不貞慰謝料の請求が認められないケースとは?2026年最新判例も踏まえ横浜の弁護士が解説
不貞慰謝料の請求が認められないケースとは?2026年最新判例も踏まえ横浜の弁護士が解説
配偶者の不貞行為が発覚し、慰謝料を請求しようと決意したものの、「本当に請求は認められるのだろうか」「途中で棄却されてしまわないか」と不安を感じている方は少なくありません。実際のところ、不貞慰謝料の請求は、一定の要件を満たさなければ認められないケースがあり、準備が不十分なまま請求を進めると、労力と費用をかけても思うような結果が得られないことがあります。
本記事では、不貞慰謝料の請求が棄却されたり大幅に減額されたりする代表的なケースを、2026年6月に下された最新の最高裁判例も踏まえながら解説します。請求が認められるために必要な要件を正しく理解することが、適切な慰謝料回収への第一歩です。
不貞慰謝料が認められるための基本的な要件
不貞慰謝料は、民法上の不法行為責任(民法第709条)に基づいて請求されます。法的に認められるためには、大きく次の3つの要件を充足する必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①不貞行為の存在 | 配偶者と不倫相手の間に、肉体関係(性的関係)があったこと |
| ②婚姻関係の平穏侵害 | 不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなかったこと |
| ③故意または過失 | 不倫相手が相手方の既婚を知っていた、または知り得た状況にあったこと |
これらの要件のうち、一つでも欠ける場合には慰謝料請求が認められない可能性があります。以下では、それぞれの要件に関連する「請求が認められにくいケース」を具体的に見ていきます。
ケース1:不貞行為の時点で婚姻関係が「破綻」していた場合
不貞慰謝料の請求が棄却される最も典型的なケースが、「婚姻関係の破綻」の抗弁が認められた場合です。不貞行為が行われた時点で夫婦関係がすでに実質的に破綻していたと認定されると、不倫相手は保護すべき婚姻の平穏を侵害していないとして、責任を問われない場合があります。
「婚姻関係の破綻」が認められる目安
裁判実務上、婚姻関係の破綻が認定されやすい事情としては、長期間にわたる別居(目安として3〜5年以上)、離婚訴訟・調停が進行中であること、双方が離婚の意思を明確に表明していること、などが挙げられます。一方で、同居を続けていたり、離婚協議が始まっていない段階では、破綻が認定されにくいのが実情です。
なお、婚姻関係の破綻を主張・立証する責任は相手方(被告)側にありますが、裁判ではこの抗弁が頻繁に出てくるため、請求する側もこれを覆す反証を準備しておく必要があります。
2026年6月 最高裁判例:「破綻を信じた相当な理由」という新判断
この分野で特に注目すべき動きが、2026年6月5日に最高裁判所第2小法廷が下した判決です。この判決では、「不倫相手が婚姻関係の破綻を信じた相当な理由があれば、過失が認められない」との初判断が示されました。
事案の概要は次のとおりです。夫婦は2023年6月頃から会話がほぼなくなり、双方がメールで離婚に異論がないことを確認していました。妻は相談相手の男性に自ら記入した離婚届を見せており、その後男性と頻繁に時間を共にするようになりました。二審の高松高裁は男性の賠償責任を認めましたが、最高裁はこれを破棄し、「男性が婚姻関係の破綻を信じたことに相当な理由があるかどうかを改めて検討せよ」として差し戻したのです。
ケース2:不貞行為の証拠が不十分な場合
不貞慰謝料を請求するためには、配偶者と不倫相手の間に「肉体関係があった」と認められる証拠が必要です。「怪しい」「感じが悪い」という印象だけでは、裁判所は慰謝料を認容しません。証拠が間接的なものにとどまり、性的関係の存在を推認させる力が弱い場合には、請求が棄却されるリスクがあります。
証拠として有効性が高いものとしては、ラブホテルへの出入りを記録した写真・動画、探偵(私立探偵)の調査報告書、性的な内容を含むLINEやメッセージのやり取り、不貞行為を認める本人の自白(録音・書面)などが挙げられます。これに対して、二人が親しくしている写真や外出記録のみでは証拠として不十分と判断される傾向があります。
横浜を含む神奈川県内の案件を多数扱ってきた経験から申し上げると、「証拠収集の段階でのミス」が請求を困難にする原因として多く見受けられます。証拠が少ない、あるいは収集方法に問題がある場合は、請求前に弁護士に相談して方針を固めることが重要です。
ケース3:不倫相手が「既婚と知らなかった」(善意無過失)場合
不貞慰謝料を不倫相手(配偶者以外の第三者)に対して請求するためには、その相手方に「故意または過失」があることが必要です。不倫相手が相手方の既婚を知らず(善意)、かつ知らなかったことにつき過失もない(無過失)場合、慰謝料請求は認められない可能性があります。
たとえば、相手方が「独身だ」と積極的に偽っており、不倫相手がその言葉を信じるにつき合理的な理由があった場合、善意無過失として責任が否定されることがあります。ただし、こうしたケースであっても、結婚指輪の着用状況、相手のSNSの内容、家族の存在を窺わせる状況証拠などから「既婚を知り得た」と判断されることも多く、善意無過失の主張が通るかどうかはケースバイケースです。
前述の2026年最高裁判例で示された「婚姻関係の破綻を信じた相当な理由」という基準は、この故意・過失の判断とも密接に関連しており、今後の実務にどのような影響を与えるか、実務家の間でも注目されています。
ケース4:消滅時効が成立している場合
不貞慰謝料の請求権には消滅時効があります。民法第724条によれば、不法行為による損害賠償請求権は、「損害および加害者を知った時から3年」で時効が成立します。不貞行為の事実と不倫相手の存在を知ってから3年が経過してしまうと、相手方による時効の援用(時効の主張)により請求が認められなくなる可能性があります。
なお、加害者を知らない場合でも、不貞行為の時点から20年で除斥期間が経過します。「いずれ請求しよう」と先送りにしている間に時効が到来してしまうケースは実務上も見られます。不貞の事実を把握した時点で速やかに弁護士に相談し、必要に応じて時効を中断する手続き(内容証明郵便の送付、訴訟提起など)を講じることが重要です。
ケース5:請求額が相場から大きく乖離し一部棄却される場合
慰謝料の請求が認められて、その全額が認容されるとは限りません。裁判所は婚姻期間の長短、不貞行為の期間・回数、離婚の有無、精神的被害の程度、双方の事情などを総合的に考慮して慰謝料額を決定します。相場から大幅に乖離した高額請求をした場合、認容額が大きか下回ることがあります。
不貞慰謝料の認容相場はおおむね50万〜300万円程度とされており、離婚に至った場合で長期にわたる不貞が認められるケースで高額傾向にあります。一方、婚姻期間が短い、不貞行為の期間が短い、配偶者との婚姻関係に既に問題があったなどの事情がある場合には減額される傾向があります。根拠なく極端に高額な請求をすることは、交渉を難航させるリスクもあるため注意が必要です。
請求が棄却・減額されないための主な対策
ここまで見てきた「認められないケース」を踏まえると、請求を成功させるためには次のような対策が有効です。
- 婚姻関係の継続・正常を示す証拠を保全する:同居の実態、共同生活の記録、家族行事への参加記録など、婚姻が正常に継続していたことを示す客観的な証拠を確保しておくことが重要です。2026年最高裁判例を踏まえると、この点の証拠がこれまで以上に重要性を増しています。不倫相手に「婚姻は破綻していると信じた相当な理由があった」と主張させないための反証を早期に準備しましょう。
- 不貞行為の証拠を適法な方法で収集する:不倫の事実を裏付ける証拠は、適法な方法で収集する必要があります。違法収集証拠は証拠能力が否定される可能性があるほか、逆に名誉毀損等で責任を問われるリスクもあります。収集方法に迷う場合は、弁護士に事前に相談することをお勧めします。
- 時効が到来する前に行動する:不貞の事実と相手方を知ってから3年が経過する前に、内容証明郵便の送付や法的措置を講じてください。時効の完成猶予・更新の手続きは弁護士が迅速に対応できます。
- 相場に即した請求額を設定する:具体的な事案の事情(婚姻期間・不貞期間・離婚の有無等)に基づいた合理的な請求額を設定することが、交渉・訴訟いずれにおいても重要です。弁護士に見通しを確認してから金額を設定することが望ましいといえます。
まとめ:不貞慰謝料の請求は事前の準備と法的戦略が鍵
不貞慰謝料の請求が認められないケースには、婚姻関係の破綻・証拠不足・善意無過失・時効の成立・相場を超えた高額請求などが挙げられます。特に2026年6月の最高裁判例は、「婚姻関係の破綻を信じた相当な理由があれば過失は認められない」という新たな判断枠組みを示しており、請求する側としては婚姻の継続を示す証拠の重要性がこれまで以上に高まっています。
不貞慰謝料の請求において適切な結果を得るためには、証拠収集の段階から法的知識に基づいた準備を行い、個別事案の事情に応じた戦略を立てることが不可欠です。横浜で不貞慰謝料問題を抱えている方は、早期に弁護士へのご相談をご検討ください。
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タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。証拠の評価から請求方針の策定、示談交渉・訴訟対応まで、横浜の弁護士が丁寧にサポートいたします。
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