借地権の相続|名義変更・地主の承諾・遺産分割の注意点を弁護士が解説
借地権の相続|名義変更・地主の承諾・遺産分割の注意点を弁護士が解説
親が長年住んでいた家が、実は他人の土地を借りて建てられたものだった――。相続が始まってから、亡くなった方が「借地」の上に家を建てていたと知り、「地主に承諾料を払わなければいけないのか」「名義はどう変えるのか」「そもそも借りている権利を相続できるのか」と戸惑う方は少なくありません。借地権は目に見えにくい財産であるため、遺産分割や相続税の場面で見落とされたり、地主とのやり取りでトラブルになったりしがちです。
この記事では、借地権が相続の対象になるのかという基本から、地主の承諾や名義書換料の要否、借地上の建物の相続登記、遺産分割や相続税評価での注意点、さらに相続した借地権を売却・建て替えする場合の手続きまで、横浜の弁護士がわかりやすく整理して解説します。
借地権とは?相続の対象になるのか
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいいます(借地借家法2条1号)。多くのケースでは、地主に地代を払って土地を借り、その上に自分名義の建物を所有している「土地の賃借権」がこれにあたります。借地権は財産的価値のある権利であり、相続財産に含まれます。したがって、借地権を持っていた方が亡くなった場合、その借地権は原則としてそのまま相続人に引き継がれます。
借地権には、更新のある一般的な借地権(旧借地法・借地借家法によるもの)のほか、契約期間の満了で終了し更新のない定期借地権(借地借家法22条)、事業用定期借地権等(同23条)、建物譲渡特約付借地権(同24条)、一時使用目的の借地権(同25条)といった種類があります。相続の対象になる点は共通しますが、定期借地権は残りの契約期間しか使えないなど、種類によって引き継いだ後の扱いが変わるため、まずは契約書で借地権の種類と存続期間を確認することが出発点になります。
借地権の相続に地主の承諾は必要か(承諾料・名義書換料)
借地権をめぐる相続で最も多い誤解が、「相続にも地主の承諾がいる」「名義書換料を払わなければならない」というものです。結論から言えば、相続だけであれば地主の承諾は原則として不要です。相続は売買や贈与のような「譲渡」ではなく、被相続人の権利義務を包括的に承継するものだからです(民法896条)。借地契約の当事者としての地位が、そのまま相続人へ移るだけなので、地主の承諾は法律上要求されていません。
同じ理由から、譲渡の際に問題となる名義書換料(承諾料)も、相続では原則として支払う義務はありません。地主から「名義が変わるのだから承諾料を払ってほしい」と求められることがありますが、相続を理由とする請求に応じる法的義務は原則としてないと考えられます。もっとも、地主との関係を悪くしたくないという事情もあるため、支払うかどうかは慎重に判断すべきです。安易に合意する前に、弁護士に相談することをおすすめします。
一方で、地主への「通知」は法的義務ではないものの、実務上は行っておくべきです。相続で借地人が変わったことを伝え、地代の振込名義を新しい相続人に変えておくと、その後の更新交渉や建て替えの際に不要な行き違いを防ぐことができます。
借地権を相続したときの手続き
借地上の建物の相続登記
借地権そのものに登記義務があるわけではありませんが、借地の上に建っている建物は不動産であり、名義変更(相続登記)が必要です。特に注意したいのが、2024年4月に施行された改正不動産登記法により、相続登記が義務化された点です。取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります(不動産登記法76条の2)。借地だからと登記を後回しにしていると、この義務に抵触するおそれがあります。相続登記の全体像や、遺産分割が長引くときの対応については、相続人申告登記に関する記事もあわせてご覧ください。
建物の相続登記にかかる登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です(売買による移転の2%より低く設定されています)。
地主への地代の支払いと連絡
相続後も地代の支払義務は続きます。誰が地代を払うのか、口座はどうするのかを相続人間で決め、地主にも新しい連絡先・振込名義を伝えておきましょう。地代を滞納すると、借地契約の解除につながるおそれがあるため、遺産分割がまとまるまでの間も支払いを止めないことが大切です。
借地権の遺産分割と相続税評価
借地権と、その上に建っている建物は、通常は一体のものとして遺産分割の対象になります。相続人が複数いる場合、誰がこの借地権付き建物を引き継ぐのかを遺産分割協議で決めます。分け方としては、特定の相続人が取得し他の相続人に代償金を支払う「代償分割」や、借地権付き建物を売却して代金を分ける「換価分割」などが考えられます。共有のまま引き継ぐと、後の建て替えや売却のたびに全員の同意が必要になり、権利関係が複雑になりやすいため、できるだけ単独取得の方向で調整することが望ましいといえます。相続した不動産を売って分ける方法については相続した不動産を売却するときの手続きと税金の記事を、賃貸物件が絡む場合は賃貸アパート・マンションを相続したときの記事も参考になります。
遺産分割や相続税を考えるうえで、借地権の「評価」も重要です。一般的な借地権は、その土地の自用地(更地)としての価額に借地権割合を乗じて評価します。借地権割合は借地事情の似た地域ごとに定められ、国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。定期借地権等は、借地権者に帰属する経済的利益や残存期間を基に、別の方法で評価します(国税庁タックスアンサーNo.4611)。借地権は「借りているだけ」と思われがちですが、地域によっては高い評価額になることもあり、相続税の申告で見落とすと後の修正につながります。
相続した借地権を売却・建て替えするときの注意点
相続では承諾が不要でも、その後に借地権を第三者に売却(譲渡)したり、他人に貸したり(転貸)する場合には、地主の承諾が必要になります。ここが相続の場面と大きく異なる点です。地主が承諾しないときは、借地借家法19条に基づき、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める手続き(借地非訟)を利用できます。実務上は、譲渡にあたって譲渡承諾料が発生することが一般的です。
建物の建て替えや増改築についても、契約で地主の承諾を要すると定められていることが多く、承諾料が問題になります。また、借地契約の期間が満了して更新されない場合には、借地権者は地主に対し、建物を時価で買い取るよう請求できることがあります(建物買取請求権。借地借家法13条)。相続をきっかけに借地を手放したい、あるいは活用したいという場合は、これらの手続きや費用を見据えて動く必要があります。地主との交渉が難航しやすい分野でもあるため、早めに弁護士に相談しておくと安心です。
よくある質問
借地権を相続するのに地主の承諾は必要ですか?
相続は売買や贈与のような「譲渡」ではなく、被相続人の権利義務を包括的に引き継ぐものです。そのため、借地権を相続する場面では地主の承諾は原則として必要なく、名義書換料や承諾料の支払義務も原則として生じません。地主から承諾料を請求されても、相続を理由とする請求には応じる法的義務がないのが原則です。
借地権を相続したら相続登記は必要ですか?
借地権そのものに登記義務があるわけではありませんが、借地上の建物は不動産であり、2024年4月施行の改正不動産登記法により、取得を知った日から3年以内の相続登記が義務化されています。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
相続した借地権を売りたい場合はどうすればよいですか?
借地権の譲渡(売却)や転貸には、相続の場合と異なり地主の承諾が必要です。地主が承諾しないときは、借地借家法19条に基づき、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることができます。実務では譲渡承諾料が発生することが一般的です。
借地権の相続税評価はどのように計算しますか?
一般的な借地権は、その土地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて評価します。借地権割合は国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。定期借地権等は別の方法で評価されます。具体的な税額の判断は、税理士や所轄の税務署にご確認ください。
無償で土地を借りていた場合も相続できますか?
無償で借りる使用貸借は、民法597条3項により借主の死亡によって終了するのが原則で、相続の対象になりません。もっとも、建物の所有を目的とする土地の使用貸借については、借主の死亡では終了せず相続人が地位を承継すると解される場合があり、契約内容や事情による個別判断となります。
まとめ
借地権は相続の対象になり、相続だけであれば地主の承諾や名義書換料は原則として不要です。一方で、借地上の建物には相続登記の義務があり、遺産分割の方法や相続税評価、さらにその後の売却・建て替えでは地主の承諾や承諾料が問題になります。借地権は権利関係が見えにくく、地主との交渉も絡むため、相続人の間だけでなく地主との間でもトラブルに発展しやすい財産です。
「地主から承諾料を求められて困っている」「借地権付きの実家を兄弟でどう分ければよいか分からない」「相続した借地を売りたいが地主が承諾してくれない」といった場合は、早い段階で弁護士に相談することで、遺産分割の進め方や地主との交渉方針を整理でき、不利な合意を避けることにつながります。横浜のタングラム法律事務所では、相続・遺産分割に関するご相談を承っております。
借地権の相続・遺産分割でお困りの方へ
タングラム法律事務所では、遺産分割や遺留分侵害額請求をはじめとする相続案件に数多く対応しております。借地権付き不動産の分け方や地主との交渉についても、横浜の弁護士がサポートいたします。
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