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不貞慰謝料と宥恕(ゆうじょ)|配偶者を許した場合でも慰謝料請求はできる?横浜の弁護士が解説

不貞慰謝料と宥恕(ゆうじょ)|配偶者を許した場合でも慰謝料請求はできる?横浜の弁護士が解説

不貞慰謝料と宥恕(ゆうじょ)|配偶者を許した場合でも慰謝料請求はできる?横浜の弁護士が解説

不貞慰謝料と宥恕(ゆうじょ)|配偶者を許した場合でも慰謝料請求はできる?横浜の弁護士が解説

配偶者の不貞行為(不倫)が発覚したとき、深く傷つきながらも「もう一度やり直そう」と気持ちを奮い立たせ、配偶者を許す選択をする方は少なくありません。しかしその後、気持ちの変化や生活上の問題から「やはり慰謝料を請求したい」「離婚することになった」という状況に陥るケースもあります。そのとき、「一度許してしまったから、もう請求できないのではないか」と不安に思う方も多いでしょう。

本記事では、法律上の「宥恕(ゆうじょ)」という概念を軸に、配偶者を許した場合に不貞慰謝料の請求がどうなるのか、不倫相手への請求にはどのような影響があるのか、そして宥恕が認定されるための要件など、実務上重要なポイントを横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

宥恕(ゆうじょ)とは何か|法律上の意味

「宥恕(ゆうじょ)」とは、一般的に「過ちや罪を許すこと」を意味しますが、法律の世界では少し特別な意味合いを持ちます。不貞行為の文脈では、被害配偶者が不貞行為の事実を知りながら、これを許し、婚姻関係を継続していく意思を示したことを指します。

宥恕が法的に重要視されるのは、主として離婚請求の文脈です。たとえば、配偶者に不貞行為があった場合でも、被害配偶者が宥恕した後は、その不貞行為を理由に離婚請求をすることが信義則上許されない場合があると解されています(民法770条)。宥恕によって「不貞行為を原因とする離婚事由」が消滅したと評価されうるためです。

ただし、宥恕が認められても慰謝料請求権が完全に消滅するかどうかは別問題であり、請求の相手方(配偶者なのか、不倫相手なのか)や状況によって異なります。以下で詳しく解説していきます。

配偶者を許した場合、配偶者への慰謝料請求はどうなるか

配偶者の不貞行為を宥恕した後に、あらためて配偶者本人に対して不貞慰謝料を請求できるかどうかは、宥恕の内容や態様によって異なります。

宥恕が示談・合意の形をとっている場合

配偶者との間で正式に示談書や合意書を取り交わし、「今後一切の請求をしない」「過去の不貞行為に関する損害賠償請求権を放棄する」などの条項(清算条項)を記載した場合は、法的に慰謝料請求権を放棄したと解される可能性が高くなります。この場合、後から「やはり請求したい」と思っても、合意書の効力によって請求が認められないケースが多いとされています。

したがって、示談書・合意書を作成する際は、将来のリスクをしっかり検討した上で内容を確定させることが重要です。特に、配偶者との婚姻関係を継続するかどうか迷っている段階で、不用意に包括的な清算条項を含む合意書に署名することは避けた方がよい場合があります。

宥恕が「許した」という言動にとどまる場合

一方、法的な合意書を取り交わさず、口頭や態度で「許す」という意思を示した場合は、状況がより複雑になります。口頭での宥恕が慰謝料請求権の放棄と同視されるかどうかは、その発言の具体的な内容・経緯・その後の行動などを踏まえて判断されます。一般的には、口頭で「許す」と言っただけで直ちに慰謝料請求権が消滅するわけではないと考えられています。

⚠️ 口頭での「許す」発言が慰謝料請求権の放棄と認定されるかどうかは、個別の事情によって異なります。具体的な事案については弁護士にご相談ください。

宥恕後も不倫相手への不貞慰謝料請求はできるのか

配偶者の不貞行為においては、配偶者と不倫相手は共同不法行為者として、共同で慰謝料の支払い義務を負うとされています(民法719条)。では、配偶者を宥恕した場合、不倫相手に対しても慰謝料請求ができなくなるのでしょうか。

原則:不倫相手への請求には影響しない

法律上、共同不法行為においては、一方の不法行為者(配偶者)に対して権利を放棄しても、その効力は他方(不倫相手)には及ばないのが原則です。したがって、配偶者を宥恕したとしても、不倫相手への慰謝料請求権が当然に消滅するわけではないと解されています。

実務上の注意:宥恕が不倫相手への請求額に影響することも

ただし、実務上は宥恕の存在が不倫相手への請求額の算定に影響を与えることがあります。裁判所は、配偶者と不倫相手の共同不法行為に基づく損害全体を評価した上で、各自の責任割合・求償関係を考慮しながら慰謝料額を定める傾向があります。配偶者が宥恕されていることで、被害配偶者が実質的に受けた精神的苦痛の程度が軽減されていると評価された場合、不倫相手に対する請求額が低く認定される可能性があります。

一方で、不倫関係が長期間にわたっていた場合や、不倫相手が積極的に関係を主導していたと認められる場合など、事情によっては宥恕の存在にかかわらず相応の慰謝料が認められる傾向もあります。

宥恕が法的に認定されるための要件・条件

宥恕は「被害配偶者が不貞行為の事実を知りながら、あえて許した」という事実の認定ですので、いくつかの要件・条件が問題になります。

要件・考慮要素 具体的な内容
不貞行為の認識 被害配偶者が不貞行為の事実を知っていたこと(知らずに同居継続しても宥恕にはならない)
許すという意思の表明 言葉・書面・行動(同居の継続、夫婦生活の再開など)によって許す意思が示されていること
一定期間の平穏な婚姻生活 宥恕後に相当期間、平穏な夫婦生活が継続されていたこと
新たな有責事由がないこと 宥恕後に不貞行為が再び行われた場合は、新たな不法行為として扱われる

重要なのは、「不貞の事実を知っていたこと」が前提となる点です。不貞行為の存在を知らないまま婚姻生活を継続しても、それは宥恕とは評価されません。また、不貞の事実を知ったうえで同居を継続したとしても、それだけで自動的に宥恕が認定されるわけではなく、状況全体を総合的に判断されます。

宥恕と不貞慰謝料の時効(消滅時効)の関係

不貞慰謝料の時効については、民法724条に基づき、不法行為の被害者が「損害及び加害者を知った時から3年」で消滅時効にかかります。宥恕が成立した場合、この時効の起算点や進行にどのような影響があるのでしょうか。

時効の起算点:不貞行為と相手方を知った時から

最高裁平成6年1月20日判決などの判例によれば、不貞慰謝料の消滅時効は、被害配偶者が「不貞行為の事実を知り、かつその相手方(不倫相手)が誰であるかを知った時」から進行するとされています。つまり、宥恕した場合であっても、この時点から時効は進行しています。

宥恕は時効の進行を止めない

宥恕という行為自体は、消滅時効の進行を中断・停止させる法的効果を持ちません。したがって、配偶者を許して数年が経過した後に「やはり慰謝料を請求したい」と思っても、時効が完成していれば請求が困難になる場合があります。

なお、不倫相手に対して内容証明郵便などで請求の意思を示す(催告)と、6か月間は時効の完成が猶予されます(民法150条)。時効が迫っている場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

⚠️ 不貞行為を知ってから3年が経過しないうちに、まず弁護士に相談し時効の管理をすることが重要です。横浜をはじめ全国各地の弁護士事務所で初回相談を受け付けているところも多いので、早めに動くことをおすすめします。

示談書・合意書における宥恕条項の記載と注意点

不貞慰謝料の示談交渉や和解の際、合意書・示談書に「宥恕条項」と呼ばれる文言が盛り込まれることがあります。これは、不貞を行った側(または不倫相手)が求めるケースが多く、「被害配偶者が不貞行為を許した旨」を書面に残すことで、今後の請求や紛争再燃を防ぐことを目的としています。

宥恕条項を含む示談書を求められた場合の注意点

  • 宥恕条項と清算条項(「一切の請求をしない」旨)が組み合わさると、将来的な請求が非常に困難になります。
  • 婚姻関係の継続を前提とした示談書と、離婚を前提とした示談書では、記載すべき内容が大きく異なります。
  • 「許す」という表現であっても、その法的効力の範囲(配偶者への請求権のみを放棄するのか、不倫相手への請求権も含めるのか)は明確に規定しなければトラブルのもとになります。
  • 相手方(不貞をした配偶者や不倫相手)が作成した示談書への署名は、内容を十分に検討する前に行わないことが大切です。

示談書・合意書の内容は一度署名すると原則として覆すことが難しいため、作成前に弁護士のチェックを受けることを強くおすすめします。

再び不貞が発覚した場合は?宥恕後の再不貞について

宥恕後に配偶者が再び不貞行為を行った場合、その新たな不貞行為は宥恕の対象とはならず、改めて不法行為として慰謝料請求の対象になります。また、過去の不貞行為も「繰り返し行われた不貞」として、新たな不貞行為による慰謝料額の増額事由として考慮されることがあります。

再不貞が発覚した場合、まず証拠の保全と時効の管理が重要です。新たな不倫相手が特定できていない段階でも、弁護士に相談することで証拠収集の方針を決める助けになります。

まとめ|宥恕と不貞慰謝料請求は弁護士への相談が不可欠

宥恕(ゆうじょ)は「配偶者を許す」という感情的な決断であると同時に、法的には慰謝料請求権や離婚原因に関わる重大な法律行為となりえます。本記事の内容を整理すると、次のようになります。

  • 宥恕があっても、書面(示談書・合意書)で権利放棄をしていなければ、直ちに慰謝料請求権が消滅するわけではない場合が多い。
  • 不倫相手への慰謝料請求権は、配偶者を宥恕しても原則として存続するが、請求額の評価に影響が出ることがある。
  • 宥恕が認定されるには、不貞の事実を知っていたこと、許す意思の明示、その後の平穏な婚姻生活の継続などが考慮される。
  • 宥恕は時効の進行を止めず、発覚から3年が経過すると請求が困難になる場合がある。
  • 示談書・合意書への署名は、法的効果をよく理解した上で行う必要がある。

宥恕が絡むケースは、法律上の判断が複雑になりやすく、個別の事情によって結論が大きく変わることがあります。「許したけれど、やはり慰謝料を請求したい」「相手から宥恕条項のある示談書を求められた」など、お悩みがある方は、できるだけ早い段階で弁護士にご相談されることをおすすめします。

宥恕・不貞慰謝料に関するご相談はタングラム法律事務所へ

タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。「配偶者を許したが、やはり慰謝料を請求したい」「宥恕条項のある示談書を求められて困っている」など、宥恕が絡む複雑な事案についても、横浜を拠点に丁寧にご対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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