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死亡退職金は遺産分割の対象になる?受取人・相続税・遺留分との関係を弁護士が解説

死亡退職金は遺産分割の対象になる?受取人・相続税・遺留分との関係を弁護士が解説

死亡退職金は遺産分割の対象になる?受取人・相続税・遺留分との関係を弁護士が解説

死亡退職金は遺産分割の対象になる?受取人・相続税・遺留分との関係を弁護士が解説

家族が亡くなった後、勤め先の会社から「死亡退職金」が支払われるケースがあります。このとき、「死亡退職金は遺産に含まれるのか」「他の相続人と分け合う必要があるのか」といった疑問を持たれる方は少なくありません。また、相続放棄をした場合に死亡退職金は受け取れるのか、遺留分の計算に関係するのかなど、制度の理解が難しい点が多いのも事実です。

本記事では、死亡退職金の法的な性質と遺産分割との関係、相続税の取り扱い、遺留分との関係について、横浜の弁護士の視点からわかりやすく解説します。死亡退職金をめぐって相続人間でトラブルになるケースも実務上みられますので、ぜひ参考にしてください。

死亡退職金とは何か

死亡退職金とは、従業員が在職中に死亡した場合に、会社がその遺族に対して支払う退職金のことをいいます。「死亡弔慰金」や「遺族給付金」などと呼ばれることもあります。支給される金額は会社の就業規則や退職金規程によって異なり、数十万円から数千万円に及ぶこともあります。

民法には死亡退職金について直接規定した条文はなく、その法的性質や取り扱いは、会社の規程の内容と判例の積み重ねによって判断されています。そのため、「遺産に含まれるのか否か」という点が実務上しばしば問題になります。

原則として遺産分割の対象にはならない

会社の就業規則や退職金規程に、死亡退職金の受給権者(受取人)の範囲や順位が定められている場合、死亡退職金はその規程に定められた受取人の「固有の権利」として発生します。この場合、死亡退職金は被相続人(亡くなった人)の財産を構成しないため、遺産分割の対象にはならないというのが裁判実務における一般的な考え方です。

この点については、最高裁判所の判例(昭和60年1月31日判決)が重要な指針を示しています。この判決では、退職金規程において民法の相続人の範囲や順位と異なる基準で受給権者が定められており、遺族の生活保障を目的とする性質が認められる場合、死亡退職金は受給権者の固有財産であって相続財産には含まれないと判断されました。

ポイント:多くの民間企業の退職金規程では、受取人を「配偶者」「子」「父母」などの優先順位で定めており、この場合は死亡退職金は遺産分割の対象外となります。

例外的に遺産分割の対象になる場合

死亡退職金が遺産分割の対象になるのは、主に以下のような場合です。

(1)就業規則・退職金規程に受取人の定めがない場合

会社の就業規則や退職金規程に死亡退職金の受取人について何も定めがない場合、死亡退職金は被相続人の財産として遺産分割の対象になると解されています。この場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの割合で受け取るかを決める必要があります。

(2)受取人が「被相続人本人」と定められている場合

まれに退職金規程で受取人が「本人」とされているケースがあります。この場合、死亡退職金は被相続人に帰属し、相続財産として扱われる可能性があります。ただし、実際には受取人が本人と定められている場合は退職金の生前払いを念頭においた規程であることが多く、死亡退職金については別途の規定が適用されることがほとんどです。

(3)相続人が受取人として指定されているが、受給権者間で争いがある場合

受取人が複数人いる場合や、規程の解釈について争いがある場合、誰が受取人となるかが問題になることがあります。このような場合は、会社の規程内容の解釈が法的な争点となります。

ケース 遺産分割の対象
就業規則・退職金規程に受取人の定めがある 対象外(固有財産)
就業規則・退職金規程に受取人の定めがない 対象になる
受取人が被相続人本人 対象になる可能性あり

相続放棄した場合でも受け取れる可能性がある

死亡退職金が遺産分割の対象外(固有財産)となる場合、受取人に指定された相続人が相続放棄をしていても死亡退職金を受け取ることができます。これは、死亡退職金が被相続人の遺産ではなく、受取人固有の財産として直接発生するものであるためです。

例えば、亡くなった父に多額の借金があり相続放棄をしたとしても、退職金規程に基づき配偶者(母)が死亡退職金の受取人に指定されていれば、母はその退職金を受け取ることができます。

ただし、就業規則等に受取人の定めがなく死亡退職金が相続財産に含まれる場合は、相続放棄をすると受け取れなくなります。相続放棄を検討する際には、死亡退職金がどちらの性質を持つかを事前に確認することが重要です。

相続税の取り扱い――みなし相続財産と非課税枠

民法上の取り扱いとは別に、税法の観点からは注意が必要です。死亡退職金は、民法上は相続財産でない場合でも、相続税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります(相続税法第3条第1項2号)。

ただし、法定相続人が受け取った死亡退職金については、一定の非課税枠が設けられています。

相続税の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数
(例:法定相続人が3人の場合、500万円×3人=1,500万円まで非課税)

この非課税枠は、死亡退職金を受け取った法定相続人全員が受け取った合計額に対して適用されます。非課税枠を超えた部分は相続税の課税対象となります。なお、相続放棄をした人が死亡退職金を受け取った場合には、この非課税枠の適用を受けることができない点に注意が必要です。

また、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定した退職金がみなし相続財産の対象となります。相続税の申告期限(原則として相続開始から10か月以内)に間に合わない場合でも、後から修正申告が必要になることがあります。

遺留分との関係――原則として算定基礎に含まれない

遺留分の計算を行う際には、遺留分算定の基礎財産(民法第1043条)に何が含まれるかが重要な問題になります。死亡退職金は原則として相続財産に含まれないため、遺留分算定の基礎財産にも含まれないと解されています。

つまり、仮に配偶者が多額の死亡退職金を受け取ったとしても、他の相続人はその退職金を遺留分の計算に組み込んで請求することは、原則としてできません。

ただし、例外的に問題になる場合があります。死亡退職金の額が遺産総額と比べて著しく高額であり、他の相続人との不公平が極端に大きい場合には、特別受益に「準じた扱い」をすべきかどうかが争われることがあります。この点については、生命保険金の特別受益に関する最高裁平成16年10月29日決定の考え方が参考にされる場合があり、「著しく不公平な結果をもたらす特段の事情」があるかどうかが判断のポイントになります。

ただし、現時点では死亡退職金の特別受益該当性について最高裁の直接の判断はなく、下級審の判断も事案によって異なります。このような問題が生じた場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

死亡退職金をめぐる具体的なトラブル事例

死亡退職金に関連して、相続の実務では次のようなトラブルが生じることがあります。

(1)受取人の解釈をめぐる争い

退職金規程に「配偶者、次に子」と定められている場合でも、事実婚の配偶者が含まれるか、認知した子が含まれるかなど、受取人の範囲の解釈をめぐって争いが生じることがあります。

(2)会社の規程が不明確な場合

小規模の会社では退職金規程が整備されていなかったり、規程はあっても死亡退職金の受取人について明確な定めがないケースもあります。この場合、死亡退職金が相続財産に含まれるかどうかが争われます。

(3)遺留分侵害額請求との関係

遺留分を侵害する遺言が存在する場合に、死亡退職金が遺留分の算定にどう影響するかを検討する必要が生じます。死亡退職金が算定基礎に含まれないとすると、遺留分侵害額が増える結果になることもあります。

横浜を中心に相続案件に取り組む弁護士の経験からも、死亡退職金の取り扱いについて当事者間で認識の相違があり、遺産分割協議が難航するケースがみられます。

まとめ――不明な点は早めに弁護士に相談を

死亡退職金の法的な取り扱いは、会社の退職金規程の内容によって大きく異なります。受取人の定めがある場合は固有財産として遺産分割の対象外になる一方、定めがない場合は相続財産として遺産分割の対象となります。また、税法上はみなし相続財産として相続税の対象になる点も見落としがちです。

特に問題になるのが、遺留分との関係です。原則として死亡退職金は遺留分算定の基礎財産に含まれませんが、著しく高額な場合には例外的な主張が認められる可能性もあります。死亡退職金をめぐる相続トラブルは専門的な判断が求められるため、疑問や不安がある場合はなるべく早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

死亡退職金・相続トラブルについてご不明な点はありませんか?

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。死亡退職金の遺産分割への影響や遺留分計算に関するご相談など、横浜の弁護士がお力になります。初回相談は無料ですのでお気軽にお問い合わせください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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