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共有名義の不動産を相続したら?よくあるトラブルと解消方法を弁護士が解説

共有名義の不動産を相続したら?よくあるトラブルと解消方法を弁護士が解説

共有名義の不動産を相続したら?よくあるトラブルと解消方法を弁護士が解説

2026/04/24

共有名義の不動産を相続したら?よくあるトラブルと解消方法を弁護士が解説

「親が亡くなって、実家を兄弟3人で相続することになった。でも、誰かが住み続けているわけでもなく、売るにも修繕するにも話がまとまらない……」。相続をきっかけに不動産が複数の相続人の共有名義になると、こうした悩みが尽きないケースは非常に多くあります。放置すれば状況は悪化し、世代を経るごとに共有者の数が膨れ上がり、最終的には誰も動けない「所有者不明土地」状態になりかねません。

本記事では、相続によって共有名義の不動産が生じる仕組みと、そこから発生しがちなトラブルの具体的な内容を整理したうえで、2023年(令和5年)4月施行の民法改正・2024年(令和6年)4月施行の相続登記義務化も踏まえた解消方法を、横浜の弁護士の視点からわかりやすく解説します。

共有名義の不動産とは?相続で共有が生じる仕組み

共有名義とは、一つの不動産を複数の人が「持分」という形で共同で所有している状態です。たとえば兄弟2人で等分に相続すれば、それぞれの持分は2分の1ずつとなります。この持分は、売却や担保設定など自分の持分のみに関する行為であれば単独でも行える一方、不動産全体の売却や大規模修繕など「共有物の管理・変更」には共有者全員または持分の一定割合以上の同意が必要です(民法第249条以下)。

相続で共有名義が生じる主なパターンは次の3つです。第一は、遺産分割協議がまとまらないまま法定相続分での相続登記を行うケースです。分割方法が決まらずとりあえず法定相続分で登記すると、全員が共有者となります。第二は、遺言書に複数の受遺者を指定しているケースです。遺言で「長男と次男に2分の1ずつ相続させる」と記載されていれば、当然に共有となります。第三は、遺産分割協議で意図的に共有を選択するケースで、誰かが住み続けたい一方で他の相続人も権利を手放したくないといった事情から、暫定的に共有名義のまま置いておくことがあります。いずれの場合も、後々トラブルの火種になることが少なくありません。

相続登記の義務化(2024年4月施行)と共有名義

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が法律上の義務となりました(改正不動産登記法第76条の2)。不動産を相続等によって取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なくこれを怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。この義務化は2024年4月1日以前に発生した相続にも遡って適用されるため、「昔から名義を変えていなかった」という場合も対応が必要です。

また、改正法では、相続人申告登記(自分が相続人であることを申告するだけで義務履行とみなされる簡易な手続き)も新設されました。ただし、これは共有名義の解消には繋がらず、あくまで登記義務のみを満たすための制度です。根本的なトラブル予防には、遺産分割協議を経て各相続人の権利関係を確定させることが重要です。

【ポイント】 相続登記を長期間放置すると、相続人が亡くなるたびに権利関係が複雑化し、最終的には数十人規模の共有状態になることも。早期の遺産分割が最善策です。

共有名義の不動産で起きやすいトラブルの具体例

共有名義の不動産で頻繁に発生するトラブルには、大きく分けて次のようなものがあります。

①売却・賃貸・大規模修繕ができない

不動産全体の売却は共有者全員の同意が必要です(民法第251条)。また、賃貸契約の締結など「管理行為」は持分の価格の過半数で決定できますが、大規模な改変や処分には全員同意が必要です。1人でも反対者がいれば話が進まず、買い手がついても手続きが頓挫するケースが多くあります。

②固定資産税・維持費の負担をめぐる対立

共有名義の不動産でも固定資産税は発生し続けます。誰かが全額立て替えている場合、他の共有者に対して持分割合に応じた費用を請求できる権利はありますが、実際には支払いを拒否されたり、連絡が取れなくなったりすることも少なくありません。

③一人が勝手に居住・占有し続けている

共有者の一人が相続した不動産に住み続け、他の共有者の使用を排除しているケースもトラブルになりやすい場面です。民法上は各共有者は持分割合に応じた使用収益権を有しますが(民法第249条)、現実には話し合いがなければ立ち退きを求めることも容易ではありません。

④共有者の死亡による権利関係の複雑化

共有者の一人が亡くなると、その持分はさらに次の相続人へと引き継がれます。こうして世代を重ねるごとに共有者の数が増え、いつの間にか見知らぬ遠縁の親族まで共有者になっているという事態も起こり得ます。こうなると全員の合意形成は極めて困難となります。

2023年民法改正で共有物分割・管理はどう変わったか

2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法では、長年問題となっていた共有不動産の管理・解消に関するルールが大幅に見直されました。主なポイントは以下のとおりです。

①共有物の管理行為の範囲が明確化

賃貸借契約の締結など「管理行為」は、改正前から持分の価格の過半数で決定できるとされていましたが、改正法では短期賃借権(土地5年以内、建物3年以内)の設定が管理行為に含まれることが明文化されました(民法第252条)。共有者の一部に連絡が取れない場合でも、裁判所に申し立てることで不明者の持分の同意を擬制できる制度も整備されました。

②所在不明共有者の持分取得・譲渡制度の新設

改正法では、共有者の中に所在不明・連絡不能な者がいる場合、相続開始から10年を経過した後に限り、裁判所の決定を得たうえで、他の共有者がその持分を取得したり、第三者に譲渡したりする手続きが可能となりました(民法第262条の2・第262条の3)。この際、所在不明共有者の持分に相当する金銭を供託することが必要です。

③裁判による共有物分割の改正(民法第258条)

改正前から裁判所に共有物分割を請求できる制度はありましたが、改正法では「協議が調わないとき」に加え「協議をすることができないとき」も明文で請求できることとされました。また、分割方法として①現物分割、②金銭(価格賠償)による分割、③競売(換価分割)の3類型が条文上明確化され(民法第258条2項・3項)、全面的価格賠償(一人の共有者が他の共有者全員の持分を買い取り金銭で清算する方法)が実務上より活用しやすくなっています。

共有名義を解消する主な方法

共有名義の解消方法は状況によって異なりますが、代表的なものは次の4つです。

①遺産分割協議で単独所有にする(代償分割)

相続人全員で改めて遺産分割協議を行い、不動産を特定の相続人の単独所有とする方法です。単独所有となる相続人が他の相続人に対して代償金を支払う「代償分割」の形をとることが多くあります。当事者全員の同意が必要なため、関係者の協力が得られることが前提ですが、最もスムーズな解決方法といえます。

②自分の持分だけを売却・または他共有者から買い取る

共有者の一人は、他の共有者の同意なく自分の持分だけを第三者に売却することができます(民法第206条)。ただし、持分のみの購入者は限られており、市場価値より低くなることが多い点に注意が必要です。逆に、特定の共有者が他の共有者全員から持分を買い取って単独所有にする方法も有効です。

③共有物分割請求調停・訴訟を提起する

協議が整わない場合は、裁判所に対して共有物分割請求の調停または訴訟を提起することができます(民法第258条)。裁判所は、現物分割・価格賠償・競売のいずれかの方法により共有関係を強制的に解消します。2023年民法改正により、全面的価格賠償などの柔軟な解決方法が取りやすくなっています。調停で合意に至らない場合は訴訟(審判移行も含む)となり、解決まで一定の時間と費用を要することも覚悟が必要です。

④全体を任意売却して清算する(換価分割)

共有者全員の同意が得られる場合は、不動産全体を第三者に売却して売却代金を持分割合で分配する「換価分割」も現実的な解決方法です。不動産に住んでいる人がいない場合、維持コストを考えると早期売却が経済合理的な選択となる場合も少なくありません。

解消方法 特徴 全員同意の要否
遺産分割協議(代償分割) 一人が単独所有し他に代償金を支払う 必要
持分のみ売却・買取 自分の持分のみを動かす 不要(自己持分のみ)
共有物分割請求調停・訴訟 裁判所が分割方法を決定する 不要(裁判で強制)
任意売却(換価分割) 全体を売却して代金を分配する 必要

遺産分割の10年ルール——早期解決が重要な理由

2023年の民法改正では、共有物分割のルール整備に加え、相続に関する重要な期限規定も導入されました。相続開始から10年が経過すると、遺産分割協議・調停において特別受益(生前贈与等)や寄与分の主張が原則として認められなくなります(民法第904条の3)。これは、長期間放置された遺産分割を促進する趣旨で設けられたルールです。

つまり、共有名義の不動産について長年話し合いを先送りにしていると、本来なら認められるはずだった「介護に貢献した寄与分」や「生前贈与を受けた特別受益」の主張ができなくなってしまう可能性があります。共有状態を放置することのリスクは、不動産の管理上の問題だけにとどまらないのです。

まとめ:共有名義の不動産問題は早期に弁護士へ相談を

共有名義の不動産は、放置すればするほど共有者の数が増え、意思決定がより困難になります。2024年の相続登記義務化により、登記手続きの先送りにはペナルティが生じるようになりましたし、2023年の民法改正により共有物分割の手続きは整備されましたが、それでも解決には相応の手間と時間がかかります。

横浜をはじめとする地域では、親世代から引き継いだ共有名義の不動産についての相談が近年増加しています。早い段階で弁護士に相談することで、協議の方針を整理し、他の共有者との交渉をスムーズに進められる可能性が高まります。また、話し合いが難航する場合には、調停・訴訟を通じた法的解決のサポートも受けられます。「とりあえず共有のままにしておこう」という状態を長引かせる前に、まず一度専門家に相談されることをお勧めします。

共有名義の不動産でお困りなら、弁護士にご相談ください

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。共有名義の解消交渉から共有物分割請求訴訟まで、状況に応じた最適な解決策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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