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フリーランス保護新法(2024年施行)で発注者側企業が注意すべき義務とは|横浜の弁護士が解説

フリーランス保護新法(2024年施行)で発注者側企業が注意すべき義務とは|横浜の弁護士が解説

フリーランス保護新法(2024年施行)で発注者側企業が注意すべき義務とは|横浜の弁護士が解説

2026/04/20

フリーランス保護新法(2024年施行)で発注者側企業が注意すべき義務とは|横浜の弁護士が解説

2024年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス保護新法、以下「フリーランス新法」)が施行されました。これはフリーランスとして働く個人の権利を守るための法律ですが、見方を変えればフリーランスに業務を発注する企業・個人事業主の側に新たな法的義務が生じる法律でもあります。

「社員ではなくフリーランスに業務を依頼しているから労働法は関係ない」と思っていた事業者の方は注意が必要です。フリーランス新法は労働法とは別の枠組みですが、違反すれば行政指導や公表といったペナルティを受ける可能性があります。法務担当者が社内にいない中小企業こそ、早めに内容を把握して対応する必要があります。本記事では、横浜の弁護士がフリーランス新法の要点と発注者側の対応策を解説します。

1. フリーランス保護新法の目的と背景

近年、フリーランス(個人で業務を請け負う事業者)の人口は増加を続けており、内閣官房の調査では国内のフリーランス人口は数百万人規模にのぼると推計されています。一方で、報酬の不当な減額、一方的な契約解除、ハラスメントなど、発注者側の優越的な立場を利用した不公正な取引が問題となってきました。

こうした状況を受け、フリーランス新法は以下の2本柱で構成されています。

  • 取引の適正化:発注条件の明示・報酬支払期日の遵守・禁止行為の規定
  • 就業環境の整備:育児・介護等への配慮、ハラスメント防止、一方的な契約解除への規制
ポイント:フリーランス新法は、労働基準法や下請代金支払遅延等防止法(下請法)とは別の新法です。下請法の対象とならない取引についても規制が及ぶ場合があるため、「下請法を守っていれば大丈夫」という認識は危険です。

2. 誰が「対象」になるか——適用範囲を正しく理解する

フリーランス新法では、「特定受託事業者」(フリーランス側)と「特定業務委託事業者」(発注者側)という2つの概念が定義されています。自社が「特定業務委託事業者」に該当するかどうかを確認することが最初のステップです。

用語 定義 具体例
特定受託事業者(フリーランス) 従業員を使用しない個人事業者または一人会社 フリーランスのデザイナー、ライター、エンジニアなど
業務委託事業者 特定受託事業者に業務委託する事業者(個人・法人を問わない) フリーランスに制作・開発・配送などを依頼するすべての事業者
特定業務委託事業者 従業員を使用する業務委託事業者 1人でも従業員(パート・アルバイトを含む)を雇用している事業者

重要なのは、従業員が1人でもいる事業者はすべて「特定業務委託事業者」に該当しうる点です。規模の大小は問われません。フリーランスに業務を発注している中小企業の大半が対象に含まれると考えられます。

3. 発注者側が負う主な5つの義務

(1)書面等による取引条件の明示義務(同法第3条)

フリーランスに業務を委託する際は、契約締結前または委託時に、業務内容・報酬額・支払期日・給付物の内容などを書面または電子的方法で明示しなければなりません。口頭のみの発注は義務違反となる可能性があります。

(2)報酬支払期日の規制(同法第4条)

物品の製造・情報成果物の作成・役務の提供に係る給付を受領した日から60日以内に報酬を支払わなければなりません。支払期日を設定する際も、給付受領日から起算して60日を超えることは許されないと解されています。

(3)禁止行為の遵守(同法第5条)

継続的業務委託(1か月以上)の場合、下請法の禁止行為に準じた以下の行為が禁止されています。

  • 正当な理由のない受領拒否
  • 報酬の不当な減額
  • 正当な理由のない返品
  • 通常の対価と著しく低い報酬での委託(買いたたき)
  • 正当な理由のない発注者指定商品の購入・サービス利用強制
  • フリーランスの利益を不当に害する行為

(4)育児・介護等への配慮義務(同法第13条)

継続的業務委託において、フリーランスから育児・介護・病気治療との両立について申し出があった場合、発注者は必要な配慮をする義務があります。具体的には、業務の量や内容・納期の調整などを検討することが求められます。

(5)ハラスメント防止措置義務(同法第14条)

発注者は、フリーランスに対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを防止するための必要な体制整備・措置を講じる義務があります。社内の従業員だけでなく、取引先のフリーランスに対するハラスメントも対象です。

4. 契約の中途解除・不更新に関する規制

継続的業務委託(期間6か月以上)を途中で解除したり、更新しない場合は、フリーランスに対して少なくとも30日前までに予告しなければなりません(同法第16条)。予告なしに突然取引を打ち切ることは違法になりえます。また、フリーランスから求められた場合には、解除・不更新の理由を開示する義務があります。

注意:「30日前」の起算点や「継続的業務委託」の判断は個別の事情によって異なる場合があります。実際の運用は弁護士に相談しながら慎重に行うことをおすすめします。

5. 違反した場合のペナルティ

フリーランス新法に違反した場合、主務大臣(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)から以下の措置を受ける可能性があります。

措置の内容 根拠条文
報告徴収・立入検査 同法第17条
指導・助言 同法第18条
勧告・公表 同法第19条・第20条
命令(違反の是正命令) 同法第20条
命令違反に対する罰則(50万円以下の罰金) 同法第25条

会社名の公表は風評リスクにつながる可能性があります。また、フリーランスからの民事上の損害賠償請求に発展するケースも想定されますので、違反を未然に防ぐ社内体制の整備が重要です。

6. 今すぐ実施すべき発注者側の対応チェックリスト

フリーランスへの発注業務を整備するにあたり、横浜の弁護士事務所への相談前に、まず自社の現状を以下の観点から点検することをおすすめします。

【対応チェックリスト】
  1. フリーランスへの発注時に、業務内容・報酬額・支払期日を書面(メール含む)で明示しているか
  2. 報酬の支払期日が給付受領日から60日以内に設定されているか
  3. 口頭だけで業務指示・報酬変更を行っていないか
  4. 継続的に取引しているフリーランスとの契約書に、解除予告(30日前)の規定があるか
  5. 社内のハラスメント防止規定がフリーランスへの対応も含む内容になっているか
  6. 育児・介護に関する申し出があった場合の対応フローが明確になっているか

これらの項目に一つでも「対応できていない」ものがある場合、早急な見直しが必要です。特に、これまで口頭や簡単なメモだけで取引を進めてきた事業者は、発注書・業務委託基本契約書の整備が急務と考えられます。

7. まとめ——フリーランス新法対応は「契約書の整備」から

フリーランス保護新法は、フリーランスに業務を依頼するすべての発注者に影響する法律です。「従業員ではないから労働法の問題はない」という認識は、もはや通用しないと解されています。書面交付義務・報酬支払規制・禁止行為・ハラスメント防止・中途解除の予告義務など、複数の義務が一度に課されており、対応範囲は広範にわたります。

まずは現在のフリーランスとの取引状況を棚卸しし、発注書や業務委託契約書の内容が法律の要件を満たしているかを確認することが第一歩です。自社だけでの判断に不安がある場合は、企業法務に精通した弁護士に相談することで、法的リスクを低減しながら安心して業務委託を進めることができます。

フリーランス保護新法への対応・業務委託契約書の見直しは、企業法務に精通した弁護士へのご相談をおすすめします。
タングラム法律事務所(横浜)では、中小企業・個人事業主の方からのご相談を承っております。

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。また、法令の内容は改正等により変更される場合があります。最新の情報は公的機関または弁護士にご確認ください。

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