タングラム法律事務所

障害者への合理的配慮の義務化|店舗・事業者の対応を弁護士が解説

障害者への合理的配慮の義務化|店舗・事業者の対応を弁護士が解説

障害者への合理的配慮の義務化|店舗・事業者の対応を弁護士が解説

障害者への合理的配慮の義務化|店舗・事業者の対応を弁護士が解説

障害者への合理的配慮の義務化|店舗・事業者の対応を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月27日 最終更新日:2026年10月27日

「車椅子のお客様から介助を頼まれたが、どこまで応じればよいのか」「メールでの対応を求められたが、マニュアルは電話受付だけ」。店舗や窓口を持つ中小企業では、こうした場面に戸惑うことが少なくありません。

障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日から、民間の事業者にも障害のある人への「合理的配慮の提供」が法的義務となりました。この記事では、対象となる事業者の範囲、合理的配慮の具体例、「過重な負担」として断れる場合の考え方、社内で準備すべきことを、横浜の弁護士が解説します。

結論として、障害のある人から社会的障壁の除去を求める意思の表明があった場合、事業者は、負担が過重でない範囲で必要かつ合理的な配慮をしなければなりません。この義務は規模や営利・非営利を問わず、個人経営の店舗にも及びます。対応できない場合でも一律に断るのではなく、本人と話し合って代わりの方法を検討し、理由を丁寧に説明することが求められます。

合理的配慮の義務化とは|2024年4月施行の障害者差別解消法改正

障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は2016年4月1日に施行され、事業者には当初から「不当な差別的取扱い」が禁止されていましたが、「合理的配慮の提供」は努力義務にとどまっていました。

2021年6月に公布された改正法(令和3年法律第56号)により、事業者の合理的配慮の提供は努力義務から法的義務へと改められ、2024年4月1日に施行されました。あわせて、政府の基本方針も2023年3月14日に改定(閣議決定)されています。

事業者の義務根拠条文内容
不当な差別的取扱いの禁止8条1項正当な理由なく、障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、条件を付けたりしてはならない
合理的配慮の提供(義務)8条2項意思の表明があり、負担が過重でないときは、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならない
環境の整備(努力義務)5条施設の構造の改善、設備の整備、職員への研修など、配慮を的確に行うための事前の環境整備に努める

対象となる「事業者」と「障害者」の範囲

個人経営の店舗やNPOも対象

法律上の「事業者」は「商業その他の事業を行う者」とされています(2条7号)。内閣府の解説では、営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種のサービス等を反復継続する意思をもって行う者とされ、個人事業主やボランティア団体も含まれます。一般の顧客と接するほとんどの事業が対象と考えてよいでしょう。

障害者手帳の有無は問わない

対象となる障害者は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害や高次脳機能障害を含みます)その他の心身の機能の障害がある人で、障害と社会的障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人です。障害者手帳の有無は要件ではなく、手帳の提示を一律に求める運用は避けるべきです。

従業員に対する配慮は、障害者差別解消法ではなく障害者雇用促進法によります(障害者差別解消法13条)。雇用面の義務は障害者雇用率2.7%への引上げと企業の義務を解説した記事もご参照ください。

合理的配慮の具体例と、義務違反になりうる対応

内閣府の資料では、合理的配慮の例として次のようなものが紹介されています。

  • 車椅子の利用者がそのまま着席できるよう、テーブルの椅子を片付けてスペースを確保する
  • 聴覚と視覚の両方に障害がある人に、太いペンで大きな文字を書いて筆談をする
  • 板書を書き写すことが難しい受講者に、ホワイトボードの撮影を認める

一方、基本方針は、次のような対応を合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例として挙げています。

  • 前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること
  • 「何かあったら困る」という抽象的な理由で、具体的な支援の可能性を検討せずに断ること
  • 電話利用が困難な人から電話以外の手段での手続を求められたのに、自社マニュアルが電話のみであることを理由に、メール等の代替措置を検討せずに断ること

また、漠然とした安全上の理由で施設の利用を拒否する、一律に介助者の同伴を利用条件とするといった対応は、不当な差別的取扱いに当たると考えられる例とされています。なお、身体障害者補助犬法により、ホテルやレストラン、デパートなど不特定多数が利用する民間施設は、原則として盲導犬などの補助犬を同伴した利用を拒否できません。

「過重な負担」として断れる場合と判断要素

合理的配慮は、実施に伴う負担が過重でない範囲で求められるものです。過重な負担に当たるかどうかは、次の要素を考慮して、具体的な場面や状況に応じて個別に判断されます。

判断要素考え方の例
事務・事業への影響の程度事業の目的・内容・機能を損なうか
実現可能性の程度物理的・技術的な制約、人的・体制上の制約
費用・負担の程度配慮に要する費用や手間
事務・事業の規模店舗や会社の規模
財政・財務状況事業者の経営状況

基本方針では、飲食店が事業として行っていない食事介助を断ることや、オンライン講座のみを提供する事業者が対面の個別指導の求めを断ることは、義務違反に該当しないと考えられる例とされています。ただし、混雑時に買物の付添いを求められた小売店の例のように、求められた方法には応じられなくても、別の方法(店員が商品を準備する等)を提案することが重要です。

断るときの説明と「建設的対話」の重要性

合理的配慮で最も重視されているのが、障害のある人と事業者との「建設的対話」です。申出どおりに応じられなくても、本人の困りごとを確認し、実現可能な代替案をともに検討することが求められます。内閣府は、建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあると注意を促しています。

やむを得ず対応を断る場合や制限する場合は、その理由を本人に丁寧に説明し、理解を得るよう努めることが望まれます。「前例がない」「特別扱いはできない」といった理由は、それだけでは断る理由になりません。

なお、合理的配慮の申出は法律に基づく正当な求めであり、それ自体をクレームやカスタマーハラスメントとして扱うのは適切ではありません。他方で、暴言や社会通念上相当な範囲を超える要求には別途の対応が必要です。両者を区別した社内ルールづくりは、カスハラ対策の義務化と企業がすべき措置の解説もあわせてご覧ください。

義務違反のリスクと社内で準備すべきこと

合理的配慮の不提供そのものに直接の罰則はありません。もっとも、事業を所管する主務大臣は、特に必要があると認めるときは、事業者に報告を求め、助言・指導・勧告をすることができ(12条)、報告をしない場合や虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象となります(26条)。また、対応がSNS等で拡散されれば信用の低下を招き、民事上の紛争に発展するおそれもあります。

中小企業・店舗が準備しておきたいのは次のような点です。

  • 申出を受けたときの社内の窓口・相談先と判断の流れを決めておく
  • 筆談ボード、メール・チャットでの受付など、すぐにできる代替手段を用意する
  • 電話のみ、本人のみといった手続マニュアルを見直し、例外対応の余地を設ける
  • 所管省庁の「対応指針」や内閣府の事例集を従業員研修に活用する
  • 申出の内容、検討した代替案、説明内容を記録に残す

判断に迷った場合は、事業者も利用できる内閣府の相談窓口「つなぐ窓口」があります。継続的に相談できる体制を整えたい場合は、顧問弁護士の費用相場とメリットの解説も参考にしてください。当事務所の企業法務のサポート内容は企業法務の取扱分野ページでご紹介しています。

よくある質問

個人経営の小さな店舗でも合理的配慮の義務はありますか?

あります。障害者差別解消法の「事業者」は、営利・非営利や個人・法人の別を問わず、同種のサービス等を反復継続して提供する者を広く含みます。ただし、事業の規模や財務状況は「過重な負担」の判断要素になるため、大企業と同じ水準の対応が一律に求められるわけではありません。

障害者手帳を持っていない人からの申出にも対応する必要がありますか?

必要があります。法の対象は障害者手帳の所持者に限られず、障害と社会的障壁により日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人が広く含まれます。手帳の提示を一律に求めることは適切ではありません。

合理的配慮をしなかった場合、罰則はありますか?

義務違反そのものに直接の罰則はありません。もっとも、主務大臣は事業者に報告を求め、助言・指導・勧告をすることができ、報告をしない場合や虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象となります。また、対応によっては信用の低下や民事上の紛争につながるおそれがあります。

まとめ

2024年4月1日から、合理的配慮の提供は規模を問わずすべての事業者の法的義務です。前例がない、マニュアルにないといった理由で一律に断るのではなく、過重な負担に当たるかを個別に検討し、応じられない場合も建設的対話を通じて代替案を探り、理由を丁寧に説明することが重要です。

具体的な申出への対応に迷われた場合は、早めに弁護士へ相談することでトラブルを防ぎやすくなります。横浜の当事務所でも、中小企業・店舗からのご相談をお受けしています。

合理的配慮への対応・社内マニュアルの見直しは弁護士にご相談ください

タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。障害のある顧客への対応方針や手続マニュアルの見直しもご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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