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残業代の未払いを指摘された中小企業がまず取るべき対応手順|横浜の弁護士が解説

残業代の未払いを指摘された中小企業がまず取るべき対応手順|横浜の弁護士が解説

残業代の未払いを指摘された中小企業がまず取るべき対応手順|横浜の弁護士が解説

2026/04/20

残業代の未払いを指摘された中小企業がまず取るべき対応手順|横浜の弁護士が解説

「先月退職した社員から、突然内容証明が届いて残業代を請求された」「労働基準監督署から調査に来ると連絡が入った」——このような事態に直面した中小企業の経営者・担当者の方は少なくありません。残業代の未払い問題は、気づかないうちに積み重なるケースが多く、放置すると数年分をまとめて請求されるリスクがあります。

本記事では、残業代未払いを指摘された場合の初期対応から、労働基準監督署の調査対応、計算方法・消滅時効のポイント、そして再発防止策まで、実務的な観点から解説します。

1. 残業代未払い問題の現状と中小企業が直面するリスク

労働基準法(以下「労基法」)は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて従業員を働かせた場合、使用者に割増賃金の支払いを義務付けています(労基法第37条)。これに違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(労基法第119条)。

「サービス残業は業界の慣行だ」「うちは固定残業代を払っているから大丈夫」「役職者は残業代不要のはず」といった思い込みが、未払い問題の温床になりがちです。退職後に弁護士へ相談した元従業員が、労働審判や訴訟で請求してくるケースも増えています。複数の従業員にわたる未払いが明らかになると、請求総額が数百万円規模になることも珍しくありません。

横浜を拠点とするタングラム法律事務所にも、「突然、元スタッフから請求書が届いた」「労基署から是正勧告を受けた」というご相談が多く寄せられています。早期に適切な対応を取ることが、企業として最も合理的な選択です。

2. 残業代未払いが発生しやすい主な原因

未払い残業代が発生する背景には、制度の誤解や運用の不備があります。代表的なパターンを整理しておきます。

よくある誤解・原因 法的な問題点
タイムカードがなく労働時間の記録がない 使用者の労働時間管理義務(労基法第108条)違反の可能性。メールや入退館記録等から労働時間が推認される
固定残業代を支払っているため超過分は不要と考えている 固定残業代が有効とされるには明確な区分・超過分の別払いが必要。要件を満たさない場合は制度全体が無効とみなされる可能性がある
「課長」「部長」の肩書があるため管理職として残業代を払っていない 裁判所は経営への関与・労働時間裁量・待遇の相当性を総合的に判断。名ばかり管理職と認定されれば多額の未払いが生じる可能性がある
始業前の朝礼・清掃・準備時間を労働時間にカウントしていない 使用者の指示による作業はすべて「労働時間」に含まれると解されている

3. 指摘を受けた直後に行うべき初期対応

残業代の未払いを指摘された場合、まず感情的に反論するのではなく、次のステップを冷静に踏むことが重要です。

  1. 事実確認と証拠の保全——タイムカード・シフト表・PCのログイン記録・メール送受信履歴など、過去の労働時間に関する資料を速やかに収集・保全します。この段階でのデータ削除や改ざんは、後の紛争で致命的な不利をまねきます。絶対に行ってはいけません。
  2. 請求内容の精査——相手方の主張する計算方法、対象期間、金額の根拠を確認します。割増率の誤り、消滅時効の援用漏れ、既払い残業代の控除漏れが含まれているケースも少なくありません。
  3. 弁護士への早期相談——初動の対応を誤ると、交渉の場面で不利な立場に置かれます。内容証明や労基署調査の連絡を受けた段階で、できる限り早く弁護士へ相談することをお勧めします。

⚠ 注意:「とりあえず払えばいい」は危険

請求額をそのまま支払うと、計算が誤っている部分まで認めたことになりかねません。また、他の従業員からの同様の請求を誘発するリスクもあります。支払う場合も、金額の正確な検証と合意書の取り交わしが必要です。

4. 労働基準監督署の調査が入った場合の対応

従業員や退職者が労働基準監督署(以下「労基署」)に申告すると、労基署が使用者への調査を行うことがあります。調査では一般的に以下の書類の提出を求められます。

  • 就業規則(労基法第89条に基づき常時10人以上の労働者を使用する事業場では届出義務あり)
  • 賃金台帳・給与明細
  • タイムカード等の出退勤記録
  • 36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の届出書(労基法第36条)
  • 雇用契約書・労働条件通知書

調査の結果、違反が認められると「是正勧告書」が交付されます。これは行政指導であり直ちに罰則が科されるわけではありませんが、是正を怠ると労基署は送検・起訴の措置を取ることができます。是正勧告を受けた場合は、指定された期限内に是正報告書を提出する必要があります。

調査への対応は、提出書類の選定や当日の受け答えも含め、事前に弁護士と準備しておくことが望ましいといえます。

5. 未払い残業代の計算方法と消滅時効

未払い残業代の計算は次の式で行われます。

残業代の基本計算式

残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数

1時間あたりの賃金は、月例賃金を月の所定労働時間数(通勤手当・家族手当等の除外手当を控除したもの)で除して算出します。

残業の種類 割増率(最低)
法定時間外労働(月60時間以内) 25%以上
法定時間外労働(月60時間超) 50%以上
深夜労働(午後10時〜午前5時) 25%以上(他の割増と重複加算)
法定休日労働 35%以上

消滅時効については、2020年4月1日施行の改正労働基準法(労基法第115条)により、賃金債権の消滅時効が原則5年(当分の間は3年の経過措置)に延長されました。それ以前は2年でしたが、現在は過去3年分の未払い残業代をまとめて請求されるリスクがあります。長期間にわたり未払いが継続していた場合、その総額は相当な規模になり得ます。

6. 再発防止のための労務管理改善ポイント

今回の指摘を機に、以下の点を見直すことで同様のトラブルを防止できます。

① 客観的な労働時間管理の導入

勤怠管理システムやタイムカードを整備し、誰が見ても改ざんが困難な形で記録を残します。PCのログオン・ログオフ記録を補完的に活用する方法も、労基署の指導で推奨されています。

② 36協定の適正な締結・届出

時間外・休日労働を行わせるには、従業員代表との労使協定(36協定)を締結し、事業場を管轄する労基署に届出ることが必要です(労基法第36条)。特別条項付き36協定における年720時間等の上限(労基法第36条第4項・第5項)を超えないよう管理することも重要です。

③ 固定残業代制度の適正化

固定残業代(みなし残業)を設ける場合は、就業規則・雇用契約書において基本給と固定残業代の金額・対象時間数を明確に区分して記載し、固定時間を超えた分は別途支払うことを明示します。この要件を満たさないと、固定残業代制度全体が無効と判断される可能性があります。

④ 管理監督者(管理職)の範囲の見直し

役職者を一律に労基法第41条第2号の「管理監督者」として残業代を支払っていない場合は、①経営の意思決定への実質的関与、②自らの労働時間の裁量、③待遇の相当性の3要件を充足しているか確認してください。要件を満たさない場合には速やかに運用を修正する必要があります。

7. 弁護士への相談タイミングと横浜の事務所への相談について

残業代問題への対応を誤ると、一人の従業員の案件が他の従業員への請求波及につながることがあります。また、労働審判・訴訟に発展してからでは解決コストが大幅に増加します。次のような状況が生じた場合は、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

  • 元従業員や在職中の従業員から残業代の支払いを求める書面が届いた
  • 労働基準監督署から調査の連絡があった、または是正勧告書を受け取った
  • 固定残業代制度や管理職の取り扱いが適切かどうか不安がある
  • 就業規則や労働条件通知書の内容に不備がある可能性がある
  • 従業員から労働審判・訴訟を申し立てられた

弁護士に依頼することで、請求額の正確な検証と交渉代理、労基署調査対応のサポート、就業規則・契約書の整備による再発防止、そして万が一の労働審判・訴訟への対応が可能となります。

タングラム法律事務所は横浜を拠点に、労務管理・企業法務を中心とした中小企業向けの法的サービスを提供しています。「内容証明が届いて困っている」「労基署からの是正勧告への対応を相談したい」という場合は、お気軽にご連絡ください。

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免責事項:本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。本記事の情報は執筆時点(2026年4月)のものであり、法改正等により内容が変わる場合があります。

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