製造物責任法(PL法)とは?欠陥商品で損害賠償を求められた中小企業が知るべき責任と対策を横浜の弁護士が解説
製造物責任法(PL法)とは?欠陥商品で損害賠償を求められた中小企業が知るべき責任と対策を横浜の弁護士が解説
「販売した商品で消費者がケガをしたと連絡が来た」「自社で製造した製品が原因で火災が起きたと言われている」——こうした事態は、製品を作る・輸入する・自社ブランドで販売するすべての事業者にとって他人事ではありません。とりわけ法務担当者のいない中小企業では、「うちは小さな会社だから関係ない」「仕入れて売っているだけだから責任はないはず」と考えてしまいがちです。しかし、製造物責任法(PL法)の仕組みを正しく理解していないと、思わぬ形で重い損害賠償責任を負う可能性があります。
この記事では、製造物責任法の基本的な枠組みと、どのような事業者がどこまで責任を問われるのか、そして中小企業が日頃から備えておくべきリスク対策について、横浜の弁護士の視点でわかりやすく整理します。
製造物責任法(PL法)とは——「過失がなくても」責任を負う仕組み
製造物責任法(平成6年法律第85号、1995年7月1日施行)は、製造物の「欠陥」によって人の生命・身体または財産に損害が生じた場合に、製造業者等が損害賠償責任を負うことを定めた法律です。一般に「PL法」と呼ばれます。
従来の民法上の不法行為責任(民法第709条)では、被害者が加害者の「過失」を立証しなければ賠償を受けられませんでした。しかし、複雑な工業製品について、消費者が製造過程の落ち度を証明するのは極めて困難です。そこでPL法は、製造業者の過失を問わず、「製品に欠陥があったこと」「その欠陥によって損害が生じたこと」を被害者が示せば賠償責任が認められる、いわゆる無過失責任に近い仕組みを採用しています(製造物責任法第3条)。事業者にとっては、「不注意がなかった」という反論だけでは責任を免れにくい、重い責任類型であると解されています。
「製造物」と「欠陥」の意味——3つの欠陥類型
PL法の対象となる「製造物」とは、製造または加工された動産をいいます(製造物責任法第2条第1項)。したがって、原則として不動産や、未加工の農林水産物、電気などの無体物は対象外と解されています。一方、加工食品や工業製品、機械、日用品などはおおむね対象に含まれます。
「欠陥」とは、製造物が「通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます(同条第2項)。その判断にあたっては、製品の特性、通常予見される使用形態、引き渡した時期その他の事情が考慮されます。実務上、欠陥は次の3つの類型に整理されることが多いです。
| 欠陥の類型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 製造上の欠陥 | 製造過程で設計と異なる不良が生じた場合 | 異物の混入、組立て不良 |
| 設計上の欠陥 | 設計段階の問題で製品全体が危険な場合 | 転倒しやすい構造、強度不足 |
| 指示・警告上の欠陥 | 危険を避けるための表示・説明が不十分な場合 | 取扱説明書の警告不足 |
注意したいのは、取扱説明書やラベルの記載が不十分というだけでも「指示・警告上の欠陥」として責任を問われる可能性がある点です。製品そのものの品質に問題がなくても、表示の作り方ひとつでリスクが生じうると考えておくとよいでしょう。
誰が責任を負うのか——「製造業者等」の範囲
PL法で責任を負うのは「製造業者等」です。ここには、実際に製造・加工した事業者だけでなく、次のような立場の事業者も含まれます(製造物責任法第2条第3項)。
- 製造物を業として製造・加工した事業者
- 製造物を業として輸入した事業者(輸入業者)
- 自ら製造業者として製品に氏名・商号・商標等を表示した事業者、または製造業者と誤認させる表示をした事業者
ここで中小企業にとって特に重要なのが、輸入業者と「表示製造業者」です。海外から製品を輸入して販売している事業者は、自社で製造していなくても製造業者等として責任を負う可能性があります。また、いわゆるOEM・プライベートブランド(PB)商品のように、他社が製造した製品に自社のロゴやブランド名を付けて販売している場合も、「製造業者と誤認させる表示」をしたとして責任を問われる可能性があります。
「仕入れて売っているだけ」と思っていても、自社ブランドを冠していたり輸入の主体になっていたりすると、PL法上は製造業者と同じ責任の枠組みに入りうるのです。自社の取引形態がどれに当たるのかを一度整理しておくことをおすすめします。
製造業者が主張できる免責事由
製造業者等にも、一定の場合には責任を免れる余地が認められています(製造物責任法第4条)。代表的なものが「開発危険の抗弁」です。これは、製品を引き渡した時点における科学・技術に関する知見によっては欠陥を認識できなかったことを製造業者等が証明した場合に、責任を免れるというものです。
もう一つは、部品・原材料の製造業者に関する抗弁で、その欠陥がもっぱら完成品メーカーの設計に関する指示に従ったために生じ、かつ欠陥が生じたことについて過失がないことを証明した場合に責任を免れうるとされています。
もっとも、これらの免責事由は要件が厳格で、証明のハードルは高いと解されています。「知らなかった」というだけで簡単に認められるものではないため、免責を当てにするのではなく、そもそも欠陥や事故を生じさせない体制づくりが重要になります。
損害賠償請求の時効——3年・5年・10年
PL法に基づく損害賠償請求権には、消滅時効が定められています(製造物責任法第5条)。被害者またはその法定代理人が損害および賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき、または製造業者等が製造物を引き渡した時から10年を経過したときに、時効によって消滅すると解されています。
さらに、2017年の民法改正に伴い、人の生命・身体を侵害した場合の請求権については、上記の「3年間」が「5年間」に伸長されています。製品事故による人身被害は後遺症が長期化するケースも少なくないため、事業者としては、製品を販売してから長期間が経過した後でも責任を追及される可能性があることを念頭に置く必要があります。なお、身体に蓄積して健康被害が生じる物質による損害などには、損害が生じた時から10年を起算する特則もあると解されています。
中小企業が今すぐ取り組むべきPL対策
製品事故は、いつ・どの事業者にも起こりうるものです。重要なのは、事故を完全にゼロにすることだけでなく、万一発生した場合に被害の拡大と自社の損失を最小限に抑える備えを整えておくことです。中小企業が現実的に取り組める対策として、次のような点が挙げられます。
1. 製品の安全管理とトレーサビリティの確保
製造・仕入れ・販売のロットや製造日を記録し、どの製品をどの取引先・顧客に提供したかを追跡できるようにしておくと、事故やリコール時に対象範囲を素早く特定できます。表示・取扱説明書の警告表示も、専門的な観点から定期的に見直す価値があります。
2. 重大製品事故への報告・リコール対応の準備
消費生活用製品安全法のもとでは、死亡・重傷・火災などの重大製品事故が発生した場合に、所定の報告が求められる場合があります。事故発生時に「誰が・何を・どこに連絡するか」を社内であらかじめ決めておくことで、初動の遅れによる被害拡大や信用毀損を防ぎやすくなります。
3. PL保険(生産物賠償責任保険)の活用
損害賠償が高額化した場合に備え、PL保険への加入を検討する事業者も多くみられます。補償範囲やリコール費用の扱いは契約によって異なるため、自社の取引形態に合った内容かどうかを確認しておくとよいでしょう。
4. 取引先との契約における責任分担の明確化
仕入先・製造委託先との契約で、製品事故が起きた場合の責任分担や求償の取り決めを定めておくことも有効です。輸入品やOEM製品を扱う場合は、最終的に自社が消費者に対して責任を負う立場になりうることを前提に、契約条項を整えておくことが望まれます。
まとめ——「自社は対象外」という思い込みが一番のリスク
製造物責任法は、過失の有無を問わずに重い責任を課す可能性がある法律であり、自社で製造していない輸入品やPB商品を扱う事業者にも及びうる点に特徴があります。「うちは作っていないから関係ない」という思い込みこそが、最も大きなリスクといえるかもしれません。
製品事故が現実に発生すると、損害賠償への対応に加え、リコールの判断や行政への報告、取引先・消費者への説明など、対応すべき事項が一気に押し寄せ、初期対応の巧拙がその後の損失を大きく左右します。事前のリスク整理やいざというときの対応方針について早い段階で弁護士に相談しておくことで、慌てずに動ける体制を整えやすくなります。横浜で事業を営む中小企業の皆さまにとっても、自社の取引形態に潜むPLリスクを一度点検しておくことは大きな安心につながるはずです。
製品事故・PLリスクへの備えは、横浜のタングラム法律事務所へ
タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。製造物責任(PL法)に関するリスク点検、製品事故・リコール発生時の対応方針、取引先との契約条項の整備まで、事業の実情に合わせてサポートいたします。
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