マッチングアプリの誹謗中傷への法的対処法|削除申請・発信者情報開示・損害賠償を弁護士が解説
マッチングアプリの誹謗中傷への法的対処法|削除申請・発信者情報開示・損害賠償を弁護士が解説
「マッチングアプリで知り合った相手から心ない言葉を送られた」「アプリのプロフィール写真を無断で転載され、SNSや掲示板で悪口を書かれている」——このような被害を受けて、不安や怒りを抱えながらも、どう対処すればよいかわからずにいる方は少なくありません。
恋活・婚活目的で利用するマッチングアプリは、Pairs(ペアーズ)・Tinder(ティンダー)・Omiai・with・タップルなど多くのサービスが普及し、累計会員数が数千万人を超えるものも珍しくありません。その一方で、マッチングアプリを介したトラブルや誹謗中傷被害も年々増加しています。
本記事では、マッチングアプリに関連する誹謗中傷被害の類型と、削除申請・発信者情報開示請求・損害賠償請求といった法的対処法について、弁護士がわかりやすく解説します。
マッチングアプリで起きる誹謗中傷の類型
マッチングアプリに関連する誹謗中傷は、大きく「アプリ内での被害」と「アプリ外での被害」に分けられます。
①アプリ内メッセージ・コメントによる暴言・侮辱
マッチング後のメッセーゼ機能を通じて、「ブス」「気持ち悪い」「どうせモテないだろ」などの侮辱的な言葉を送りつけられるケースがあります。アプリ内のやり取りであっても、相手の名誉や人格を傷つける発言は、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(刑法230条)に該当しうるほか、民法上の不法行為として損害賠償請求の対象になり得ます。
②プロフィール写真・個人情報の無断転載・晒し行為
アプリに登録したプロフィール写真や氏名・職業・居住地域などの情報を、相手が無断でSNSや匿名掲示板(5ちゃんねる、爆サイなど)に転載し、「この人やばい」「詐欺師」などのコメントとともに投稿するケースがあります。これはプライバシー侵害や名誉毀損にあたる可能性が高く、深刻な被害に発展することがあります。
③なりすまし・偽アカウントの作成
他人の写真や情報を無断使用して、本人に成りすましたアカウントを作成し、出会い目的で悪用したり、誹謗中傷を行ったりするケースもあります。なりすまし被害では、本人の社会的評価が損なわれるだけでなく、第三者との不要なトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
④外部の口コミ・掲示板サイトへの悪評投稿
マッチングアプリの利用経験を装い、特定のユーザーについて「この人は嘘つき」「ヤリモク」「騙された」などと外部の掲示板サイトに投稿するケースもあります。事実無根の書き込みは名誉毀損にあたり得ます。
マッチングアプリの誹謗中傷に適用される法律
| 被害の類型 | 適用される可能性のある法律 |
|---|---|
| 侮辱的なメッセージ・暴言 | 侮辱罪(刑法231条)、民法709条(不法行為) |
| 事実に基づく悪評・晒し投稿 | 名誉毀損罪(刑法230条)、民法709条 |
| プロフィール写真・個人情報の無断転載 | プライバシー権侵害(民法709条)、肖像権侵害 |
| なりすまし・偽アカウント | 名誉毀損、プライバシー侵害、不正競争防止法 |
なお、2022年の刑法改正により侮辱罪の法定刑が引き上げられ、拘禁刑1年以下または30万円以下の罰金等(改正前は「拘留または科料」のみ)となっています。ネット上の誹謗中傷に対する刑事的な対応がより実効性を持つようになりました。
まずやるべきこと:証拠の保全
誹謗中傷被害に遭ったら、最初にすべきことは証拠の保全です。問題の投稿やメッセージが削除されてしまうと、法的対応が困難になります。
- 問題のメッセージや投稿のスクリーンショットを撮影する(日時・URL・アカウント名が見える状態で)
- 投稿URLをメモまたはコピーしておく
- スクリーンショットは複数の端末・クラウドにバックアップする
- 可能であれば、第三者に内容を確認してもらう
アプリ運営・プラットフォームへの削除申請
各マッチングアプリには、利用規約違反の報告や問題コンテンツの削除申談窓口が設けられています。PairsやOmiai、Tinderなどの主要サービスはいずれも「不適切な報告」や「ブロック機能」を備えており、アプリ運営に通報することで、悪質なユーザーへのアカウント停止措置や問題メッセージの削除が行われる場合があります。
また、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)により、一定規模以上のプラットフォーム事業者は、権利侵害の申告を受けた場合に原則7日以内に対応・通知することが義務づけられました。削除申請の実効性は以前より高まっています。
アプリ外のSNSや掲示板に転載・投稿された内容については、各プラットフォーム(X・Instagram・5ちゃんねる等)の削除申請窓口に対して個別に申請する必要があります。
発信者情報開示請求で投稿者を特定する
削除申請だけでは根本的な解決にならない場合や、投稿者を特定して損害賠償を請求したい場合は、発信者情報開示請求の手続きを検討します。
手続きの概要
情プラ法(旧プロバイダ責任制限法)に基づき、以下の流れで発信者の特定を目指します。
- ① コンテンツ事業者への開示命令申立て:裁判所に対し、マッチングアプリ運営やSNS事業者にIPアドレス等の開示を求める非訟手続の申立てを行います。
- ② アクセスプロバイダへの開示命令申立て:取得したIPアドレスをもとに、プロバイダに対して発信者の氏名・住所の開示を求めます。
- ③ 消去禁止命令の活用:ログ削除前に、裁判所を通じてプロバイダにログの消去を禁止する命令を求めることができます。
2021年の法改正(非訟手続の導入)により手続きが大幅に簡素化され、従来2段階で行っていた仮処分手続と比べて迅速化・低コスト化が実現しています。
マッチングアプリ特有の注意点
マッチングアプリは会員登録の際に本人確認書類の提出を義務づけているサービスが多く(Omiai、Pairs等)、その場合は発信者の特定が比較的スムーズに進む可能性があります。一方、Tinderのように海外法人が運営するサービスでは、外国法人への開示請求が必要となり、手続きが複雑になるケースもあります。
損害賠償請求・示談交渉
投稿者が特定できた後は、内容証明郵便カら損害賠償の請求や示談交渉、または民事訴訟の提起を検討します。認められる慰謝料の金額は、投稿内容の悪質性・拡散の程度・被害者への実害などを総合的に考慮して判断されます。判決や示談により金銭賠償が認められた事例では、数十万円から百万円超の賠償を得るケースもあります。
また、悪質性が高い場合は、名誉毀損罪・侮辱罪での刑事告訴を検討することも選択肢の一つです。警察への相談や告訴状の提出については、弁護士のサポートを得ながら進めることをお勧めします。
まとめ:被害を放置しないことが重要です
マッチングアプリに関連する誹謗中傷は、プライバシー侵害・名誉毀損・侮辱など複数の法的問題が絡み合うケースが多く、対処法も被害の類型によって異なります。また、ログの保存期間という時間的な制約もあるため、被害に気づいたら早めに専門家へ相談することが何より重要です。
「証拠を集めてからでないと相談しにくい」と感じる方もいますが、初期段階から弁護士に相談することで、証拠保全から削除申請・開示請求・損害賠償まで、一貫したサポートを受けることができます。
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