X(旧Twitter)での誹謗中傷への法的対処法——削除請求・開示請求・損害賠償を弁護士が解説
X(旧Twitter)での誹謗中傷への法的対処法——削除請求・開示請求・損害賠償を弁護士が解説
ある日突然、X(旧Twitter)で自分の名前や会社名を検索したところ、まったくの事実無根の投稿が拡散されていた——そんな経験をされた方は少なくありません。「無視していれば消えるだろう」と思いつつも、リツイートやいいねが積み重なっていく様子を見ているうちに、精神的な苦痛は日に日に増していきます。
Xは国内でも有数の大規模SNSであり、投稿の拡散速度は非常に速い一方、匿名性が高く、被害者にとっては投稿者の特定が難しいという特徴があります。しかし、適切な法的手続きを踏めば、投稿の削除と投稿者の特定、さらには損害賠償の請求まで実現できるケースは多くあります。
本記事では、X上の誹謗中傷被害に対して取り得る法的対処法を、順を追ってわかりやすくご説明します。
まず最初にやるべきこと——証拠の保全
誹謗中傷投稿を発見したら、削除を求める前に必ず証拠を保全してください。これは後の法的手続きにおいて非常に重要なステップです。
Xでは、投稿が削除されると発信者特定に必要なIPアドレスやタイムスタンプのログが最長でも90日程度しか保存されないとされています。投稿が削除された後にログが消えてしまえば、投稿者の特定は困難になります。削除請求と開示請求を同時進行させる場合はもちろん、削除を先行させる場合でも、事前にスクリーンショット等で証拠を残しておくことが不可欠です。
証拠保全の際は、以下の情報がすべて画面に収まるよう撮影してください。
- 投稿内容(本文全体)
- 投稿日時
- 投稿者のアカウント名・スクリーンネーム
- 投稿のURL(投稿を個別に開いたときのアドレスバー)
- リツイート数・いいね数など拡散状況がわかる情報
X(旧Twitter)での誹謗中傷に対する3つの法的手段
証拠が確保できたら、次の3つの法的手段を組み合わせて対処することが基本的な流れです。
①削除請求——問題の投稿をXから消す
誹謗中傷投稿を削除するには、主に2つの方法があります。
一つ目は、Xのプラットフォームに直接申告する方法です。2025年4月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)への対応として、X Corp.は同年7月に日本語による権利侵害申出の専用窓口(https://help.x.com/ja/forms/japan-report)を新設しました。この窓口では、名誉権・プライバシー権・肖像権・氏名権・著作権など、侵害された権利の種類を選択して日本語で申請できるようになっており、7日以内に対応の可否がメールで通知される仕組みです。
二つ目は、弁護士を通じた削除請求書面の送付です。弁護士がプロバイダ責任制限法(現・情プラ法)に基づく「送信防止措置依頼書」をXに送ることで、削除の法的根拠を明確にした上で請求することができます。Xが任意の削除に応じない場合は、裁判所に仮処分命令の申立てを行い、強制的に削除を実現することも可能です。
②発信者情報開示請求——匿名投稿者の正体を突き止める
Xは基本的に匿名での投稿が可能ですが、法的な手続きを経ることで投稿者の個人情報を取得できます。この手続きを「発信者情報開示請求」といいます。
従来は複数回の裁判手続きが必要でしたが、2022年の法改正により「発信者情報開示命令」制度が整備され、一つの裁判手続きで完結できるようになりました。大まかな流れは次のとおりです。
| ステップ | 手続き内容 | 相手方 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 発信者情報開示命令の申立て | X(投稿のIPアドレス・タイムスタンプ等の開示を求める) |
| 第2段階 | プロバイダへの開示請求 | インターネットプロバイダ(契約者の氏名・住所の開示を求める) |
Xは米国の法人であるため、日本の裁判所からの開示命令に応じるかどうかが問題となることもありますが、近年は日本の裁判手続きに応じるケースも増えています。また、情プラ法の施行により、大規模プラットフォーム事業者に対しては発信者情報の保存義務が強化されており、ログが消える前に迅速に手続きを進めることが重要です。
③損害賠償請求——投稿者に責任を取らせる
投稿者の特定ができたら、名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などを理由として、民事上の損害賠償請求が可能です。また、悪質なケースでは刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)も検討できます。
2022年7月には侮辱罪の法定刑が引き上げられ(拘留または科料から「1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」へ)、ネット上の侮辱行為に対する刑事的制裁が強化されました。
情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)がXへの対処を変えた
2025年4月1日に全面施行された情プラ法は、Xのような大規模SNS事業者を「大規模特定電気通信役務提供者」として指定し、権利侵害情報への迅速な対応を法的に義務付けました。主なポイントは以下のとおりです。
- 削除申出への迅速対応義務:申出を受けてから7日以内に削除の可否を判断し、申出者に通知することが義務付けられました。
- 日本語窓口の設置:X社は2025年7月に専用の日本語削除申出フォームを設置し、日本語対応スタッフを配置しました。
- 透明性の向上:大規模プラットフォームは年1回、違法情報への対応状況を公表する義務を負うため、事業者ごとの対応実態が比較可能になっています。
この法律の施行により、以前は英語での申請が必要だったXへの削除申出が日本語で行えるようになり、被害者が自力で対応しやすい環境が整いつつあります。ただし、申出が認められない場合や、投稿者の特定・損害賠償まで求める場合は、弁護士による専門的なサポートが不可欠です。
弁護士に依頼した場合の費用の目安
弁護士費用はケースによって異なりますが、一般的な目安を示します。
| 手続き | 費用の目安(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 削除請求(書面送付) | 5万〜15万円程度 | 仮処分申立てが必要な場合は別途費用が発生 |
| 発信者情報開示請求 | 20万〜50万円程度 | 裁判所への申立費用・実費を含む目安 |
| 損害賠償請求(示談交渉) | 着手金10万〜20万円+成功報酬 | 回収額の15〜25%程度が成功報酬の相場 |
| 刑事告訴 | 10万〜30万円程度 | 民事手続と並行して行うことが多い |
費用は法律事務所によって大きく異なります。初回相談を無料で受け付けている事務所も多いので、まずは相談してみることをお勧めします。
自分で対処する場合の注意点
情プラ法の施行によって、削除申出については自力で対応しやすくなりました。しかし、次のような点には注意が必要です。
まず、削除と開示請求を同時に進める場合、手順の誤りが証拠消滅につながる可能性があります。投稿が削除された後に「やはり投稿者を特定したい」と考えても、ログが失われていれば手遅れになることがあります。
また、情プラ法の削除申出が却下された場合に次の手を打てるのかどうか、仮処分申立てや開示請求の手続きは法律の専門知識を要するため、個人が単独で対応するのは容易ではありません。費用対効果を考えると、当初から弁護士に相談して戦略を立てた上で動くほうが、結果として早期解決につながることが多いです。
まとめ——X上の誹謗中傷は放置せず、早期に専門家へ
X(旧Twitter)上の誹謗中傷被害への対処は、「証拠保全→削除請求→発信者情報開示→損害賠償請求」という流れが基本です。2025年4月の情プラ法施行により、日本語での削除申出窓口が設けられるなど、被害者が動きやすい環境は整ってきています。
しかし、投稿者の特定や損害賠償の実現には法律的な専門知識と経験が求められます。また、ログの保存期間には限りがあるため、被害に気づいたら早期に行動することが重要です。「自分の被害が法的対処の対象になるのだろうか」という段階から、まずは弁護士に相談してみてください。
X(旧Twitter)の誹謗中傷にお困りの方へ
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。X(旧Twitter)上の誹謗中傷被害は、早期対応が投稿者特定の鍵となります。「まだ被害が軽い段階でも相談できる?」という方も、ぜひお気軽にご連絡ください。
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