不貞慰謝料請求の証拠収集でやってはいけないこと|違法な方法のリスクを横浜の弁護士が解説
不貞慰謝料請求の証拠収集でやってはいけないこと|違法な方法のリスクを横浜の弁護士が解説
配偶者の不貞行為を疑い、慰謝料請求を検討しているとき、最初に頭に浮かぶのは「証拠を集めなければ」という焦りではないでしょうか。スマートフォンをこっそり確認する、GPSを仕掛けて行動を追跡する、会話を盗み聞きする——こうした行為は直感的には「自分の身を守るための正当な行動」に思えるかもしれません。
しかし、証拠収集の方法を誤ると、請求する側であるはずのあなた自身が刑事責任を問われたり、逆に損害賠償を請求される事態に陥る危険があります。さらに、違法な手段で集めた証拠は裁判で使えなくなる可能性もあります。本記事では、不貞慰謝料請求のための証拠収集において「やってはいけないこと」を具体的に解説し、合法的に証拠を集めるための方法についてもご紹介します。
① GPS機器・紛失防止タグを使った無断追跡
配偶者の車やバッグにGPS発信機を仕掛けて行動を追跡する方法は、かつては「グレーゾーン」として扱われることもありました。しかし現在では、法律上明確に問題となる行為として位置づけられています。
2024年(令和6年)3月22日の旭川地裁判決は、探偵業者が依頼者の配偶者の車にGPS機器を無断で取り付けて位置情報を取得した行為について、プライバシーの侵害に当たると認定しました。この判決は、「自己の位置情報や移動履歴は、他者にみだりに開示されたくない個人情報」であり、配偶者の依頼があるからといって本人の承諾なしにGPS追跡を行うことは許されないと明示しています。「目的が正当であっても手段が相当性を欠く場合は違法」という判断は、個人が自ら行う追跡行為にも当然に及びます。
さらに、2025年12月10日に成立した改正ストーカー規制法(2025年12月30日から一部施行)では、相手の承諾なくGPS機器や紛失防止タグ(AirTagなど)を取り付ける行為が規制対象に加えられました。これにより、AirTagなどを配偶者の所持品に無断で仕掛ける行為は、ストーカー規制法違反として警告・禁止命令の対象となるほか、刑事処罰のリスクも生じます。
② 盗聴・盗撮による証拠収集
ボイスレコーダーや小型カメラを自宅や配偶者の車内にひそかに仕掛けて会話を録音・録画する行為も、慰謝料請求の証拠収集として試みられることがあります。この点については、日本の現行法上、盗聴行為を直接禁止する包括的な民間盗聴禁止法は存在しないため、一概に「犯罪」とは言い切れない部分もあります。
しかし、注意が必要なのは取り付けの方法と場所です。たとえば、相手の所有物(スマートフォン、バッグ、会社の机など)に無断で録音機器を設置した場合、器物損壊罪や住居侵入罪(会社への不法侵入など)に問われる可能性があります。また、プライバシーの侵害として民事上の損害賠償請求を受けるリスクも否定できません。
さらに重要なのは証拠能力の問題です。民事訴訟において、著しく反社会的な手段を用いて人格権を侵害する方法で収集された証拠は、証拠能力を否定される場合があると解されています(東京地裁平成18年6月30日判決など参照)。決定的な録音内容であっても、収集方法が問題視されることで証拠として使えなくなる事態も想定されます。
③ 配偶者のスマートフォン・SNSへの無断アクセス
配偶者のスマートフォンを勝手に操作してLINEのトーク履歴やメールを確認する、パスワードを無断で入力してSNSアカウントにログインするといった行為も、証拠収集として行われることがあります。しかし、これらの行為は不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)違反に当たる可能性があります。
不正アクセス禁止法は、正当な権限なく他人のIDやパスワードを使ってコンピューターや情報システムにアクセスする行為を禁止しており、違反した場合には3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。「配偶者だから見てもよい」という考え方は法律上通用しません。同法は夫婦間にも適用されると解されており、逮捕事例も実際に存在します。
また、相手のスマートフォンにインストールしたスパイウェアやキーロガーなどのソフトウェアを使って通信内容を傍受する行為は、不正指令電磁的記録供用罪(刑法168条の2・168条の3)にも問われうる深刻な違法行為です。
④ 尾行・張り込みによる過剰な監視
自ら配偶者の後をつけて行動を把握しようとする尾行や張り込みは、行為の態様によってストーカー規制法の「つきまとい等」に該当する可能性があります。特に、恨みや感情的な背景が絡む場合や、相手に認識させる形での監視は、同法2条の規制対象行為とみなされるリスクがあります。
また、相手の職場や住居の周辺に長時間とどまる行為は、軽犯罪法違反(法1条28号:みだりにうろつく行為)に問われる可能性もあります。さらに、相手に撮影を気づかれたり、相手が警察に被害届を提出したりすれば、立場が逆転してしまうリスクもあります。
⑤ 違法収集証拠の証拠能力——「使えない証拠」になるリスク
違法な方法で収集した証拠が、仮に刑事事件にならなかったとしても、民事訴訟で問題になる場合があります。日本の民事訴訟法は刑事訴訟法とは異なり、証拠能力について明文の規定を置いていません。そのため、違法に収集された証拠であっても、原則として証拠として採用されることがあります。
しかし、「著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的・肉体的自由を拘束するなど人格権の侵害を伴う方法によって収集された証拠」は証拠能力が否定される場合があるとされています。GPSや盗聴・スパイウェアによって収集した証拠がこれに当たると判断されれば、苦労して集めた証拠が裁判で使えないという最悪の結果になりかねません。
加えて、違法な証拠収集が相手方に知れた場合、示談交渉において相手の感情的反発を招き、合意が難しくなるという実務上の問題も生じます。
合法的に不貞の証拠を集める方法
では、どのような方法であれば合法的に証拠を収集できるのでしょうか。以下に代表的な方法を整理します。
| 証拠の種類 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 配偶者本人との会話録音 | 不貞を認める発言・謝罪の言葉など | 自分が会話の当事者であれば録音可。第三者に秘密で録音する場合は違法の可能性。 |
| メッセージ・SNSの画像保存 | 配偶者が受信・送信したLINEや写メを自然に見た状態で撮影 | 本人が自発的に見せた・放置していた場合は問題ない傾向。ロックを解除して覗き見るのはNG。 |
| クレジットカード明細・銀行通帳 | ホテル代・飲食費など不審な支出の痕跡 | 共有口座・共有カードであれば確認可能。 |
| 探偵(興信所)への依頼 | 尾行・張り込みによる不貞現場の写真・動画・報告書 | 探偵業法に基づく適法な調査であれば証拠能力が認められやすい。GPS使用の是非は事前に確認を。 |
| 宿泊施設・駐車場の利用記録 | 同じ日に同一施設を利用した痕跡 | 入手方法に注意。弁護士照会(弁護士法23条の2)を通じた取得が安全。 |
最も安全かつ確実な方法は、弁護士に相談のうえ、証拠収集の方針を決めることです。横浜をはじめ各地の弁護士は、依頼者の状況を踏まえた上で、合法的かつ証拠能力のある形で証拠を集めるためのアドバイスを提供できます。また、探偵への依頼を検討する場合も、弁護士を通じて適切な調査会社を紹介してもらうことで、不適切な調査方法によるリスクを避けることができます。
不貞慰謝料請求を成功させるために——まとめ
不貞慰謝料請求において証拠は非常に重要な要素ですが、それ以上に「どのように証拠を集めたか」という方法の適法性が問われます。GPS追跡・盗聴・スマホへの不正アクセスといった違法な手段は、自分自身が刑事・民事の責任を問われるリスクをもたらすだけでなく、収集した証拠自体が使えなくなる事態につながりかねません。
気持ちが焦る状況だからこそ、冷静に法律の枠内で行動することが大切です。不貞の発覚後、いきなり証拠収集に動くのではなく、まずは弁護士に相談し、証拠収集の方針・方法・優先順位について専門的なアドバイスを受けることを強くお勧めします。適切なサポートを得ることで、慰謝料請求の見通しも格段に立てやすくなります。
証拠収集の方法から慰謝料請求まで、弁護士にご相談ください
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。「証拠をどう集めればよいかわからない」「すでに証拠があるが請求の進め方が不安」という方も、まずはお気軽にご相談ください。横浜の弁護士が、適法かつ効果的な対応策をご提案いたします。
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