タングラム法律事務所

Google マップ口コミの正確な投稿日時・最終編集日時をChrome開発者ツールで特定する方法|発信者情報開示請求の実務

Google マップ口コミの正確な投稿日時・最終編集日時をChrome開発者ツールで特定する方法|発信者情報開示請求の実務

Google マップ口コミの正確な投稿日時・最終編集日時をChrome開発者ツールで特定する方法|発信者情報開示請求の実務

Google マップ口コミの正確な投稿日時・最終編集日時をChrome開発者ツールで特定する方法|発信者情報開示請求の実務

【連載:発信者情報開示請求のための証拠収集技術】
本記事は、発信者情報開示請求や削除請求の実務で必要となる技術的証拠収集の方法を解説するシリーズの第1回です。今後、Instagram・Threads等の投稿日時の特定方法、スクリーンショットの正しい保全方法なども取り上げる予定です。

Google マップの口コミには、正確な投稿日時が表示されません。画面上に見えるのは「3か月前」「1年前」といった相対的な表示だけです。しかし、発信者情報開示請求や損害賠償請求の実務では、秒単位の正確な投稿日時が必要になる場面があります。

本記事では、Google マップの内部APIレスポンスを利用して、投稿日時だけでなく最終編集日時も正確に特定できるChrome開発者ツール(DevTools)の活用方法を、法的な意義とあわせて解説します。

1.なぜ正確な投稿日時・最終編集日時が必要か

① 侵害関連通信の特定(発信者情報開示請求)

発信者情報開示請求では、情報流通プラットフォーム対処法5条3項の「侵害関連通信」の特定が重要です。同法施行規則5条は、侵害関連通信を「侵害情報の送信と最も時間的に近接する」ものとしています。

Googleから開示されるのは主に「ログイン日時」と「IPアドレス」です。この開示されたログイン日時が、口コミの投稿日時と「最も時間的に近接している」かを判断するためには、口コミの正確な投稿日時が不可欠です。

【実務上のポイント】
発信者情報開示命令の申立てにあたり、Googleは「投稿日時は発信者の特定に資する情報(法2条6号)に当たらない」と反論することがあります。これに対し、「侵害関連通信の選別のために必要」と再反論することで、投稿日時の開示請求が認められるケースがあります。

② 損害賠償請求における遅延損害金の起算日

投稿者を特定して損害賠償請求訴訟に移行した場合、遅延損害金の起算日となる不法行為時点(投稿日時)を正確に特定する必要があります。「3か月前」という表示では、起算日が特定できません。

③ 最終編集日時が重要な理由

口コミが投稿後に編集された場合、編集時のIPアドレスが投稿時と異なる可能性があります。Googleのログイン記録が開示された際、どのログインが「投稿」に対応し、どれが「編集」に対応するかを判別するために、最終編集日時の特定が重要になります。

2.Google マップの表示の限界

Google マップのUI上では、投稿日時は「1週間前」「3か月前」「2年前」のような相対表示のみです。最終編集がある場合は「最終編集: 1か月前」と表示されますが、やはり正確な日時は分かりません。

Google マップの公式APIでもタイムスタンプは取得できますが、APIキーの取得や費用が必要になるなど、手軽ではありません。一方、Chrome開発者ツールを使う方法は無料・即座に利用可能で、法律実務家にとって最も現実的なアプローチです。

【注意】 この方法はChrome(Google Chrome)でのみ動作します。Microsoft EdgeやSafariでは同じ手順では機能しません。また、すべての口コミで必ずこの手順が使えるわけではありません(使えない場合の代替方法は後述します)。

3.Chrome開発者ツールを使った取得手順

事前準備:「寄与」ページのURLを確認する

この方法では、口コミ投稿者の「寄与」ページ(Googleマップへの投稿一覧ページ)にアクセスすることで、APIレスポンスを取得します。

対象の口コミを表示し、投稿者名またはアイコンをクリックします。投稿者のプロフィール(寄与)ページが開いたら、そのURLをコピーしておきます。URLは以下の形式になっています。

https://www.google.com/maps/contrib/投稿者ID/place/施設ID/

Step 1:Chrome開発者ツールを開く

操作方法

Chrome上で F12キーを押すか、画面右上の「⋮」メニューから「その他のツール」→「開発者ツール」を選択します。画面の右側または下部に開発者ツールのパネルが表示されます。

Step 2:「ネットワーク」パネルを開き、フィルタを設定する

操作方法

  1. 開発者ツール上部のタブから 「ネットワーク」(Network) をクリックします。
  2. パネル内の「フィルタ」入力欄に time と入力します。これにより、URLに「time」を含むリクエストだけが表示されるようになります。

Step 3:「寄与」ページのURLを貼り付けてアクセスする

操作方法

開発者ツールを開いたまま、先ほどコピーした「寄与」ページのURLをアドレスバーに貼り付け、Enterキーを押します。ページが読み込まれると、ネットワークパネルにいくつかのリクエストが表示されます。

Step 4:「pc?gl=」で始まるリクエストをクリックする

操作方法

ネットワークパネルの「名前(Name)」列に表示されたリクエストの中から、「pc?gl=」で始まるものをクリックします。右側に詳細パネルが表示されます。

Step 5:「プレビュー」タブを選択し、データを展開する

操作方法

  1. 詳細パネル上部のタブから 「プレビュー」(Preview) をクリックします。
  2. JSONデータのツリーが表示されます。「▶ 7」 という項目を探してクリックし、展開します。
  3. さらにその中の配列を展開すると、16桁の数値が2つ並んでいる箇所が見つかります。
【ツリー構造のイメージ】
展開した配列の中に次のような構造が含まれています(一部省略):
[ ..., 1674919525465957, 1776493826005436, ..., "最終編集: 1 か月前", ... ]
この2つの16桁の数値がタイムスタンプです。

4.タイムスタンプの読み方と変換方法

数値の意味

取得できる16桁の数値は、Unix時間(マイクロ秒単位)です。Unix時間とは「1970年1月1日00:00:00(UTC)からの経過時間」を数値で表したものです。

桁数 単位
10桁 秒(seconds) 1674919525
13桁 ミリ秒(milliseconds) 1674919525465
16桁 マイクロ秒(microseconds)← Google マップはこれ 1674919525465957

Google マップのAPIが返すのは16桁のマイクロ秒単位です。一般的な変換ツールは10桁(秒)または13桁(ミリ秒)を前提としているため、先頭の10桁だけを使う必要があります。

変換方法①:オンラインの変換ツールを使う(最も簡単)

以下のような無料のオンラインツールを使うと、秒単位のUnix時間を日付に変換できます。

  • 高精度計算サイト(CASIO):https://keisan.casio.jp/exec/system/1526004418
  • EpochConverter:https://www.epochconverter.com/

16桁の数値 1776493826005436 の場合、先頭10桁1776493826)を変換ツールに入力します。

【タイムゾーンに注意】
Unix時間はUTC(協定世界時)基準です。日本時間(JST)はUTC+9時間ですので、変換結果の時刻に9時間を足した時刻が日本時間になります。多くの変換ツールにはJST表示の設定があります。

変換方法②:Chromeコンソールで変換する(より精度が高い)

開発者ツールの「コンソール」タブに以下のコードを入力することで、日本時間で直接表示できます。

new Date(1776493826005436 / 1000).toLocaleString('ja-JP', {timeZone: 'Asia/Tokyo'})

このコードは、16桁のマイクロ秒値を1000で割ってミリ秒に変換し、日本時間で表示します。数値の部分を実際に取得した数値に置き換えてください。

出力例:"2026/4/18 15:28:46"

5.投稿日時と最終編集日時の見分け方

展開したデータの中に16桁の数値が2つ並んでいる場合、次のルールで判別します。

位置 意味 確認方法
左側(先に表示) 投稿日時 変換結果がUIの「○日前」「○か月前」と一致する
右側(後に表示) 最終編集日時 UIに「最終編集: ○か月前」と表示されている場合、その表示と一致する

2つの数値が同一の場合は、投稿後に編集が行われていないことを意味します。

データの少し下には、"最終編集: 1 か月前" のような文字列が含まれています。この文字列の存在が、直上の数値が最終編集日時であることを裏付けます。

【実務上の意義】
投稿日時と最終編集日時が大きく離れている場合(たとえば投稿から1年後に編集されている場合)、編集時のIPアドレスを確認するため、Googleへの発信者情報開示請求において「編集日時」の情報も請求対象に含めることを検討すべきです。

6.この方法が使えないケースと代替手段

この手順は多くの口コミで有効ですが、Googleの仕様によっては「pc?gl=」のリクエストが見つからないケースもあります。その場合は以下の代替手段を試みてください。

代替手段:ページのソースコードから探す

対象ページで Ctrl+U(Windowsの場合)を押してHTMLソースを表示し、口コミの中に登場する施設名や地名で検索します。該当箇所の近くに16桁の数値が含まれていることがあります。ソースコード内の数値は前後の文脈から判断し、UIの「○日前」表示と照合することで正確な日時を絞り込めます。

7.取得した日時を証拠として活用するための注意点

スクリーンショットの保全

開発者ツールで取得したタイムスタンプは、必ず以下を一組にしてスクリーンショットを保存してください。

  • Google マップのUI画面(口コミ全文、「最終編集: ○か月前」の表示、URLが見えるアドレスバー)
  • 開発者ツールのネットワーク画面(タイムスタンプの数値が見える状態)
  • 変換ツールの画面(入力した10桁の数値と変換後の日本時間)
【スクリーンショットのベストプラクティス】
Windowsの場合 Snipping Tool、Macの場合 ⌘+Shift+3(全画面)または ⌘+Shift+4(範囲指定)が使えます。保存したファイルのメタデータ(作成日時)も証拠の補強になります。

削除前の保全が最優先

口コミはいつでも削除・編集されます。発見次第、すみやかにスクリーンショットを撮影してください。重要な事件では、公証役場における確定日付の取得や、ウェブページの証拠保全申立ても検討してください。

Wayback Machine(インターネットアーカイブ)の確認

https://web.archive.org/ でURLを入力すると、過去にアーカイブされた口コミページが見つかる場合があります。アーカイブのキャプチャ日時から、口コミが少なくとも「その日時以前に存在していた」ことの補強証拠になります。

まとめ

Google マップの口コミには正確な日時が表示されませんが、Chrome開発者ツールを使うことで、投稿日時・最終編集日時を秒単位で特定できます。

  • ネットワークパネルを「time」でフィルタし、「pc?gl=」リクエストを探す
  • プレビューで展開したデータの中の16桁数値が投稿日時・最終編集日時
  • 先頭10桁をUNIX変換ツールに入力し、JST(+9時間)に換算する
  • 2つの数値がある場合:左=投稿日時、右=最終編集日時
  • スクリーンショットは必ず3点セットで保全する

発信者情報開示請求においては、この方法で特定した投稿日時が侵害関連通信の選別において重要な役割を果たします。また、最終編集日時の特定により、開示されたログイン記録のどの時点が問題の行為に対応するかを絞り込むことが可能になります。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的アドバイスではありません。具体的な事案への対応については、弁護士にご相談ください。Googleの仕様は予告なく変更される場合があります。本記事の手順は執筆時点(2026年6月)の仕様に基づいています。

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