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発信者情報開示請求が失敗・棄却されるケースとは?よくある落とし穴と対策を弁護士が解説

発信者情報開示請求が失敗・棄却されるケースとは?よくある落とし穴と対策を弁護士が解説

発信者情報開示請求が失敗・棄却されるケースとは?よくある落とし穴と対策を弁護士が解説

発信者情報開示請求が失敗・棄却されるケースとは?よくある落とし穴と対策を弁護士が解説

「ネットに誹謗中傷を書かれたので、発信者情報開示請求で相手を特定したい」——そう思って手続きを進めたものの、途中で請求が棄却されてしまい、投稿者の特定ができなかった、という話はけっして珍しくありません。

発信者情報開示請求は、令和4年(2022年)のプロバイダ責任制限法改正(非訟手続の導入)、さらに令和7年(2025年)4月施行の情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)によって手続きが整備され、以前よりも利用しやすくなりました。しかし、法律の要件を満たさない場合や、タイミングを誤った場合には、依然として開示が認められないことがあります。

本記事では、発信者情報開示請求が失敗・棄却される主なケースとその理由を整理し、成功率を高めるために被害者がとるべき対策を、弁護士の実務的な視点から解説します。

発信者情報開示請求が認められるための2つの要件

まず前提として、発信者情報開示請求(開示命令申立てを含む)が認められるためには、法律上、次の2つの要件をどちらも満たす必要があります。

  • ①権利侵害の明白性:侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが「明らか」であること
  • ②開示を求める正当な理由:損害賠償請求権の行使など、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること

この「権利侵害が明らか」という要件は、単に「不快な投稿があった」というレベルでは足りません。不法行為の成立を否定するような事情(真実であること、正当な批判の範囲内であること、など)がうかがわれない状態で、権利侵害が明白と認められる必要があります。この2つの要件のどちらかを欠く場合、裁判所(または情プラ法上の申立先機関)による開示命令は認められません。

【失敗ケース①】ログがすでに削除されていた

実務で最も多い失敗パターンの一つが、「開示請求をしたがプロバイダ側にログが残っていなかった」というケースです。

発信者情報開示請求では、コンテンツプロバイダ(SNSや掲示板の運営者)からIPアドレスや投稿日時の開示を受け、その後、アクセスプロバイダ(インターネットサービスプロバイダ、いわゆるISP)に対して契約者情報(氏名・住所など)の開示を請求するという二段階の手続きが必要です。

問題は、ISPがログ(通信履歴)を保存している期間が限られていることです。一般的なISPの場合、ログ保存期間は3〜6か月程度とされており、それを過ぎると自動的に削除されてしまいます。携帯電話キャリア経由の場合、さらに短く2〜3か月程度しか保存されていないこともあります。

【情プラ法による改善点】
2025年の情プラ法施行に際し、総務省はプラットフォーム事業者やISP事業者に対してログを3〜6か月保存することを推奨する方針を示しました。従来の「利用終了後は速やかに破棄」という原則から転換が図られており、今後は保存期間の延長が期待されます。ただし現時点では義務化には至っておらず、事業者によって対応が異なる点に注意が必要です。

したがって、誹謗中傷の投稿を発見したら、できる限り早く弁護士に相談し、手続きを開始することが極めて重要です。「しばらく様子を見てから動こう」という判断が命取りになることがあります。

【失敗ケース②】権利侵害が「明らか」と認められない

開示請求が棄却される最も法的な理由が、①の要件「権利侵害の明白性」が認められないというケースです。具体的にはいくつかのパターンがあります。

(1)同定可能性が立証できない

名誉毀損や侮辱罪が成立するためには、まず「その投稿が特定の人物(=請求者)に向けられたものだ」と読み手が認識できることが必要です。これを「同定可能性」といいます。

裁判例では、「社会一般の人々」を基準とするのではなく、「対象者の属性をある程度知っている人」が閲覧した場合に特定できるかどうかで判断されます。たとえばハンドルネームや職場・業種だけが記載された投稿では、同定可能性が認められにくい場合があります。

一方で、実名でなくても、アカウント名・アイコン・投稿内容の組み合わせから特定の人物と判断できる場合には同定可能性が認められた事例もあります。投稿の内容と文脈を慎重に検討することが必要です。

(2)社会的評価の低下が認められない

名誉毀損が成立するためには、当該投稿が「一般読者の普通の注意と読み方を基準として」、対象者の社会的評価を低下させるものであることが必要です。たとえば、「あの人は最悪」「信じられない」といった抽象的な感情表現にとどまる場合、具体的な社会的評価の低下が認められないとして棄却されることがあります。

(3)意見・論評と判断される

投稿が「事実の摘示」ではなく「意見・論評」として評価された場合も、名誉毀損の成立が否定されやすくなります。事実を具体的に述べているのではなく、「個人的な感想」「意見」の範囲内と判断されると、権利侵害が「明らか」とはいえないとされることがあります。

もっとも、意見・論評であっても侮辱罪の成立は別途検討できる場合があります。弁護士に相談の上、どの権利侵害を主張するかを戦略的に選択することが重要です。

(4)真実性・公益性の主張が通る余地がある

名誉毀損の場合、たとえ社会的評価を低下させる内容であっても、①公共の利害に関する事実であり、②専ら公益を図る目的であり、③その内容が真実であると証明された場合には、違法性が阻却されます(刑法第230条の2)。裁判所が「阻却事由の存在をうかがわせる事情がある」と判断した場合、請求が認められないことがあります。

【失敗ケース③】ログイン型投稿で開示が認められないケース

SNSやWebサービスの多くは、ログイン(認証)してから投稿を行う仕組みをとっています。この場合、問題の投稿を行ったのは「ログイン時」ではなく、その後に投稿ボタンを押した時点です。

プロバイダによっては、投稿操作時のIPアドレスを記録していないことがあり、ログイン時のIPアドレスしか保存されていない場合があります。この「ログイン時のIPアドレス」の開示について、裁判例では判断が分かれていました。開示を否定する裁判例では「ログイン時の通信は問題の権利侵害行為にあたらない」とする一方、肯定する裁判例では「問題の投稿をするために不可欠な通信であるから開示の対象となる」と判断されています。

情プラ法の施行により、開示対象となる発信者情報の範囲が整理されてきていますが、実務上、プラットフォームによる記録方式の違いから、ログイン型投稿への対応が難しいケースは依然として存在します。

【失敗ケース④】手続き上の問題・申立要件の不備

法律の実体的な要件は満たしている場合でも、手続き上の不備によって申立てが却下・棄却されることがあります。

  • 開示命令申立書の記載が不十分(侵害情報の特定、権利侵害の具体的な説明が不足)
  • 証拠として提出したスクリーンショットが不完全(URL・投稿日時が確認できないなど)
  • 申立ての相手方(プラットフォーム事業者等)の特定・選択を誤っている
  • 情プラ法上の手続き(提供命令、開示命令の段階)の流れを正しく踏んでいない

特に、2025年4月施行の情プラ法に基づく手続きは、旧来の仮処分申立てとは手続きの流れが異なる部分があります。制度を正確に理解した上で申立てを行わないと、手続きが遅れてその間にログが削除されてしまうリスクもあります。

失敗を防ぐために被害者ができる対策

上記の失敗ケースを踏まえると、発信者情報開示請求を成功させるためには、以下の対策が効果的です。

(1)発見したらすぐに証拠を保全する

まず行うべきは、問題の投稿のスクリーンショットを撮り、証拠を保全することです。URLや投稿日時・ハンドルネームが確認できるよう、ブラウザのアドレスバーを含めた形で撮影してください。投稿が削除される前に、できるだけ多くの関連情報を記録しておくことが重要です。

(2)早急に弁護士に相談する

ログの保存期間は3〜6か月(携帯キャリア経由では2〜3か月程度)です。誹謗中傷を発見してから弁護士に相談するまでの時間を無駄にすると、ログが削除されて投稿者の特定が不可能になってしまいます。「もう少し様子を見てから」という判断が、結果的に最も大きなリスクとなります。

(3)権利侵害の内容を整理して弁護士に伝える

誰が(同定可能性)、どのような投稿によって(侵害情報の内容)、どのような権利が侵害されているか(名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害など)を整理しておくことで、弁護士が迅速に方針を立てやすくなります。投稿者のアカウント名やプロフィール情報、過去の投稿履歴なども確認して保全しておきましょう。

(4)実績のある弁護士に依頼する

発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法・情プラ法・民事保全法など複数の法律にまたがる専門的な手続きです。法律の要件に合致した申立書の作成、開示される可能性の高い権利侵害の組み合わせの選択、手続きの進行管理など、経験のある弁護士でないと対応が難しい場面が多くあります。

【弁護士に依頼した場合の費用の目安】
発信者情報開示請求の弁護士費用は、事務所や案件の複雑さによって異なりますが、コンテンツプロバイダへの開示命令申立てで着手金10〜20万円程度、アクセスプロバイダへの手続きが別途必要な場合はさらに追加費用が生じるのが一般的です。自動車保険の弁護士費用特約や弁護士保険を利用できる場合、費用の一部が補填されることがあります。

発信者情報開示請求の成功率を左右する重要なポイントまとめ

失敗の原因 内容 対策
ログの削除 プロバイダのログ保存期間(3〜6か月)が過ぎてしまう 投稿発見後すぐに弁護士に相談・手続き開始
同定可能性の欠如 投稿が誰に向けられたか特定できないと判断される 関連する投稿・プロフィール情報を幅広く保全
社会的評価の低下なし 抽象的な悪口・感情表現にとどまると認定されにくい 弁護士と名誉毀損・侮辱の成立要件を確認
意見・論評と判断 事実の摘示ではなく意見表明とみなされる 複数の権利侵害の主張を検討(侮辱も含む)
ログイン型投稿の問題 投稿時のIPが記録されておらずログイン時のみ プラットフォームのログ記録方式を弁護士が確認
手続き上の不備 申立書の記載不足・証拠の不備・相手方の選択誤り 経験のある弁護士に依頼して手続きを進める

まとめ——発信者情報開示請求で後悔しないために

発信者情報開示請求は、ネット誹謗中傷の被害者が投稿者を特定し、法的に責任を追及するための重要な手段です。しかし、ログの保存期間という「タイムリミット」があること、そして法律上の要件を満たさなければ棄却されてしまうことを、あらかじめ理解しておく必要があります。

特に「しばらく様子を見てから動こう」という判断は、その間にログが消えてしまい、後から後悔することになりかねません。誹謗中傷の投稿を発見したら、まず証拠を保全し、できる限り早く弁護士に相談することが、開示請求を成功させる上で最も重要なステップです。

発信者情報開示請求の手続きは、情プラ法の施行により整備が進んでいますが、専門的な知識と実務経験が必要な場面が多くあります。一人で悩まず、ネット誹謗中傷対応の実績がある弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求でお困りの方は、タングラム法律事務所へ

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。ログの保存期間は限られていますので、投稿を発見されたら早めにご相談ください。初回相談はお気軽にどうぞ。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な案件については、弁護士にご相談ください。

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