タングラム法律事務所

相続した借金はどうなる?プラスとマイナスの財産の扱いと対処法を弁護士が解説

相続した借金はどうなる?プラスとマイナスの財産の扱いと対処法を弁護士が解説

相続した借金はどうなる?プラスとマイナスの財産の扱いと対処法を弁護士が解説

相続した借金はどうなる?プラスとマイナスの財産の扱いと対処法を弁護士が解説

「親が亡くなったが、借金があるかもしれない」「相続すると借金まで引き継いでしまうのだろうか」——相続が発生した際、こうした不安を抱える方は少なくありません。遺産というと預貯金や不動産などプラスの財産をイメージしがちですが、被相続人(亡くなった方)が残した借金や債務(マイナスの財産)も相続の対象になります。

本記事では、相続財産における借金・債務の基本的な取り扱い、債務を誰がどのような割合で引き継ぐのか、連帯保証債務や特殊な債務の問題、そして借金が多すぎる場合の対処法まで、横浜で相続問題に取り組む弁護士の視点からわかりやすく解説します。

相続財産にはマイナスの財産も含まれる

民法第896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めています。ここでいう「一切の権利義務」には、預貯金・不動産・株式などプラスの財産(積極財産)だけでなく、借金・未払い税金・未払い家賃・損害賠償義務などマイナスの財産(消極財産・相続債務)も含まれます。

つまり、相続を「単純承認」した場合(後述)、相続人はプラスの財産と合わせて借金も自動的に引き継ぐことになります。被相続人に多額の借金があることが判明した場合でも、何もしなければ相続人がその返済義務を負うことになるため、早期に財産調査を行うことが非常に重要です。

借金(相続債務)は誰がどれだけ引き継ぐか

法定相続分に応じた当然分割

被相続人が金融機関などに対して負っていた金銭債務(借金)は、相続開始と同時に、各相続人がその法定相続分に応じて当然に分割して引き継ぐとするのが最高裁判所の考え方です(最判昭和34年6月19日など)。「当然分割」とは、遺産分割協議をしなくても、相続開始の時点で法律上自動的に分割されるという意味です。

例えば、被相続人が1,000万円の借金を残し、相続人が配偶者と子2名の場合、法定相続分は配偶者1/2・子各1/4となります。この場合、配偶者は500万円、子はそれぞれ250万円の借金を当然に引き継ぎます。

相続人の構成 法定相続分 借金1,000万円のうち負担する金額(目安)
配偶者 1/2 500万円
子(第1子) 1/4 250万円
子(第2子) 1/4 250万円

遺産分割協議で「誰かが全部引き受ける」と決めても債権者には対抗できない

「長男が借金を全部まとめて引き受ける」という内容で遺産分割協議を行うことは可能です。しかし、この取り決めはあくまで相続人間の内部的な合意にすぎず、債権者(貸金業者・銀行など)には効力が及びません。債権者は、法定相続分に応じて各相続人に返済を請求し続けることができます。

ただし、債権者が遺産分割の内容を了承し、免責的債務引受(他の相続人の債務を引き受けた相続人が単独で負担し、他の相続人が免責される)に同意した場合は別です。実務上は、相続人代表者が借金を引き受けて他の相続人分も返済するという取り決めをした後、債権者との交渉で免責的債務引受の合意を取り付けるケースもあります。弁護士に依頼して交渉を進めることが有効な場合があります。

連帯保証債務の相続に注意

見落としやすい重要な問題が、被相続人が「連帯保証人」になっていた場合です。被相続人が他人の借金の連帯保証人になっていた場合、その地位も相続人が引き継ぎます(民法第896条)。連帯保証人としての地位を相続した場合、主たる債務者が返済を怠ると、相続人が保証債務の履行を求められる可能性があります。

連帯保証債務についても、相続人が複数いる場合は法定相続分に応じて分割されて引き継がれます。ただし、主債務者が返済不能に陥った場合には多額の請求を受けるリスクがあるため、連帯保証人の地位を相続したことが判明した際は、早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

【調査のポイント】 被相続人が連帯保証人になっているかどうかは、通帳や郵便物だけでは判明しにくい場合があります。信用情報機関(CIC・JICCなど)への照会や、被相続人が交わした契約書類の調査が有効です。

相続税における「債務控除」とは

相続税の観点では、被相続人の借金(債務)はプラスの相続財産から差し引くことができます。これを「債務控除」といいます(相続税法第13条)。債務控除の対象となる主な項目は以下のとおりです。

  • 金融機関や個人からの借入金(住宅ローン・アパートローン等を含む)
  • 事業上の買掛金・未払金
  • 未払いの医療費・介護費用
  • 未払いの所得税・固定資産税等の税金
  • クレジットカードの未払い残高
  • 葬式費用(墓石・墓地の費用等は原則対象外)

債務控除を活用することで相続税の課税対象となる財産額が減少し、相続税の負担が軽くなる場合があります。ただし、相続放棄をした相続人は債務控除を受けることができないため、相続放棄を検討する場合は税務上の影響も含めて検討することが重要です。

借金が多い場合の3つの選択肢

被相続人の借金がプラスの財産を上回る(または上回る可能性がある)場合、相続人には以下の3つの選択肢があります。いずれの手続きも、相続の開始を知ってから原則3か月以内(民法第915条)に判断する必要があります。

① 単純承認——プラス・マイナスすべてを引き継ぐ

何も手続きをしなかった場合、または相続財産を処分・消費するなど単純承認とみなされる行為をした場合(民法第921条)、単純承認となり、プラスの財産もマイナスの財産もすべてを無限に引き継ぎます。借金がプラスの財産を超えても、自己の財産から返済する義務を負います。

② 相続放棄——相続人でなくなる

家庭裁判所に「相続放棄」の申述を行うことで、最初から相続人ではなかったものとみなされます(民法第939条)。相続放棄をした場合、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぎません。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 原則として相続開始を知ってから3か月以内に申述しなければならない
  • 放棄した相続人がいる場合、次順位の相続人に相続権が移る(放棄の連鎖に注意)
  • 生命保険金の受取人として指定されている場合、保険金は受け取れる(ただし相続税の非課税枠の計算等は異なる場合がある)
  • すでに相続財産を処分・消費している場合は放棄できない可能性がある

③ 限定承認——プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ

「限定承認」は、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産(借金)を引き継ぐという選択肢です(民法第922条)。財産の調査が不十分で借金の全貌が不明な場合や、特定の財産(家業・自宅等)を手元に残したい場合に有効な手続きです。ただし、限定承認は相続人全員が共同して申述する必要があり(民法第923条)、手続きが煩雑なため実務上あまり利用されていません。また、相続財産についてみなし譲渡所得税が生じる場合があるため、税理士とも連携した対応が求められます。

選択肢 内容 申述期限 注意点
単純承認 プラス・マイナスすべて引き継ぐ なし(放棄・限定承認しなければ自動的に単純承認) 借金がプラス財産を超えると自己財産から返済義務あり
相続放棄 相続人でなくなり、一切引き継がない 原則3か月以内 次順位の相続人に権利が移る
限定承認 プラス財産の範囲内でのみマイナス財産を引き継ぐ 原則3か月以内(全員共同申述) 手続きが複雑・みなし譲渡所得税が生じる場合あり

3か月の熟慮期間を過ぎてしまった場合

相続放棄や限定承認の申述期限(熟慮期間)は原則3か月ですが、例外的に期間を延長できる場合や、期間経過後でも相続放棄が認められる場合があります。

最高裁判所の判例(最判昭和59年4月27日)は、「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認または相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人においてそのように信じたことについて相当な理由があると認められるとき」には、相続放棄の熟慮期間は「相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識できる時」から起算するものとしました。

つまり、被相続人に借金があることをまったく知らなかった場合などには、3か月を経過した後でも相続放棄が認められる可能性があります。ただし、こうした例外的な扱いは個別事情によって判断が分かれる傾向がありますので、早期に弁護士に相談することが重要です。

借金の存在を調べる方法

被相続人にどのような債務があるかを把握するため、以下の方法で調査することが考えられます。

  • 信用情報機関への照会:CIC(株式会社シー・アイ・シー)・JICC(日本信用情報機構)・全国銀行個人信用情報センター(KSC)に対して、被相続人の信用情報開示請求を行う方法があります。
  • 郵便物・通帳・書類の確認:金融機関からの請求書・督促状・返済明細書などを確認します。
  • 法務局での登記情報取得:不動産に設定されている抵当権や担保の情報を確認します。
  • 税務署・市区町村への問い合わせ:未納の税金がないか確認します。

調査に時間がかかると予想される場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申請することができます(民法第915条第1項ただし書)。申請が認められると3か月以上の熟慮期間が与えられる場合があります。

まとめ:借金の相続問題は早めに弁護士へ

相続における借金・債務の問題は、放置すると取り返しのつかない事態を招くことがあります。熟慮期間(原則3か月)を過ぎると相続放棄ができなくなる可能性が高く、単純承認したものとみなされると相続人が借金返済の義務を負い続けることになります。

被相続人の財産状況が不明な場合や、借金が多い可能性がある場合は、早期に専門家に相談して財産調査を進めることが重要です。また、連帯保証債務など見えにくいマイナスの財産が潜んでいるケースもあるため、注意が必要です。横浜をはじめとする神奈川県内での相続問題についても、弁護士への早期相談をお勧めします。

相続した借金・債務のことでお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。「親に借金があったかもしれない」「相続放棄すべきか判断できない」「連帯保証人の地位を引き継いでしまったかもしれない」といったご不安がある場合は、横浜の弁護士にお気軽にご相談ください。熟慮期間内に適切な判断ができるよう、迅速にサポートいたします。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

スムーズに進める横浜の相続対応

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。