不貞行為をした配偶者と離婚しない場合の不貞慰謝料請求の注意点|横浜の弁護士が解説
2026/04/28
不貞行為をした配偶者と離婚しない場合の不貞慰謝料請求の注意点|横浜の弁護士が解説
配偶者の不貞行為が発覚した際、多くの方がまず「どうするべきか」と深く悩まれます。子どもやこれまで築いてきた生活のことを考えると、「離婚はしたくないが、このまま何もしないわけにもいかない」という複雑な気持ちを抱える方も少なくありません。感情的な苦痛を受けているにもかかわらず、すぐに離婚という結論に踏み切れないのは、ごく自然なことです。
本記事では、不貞行為をした配偶者と離婚しないことを選択した場合でも、不貞慰謝料の請求は法的に可能であること、そしてその際に特有の注意点があることを、横浜で離婚・男女問題を取り扱う弁護士の視点でわかりやすく解説します。「離婚しないけれど、慰謝料は請求したい」とお考えの方はぜひご参考ください。
離婚しなくても不貞慰謝料は請求できる
まず大前提として、配偶者の不貞行為(性的関係を伴う不倫)は民法上の不法行為(民法709条・710条)にあたり、これによって精神的苦痛を受けた配偶者は損害賠償請求、すなわち慰謝料を請求する権利があります。この権利は、離婚するかどうかとは直接関係なく認められるものです。
つまり、「離婚しないから慰謝料は諦めるしかない」ということにはなりません。婚姻関係を継続したまま、不貞をした配偶者や不貞相手に対して慰謝料を請求することは十分に可能です。ただし、離婚する場合と比べていくつかの点で状況が異なるため、対応の仕方には慎重さが求められます。
配偶者に直接慰謝料を請求する場合の問題点
不貞行為に関わった者として、配偶者と不貞相手の双方が損害賠償義務を負います。しかし、配偶者に対して直接慰謝料を請求することには、実際上いくつかの問題があります。
家計の資産が目減りするだけになる可能性
夫婦が婚姻生活を継続している場合、多くのご家庭では財産が共同で管理されていたり、家計が一体化していたりします。その状況で配偶者に慰謝料を支払わせると、実質的にはご自身の家計からも資金が出ていく結果になりかねません。たとえば、夫婦共有の口座や配偶者の収入から支払われる場合、家族全体の財産が減少するだけで、被害を受けた側の実益が薄くなる可能性があります。
婚姻継続中は配偶者への請求が事実上難しいケースも
婚姻関係を継続したいという意向がある場合、配偶者との間で紛争を深刻化させることへの心理的抵抗もあるでしょう。また、配偶者への慰謝料請求を正式に行うことで関係が修復困難になるケースもあり、現実的には不貞相手にのみ請求するという選択が取られることも多くあります。
不貞相手にのみ慰謝料を請求する場合の注意点
離婚しない場合、現実的な選択として「不貞相手(配偶者の浮気相手)だけに請求する」ケースが少なくありません。この方法には一定の合理性がありますが、同時にいくつかの注意点があります。
求償権の問題
不貞行為は、配偶者と不貞相手の共同不法行為として扱われます。そのため、不貞相手があなたに慰謝料を全額支払った場合、不貞相手は配偶者に対して「自分の負担を超えた分を返せ」と求償権を行使できる可能性があります。
これを防ぐためには、示談書において「不貞相手は配偶者に対して求償権を行使しない」旨の条項(求償権放棄条項)を盛り込むことが有効です。ただし、この点を見落として示談してしまうと、後日配偶者が不貞相手から求償請求を受け、再び家庭内のトラブルに発展するリスクがあります。
慰謝料の「二重取り」は原則として認められない
配偶者からも、不貞相手からも、それぞれ個別に慰謝料を受け取ることで合計額が不当に高額になることを「二重取り」といいます。判例上、同一の不貞行為に基づく損害については、配偶者と不貞相手の双方から合計で取得できる慰謝料の総額には一定の上限があると考えられており、両者から別々に満額を受け取ることは原則として認められない傾向があります。
したがって、すでに配偶者から何らかの金銭的補填を受けている場合、不貞相手に請求できる金額が制限される可能性がある点に留意が必要です。
離婚しない場合の慰謝料相場はどのくらいか
不貞慰謝料の金額は、婚姻関係が破綻したかどうかによって大きく異なります。離婚した場合は100万〜300万円程度が相場とされることが多いのに対し、離婚しない場合の慰謝料は50万〜150万円程度に留まる傾向があります。これは、婚姻関係が継続していることから「婚姻関係の破壊」という損害が離婚ケースより小さく評価されるためです。
| 状況 | 慰謝料相場の目安 |
|---|---|
| 離婚した場合 | 100万〜300万円程度 |
| 離婚しない場合(婚姻継続) | 50万〜150万円程度 |
| 別居状態(離婚協議中など) | 100万〜200万円程度 |
ただし、不貞期間の長さ、不貞の悪質性、子どもの有無、婚姻期間、精神的被害の程度(うつ病・適応障害など)によって増減することがあります。あくまで目安として参考にしてください。
離婚しない場合に特に重要な示談書・誓約書の整備
婚姻を継続すると決めた場合でも、今後の生活を守るために法的に有効な書面を整備しておくことが極めて重要です。口約束では後になって「そんなことは言っていない」「合意した覚えはない」といったトラブルに発展するリスクがあります。
示談書(合意書)に盛り込むべき主な内容
- 不貞行為があった事実の確認
- 慰謝料の金額・支払方法・期日
- 今後の接触禁止条項(特に不貞相手と配偶者の接触を禁じる条項)
- 求償権放棄条項(不貞相手が配偶者に求償しない旨)
- 清算条項(今後この件に関して請求しないとする条項)
- 違約金条項(接触禁止等に違反した場合のペナルティ)
配偶者との関係では、誓約書として「二度と不貞行為を繰り返さない」旨の誓約や、違反時の取り扱いを明記しておくことも有効です。これらの書面は後日紛争になった際の重要な証拠となります。
公正証書化で強制執行が可能に
慰謝料を分割払いにする場合や、将来の支払いが約束されている場合には、示談書を公正証書にしておくことを強くお勧めします。公正証書に強制執行認諾条項を入れておくと、支払いが滞った際に裁判手続きを省略して強制執行(給与の差し押さえ等)ができるようになります。
慰謝料請求後に婚姻を継続する際の心理的・実務的注意点
慰謝料を請求しつつ婚姻関係を継続するということは、感情的にも実務的にも非常に難しい選択です。法的な手続きとしての慰謝料請求と、夫婦間の感情的な和解・信頼回復は別物として捉える必要があります。
慰謝料を受け取った後も関係修復が進まず、数年後に離婚に至るケースも珍しくありません。そのような場合、「一度慰謝料をもらったのに、また請求できるのか」という問題が生じることがあります。示談書に清算条項が入っている場合、同一の不貞行為に基づく追加の慰謝料請求は困難になる可能性があるため、示談書の内容については特に慎重に検討する必要があります。
時効に注意|請求できる期間は限られている
不貞慰謝料の請求権には時効があります。民法724条の規定により、不法行為に基づく損害賠償請求権は、「損害および加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」で消滅します。配偶者の不貞を知った時点から3年が経過すると、原則として慰謝料請求ができなくなります。
「離婚するかどうかゆっくり考えてから請求しよう」と時間をかけていると、この時効期間を経過してしまうリスクがあります。特に不貞の発覚からすでに時間が経過している場合は、早急に弁護士に相談することをお勧めします。なお、時効を止めるためには内容証明郵便の送付や訴訟の提起などが有効な手段となります。
まとめ:離婚しない選択をするからこそ弁護士への相談が重要
配偶者の不貞行為を知りながらも離婚せずに婚姻関係を継続するという決断は、精神的に非常に負担の大きいものです。その一方で、慰謝料請求を適切に行い、今後の生活を守る法的な備えをしておくことは、自分自身の権利を守るために大切なことです。
離婚しない場合の不貞慰謝料請求には、求償権の問題、二重取りの問題、示談書の記載内容、時効など、一般の方には気づきにくい複雑な論点が数多く絡み合います。適切な対応を取るためには、家族法・男女問題に精通した弁護士のサポートを受けることが何より重要です。
横浜を拠点とするタングラム法律事務所では、不貞慰謝料に関するご相談を承っております。離婚するかどうかを決めていない段階でも、まずは現状を整理するところからご一緒に考えていきます。一人で抱え込まず、早めのご相談をお勧めします。
【離婚しない場合の不貞慰謝料請求、まずはご相談を】
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。「離婚するかどうかまだわからない」という段階でも、慰謝料請求の可否・進め方・示談書の内容について、丁寧にご説明いたします。横浜・神奈川エリアはもちろん、全国からのご相談に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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