数次相続とは?相続手続き中に相続人が亡くなった場合の遺産分割・登記・相続税を弁護士が解説
数次相続とは?相続手続き中に相続人が亡くなった場合の遺産分割・登記・相続税を弁護士が解説
「父が亡くなって遺産分割の話し合いをしている最中に、今度は母まで亡くなってしまった」「祖父名義のままの実家を整理しようとしたら、その間に相続人だった父も他界していて、誰が何を相続するのか分からなくなった」――このように、ひとつの相続の手続きが終わらないうちに、相続人がさらに亡くなってしまうケースは決してめずらしくありません。こうした状態を「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。
数次相続が起きると、話し合いに参加すべき相続人が一気に増え、遺産分割協議書の作り方や不動産の名義変更(相続登記)、相続税の申告期限まで、通常の相続とは異なる注意点が出てきます。本記事では、数次相続の基本から、よく混同される代襲相続との違い、遺産分割・相続登記・相続税それぞれのポイントまで、横浜で相続案件を扱う弁護士の視点で整理します。
数次相続とは?まず押さえたい基本
数次相続とは、ある人が亡くなって相続が開始した(一次相続)ものの、その遺産分割協議や不動産の名義変更などの手続きが完了する前に、相続人の一人がさらに亡くなって新たな相続(二次相続)が発生した状態をいいます。手続きが終わらないうちに相続が重なって発生するため、「数次(=複数回続く)相続」と呼ばれます。
たとえば、父が亡くなり、相続人が母・長男・長女の3人だったとします。父の遺産分割協議がまとまらないうちに母も亡くなった場合、母が父から相続するはずだった権利は母の相続人である長男・長女に引き継がれ、父の遺産分割と母の遺産分割の両方を同時に考えなければならなくなります。長期間放置されたケースほど数次相続が積み重なりやすく、数十年前に亡くなった方の名義のまま不動産が残っている場合には、相続人が数十人にのぼることもあります。
数次相続と代襲相続の違い
数次相続は「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と混同されがちですが、両者は相続人が亡くなったタイミングが異なります。違いをひと言でいえば、相続人の死亡が被相続人の死亡より「前」か「後」かという点です。
| 項目 | 数次相続 | 代襲相続 |
|---|---|---|
| 相続人が亡くなった時期 | 被相続人が亡くなった「後」(手続き完了前) | 被相続人が亡くなる「前」(またはすでに死亡) |
| 相続権の承継 | 亡くなった相続人の相続人がその地位を引き継ぐ | 亡くなった人の子(孫など直系卑属)が代わりに相続する(民法第887条第2項など) |
| 関係者の広がり | 亡くなった相続人の配偶者なども関与する場合がある | 原則として直系卑属に限られる |
重要なのは、数次相続では「亡くなった相続人の配偶者」も新たな相続人として関与する場合があるという点です。たとえば先ほどの例で、母ではなく長男が父の後に亡くなっていた場合、長男の配偶者(妻)と長男の子が長男の地位を引き継ぐため、もともと血縁関係になかった人まで遺産分割の話し合いに加わることになります。これに対し代襲相続では、相続権が引き継がれるのは原則として子や孫といった直系卑属に限られます。この違いから、数次相続のほうが関係者が広がり、手続きが複雑になりやすい傾向があります。
数次相続で手続きが複雑になりやすい理由
数次相続では、次のような事情が重なって、通常の相続よりも手続きが複雑になりやすくなります。
- 相続人の数が増える:一次相続と二次相続の相続人を合わせて確定する必要があり、関係者が大幅に増えることがあります。
- 面識のない相続人が登場する:亡くなった相続人の配偶者やその親族など、これまで交流のなかった人と協議しなければならない場合があります。
- 戸籍収集の負担が大きい:一次相続・二次相続それぞれの被相続人について、出生から死亡までの戸籍をたどって相続人を確定する必要があります。
- 誰が何を相続するか整理が難しい:権利関係が二重・三重になり、各人の取り分の計算が複雑になります。
数次相続の遺産分割協議書の書き方と注意点
数次相続では、遺産分割協議書の作り方にも工夫が必要です。実務上は、一次相続と二次相続それぞれについて協議書を分けて作成する方法と、1通にまとめて作成する方法があります。どちらの形式が適切かは、提出先である法務局や金融機関の取扱いによって異なる場合があるため、事前に確認したうえで判断することが望ましいといえます。
「相続人兼被相続人」という肩書きの記載
数次相続の遺産分割協議書では、すでに亡くなっている相続人について、署名欄に「相続人兼被相続人」と記載するのが一般的です。たとえば、父の相続について協議する中で、相続人であった母がすでに亡くなっている場合、母は「父の相続人」であると同時に「(母自身の)被相続人」でもあるため、このような表記を用います。亡くなった人自身は署名・押印ができないため、その地位を引き継いだ相続人が署名・実印で押印し、印鑑証明書を添付することになります。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であり、一人でも欠けると無効と判断される可能性があります。数次相続では関係者の確定が特に重要になるため、戸籍をたどって相続人を漏れなく把握することが出発点となります。
数次相続と相続登記|中間省略登記と義務化への対応
不動産が遺産に含まれる場合、数次相続では「相続登記をどう進めるか」が大きな論点になります。原則として、相続登記では中間の名義人を飛ばして最終的な相続人へ直接登記する「中間省略登記」は認められていません。本来であれば、一次相続による名義変更、二次相続による名義変更と、順番に登記する必要があります。
もっとも、数次相続では一定の条件を満たす場合に中間省略登記が認められるとされています。具体的には、中間の相続が「単独相続」であった場合、すなわち遺産分割や相続放棄、遺言などによって中間の相続人が1人に確定していた場合には、その中間の登記を省略して直接最終相続人名義にできる扱いがあるとされています。個別のケースで省略が認められるかどうかは登記実務上の判断によるため、司法書士や弁護士など専門家への確認が安心です。
相続登記の義務化(2024年4月施行)に注意
2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続で取得した相続人は、原則として相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負い、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となり得ます(不動産登記法第76条の2など)。この義務化は施行前に発生していた相続にも適用される点に注意が必要で、長年放置してきた数次相続の不動産も対象となります。古い名義のまま放置している不動産がある場合は、早めに権利関係を整理しておくことが望ましいといえます。
数次相続と相続税|申告期限の延長と相次相続控除
数次相続では、相続税の取扱いにも特有のルールがあります。代表的なものが「申告期限の延長」と「相次相続控除」です。
申告期限の延長(相続税法第27条第2項)
相続税の申告・納付期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。ただし、一次相続の相続税を申告すべき人が、その申告期限前に亡くなってしまった場合(=その人について二次相続が発生した場合)、亡くなった人が行うはずだった一次相続の申告については、その人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に延長されます(相続税法第27条第2項)。なお、他の相続人の申告期限まで一律に延びるわけではない点には注意が必要です。
相次相続控除(相続税法第20条)
短い期間に相続が続いて発生すると、同じ財産に相続税が二重に近い形でかかり、負担が重くなりがちです。これを緩和するのが「相次相続控除」です。前回の相続(一次相続)から今回の相続(二次相続)までが10年以内で、前回の相続で今回の被相続人が財産を取得して相続税が課されているなどの要件を満たす場合、今回の相続税から一定額を控除できる仕組みです(相続税法第20条)。控除額は前回の相続からの経過年数に応じて段階的に減っていく傾向があり、適用には相続税申告書の所定の計算書の提出が必要とされています。具体的な控除額や適否は事案によって異なるため、税理士など専門家への確認をおすすめします。
まとめ:数次相続は早めに専門家へ相談を
数次相続は、相続人が増えて関係者が広がり、遺産分割協議書の作成、相続登記、相続税の申告期限や控除など、通常の相続にはない論点が複雑に絡み合います。放置するほど相続人が増えて合意形成が難しくなる傾向があるため、早めに権利関係を整理することが解決への近道になりやすいといえます。
とくに、相続人同士で取り分が対立している場合や、面識のない相続人との協議が必要な場合、遺留分が問題となりそうな場合には、法的な見通しを踏まえた対応が重要です。弁護士は、相続人の範囲の確定から遺産分割協議の代理交渉、調停・審判の対応までサポートできます。一人で抱え込まず、早めの相談をご検討ください。
数次相続でお困りの方は、横浜のタングラム法律事務所へ
タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。相続が重なって相続人が増えてしまった、誰とどう話し合えばよいか分からないといったお悩みも、丁寧に整理しながら解決の道筋をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
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