Threads(スレッズ)の誹謗中傷への法的対処法|削除申請・発信者情報開示・損害賠償を弁護士が解説
Threads(スレッズ)の誹謗中傷への法的対処法|削除申請・発信者情報開示・損害賠償を弁護士が解説
SNSが日常生活に欠かせない存在となった今日、2023年7月にサービスを開始したThreads(スレッズ)は急速にユーザー数を拡大し、多くの方が情報発信や交流の場として活用しています。その一方で、Threads上での誹謗中傷被害も増加しており、「名前と顔写真入りで虚偽の情報を拡散された」「自分の投稿に悪意あるリプライが大量についた」「事実無根の犯罪行為を告発する投稿をされた」といったご相談が弁護士事務所にも多く寄せられています。
誹謗中傷被害に遭ったとき、「どこに相談すればよいかわからない」「海外の企業だから削除してもらえないのでは」と不安に感じる方も少なくありません。しかし、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(以下「情プラ法」)により、Threadsを運営するMeta Platforms, Inc.(以下「Meta」)は大規模プラットフォーム事業者として指定され、削除申請への対応義務がこれまで以上に強化されました。
本記事では、Threadsでの誹謗中傷に対して法的にどのような対処ができるのか、証拠保全の方法から削除申請・発信者情報開示請求・損害賠償請求の流れまで、弁護士がわかりやすく解説します。
Threads(スレッズ)とは——急成長するSNSと誹謗中傷リスク
Threads(スレッズ)は、Facebook・Instagramを運営するMeta Platforms, Inc.が2023年7月に提供を開始したテキスト中心のSNSです。Instagramアカウントと連携して利用でき、サービス開始後わずか1か月で世界の月間アクティブユーザーが1億人を超えた実績があります。日本国内でも多くのユーザーが利用しており、企業や著名人から一般利用者まで幅広い層に浸透しています。
Threadsはテキスト投稿を主体とし、リプライ(返信)やリポスト(引用共有)機能を通じて情報が素早く拡散される仕組みになっています。その手軽さゆえに、誹謗中傷の投稿も拡散速度が速く、被害が深刻化しやすい点が懸念されています。
Threads上でよく見られる誹謗中傷の態様としては、次のようなものが挙げられます。
- 事実と異なる内容(虚偽事実)の投稿や引用リポストによる拡散
- 特定の個人を名指しした侮辱・罵倒(「バカ」「死ね」などの言葉)
- 根拠のない犯罪行為・不正行為の告発や「晒し上げ」
- プライベートな情報(住所・職場・家族情報など)の暴露
- なりすましアカウントによる虚偽情報の発信
これらの行為は、名誉毀損(刑法230条)や侮辱(刑法231条)、プライバシー侵害に該当する可能性があり、民事・刑事いずれの面からも法的対処が可能です。
被害に気づいたらまず行うこと——証拠の保全
誹謗中傷投稿への法的対応を進めるうえで、最初に取り組むべきことは証拠の保全です。Threadsの投稿は、削除申請が通じた後や、投稿者が自発的に削除した後には閲覧できなくなります。証拠がなければ、その後の法的手続きを進めることが困難になるため、誹謗中傷投稿を発見したら速やかに記録してください。
スクリーンショットは、投稿の本文・投稿日時・投稿者のアカウント名(ユーザーネーム)・投稿のURL(パーマリンク)が一画面に収まるよう撮影するのが理想です。URLのみの記録では不十分なため、投稿が表示された状態の画面を複数枚保存しておくことが重要です。また、ウェブアーカイブサービス(Internet Archiveなど)を利用して投稿を保全しておくと、より信頼性の高い証拠となります。
Threadsの誹謗中傷投稿を削除する方法
①Threads内の報告(通報)機能を利用する
まずはThreadsのアプリ内で投稿を報告する方法を試みましょう。対象の投稿右上の「…(その他)」メニューから「報告する」を選択し、「嫌がらせ」「虚偽の情報」「ヘイトスピーチ」など、被害の内容に応じたカテゴリを選択します。
Metaの審査を経て、コミュニティガイドライン(利用規約)に違反すると判断された場合は投稿が削除されます。この方法は費用をかけずに試みられる最初のステップです。ただし、報告がすべて削除につながるわけではなく、Metaの判断によって「ガイドライン違反にあたらない」として却下されることもあります。
②情プラ法の削除申出窓口を活用する
2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)により、Meta Platforms, Inc.は2025年4月30日に「大規模特定電気通信役務提供者」(大規模プラットフォーム事業者)として指定されました。この指定を受けたMetaには、Facebook・Instagram・Threadsのすべてのサービスにおいて以下の義務が課されています。
- 削除申出のための専用窓口を設置・公開すること
- 申出から原則として7日以内に対応の可否を判断し、申出者に結果(判断理由を含む)を通知すること
- 削除基準(コミュニティガイドライン等)を策定・公表すること
- 削除を行った場合は発信者(投稿者)にも通知すること
これにより、従来よりも削除申請への対応が迅速化・透明化されました。名誉毀損や侮辱に該当する投稿については、情プラ法に基づく削除申出窓口への申出を積極的に活用しましょう。弁護士名で申出書を送付することで、より真剣に対応してもらえる場合があります。
③仮処分命令の申立て(裁判所を通じた削除請求)
アプリ内報告や情プラ法の窓口への申出を行っても削除されない場合、裁判所に対して投稿の削除(送信防止措置)を求める仮処分命令の申立てを行う方法があります。
仮処分とは、本訴訟(損害賠償請求訴訟など)の前に、緊急の権利保全を目的として行う手続きです(民事保全法23条2項)。名誉権侵害・プライバシー侵害などを被保全権利として、Metaに対し当該投稿の削除を求めます。申立てが認められると、裁判所の命令に基づきMetaは投稿を削除します。審理期間はおおむね1〜2か月程度で、弁護士費用等を合わせると数十万円程度の費用がかかることが一般的です。
投稿者を特定する——発信者情報開示請求の流れ
誹謗中傷の投稿者を特定し、慰謝料等の損害賠償を請求したい場合や刑事告訴を検討する場合には、発信者情報開示請求を行う必要があります。情プラ法(旧プロバイダ責任制限法)では、権利侵害が明らかな場合に、プラットフォーム事業者・プロバイダに対して発信者の情報開示を求める手続きが定められています。
開示請求の2段階手続き
Threadsの投稿者を特定するためには、原則として2段階の手続きが必要です。
第1段階:Metaへの開示命令申立て
裁判所に対し、Meta(コンテンツプロバイダ)への「発信者情報開示命令」を申し立てます。裁判所が申立てを認めた場合、MetaはIPアドレスや投稿日時などの発信者情報を開示します。MetaはAmerican企業ですが、情プラ法の規制対象として指定されているため、日本の裁判所手続きへの対応が求められています。
第2段階:プロバイダへの開示命令申立て
Metaから得たIPアドレス・接続日時等をもとに、当該投稿者がインターネット接続に使用したプロバイダ(NTT・ソフトバンク・auなど)を特定します。そのプロバイダに対して「発信者情報開示命令」を申し立て、氏名・住所の開示を求めます。
これらの手続きは、情プラ法で整備された「非訟手続(発信者情報開示命令事件)」により、一連の手続き内で効率的に進められるようになりました。旧プロバイダ責任制限法下では仮処分と本訴訟の2本立てで対応する必要がありましたが、現在はより迅速な対応が可能です。
ログ保存期間に注意が必要
発信者情報開示請求において特に注意すべきなのが、プロバイダ各社のログ保存期間です。多くのプロバイダでは接続ログを3〜6か月程度しか保存しておらず、この期間を過ぎると投稿者のIPアドレスに紐づく氏名・住所の特定が不可能になります。誹謗中傷被害を受けたら、時間を置かずに弁護士に相談し、速やかに手続きを開始することが非常に重要です。
発信者が判明したら——損害賠償・刑事告訴の選択肢
発信者の氏名・住所が判明した後は、以下のような法的対処を選択・組み合わせることができます。
民事上の損害賠償請求
Threadsでの誹謗中傷が名誉毀損(刑法230条)または侮辱(刑法231条)に該当する場合、民法上の不法行為(民法709条・710条)として投稿者に損害賠償(慰謝料)を請求できます。慰謝料の金額は、投稿内容の悪質性・拡散範囲・被害者への影響度などによって異なりますが、個人間のケースでは数十万円程度の認容例が多く見られます。また、弁護士費用(認容額の10〜20%程度)も損害の一部として請求できる場合があります。
示談交渉が成立した場合には、慰謝料の支払いに加えて、投稿の削除・謝罪・口外禁止条項などを示談書に盛り込むことも可能です。
刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)
悪質な誹謗中傷については、刑事告訴という選択肢もあります。名誉毀損罪(刑法230条、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)や侮辱罪(刑法231条、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金等)として、警察に告訴状を提出する方法です。2022年の刑法改正により侮辱罪の法定刑が引き上げられており、刑事事件化のハードルはやや低下しています。ただし、刑事告訴は被害者自身が告訴状を作成・提出する必要があり、弁護士のサポートを受けることが実務上は一般的です。
内容証明郵便による示談交渉
発信者が判明した後、すぐに訴訟や告訴を行うのではなく、内容証明郵便を送付して示談交渉を行う方法もあります。弁護士名で内容証明郵便を送ることで、相手に法的対応を求める旨を明確に伝え、自主的な解決を促すことが可能です。相手が誠実に対応すれば、費用・時間ともに抑えた解決につながる場合があります。
弁護士に相談すべきタイミング
Threads上の誹謗中傷への対処は、被害の状況に応じて選択すべき手段が異なります。自分だけで対応しようとすると、証拠保全の失敗・ログ保存期間の経過・申請書類の不備など、取り返しのつかないミスにつながることもあります。次のような場合は、できるだけ早期に弁護士にご相談ください。
- アプリ内報告をしても投稿が削除されない
- 投稿者を特定して損害賠償請求や刑事告訴を検討している
- 誹謗中傷が繰り返されており被害が拡大している
- 職業・名誉・プライバシーに関わる深刻な内容の投稿である
- 企業・ブランドへの風評被害が生じている
弁護士に依頼することで、証拠保全から削除申請・仮処分・発信者情報開示請求・損害賠償請求まで、一連の手続きを一貫してサポートしてもらうことができます。また、交渉・裁判手続きの経験が豊富な弁護士であれば、状況に応じて最も効果的な方法を提案してもらえるため、解決の可能性が高まります。
まとめ——Threads誹謗中傷被害への対処は早期行動が鍵
Threads(スレッズ)は急速に普及するSNSであり、誹謗中傷被害のリスクも年々高まっています。2025年4月施行の情プラ法によりMetaが大規模プラットフォーム事業者として指定されたことで、削除申請の窓口が明確化され、7日以内の対応が義務付けられるなど、被害者が権利を行使しやすい環境が整いつつあります。
Threadsでの誹謗中傷被害への対処の流れをまとめると、まず投稿の証拠保全を行い、次にアプリ内の報告機能や情プラ法の削除申出窓口への申出を行います。それでも削除されない場合は仮処分の申立てを検討します。また、投稿者を特定して損害賠償請求等を行いたい場合は、発信者情報開示請求(非訟手続)を早期に開始することが不可欠です。いずれの手続きも、時間が経過するほど対応が難しくなるため、被害を認識したら速やかにご相談ください。
Threadsの誹謗中傷でお困りの方へ——まずは弁護士にご相談ください
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。Threads(スレッズ)をはじめとするSNSでの誹謗中傷被害についても、証拠保全の段階からお気軽にご相談いただけます。
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