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ネット誹謗中傷で謝罪広告・名誉回復処分を請求する方法|民法723条の要件と実務を弁護士が解説

ネット誹謗中傷で謝罪広告・名誉回復処分を請求する方法|民法723条の要件と実務を弁護士が解説

ネット誹謗中傷で謝罪広告・名誉回復処分を請求する方法|民法723条の要件と実務を弁護士が解説

ネット誹謗中傷で謝罪広告・名誉回復処分を請求する方法|民法723条の要件と実務を弁護士が解説

「お金より謝罪してほしい」「嘘だと公に認めてほしい」——ネット上で誹謗中傷の被害を受けた方から、このようなお声をよく耳にします。確かに、一時的な感情としては損害賠償(慰謝料)より謝罪の方が重要に感じられることもあるでしょう。そして実は、日本の法律にはその気持ちに応える仕組みが用意されています。

民法第723条に基づく「名誉回復処分」(謝罪広告・訂正記事の掲載など)は、損害賠償とは別に、加害者に誤りを認めさせ社会的評価を取り戻すための制度です。本記事では、この制度の仕組みと、ネット誹謗中傷の実務での活用方法について弁護士がわかりやすく解説します。

民法723条とは——なぜ「謝罪広告」という制度があるのか

名誉毀損の被害は、金銭だけでは補えない側面があります。たとえば、「Aさんは横領をした」という事実無根の情報がSNS上に広まった場合を考えてみましょう。裁判で損害賠償(慰謝料)を勝ち取っても、それを見た人々の中には「Aさんは横領した人間だ」という印象がそのまま残り続けます。社会的評価の低下という被害は、金銭の授受だけでは回復しないのです。

そこで民法723条は、以下のように規定しています。

民法第723条(名誉毀損における原状回復)
「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」

つまり裁判所は、損害賠償(慰謝料)に「加えて」、あるいは場合によっては「代えて」、名誉を回復するために適当な処分を命じることができます。この処分が、謝罪広告・謝罪文の交付・訂正記事の掲載といったものです。

最高裁昭和45年12月18日判決は、この制度の趣旨について「加害者に制裁を加えたり、加害者に謝罪等をさせることにより被害者に主観的な満足を与えるためではなく、金銭による損害賠償のみでは填補され得ない、毀損された被害者の人格的価値に対する社会的・客観的な評価自体を回復することを可能にするため」と述べています。つまり、あくまで「社会的評価の客観的な回復」が目的であって、加害者への制裁や被害者の溜飲を下げることが目的ではない点に注意が必要です。

名誉回復処分の3種類と認められやすさの比較

名誉回復処分には主に3つの種類があり、裁判所に認めてもらえる難易度はそれぞれ異なります。

処分の種類 内容 裁判所が認める難易度
訂正記事の掲載 虚偽の内容を訂正する記事を掲載させる 低い(認められやすい)
謝罪文の交付 謝罪の意を表明した文書を被害者に渡させる 中程度
謝罪広告の掲載 謝罪文を社会に向けて公表させる 高い(認められにくい)

(1)訂正記事の掲載——最も現実的な名誉回復手段

虚偽の情報が掲載された場合に、「当該事実は事実ではありませんでした」という訂正記事をウェブサイトやSNS上に掲載するよう命じてもらう処分です。単に事実の誤りを訂正するという客観的な行為であり、加害者の良心の自由を過度に侵害しないため、3つの中で最も認められやすいとされています。ネット誹謗中傷では、まずこの訂正記事の掲載を目指すことが現実的な戦略となります。

(2)謝罪文の交付——被害者への直接的な謝罪

訂正に加えて「誤った内容を掲載してしまい、大変申し訳ございません」とう謝罪の意を表明した文書を被害者に対して交付するよう命じてもらう処分です。訂正記事よりはハードルが上がります。東京地方裁判所平成25年1月15日判決(判タ1419号99頁)では、謝罪広告(社会への公表)の掲載は認めないとしながらも、被害者への謝罪文の交付は認めたという裁判例があります。

(3)謝罪広告の掲載——社会への公表という最終手段

謝罪文を社会に向けて広く公表する処分です。かつては新聞紙面への謝罪広告掲載が典型例でしたが、現代のインターネット誹謗中傷では、加害者のウェブサイトやSNSアカウントへの掲載が問題となります。強制的に内心からの謝罪を公表させることは良心の自由(憲法19条)との緊張関係もあり、最もハードルが高い処分です。裁判所は、名誉毀損の程度が著しく、他の方法では名誉回復が困難な事情がある場合にのみ、この処分を命じる傾向にあります。

ポイント:最高裁大法廷判決(昭和31年7月4日・謝罪広告事件)は、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度の謝罪広告については、代替執行(第三者が代わりに掲載して費用を加害者に負担させる手続き)が可能であり、良心の自由を侵害しないと判示しています。ただし、内心からの謝罪感情の発露まで強制するような内容では強制執行がなじまない場合があります。

謝罪広告・名誉回復処分が認められるための要件

民法723条の名誉回復処分を裁判所に認めてもらうためには、以下の要件を満たす必要があります。

要件1:名誉毀損の不法行為が成立すること

名誉毀損が成立するためには、①公然と(不特定多数人に認識される形で)、②事実を摘示して(または意見論評によって)、③他人の社会的評価を低下させることが必要です。ネット上のSNS投稿や掲示板への書き込みは、公然性の要件を一般的に満たします。ただし、表現内容が単なる意見・感想の表明にとどまる場合や、公益目的で真実の事実を摘示した場合は、違法性が阻却されることがあります。

要件2:名誉回復に「適当な処分」であること

裁判所が命じることができるのは、あくまで「名誉を回復するために適当な」処分に限られます。令和3年12月24日の知的財産高等裁判所判決(令和3年(ネ)第10008号)では、大手出版社による週刊誌記事が名誉毀損と認められたものの、謝罪広告の掲載は必要でないと判断されました。その理由として「被害者が著名人として各種メディアを通じて自ら名誉回復を図ることができる」という点が挙げられました。同判決はまた、民法723条の趣旨は「加害者への制裁や被害者への主観的満足」ではなく「社会的・客観的評価の回復」にあることを明確にしています。

一般の市民や個人事業主・中小企業が被害者の場合、著名人とは異なり自力での名誉回復手段が限られているため、裁判所が謝罪広告の必要性を認める余地が比較的あると考えられます。

要件3:強制執行が可能な形式であること

謝罪広告を命じる判決が確定しても、加害者が任意に履行しない場合には強制執行が必要です。代替執行(裁判所の許可を得て第三者が謝罪広告を掲載し、費用を加害者に請求する手続き)または間接強制(履行しない場合に一定金額の支払いを命じる手続き)を活用します。実際に強制執行が可能な内容・形式になっているかどうかも、請求内容を設計する際の重要なポイントです。

ネット誹謗中傷における実務——情プラ法との関係

投稿削除と名誉回復処分の組み合わせ

ネット誹謗中傷では、まず第一に名誉毀損投稿の削除を優先させます。2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)により、大規模なSNS事業者やプラットフォーム事業者はより迅速な削除対応(申請から7日以内の判断等)が義務付けられています。投稿の削除によってこれ以上の被害拡大を防いだうえで、既に生じた社会的評価の低下に対しては名誉回復処分を求めるという組み合わせが現実的です。

発信者情報開示と名誉回復処分の流れ

匿名の投稿者に対して名誉回復処分を求めるには、まず投稿者の特定が必要です。情プラ法やプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求によって投稿者を特定した後、特定された加害者を相手取って損害賠償請求と名誉回復処分の請求を行うという流れになります。なお、ログの保存期間には限りがある(プロバイダによっては数週間〜数か月)ため、被害に気づいたら速やかに弁護士に相談することが不可欠です。

示談交渉での活用

実際には、訴訟を経ずに示談交渉の中で謝罪文の交付や訂正記事の掲載を求めるケースも多くあります。投稿者が特定された後、弁護士から内容証明郵便で損害賠償請求と謝罪・訂正を求め、任意の応じを促すというアプローチは、費用・時間の面でも合理的です。任意に謝罪と訂正に応じてもらえれば、訴訟費用をかけずに名誉回復を実現できます。示談書には、謝罪文の具体的な内容・掲載方法・掲載期間のほか、口外禁止条項や再投稿禁止条項を設けることも重要です。

SNS・掲示板での謝罪広告の現実的な限界

仮に裁判所が謝罪広告の掲載を命じる判決を下したとしても、加害者がすでにSNSアカウントを削除していたり、匿名掲示板上への掲載が技術的に不可能だったりすることもあります。また、謝罪広告を掲載させること自体よりも、損害賠償請求による経済的制裁と投稿の完全削除の方が実効的な解決策になるケースも少なくありません。弁護士と相談して費用対効果の高い戦略を立てることが重要です。

損害賠償と名誉回復処分の組み合わせ方

民法723条は「損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに」名誉回復処分を命じることができると規定しています。実務では、損害賠償請求と名誉回復処分の請求を同時に行うことが一般的です。裁判所は事案の内容に応じて、以下のいずれかを命じます。

  • 損害賠償(慰謝料・弁護士費用)のみを認める
  • 損害賠償+訂正記事の掲載を命じる
  • 損害賠償+謝罪文の交付を命じる
  • 損害賠償+謝罪広告の掲載を命じる(比較的まれ)

より多くの処分を求めるほど訴訟が長期化し、費用もかさむことがあります。どの処分まで求めるかは、被害の深刻さ・投稿の拡散状況・加害者の経済状況・証拠の強さなどを総合的に考慮して弁護士とともに戦略的に決定することが重要です。

弁護士に依頼するメリット

名誉回復処分の請求は、以下の理由から弁護士に依頼することを強くお勧めします。

(1)名誉毀損の成否と戦略の見極め

すべての誹謗中傷が法律上の名誉毀損に当たるわけではありません。たとえば、公益目的で事実を摘示した場合は違法性が阻却される場合があります(真実性・相当性の抗弁)。また、意見・論評の表明として保護される表現もあります。弁護士は投稿内容を法的に分析し、名誉毀損の成否と、どの処分(削除・損害賠償・訂正・謝罪広告)まで請求できるかを正確に判断したうえで、最も効果的な戦略を立てます。

(2)証拠保全の迅速な実施

ネット上の投稿は削除される前に証拠として保全する必要があります。弁護士への相談後、速やかにスクリーンショット・URL・投稿日時の記録を行いましょう。公証役場での確定日付取得も有効な証拠保全手段です。ログ保存期間のタイムリミットを意識した迅速な対応が不可欠です。

(3)発信者情報開示から名誉回復処分まで一貫した対応

匿名投稿者への対応では、発信者情報開示請求(情プラ法・プロバイダ責任制限法)→投稿者特定→損害賠償・名誉回復処分請求という一連のプロセスを効率的に進める必要があります。弁護士は各手続きを並行して進め、法定のタイムリミット(ログ保存期間など)を意識しながら最適なスケジュールを組み立てます。

(4)示談交渉での活用

多くのケースでは、訴訟より示談交渉の方が早期解決につながります。弁護士は加害者側との交渉において、謝罪文の書式・掲載方法・掲載期間・再発防止条項(口外禁止特約を含む)などを適切に設計し、実効性のある合意を実現します。また、示談が成立しない場合には訴訟に移行するための準備も同時に進められます。

まとめ

ネット誹謗中傷の被害を受けた場合、損害賠償(慰謝料)請求だけでなく、民法723条に基づく名誉回復処分(訂正記事の掲載・謝罪文の交付・謝罪広告)も法律上請求することができます。これらの処分は、単なる金銭補償を超えて、社会的評価の客観的な回復を目的としています。

ただし、謝罪広告が裁判所に認められるケースはそれほど多くなく、特に被害者が自力で名誉回復できると判断された場合は認められない傾向があります。一方で、訂正記事の掲載や謝罪文の交付は、訴訟または示談交渉の中で実現できるケースも少なくありません。また、「謝罪広告よりも確実な投稿削除と損害賠償の組み合わせ」が最終的に有効な解決となるケースも多いため、弁護士と相談して最適な戦略を立てることが何より重要です。

誹謗中傷被害でお悩みの方は、まずは専門の弁護士へのご相談をお勧めします。タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する各種手続きについて初回相談から一貫したサポートを提供しております。

謝罪広告・名誉回復処分を含むネット誹謗中傷対応はタングラム法律事務所へ

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。謝罪広告・名誉回復処分の請求を含む法的対応策について、個別の事情を踏まえたご相談に応じます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な法律上のご判断については、弁護士等の専門家にご相談ください。

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