タングラム法律事務所

ネット誹謗中傷の投稿削除を仮処分で求める方法|手続きの流れ・費用・期間を弁護士が解説

ネット誹謗中傷の投稿削除を仮処分で求める方法|手続きの流れ・費用・期間を弁護士が解説

ネット誹謗中傷の投稿削除を仮処分で求める方法|手続きの流れ・費用・期間を弁護士が解説

2026/04/30

ネット誹謗中傷の投稿削除を仮処分で求める方法|手続きの流れ・費用・期間を弁護士が解説

ネット上に誹謗中傷の書き込みをされ、「一刻も早く削除してほしい」と焦る気持ちは当然です。しかし、サイト運営者への任意の削除申請が無視されたり、長期間放置されたりするケースは少なくありません。そのような場合に有効な法的手段として、裁判所を通じた「仮処分申立て(投稿削除仮処分)」があります。

2025年4月には「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」が施行され、大規模プラットフォーム事業者は削除申請への迅速対応(原則7日以内)が義務付けられました。それでも削除に応じない場合や、対象となるプラットフォームの規模・種類によっては仮処分が依然として強力な手段となります。本記事では、投稿削除仮処分の仕組み・手続きの流れ・費用・期間について、実務の視点からわかりやすく解説します。

仮処分とは何か——通常訴訟との違い

「仮処分」とは、民事保全法に基づく裁判所の暫定的な保全命令のことです。正式な裁判(本案訴訟)の判決が出るまでには通常1年以上かかりますが、その間にも誹謗中傷投稿の被害は進み続けます。仮処分は、本案訴訟の判決を待たずに、権利侵害の拡大を食い止めるための緊急措置として機能します。

投稿削除の仮処分を正確に言えば、「削除を命ずる仮処分(作為を求める仮処分)」に分類されます(民事保全法第23条第2項)。申立てが認められれば、裁判所がサイト運営者(プラットフォーム事業者)に対して問題の投稿を削除するよう命じる決定を出します。

【仮処分と本案訴訟の違い】
仮処分は「暫定的な保全措置」であり、本案訴訟(削除請求訴訟)とは別の手続きです。ただし実務上は、仮処分による削除命令が出れば投稿は削除されるため、仮処分のみで目的を達することも多くあります。

投稿削除仮処分が有効なケース

2025年4月施行の情プラ法により、月間利用者数が一定規模以上の大規模プラットフォーム(X・Instagram・Facebook・YouTube等)は削除申請から原則7日以内に対応することが義務付けられました。これにより、まず任意の削除申請(情プラ法に基づく申請)を試みることが手続きの出発点となります。

それでも仮処分が有効となる主な場面は以下のとおりです。

  • 任意の削除申請に対してプラットフォームが削除を拒否した、または無回答だった場合
  • 情プラ法の対象外となる小規模なサイト・掲示板(地域掲示板、まとめサイト等)への投稿削除を求める場合
  • サイト運営者が国内に拠点を持たず、任意申請が機能しにくい場合
  • 被害が深刻で、裁判所による公的な削除命令という形で対応したい場合
  • 削除を拒んでいる運営者に対して法的強制力をもって対応したい場合

なお、投稿削除仮処分は、同じく仮処分手続きを利用する「発信者情報開示の仮処分」とは異なります。発信者情報開示仮処分は投稿者を特定するための手続きである一方、投稿削除仮処分は投稿そのものの削除を求めるものです。目的に応じた手続き選択が重要になります。

投稿削除仮処分の手続きの流れ

①証拠保全・事前準備

まず、問題となる投稿のスクリーンショットを取得し、証拠を保全します。URL・投稿日時・投稿内容・投稿者のアカウント名等を記録します。スクリーンショットは日時情報が確認できる方法で保存し、画像の改ざんがないよう注意します。任意の削除申請を行った場合は、その申請記録・プラットフォームからの回答(拒否通知等)も証拠として保管してください。

②弁護士への相談・受任

仮処分申立ては法的な専門知識を要する手続きです。申立書の作成、被保全権利の疎明、保全の必要性の立証など、弁護士によるサポートが実質的に必要となります。受任後、弁護士が申立書と疎明資料を準備します。

③申立書の提出

申立書は、原則として相手方(サイト運営者等)の所在地を管轄する地方裁判所に提出します。国内に拠点を持つ大手プラットフォームの場合は東京地方裁判所に申立てを行うことが多いです。申立書には、被保全権利(名誉権・プライバシー権等の侵害)の内容と保全の必要性(被害の緊急性)を具体的に記載します。

④審尋(裁判官との面談)

申立て後、裁判所は審尋期日を設定し、申立人側(通常は弁護士のみ)と裁判官が面談を行います。裁判官から投稿内容の違法性や被害の緊急性などについて確認があります。相手方(サイト運営者)にも意見陳述の機会が与えられることがありますが、仮処分手続きの性質上、手続きは比較的迅速に進みます。

⑤担保金の供託

仮処分命令が発令される前に、申立人は裁判所が定める額の担保金を法務局に供託する必要があります。これは、仮処分の判断が後の本案訴訟で覆った場合に相手方が受けた損害を補填するための保証として位置付けられています。担保金の相場は10万円〜30万円程度が目安ですが、事案の内容によって裁判所が金額を決定します。なお、担保金は問題がなければ事後に返還されます。

⑥仮処分命令の発令・削除の実行

担保金の供託後、裁判所が仮処分命令(削除命令)を発令します。この命令を受け取ったサイト運営者は、命令に従って問題の投稿を削除する義務を負います。命令に従わない場合には、間接強制(制裁金の賦課)などの強制執行手続きをとることも可能です。

手続きにかかる期間と費用の目安

期間の目安

申立てから仮処分命令発令までの期間は、事案の複雑さや裁判所の繁忙度によって異なりますが、一般的には1〜3か月程度とされています。本案訴訟と比べると大幅に短い期間で結果が得られるのが仮処分手続きの大きな利点です。

手続き 概要 期間の目安
情プラ法に基づく任意削除申請 大規模プラットフォームへの削除要請 7日以内(法定)
仮処分申立て(投稿削除) 裁判所による削除命令 1〜3か月程度
本案訴訟(削除請求訴訟) 正式な裁判による削除判決 1年以上

費用の目安

投稿削除仮処分にかかる費用は大きく分けて「弁護士費用」と「実費」に分かれます。

費用の種類 目安 備考
弁護士着手金 20万円〜40万円程度 事務所・案件により異なる
弁護士報酬金 10万円〜30万円程度 成功報酬として発生
担保金 10万円〜30万円程度 裁判所が決定。後日返還される
印紙代・郵便切手代 数千円程度 申立書に貼付する印紙等

担保金は最終的に返還される性質のものですが、一時的に手元から出て行く資金として準備が必要です。費用の総額は事案の内容や依頼する法律事務所によって大きく変わりますので、相談時に詳細を確認することをお勧めします。

仮処分が認められるための要件——「被保全権利」と「保全の必要性」

仮処分申立てが裁判所に認められるためには、法律上2つの要件を満たす必要があります。

①被保全権利(権利侵害の疎明)

問題の投稿が申立人の権利を侵害していることを「疎明」(一応確からしいと裁判官に判断させる程度の証明)する必要があります。ネット誹謗中傷の文脈では、名誉権の侵害(名誉毀損・侮辱)やプライバシー権の侵害を根拠とすることが多いです。

重要なのは、問題の投稿が「違法な権利侵害に当たること」を具体的に示すことです。単に不快な内容というだけでは不十分で、一定の公益性を欠く事実の摘示や、人格を著しく傷つける表現が含まれることなどを、投稿内容と事実関係に照らして示す必要があります。

②保全の必要性(緊急性・損害の大きさの疎明)

「本案訴訟の判決まで待っていると回復しがたい損害が生じるおそれがある」という緊急性の要件です。たとえば、投稿によって名誉・信用が傷つき続けており、仕事や生活への具体的な悪影響が生じている場合、プライバシー情報が日々拡散している場合などが、保全の必要性を基礎付ける事情として挙げられます。

【申立てが却下されるケース】
被保全権利や保全の必要性の疎明が不十分な場合、申立ては却下されることがあります。また、意見や批判の自由(表現の自由)に照らして違法性が認められないと判断された場合も同様です。経験豊富な弁護士のサポートのもと、しっかりとした疎明資料を準備することが重要です。

情プラ法による削除申請と仮処分の使い分け

2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)は、月間利用者数が一定数以上の大規模プラットフォーム事業者に対し、削除申請への迅速対応・対応状況の公表・削除基準の策定などを義務付けています。違反した場合は総務大臣による勧告・命令が下され、最大1億円の罰則もあります。

被害者にとっての実務的な使い分けは次のように整理できます。

  • まず情プラ法に基づく削除申請:大規模プラットフォームへの投稿であれば、まず任意の削除申請を行う。7日以内に対応される可能性がある。
  • 任意申請が拒否・無視された場合に仮処分:削除を拒否された、または期限内に対応されなかった場合は仮処分申立てへ移行する。
  • 小規模サイト・掲示板は仮処分が有効:情プラ法の対象外となる中小規模のサイトや個人運営の掲示板には、直接仮処分申立てが有効な手段となる。

このように、情プラ法の施行後も仮処分はネット誹謗中傷対策の重要な手続きとして機能し続けています。どちらの手続きを先に使うべきか、あるいは並行して進めるべきかは、被害の内容・プラットフォームの種類・緊急性の程度などによって異なりますので、弁護士への早期相談が適切な判断につながります。

弁護士に依頼するメリット

投稿削除仮処分の申立ては、法律知識・裁判実務の経験がなければ適切に行うことが難しい手続きです。弁護士に依頼することで以下のメリットが得られます。

  • 被保全権利・保全の必要性について説得力のある疎明資料を準備できる
  • 審尋期日において裁判官に適切に説明・主張することができる
  • 担保金の金額や手続きの進め方について適切なアドバイスが得られる
  • 仮処分と発信者情報開示請求・損害賠償請求を並行して戦略的に進めることができる
  • 相手方が命令に従わない場合の強制執行にも対応できる

特に、ネット誹謗中傷対応の経験が豊富な弁護士であれば、各プラットフォームへの申請方法・対応傾向・疎明資料の要点を熟知しており、手続きをスムーズかつ効果的に進めることが期待できます。

まとめ

ネット誹謗中傷の投稿削除を緊急に求める手段として、仮処分申立ては有効な法的手続きです。情プラ法施行により大規模プラットフォームへの任意申請が整備されたものの、削除を拒否された場合や情プラ法の対象外プラットフォームへの対応においては、仮処分が実質的な解決手段となります。

手続きには被保全権利と保全の必要性の2つの要件を満たす必要があり、費用としては弁護士費用(着手金・報酬金)と担保金が主な支出となります。申立てから命令発令まで1〜3か月程度を見込む必要がありますが、本案訴訟と比較すれば大幅に早い解決が期待できます。

被害が続いている間も精神的・社会的なダメージは積み重なっていきます。「任意の削除申請が通じなかった」「どの手続きを使うべきかわからない」という方は、できるだけ早期に弁護士へ相談されることをお勧めします。

投稿削除の仮処分申立て・ネット誹謗中傷でお困りの方へ

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。投稿削除仮処分の申立てについても、初回相談からご対応が可能です。お気軽にお問い合わせください。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案については、弁護士にご相談ください。

インターネット問題に横浜で対応

身を守るための横浜の開示請求

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。