メルカリの誹謗中傷・悪質コメントへの法的対処法|削除申請・発信者情報開示請求を弁護士が解説
メルカリの誹謗中傷・悪質コメントへの法的対処法|削除申請・発信者情報開示請求を弁護士が解説
「取引コメントに心ない中傷を書き込まれた」「評価欄に事実と異なる悪評を残された」「商品ページに嫌がらせのコメントが何件も届く」——メルカリをはじめとするフリマアプリでの誹謗中傷に悩まされている方は少なくありません。個人間取引という性質上、感情的なトラブルが誹謗中傷にエスカレートしやすく、しかも取引相手の実名がわからないまま泣き寝入りしてしまうケースが多いのが実情です。この記事では、フリマアプリ上の誹謗中傷・悪質コメントに対して取りうる法的対処法を、削除申請の実務から発信者情報開示請求、損害賠償請求まで順を追って解説します。
フリマアプリで起こる誹謗中傷の具体例
フリマアプリにおける誹謗中傷は、主に次のような形で現れます。取引後の評価コメントに「詐欺だ」「対応が最悪」など事実に反する内容を書き込まれるケース、商品説明へのコメント欄で人格を否定するような暴言を受けるケース、さらには取引とは無関係に特定の出品者を狙って複数のアカウントから嫌がらせコメントが送られるケースもあります。近年ではX(旧Twitter)などのSNS上で出品者・購入者の実名や画像とともに誹謗中傷が拡散される二次被害も見られ、フリマアプリ内にとどまらない対応が必要になる場合もあります。
こうした投稿は、単なるマナー違反にとどまらず、名誉毀損や信用毀損、業務妨害などの不法行為に該当する可能性があります。特に個人事業主やせどりを本業としている方にとっては、悪質な評価コメントが取引実績や信用に直結するため、放置すると経済的な損害に発展しかねません。
まずはプラットフォームへの通報・削除申請を
誹謗中傷に気づいたら、まずはメルカリ事務局への通報を検討しましょう。メルカリでは、他ユーザーや第三者への誹謗中傷・嫌がらせ、個人情報の投稿、著作権・商標権の侵害などに該当するコメントは、利用規約に基づき事務局の判断で削除される仕組みが用意されています。アプリ内の「コメントの報告」機能から通報することで、比較的短期間で対応してもらえる可能性があります。
ただし、事務局の削除基準に明確に該当しないと判断された場合や、意見・感想の域を出ないと解釈された場合には、削除申請が認められないこともあります。その場合は、次に説明する法的な手続きを検討する必要があります。
削除申請をすると、投稿自体が消えてしまい、後から発信者情報開示請求や損害賠償請求を行う際に証拠として使えなくなるおそれがあります。通報の前に、問題のコメントが表示された画面全体(投稿日時・アカウント名・URLがわかる形)をスクリーンショットで保存しておくことをおすすめします。
削除されない場合の法的手段——発信者情報開示請求
通報だけでは解決しない場合、2025年4月に全面施行された情報流通プラットフォーム対処法(正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律。旧プロバイダ責任制限法)に基づき、投稿者の情報開示を請求する方法があります。同法第5条は、権利を侵害されたと考える者が、投稿を掲載したプラットフォーム事業者に対して発信者情報の開示を請求できる旨を定めています。
メルカリも自社の窓口で発信者情報開示請求を受け付けており、標準書式に沿った請求書、本人確認資料、権利侵害を証明する資料(問題のコメントのスクリーンショットなど)の提出が必要とされています。手続きの大まかな流れは次のとおりです。
- 必要書類を揃えてメルカリの発信者情報開示請求窓口に提出する
- メルカリが投稿者(発信者)を特定できた場合、開示に関する意見照会を投稿者に対して行う
- 投稿者の回答(同意・不同意)を踏まえ、メルカリが開示の可否を判断する
- 判断結果が請求者に書面で通知される
意見照会の回答待ちなどの事情により、開示までに数ヶ月程度を要することが一般的です。また、氏名や住所といった発信者情報自体はプラットフォーム側では保有していないケースも多く、通信履歴(IPアドレスなど)の開示を受けたうえで、さらに経由プロバイダ(通信キャリアや回線事業者)に対する開示請求へと手続きを進める必要が生じることもあります。この段階では、発信者情報開示命令という非訟手続を利用することで、従来の裁判手続よりも柔軟かつ迅速に一連の手続きを進められる場合があります。書類の記載内容や権利侵害の疎明が不十分だと、開示が認められないリスクもあるため、専門的な判断が求められる場面です。
| 対応手段 | 主な内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| プラットフォームへの通報 | アプリ内のコメント報告機能を利用 | 比較的短期間・無料。ただし削除基準に該当しないと認められないことも |
| 発信者情報開示請求 | 情プラ法第5条に基づきメルカリ等に請求 | 投稿者特定につながるが、意見照会等で数ヶ月かかることが多い |
| 損害賠償請求 | 投稿者に対し慰謝料・営業損害等を請求 | 投稿者特定後に内容証明郵便や訴訟で対応 |
| 刑事告訴 | 名誉毀損罪・侮辱罪等での告訴 | 悪質・継続的な投稿の場合に検討 |
名誉毀損・侮辱罪は成立するか
フリマアプリのコメントであっても、不特定多数が閲覧できる状態であれば、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)の対象となり得ます。具体的な事実を摘示して社会的評価を下げる内容であれば事実摘示型の名誉毀損、事実を示さず単に人格を攻撃する表現であれば侮辱罪が問題となる可能性があります。侮辱罪は2022年の刑法改正により法定刑が引き上げられており、悪質な投稿については刑事告訴という選択肢も検討の余地があります。
一方で、取引に対する率直な感想や苦情の域にとどまる投稿は、正当な意見・論評として違法性が認められないこともあります。誹謗中傷に該当するかどうかは、表現内容や前後の文脈、公共性・公益性の有無などを総合的に考慮して判断されるため、個別の投稿ごとに検討が必要です。
損害賠償請求という選択肢
投稿者を特定できた場合、精神的苦痛に対する慰謝料や、営業上の信用が毀損されたことによる損害について、損害賠償を請求することが考えられます。個人間の少額取引に関連するトラブルであっても、投稿内容が悪質であったり、繰り返し行われていたりする場合には、相応の賠償額が認められる可能性があります。実際、2025年9月にはメルカリが、同社従業員に対してSNS上で誹謗中傷やハラスメント行為を繰り返していた人物について、警察が告訴状を受理し書類送検に至った事案を公表しており、フリマアプリの取引関係から生じた誹謗中傷であっても刑事事件・民事事件双方に発展し得ることが示されています。
まとめ——一人で抱え込まず専門家への相談を
フリマアプリでの誹謗中傷は、取引相手が匿名であることや、被害額が一見小さく見えることから「相談するほどではない」と感じてしまいがちです。しかし、放置すれば投稿がSNSなどで拡散され、被害が拡大する可能性もあります。削除申請の適切なタイミングや文面、発信者情報開示請求に必要な資料の整え方、損害賠償請求の見通しなどは、事案ごとに判断が分かれる専門的な領域です。早い段階で弁護士に相談することで、証拠保全の方法や今後取り得る手続きの選択肢を整理しやすくなります。
フリマアプリの誹謗中傷・悪質コメントでお困りの方へ
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。メルカリなどフリマアプリ特有の事情を踏まえた対応が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
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