不貞慰謝料を請求されたら認めるべき?認める前の注意点を弁護士が解説
不貞慰謝料を請求されたら認めるべき?認める前の注意点を弁護士が解説
ある日突然、配偶者の交際相手から「不貞慰謝料を支払え」という内容証明が届いたり、直接連絡が来たりして、頭が真っ白になっている方は少なくありません。「早く認めて謝れば穏便に済むのではないか」「認めなければもっと大ごとになるのではないか」と、目の前の不安から、つい相手の求めるまま事実を認めてしまいそうになる方も多いはずです。
しかし、不貞慰謝料を請求されたときに、その場で不倫を認めてしまうことには思わぬリスクが潜んでいます。事実であるかどうかにかかわらず、認めるかどうかは、その後の交渉や慰謝料額に大きく影響します。この記事では、不貞慰謝料を請求された際に「認めるべきか」を判断するうえで押さえておきたいポイントを、横浜の弁護士の視点から整理して解説します。
不貞慰謝料を請求されたときにまず確認すべきこと
感情的になって即答する前に、まず落ち着いて状況を整理することが大切です。慰謝料を請求されたら、次の点を確認しましょう。
- 請求の根拠と内容:誰が、いくらを、どのような理由で請求しているのか。内容証明であれば記載内容を保管します。
- 相手が持っている証拠:写真・LINE・自認する発言など、相手がどの程度の証拠を握っているのか。
- 回答期限や連絡方法:期限が示されている場合でも、慌てて満額に応じる必要はありません。
- 時効の可能性:不貞行為から相当期間が経過していないか。
これらを確認しないまま「認める」「支払う」と口にしてしまうと、後から不利な立場に置かれかねません。内容証明が届いた場合の初期対応については、不貞慰謝料の内容証明が届いたときの対応もあわせてご覧ください。
安易に「認める」ことのリスク
「認める」という行為は、単なる謝罪にとどまりません。法的には、自分に不利な事実を認める意思表示として扱われ得ます。
いったん認めると撤回が難しくなる
不利益な事実をわざわざ認める人は少ないため、自認する発言は一般的に信憑性が高いと受け止められます。特に裁判の場で不貞の事実を認める陳述(裁判上の自白)をすると、原則としてこれを自由に撤回することはできず、その事実は証明を要しないものとして扱われます。交渉段階でメールやLINEに「不倫は事実です」「必ず支払います」と書いてしまえば、それ自体が有力な証拠として残ります。
金額面でも不利になりやすい
請求する側は、証拠がそろっていれば裁判になっても事実が認定される可能性が高いと見込み、減額に応じにくくなります。逆に、こちらが早々に全面的に認めてしまうと、争う余地がないと判断され、相場を大きく上回る請求をそのまま受け入れる結果になりかねません。
事実と異なる請求には認めない対応を
不貞行為をしていないのに、配偶者の誤解や思い込みによって請求を受けるケースもあります。この場合、事実でない請求に応じる義務はありません。
民法709条・710条に基づく不貞慰謝料の請求では、慰謝料を請求する側が不貞行為の存在を立証する責任を負います。したがって、身に覚えがないのであれば、まずは相手方に不貞行為の証拠の提示を求め、事実がない旨を書面で明確に伝えることが考えられます。感情的な反論はかえって不利になることもあるため、冷静に対応することが重要です。詳しくは不貞慰謝料を請求されたが身に覚えがない場合の対応で解説しています。
事実である場合:認めたうえで減額を目指す
不貞行為が事実であり、相手が十分な証拠を持っている場合、事実そのものを無理に否定し続けるのは得策ではありません。かえって不誠実と評価され、慰謝料の増額につながることもあります。この場合の現実的な方針は、事実は事実として受け止めつつ、金額の妥当性を争っていくことです。
慰謝料額は、婚姻期間、不貞の期間・回数、婚姻関係が破綻していたかどうか、子の有無などさまざまな事情で変わります。次のような事情があれば、減額が認められる余地があります。
- 不貞行為の前から夫婦の婚姻関係が既に破綻していた
- 不貞行為の期間が短く、回数も少ない
- 請求額が後述の相場を大きく上回っている
- すでに配偶者本人から慰謝料が支払われている(二重取りの防止)
- 支払能力を超えた金額で、分割払いなど現実的な解決が必要
請求額が相場と比べて妥当かどうかの考え方は、不貞慰謝料が高すぎる?相場との比較と減額交渉のポイントもご参照ください。夜職・パパ活に関連して既婚者と知らずに交際していた場合など、事案によっては個別の減額事由が問題となることもあり、請求された慰謝料への対応(減額交渉)の特設ページでも取り扱っています。
不貞慰謝料の相場と減額が期待できる要素
減額交渉の出発点として、慰謝料の相場観を知っておくことは重要です。裁判例から見た不貞慰謝料の目安は、おおむね次のとおりとされています(あくまで幅のある傾向であり、個別事情で変動します)。
| ケース | 慰謝料の目安 |
|---|---|
| 夫婦が離婚も別居もしない場合 | おおむね50万〜150万円程度 |
| 夫婦が別居に至った場合 | おおむね100万〜200万円程度 |
| 夫婦が離婚に至った場合 | おおむね150万〜300万円程度 |
インターネット上でよく見かける「不倫慰謝料=300万円」という数字は、実務感覚ではむしろ高額な部類で、実際の解決額はこれより低くなることも多くあります。相手の提示額がこの目安を大きく超えている場合には、相場を根拠に減額を求める余地があります。
時効を主張できる場合もある
不貞慰謝料の請求権は、民法724条により、被害者が損害および加害者を知った時から3年、または不貞行為の時から20年の経過で時効により消滅します。過去の不貞について長期間経過してから請求された場合には、消滅時効を主張できる可能性があります。時効の期間や起算点は事案ごとの判断が必要になるため、慎重な検討が求められます。
よくある質問
不貞慰謝料を請求されたら、まず不倫を認めるべきですか?
その場で認める必要はありません。認めた事実は交渉や裁判で不利に働くことがあり、いったん認めると撤回が難しくなる場合もあります。請求書の内容や証拠の有無を確認し、対応を検討したうえで回答するのが安全です。
不貞行為をしていないのに請求された場合はどうすればよいですか?
事実でない請求に応じる義務はありません。慰謝料を請求する側が不貞行為の存在を立証する責任を負うため、まずは相手方に証拠の提示を求め、身に覚えがない旨を書面で明確に伝えることが考えられます。
不倫が事実の場合、認めたうえで減額を求めることはできますか?
できる場合があります。婚姻関係が既に破綻していた、不貞期間が短い、請求額が相場より高いといった事情があれば、減額が認められる余地があります。相場を踏まえた交渉が重要です。
不貞慰謝料の消滅時効は何年ですか?
民法724条により、被害者が損害および加害者を知った時から3年、または不貞行為の時から20年で時効により消滅します。時効期間の経過が見込まれる場合、その旨を主張できることがあります。
相手に「認めなければ会社や家族に言う」と言われました。応じるべきですか?
威圧的な言動に押されて安易に応じる必要はありません。事案によっては相手方の言動が問題となる場合もあります。冷静に対応し、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
不貞慰謝料を請求されたとき、「認めるべきか」は状況によって答えが異なります。事実と異なる請求であれば、相手に立証責任がある以上、安易に認めず証拠の提示を求める対応が考えられます。事実である場合でも、その場で全面的に認めて満額に応じるのではなく、相場や個別事情を踏まえて金額の妥当性を争う余地があります。いずれにしても、確認と検討をしないまま勢いで認めてしまうことは避けるべきです。
相手が弁護士を立てている場合や、請求額が相場を大きく超えている場合には、ご自身だけで対応すると不利な条件で示談してしまうおそれがあります。請求された側が弁護士に依頼するメリットや費用については、不貞慰謝料を請求されたら弁護士に依頼すべき?費用とメリットもあわせてご確認ください。
不貞慰謝料を請求され、どう対応すべきか迷っている方へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。認めるべきかの判断から減額交渉、示談書の作成まで、請求された側の立場に立って横浜の弁護士がサポートいたします。まずはお早めにご相談ください。
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