいくらくらいですか?
慰謝料に法律上の定額はなく、婚姻期間、夫婦が離婚や別居に至ったか、子どもの有無、交際の経緯などを総合して判断されます。回数が1回で夫婦が離婚していない事案では、長期間の交際の事案と比べて低めに判断される傾向があるといわれますが、個別の事情によって大きく変わります。
相手の配偶者に「1回だけ」と説明すれば信じてもらえますか?
相手方がLINEや写真などの証拠をどこまで持っているかによります。事実と異なる説明をすると、後に証拠が出てきた場合に信用を失い、交渉や裁判で不利になるおそれがあります。説明の内容と範囲は、証拠を確認したうえで慎重に決めることが大切です。
1回だけの関係でも示談書は作るべきですか?
金額にかかわらず、支払う場合は示談書を作成し、清算条項などで紛争を終わらせる内容を明記しておくことが重要です。口約束のまま支払うと、後から追加の請求を受けるおそれがあります。
まとめ
- 1回だけの肉体関係でも、既婚者と知りながら関係を持った場合は不貞行為として慰謝料の支払義務を負う可能性がある
- 回数・期間の少なさ、夫婦が離婚していないこと、交際の経緯などは、金額を低めにする事情として考慮され得る
- 既婚者と知らなかった場合や、婚姻関係がすでに破綻していた場合は、責任そのものが否定される可能性もある
- 無視・虚偽の説明・安易な署名は避け、証拠を確認したうえで交渉する
- 支払う場合は、清算条項などを備えた示談書で解決を確定させる
「1回だけなのに高額を請求された」と感じたときこそ、早めに弁護士に相談し、事実関係と証拠に基づいた冷静な対応をとることが大切です。
1回だけの不倫で慰謝料を請求されお困りの方へ
タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、不貞慰謝料を請求する側・された側の双方について多数のご相談をお受けしています。請求額が妥当か、減額の余地があるかなど、届いた書面をお持ちのうえご相談ください。
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