タングラム法律事務所

開示前にトレントの示談はできるか|意見照会段階で自ら連絡する是非

開示前にトレントの示談はできるか|意見照会段階で自ら連絡する是非

開示前にトレントの示談はできるか|意見照会段階で自ら連絡する是非

開示前にトレントの示談はできるか|意見照会段階で自ら連絡する是非

開示前にトレントの示談はできるか|意見照会段階で自ら連絡する是非

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月9日 最終更新日:2026年10月9日

BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書が届き、「どうせ開示されるなら、先に権利者へ連絡して示談してしまいたい」「早く終わらせたい」と考える方は少なくありません。手続が長引く不安や、家族に知られる前に片づけたいという気持ちは、もっともなことです。

この記事では、開示の前に自分から権利者に連絡して示談することが法律上できるのか、その場合に何を失い、何が得られるのか、進めるならどのような点に注意すべきかを、発信者側の立場から解説します。

結論として、開示前に権利者と示談すること自体は法律上可能ですが、意見照会の段階では権利者はまだあなたの氏名・住所を知らないため、自分から連絡することは、開示されない可能性や発信者であることを争う余地を自ら手放すことを意味します。そのため、まずは意見照会書に適切に回答し、開示された後に示談交渉を行うのが基本であり、開示前の連絡は、発信者であることに争いがないなど事情が限られる場合に、弁護士と検討したうえで判断すべきです。

意見照会の段階では、権利者はまだあなたを知らない

意見照会書は、権利者からの発信者情報の開示請求を受けたプロバイダが、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴くために送るものです(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)。この段階で権利者が把握しているのは、IPアドレスや発信日時などの通信の記録であり、回線契約者の氏名・住所はまだ知らされていません。

プロバイダが氏名・住所を権利者に開示するのは、契約者が開示に同意した場合か、裁判所の開示命令などで開示が認められた場合が中心です。不同意と回答した後の手続の進み方は、「開示に同意しない」と回答した後の流れで詳しく解説しています。

つまり、意見照会の段階で自分から権利者に連絡するということは、本来は手続を経なければ相手に伝わらない自分の氏名・連絡先を、自ら相手に伝えることを意味します。この点が、開示前の示談を考えるうえでの出発点です。

開示前の示談は、法律上は可能

示談は、法律上は和解契約にあたります。和解は、当事者が互いに譲歩して争いをやめることを約束することで効力を生じます(民法695条)。開示の前か後かで和解の可否が変わるわけではなく、権利者が応じれば、開示前でも示談は成立し得ます。

また、権利者がすでに裁判所に開示命令を申し立てている場合でも、申立人は終局決定が確定するまで申立てを取り下げることができます(非訟事件手続法63条1項。終局決定後の取下げには裁判所の許可が必要です)。示談の中で、開示請求や申立てを取り下げる旨を約束することも考えられます。

ただし、法律上可能であることと、権利者が実際に応じるかどうかは別の問題です。開示前の連絡に応じるか、どのような条件を示すかは権利者や代理人ごとに異なり、一律の扱いがあるわけではありません。

開示前に自ら連絡することで失うもの

開示前に自分から連絡する場合、次のような点を慎重に考える必要があります。

  • 開示されない可能性を手放す:開示請求が認められるには、権利侵害が明らかであることなどの要件を満たす必要があり、事案によっては開示に至らないこともあります。自ら名乗れば、この可能性はなくなります。
  • 発信者であることを争う余地が狭まる:家族や同居人が利用していた可能性、Wi-Fiの無断利用の可能性などがある場合、自分から示談を申し入れたこと自体が、後に「自分が行為者である」と認めたものと受け取られるおそれがあります。
  • 請求の根拠を確認しにくい:開示前の段階では、対象作品や期間、損害額の算定根拠が十分に示されないまま金額の話になることがあり、提示された額が妥当かを判断しにくくなります。
  • 他の事件との関係:同じ回線について別の作品・別の権利者による照会が来ている、あるいは今後来る可能性がある場合、一つの示談ですべてが終わるとは限りません。

なお、意見照会書に「開示に同意します」と回答した場合も、権利者に氏名・住所が伝わる点では同じ結果になります。同意した場合に何が起きるかは、「開示に同意する」と回答したらどうなるかをご覧ください。

開示前の示談が検討に値する場面

一方で、開示前の示談に一定の合理性がある場面もあります。たとえば、ご自身が利用していたことに争いがなく、侵害の事実も明らかで、いずれ開示に至る見込みが高い場合です。

このような場合、開示手続が進むほど権利者側の費用もかさみます。裁判例では、発信者を特定するために要した費用の全部または一部が損害として認められた例もあり、権利者側が開示手続の費用を請求額に含めてくることがあります。早い段階で解決すれば、こうした費用の増加を抑えられる可能性はあります。もっとも、権利者が開示前の示談でどのような金額を示すかは個別の事情によるため、早く連絡すれば必ず安く済むというものではありません。

また、手続が長期間続くことの精神的な負担を考慮して、早期の解決を優先したいという方もいます。どちらを選ぶかは、失うものと得られるものを比べたうえでの判断になります。

開示前に進める場合の方法と注意点

開示前の示談を検討する場合は、次の点に注意してください。

  • 意見照会書が本物かを確認する:照会書を装った架空請求もあります。プロバイダの公式窓口で確認する方法は、意見照会書は詐欺か本物かで解説しています。
  • 回答期限の管理を怠らない:権利者と連絡を取っている間も、意見照会書の回答期限は進みます。示談の見通しが立たないまま回答をしないでおくことは避けるべきです。
  • 弁護士を通じて連絡する:本人が直接連絡すると、事実関係を不用意に認める発言をしてしまうことがあります。代理人を通じれば、どの段階で何を相手に伝えるかを管理しやすくなります。
  • 示談書の条項を確認する:開示請求・申立ての取下げ、対象となる作品と期間、清算条項、刑事告訴をしない旨の条項などが入っているかを確認します。著作権侵害の罪の多くは告訴がなければ公訴を提起できない親告罪です(著作権法123条1項)。

横浜の当事務所では、BitTorrent事案の基本的な進め方として、まず意見照会書に適切な回答書を提出し、開示された場合に権利者との示談交渉を行う方法をとっています。開示前に権利者へ連絡するかどうかは、事実関係を確認したうえで個別に検討します。意見照会段階の対応全般については、意見照会対応のページもご参照ください。

意見照会書が届いた方向けの回答の進め方や費用は、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページでご案内しています。

よくある質問

意見照会書が届いた段階で、権利者に直接連絡して謝罪すべきですか。

直接連絡することは法律上禁止されていませんが、権利者はこの段階ではあなたの氏名・住所を知らないため、連絡すれば自ら身元を明かすことになります。開示されない可能性や発信者であることを争う余地を失うおそれがあるため、連絡する前に弁護士に相談することをおすすめします。

開示前に示談すれば、示談金は安くなりますか。

開示手続が進む前であれば、権利者側の費用の増加を抑えられる可能性はありますが、必ず安くなるとはいえません。金額は作品の性質、利用の態様や期間、件数などの事情によって決まり、開示前か後かだけで決まるものではありません。

開示前に示談が成立したら、開示の手続はどうなりますか。

示談の内容として、権利者が開示請求や開示命令の申立てを取り下げる旨を定めることが考えられます。申立人は終局決定が確定するまで申立てを取り下げることができます(非訟事件手続法63条1項)。示談書にその旨が明記されているかを確認してください。

家族が使っていたかもしれない場合でも、開示前に示談したほうがよいですか。

誰が利用していたかがはっきりしない段階で示談を申し入れると、自分が行為者であると認めたと受け取られるおそれがあります。まず家庭内の利用状況を確認し、事実関係を整理したうえで回答方針を決めることが大切です。

まとめ

開示前に権利者と示談すること自体は、和解契約として法律上可能です。しかし、意見照会の段階では権利者はまだあなたの氏名・住所を知らず、自ら連絡することは、開示されない可能性や発信者であることを争う余地を手放すことにつながります。

そのため、まずは意見照会書に適切に回答し、開示された場合に示談交渉を行うのが基本です。開示前の示談は、発信者であることに争いがないなど事情が限られる場合に、メリットとデメリットを比べて判断すべきものです。横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。早く終わらせたいというお気持ちを踏まえつつ、どの選択が負担を最も小さくできるかを一緒に検討します。

BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちら

開示前に示談すべきか迷っている方へ

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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