配偶者が不倫相手と同棲したら?慰謝料と悪意の遺棄を弁護士が解説
配偶者が不倫相手と同棲したら?慰謝料と悪意の遺棄を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月3日 最終更新日:2026年11月3日
夫や妻が突然家を出て、不倫相手と暮らし始めた。生活費も入らなくなった。こうした状況では、裏切られた苦しさに加えて、今後の生活や子どものことまで不安が押し寄せてくるものです。
この記事では、配偶者が不倫相手と同棲した場合に請求できる慰謝料、「悪意の遺棄」との関係、生活費(婚姻費用)、時効、同棲の証拠の集め方を、請求する側の視点で順に整理します。
結論として、配偶者と不倫相手の同棲が証拠で確認できれば、両者に不貞慰謝料を請求できる可能性があり、同棲によって夫婦関係が壊された事情は増額方向に考慮され得ます。もっとも、同棲を知ってからの時効や、同棲前に夫婦関係がすでに破綻していたという反論には注意が必要です。慰謝料とあわせて、生活費の確保と証拠の保全を早い段階で進めることが大切です。
不倫相手との同棲で慰謝料を請求できる相手と根拠
不貞行為は不法行為にあたり、民法709条・710条に基づく慰謝料請求の対象となります。請求の相手は次の二人です。
- 配偶者:夫婦の貞操義務に反したことへの責任を負います。
- 不倫相手:相手が既婚者であると知っていた、または注意すれば知ることができたのに関係を持った場合に責任を負います(最判昭和54年3月30日民集33巻2号303頁)。
同棲を始めた時点で夫婦が別居しているように見えても、別居の原因が同棲そのものであれば、通常は請求の妨げにならないと考えられます。別居が先行していた場合の考え方は別居中の不貞行為と慰謝料請求の記事で詳しく解説しています。
なお、不倫相手に請求できるのは原則として不貞行為そのものの慰謝料です。離婚に至ったこと自体の慰謝料(離婚慰謝料)を第三者である不倫相手に求めることは、夫婦を離婚させることを意図して不当な干渉をしたなどの特段の事情がない限り認められないとされています(最判平成31年2月19日民集73巻2号187頁)。
同棲は慰謝料の増額事由になる?金額の目安と裁判例
不貞慰謝料は、おおむね50万円から300万円程度が目安とされる傾向があり、離婚に至った場合には高めになる傾向があります。同棲は、婚姻生活そのものを壊した事情として増額方向に考慮される可能性があり、特に次のような事情が重なると悪質性が高いと評価されやすくなります。
- 配偶者が家を出たことで夫婦の同居生活が失われた
- 未成熟の子どもを残して出て行った
- 同棲開始後に生活費を入れなくなった
- 不倫相手との間に子をもうけた
裁判例を見ると、横浜地裁昭和61年12月25日判決は、不貞の二人が同棲し夫婦が離婚の危機にある事案で150万円を認めたとされています。また、東京高裁平成10年12月21日判決は、夫の職場の同僚が夫と同棲して子をもうけ、再婚した妻のように振る舞った事案で、200万円と弁護士費用20万円を認めたと紹介されています。いずれも請求額を大きく下回っており、同棲があれば当然に高額になるわけではありません。金額を左右する要素は不貞慰謝料の増額事由の記事もあわせてご覧ください。
同棲は「悪意の遺棄」にあたるか
夫婦には同居・協力・扶助の義務があります(民法752条)。「悪意の遺棄」とは、婚姻共同生活を廃絶しようとする意思で、この義務を正当な理由なく果たさないことをいうと説明されます。悪意の遺棄は、不貞行為と並ぶ法定離婚事由です。2026年4月1日施行の民法改正で離婚事由は整理されましたが、現行の民法770条1項でも、1号が不貞行為、2号が悪意の遺棄です。
不倫相手と暮らすために一方的に家を出て、収入があるのに生活費も渡さないという場合は、悪意の遺棄にあたる可能性があります。そうなれば、離婚原因として不貞行為と併せて主張でき、慰謝料の判断でも悪質性を示す事情になり得ます。
もっとも、生活費を送り続けている場合などは、悪意の遺棄とまではいえないと判断される可能性があります。
生活費はどうなる?婚姻費用の請求を先に進める
夫婦は別居中でも婚姻から生ずる費用を分担する義務があるため(民法760条)、収入の多い配偶者に婚姻費用を請求できます。話し合いが難しければ、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てる方法があります。
金額は基本的に双方の収入と子の人数・年齢で算定され、配偶者が不倫をしたからといって増額される扱いはとられていないと説明されています。逆に、不倫をして家を出た側が生活費を請求してきた場合は、子の養育費に相当する部分を除き、請求が制限されることがあります(東京高決昭和58年12月16日など)。慰謝料と並行して進める方法は不貞慰謝料と婚姻費用の関係の記事で解説しています。
同棲の証拠の集め方と注意点
配偶者が同棲を否定する場合に備えて、同居の実態と親密な関係の両方を示す証拠を集めます。
| 証拠の例 | わかること |
|---|---|
| 同じ住居への出入りを複数日にわたり撮影した写真・動画 | 継続して寝泊まりしていること |
| 探偵の調査報告書 | 出入りの日時、宿泊の状況 |
| LINE・SNSのやり取り、投稿 | 親密な関係、同棲の時期 |
| 住民票の写し | 住所の異動(異動していない場合もあります) |
住民票は、同一世帯でなくなった配偶者の分でも、自己の権利行使のために確認が必要など、正当な理由があれば交付を受けられる場合があります(住民基本台帳法12条の3)。もっとも、支援措置により制限されることもあります。
同棲先に無断で立ち入る、郵便物を開ける、配偶者のスマホに無断でログインするといった方法は、住居侵入や不正アクセス等の問題を招くおそれがあります。同棲先や職場に押しかけることも、逆請求の原因になりかねません。
不倫相手の名前や住所が分からず、連絡先がLINEしかないという場合は、LINEしか知らない相手の特定(弁護士会照会)を検討できる場合があります。
時効に注意:同棲が続いていても油断しない
不法行為の慰謝料請求権は、損害と加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。不倫相手への請求について、最判平成6年1月20日(集民171号1頁)は、同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の時効が進行すると判断しました。
つまり「同棲が続いている限り時効は始まらない」とは考えないほうが安全です。同棲を知ってから長期間が経過すると、古い期間の分は時効で消滅し、請求の範囲が直近の分に限られるおそれがあります。なお、配偶者に対する権利は、婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しません(民法159条)。
「夫婦関係はすでに破綻していた」という反論への備え
同棲の事案で想定される反論が、「同棲を始めた時には夫婦関係は破綻していた」というものです。不貞行為の時点で婚姻関係がすでに破綻していた場合、特段の事情がない限り不法行為責任を負わないとされています(最判平成8年3月26日民集50巻4号993頁)。
もっとも、会話が減っていたという程度で破綻が認められるとは限りません。家を出る直前まで家族で過ごしていたことがわかる写真やメッセージなどは、破綻していなかったことを示す資料になります。
また、同棲中の配偶者から離婚を求められることもあります。不貞をした有責配偶者からの離婚請求は原則として厳しく制限されますが、最高裁昭和62年9月2日大法廷判決は、長期の別居、未成熟子の不存在、相手方が苛酷な状態に置かれないことといった事情があれば例外的に認める余地を示しています。詳しくは不貞慰謝料請求の取扱いページもご参照ください。
よくある質問
配偶者が不倫相手と同棲していれば、それだけで不貞行為が認められますか?
同棲の事実は、肉体関係を強く推認させる事情になり得ますが、同居の実態が立証できなければなりません。単に同じ住所にいるというだけでなく、継続して寝泊まりしていること、二人の関係が親密であることを、複数の証拠で示すことが大切です。
同棲を知ってから何年も経つと、慰謝料は請求できなくなりますか?
不倫相手への請求は、同棲関係を知った時から、それまでの分の時効が進行すると解されています。同棲が続いていても一括して扱われるとは限らず、古い期間の分が時効で消滅するおそれがあるため、3年を意識して早めに動くことが重要です。
同棲している配偶者から離婚を求められたら、応じなければいけませんか?
協議や調停で合意しない限り、すぐに離婚が成立することはありません。不貞をした側からの離婚請求は、判例上、原則として厳しく制限されています。ただし別居が長期化すると事情が変わる場合もあるため、離婚の条件を含めて早めに検討することをおすすめします。
まとめ
配偶者が不倫相手と同棲している場合、配偶者と不倫相手の双方に慰謝料を請求できる可能性があり、家を出て生活費も渡さないといった事情は、増額や悪意の遺棄の主張につながり得ます。
優先したいのは、生活費の確保、証拠の保全、時効の確認の3点です。慰謝料、婚姻費用、離婚の条件は互いに関係するため、弁護士に相談して全体の順序を決めてから動くことをおすすめします。横浜のタングラム法律事務所でも、こうしたご相談に対応しています。
配偶者が不倫相手と同棲してお困りの方へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料の請求・交渉についてご相談をお受けしております。慰謝料と生活費、離婚の条件をどの順序で進めるべきか、状況に応じて整理いたします。
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