取引基本契約に「反社会的勢力排除条項」を必ず入れるべき理由|中小企業向けに横浜の弁護士が解説
取引基本契約に「反社会的勢力排除条項」を必ず入れるべき理由|中小企業向けに横浜の弁護士が解説
「うちの会社には関係ない」——反社会的勢力(以下「反社」といいます)について、多くの中小企業の経営者はそう感じているかもしれません。しかし、反社会的勢力は外見からは判別しにくく、フロント企業やダミー会社を通じて一般の事業者へ近づいてくるケースも少なくないとされています。気づかないまま取引を続けてしまえば、風評被害や取引先からの契約解除、さらには行政からの指導といった深刻なリスクを招くおそれがあります。
こうしたリスクを事前に遮断するための有効な手段が、取引基本契約書への「反社会的勢力排除条項(暴排条項・反社条項)」の盛り込みです。本記事では、反社条項を契約書に入れるべき理由、条項の内容と書き方のポイント、中小企業が実務で取るべき対応について、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。
反社会的勢力排除条項(反社条項・暴排条項)とは
反社会的勢力排除条項とは、契約の当事者双方が反社会的勢力に該当しないこと・関与していないことを相互に表明・保証し、違反した場合には契約を解除できる旨を定める条項です。「暴排条項」「反社条項」とも呼ばれます。
ここでいう「反社会的勢力」とは、2007年に政府(犯罪対策閣僚会議幹事会)が策定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」において、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」と定義されています。具体的には次のような存在が含まれるとされています。
- 暴力団・暴力団員・暴力団準構成員
- 暴力団関係企業(フロント企業)
- 総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団
- 半グレ集団など、暴力団と密接な関係を有する者
反社の実態は社会情勢の変化に伴って変容しており、外見からは通常の企業と見分けがつかないケースも増えています。そのため、表面的な確認だけでは不十分であり、契約書上での対策が重要となっています。
全都道府県で施行されている「暴力団排除条例」と事業者の義務
反社会的勢力の排除は、もはや大企業だけの問題ではありません。2011年10月までに全47都道府県で暴力団排除条例(暴排条例)が施行されました。これらの条例は、事業者に対して以下を努力義務として定めています。
- 契約締結前に相手方が暴力団員等でないことを確認する努力義務
- 契約書等に暴力団排除条項(反社条項)を盛り込む努力義務
- 暴力団員等への利益供与の禁止
たとえば東京都暴力団排除条例では、事業者が暴力団員等と知りながら取引を継続することを禁止しており、違反した場合には勧告・公表といった行政上の措置が予定されています。神奈川県を含む各都道府県も同様の条例を設けており、横浜で事業を営む企業も当然その対象となります。
反社条項がない場合に生じる具体的なリスク
取引基本契約書に反社条項が入っていない場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。
① 取引先から契約解除を求められるリスク
多くの企業が取引基本契約書に反社条項を設けており、相手方が反社と取引しているとみなされた場合には、自社との契約を即時解除できるとしているのが一般的です。自社の取引基本契約書に反社条項がなくても、取引先の契約書上の条項が問題になることがあります。
② 反社との取引を解除できないリスク
取引後に相手方が反社であることが発覚したとき、契約書に解除条項がなければ、法律上の解除原因(民法第541条以下の債務不履行解除など)を立証するまで契約を解除できない可能性があります。反社条項があれば、相手方による表明保証違反を理由として無催告で即時解除できる旨を定めることが可能です。
③ 損害賠償請求を受けるリスク
反社との取引に巻き込まれた結果として第三者に損害が生じた場合、当該取引に参加した事業者としての責任を問われる可能性があります。反社条項を設け、適切な反社チェックを実施していたことは、善意・無過失の立証において重要な事情となりえます。
④ レピュテーション(風評)リスク
反社会的勢力との関係が報道・SNS等で拡散された場合、取引先・顧客・金融機関が一斉に離れ、事業継続が困難になるケースも想定されます。事後的な対応は困難であるため、予防的な対策が不可欠です。
反社条項に盛り込むべき内容と条項例
反社条項は通常、次の3つのブロックで構成されます。
① 表明保証(相互確約)
契約当事者の双方が、現在及び将来にわたって反社会的勢力ではないこと、また反社会的勢力に資金提供・利便供与等を行っていないことを相互に表明し保証します。
② 禁止事項
自己または第三者を利用した暴力的要求行為、脅迫的言動、業務妨害等の禁止を定めます。
③ 即時解除権と損害賠償
相手方が表明保証に違反した場合(または違反したと相当の理由をもって判断される場合)に、通知のみで契約を解除できる旨と、解除によって生じた損害の賠償義務を定めます。
以下は一般的な反社条項の構成を示した表です(あくまで参考例であり、個別の契約内容・取引実態に応じた修正が必要です)。
| 条項の構成 | 内容の概要 |
|---|---|
| 表明保証(第1項) | 当事者が反社会的勢力でないこと、また関係者に反社会的勢力が含まれないことを相互に確約する。 |
| 禁止行為(第2項) | 暴力的要求、脅迫的言動、信用毀損行為、業務妨害、第三者を利用した同行為を禁止する。 |
| 解除権(第3項) | 相手方が前各項に違反した場合、催告なしに本契約および個別契約を解除できる旨を定める。 |
| 損害賠償(第4項) | 前項による解除により損害が生じた場合、違反当事者はその損害を賠償する義務を負う。 |
反社条項を設けるだけでは不十分——「反社チェック」との組み合わせが重要
反社条項は「歯止め」として機能しますが、それだけで万全ではありません。契約書に条項を設けると同時に、契約締結前の「反社チェック」(相手方が反社会的勢力でないかを確認するプロセス)を実施することが実務上は不可欠です。
反社チェックの主な手法としては、次のようなものが挙げられます。
- インターネット検索(社名・代表者名・役員名で検索し、暴力団関係の報道等がないか確認)
- 登記簿謄本・決算公告の確認(会社の実態把握)
- 専門の反社チェックサービスの活用
- 業界団体・金融機関が提供するデータベースの照会
- 弁護士への相談・調査依頼
チェックの記録は必ず保管しておくことも大切です。万一、後日問題が発覚した際に「相当の注意を払って確認していた」という事実を示す証拠となります。また、継続的な取引関係においては、契約締結時だけでなく定期的なモニタリングを行うことも推奨されています。
既存の契約書に反社条項がない場合の対応
すでに締結済みの取引基本契約書に反社条項が含まれていない場合、どのように対応すればよいでしょうか。
最も確実な方法は、取引先と「変更契約書(覚書)」を締結して反社条項を追加することです。国税庁の文書回答例でも「反社会的勢力排除条項を追加する変更契約書」の取り扱いが示されており、変更覚書として締結すること自体は実務上広く行われています。
取引先への打診に際しては、「暴力団排除条例への対応として業界全体で進めている」という趣旨を説明すれば、通常は理解を得やすいでしょう。合理的な取引先であれば拒否する理由がない性質の条項であるため、もし取引先が反社条項の追加に強く抵抗するような場合は、むしろその姿勢自体が取引上の注意信号として捉えるべき場合もあります。
横浜・神奈川エリアで事業を展開される中小企業の皆さまにとっても、こうした既存契約の見直しは今すぐ取り組むべき優先度の高い課題といえるでしょう。弁護士に依頼することで、既存の取引基本契約書を精査し、追加すべき条項の適切な文言を検討することができます。
反社条項に関してよくある疑問
Q. 反社条項は義務ですか?
各都道府県の暴力団排除条例では「努力義務」とされているケースが多く、法律上の強制義務ではありません。ただし、条項を設けていないことで取引先・金融機関・行政機関からの信頼が低下するリスクがあるため、実務上は「設けるのが当然」という認識が定着しています。
Q. 反社かどうか確認せずに締結してしまいました。どうすれば?
契約書に反社条項が入っていれば、その後に相手方が反社会的勢力と判明した時点で表明保証違反を理由とした解除を主張する余地があります。ただし、条項の文言や取引の経緯によって法律上の対応は異なりますので、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
Q. フランチャイズ契約や業務委託契約にも反社条項は必要ですか?
はい。継続的な取引関係が生じるあらゆる契約(売買基本契約、業務委託契約、フランチャイズ契約、賃貸借契約など)に盛り込むことが推奨されます。特に、長期にわたる継続取引では相手方の経営実態が変化する可能性もあるため、反社条項に加えて定期的な反社チェックを組み合わせることが重要です。
取引基本契約書の反社条項・暴排条項の見直しはタングラム法律事務所へ
タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。取引基本契約書への反社条項の追加・既存契約の見直し・反社チェック体制の整備についても、横浜・神奈川エリアを中心に丁寧にご対応いたします。
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