タングラム法律事務所

相続で相手方に弁護士がついたら?対応の手順と注意点を弁護士が解説

相続で相手方に弁護士がついたら?対応の手順と注意点を弁護士が解説

相続で相手方に弁護士がついたら?対応の手順と注意点を弁護士が解説

相続で相手方に弁護士がついたら?対応の手順と注意点を弁護士が解説

相続で相手方に弁護士がついたら?対応の手順と注意点を弁護士が解説

ある日、見慣れない法律事務所の名前が入った封筒が届く。開けてみると「当職は、○○氏の代理人として……」で始まる書面が入っている。相手は自分の兄弟や父の後妻など、これまで直接話をしてきた相手のはずなのに、弁護士の名前が入った途端、まるで訴えられたかのような感覚になる——相続のご相談では、こうした場面をよく伺います。

相手方に弁護士がついたからといって、直ちにこちらが不利になるわけではありません。ただし、対応を誤ると不利な前提が固まってしまうことはあります。この記事では、届いた書面のどこを見るべきか、避けるべき対応は何か、相手方の弁護士と直接やり取りしてよいのか、自分も弁護士に依頼すべきかの判断基準を、横浜の弁護士が順に整理します。

相続で相手方に弁護士がついたとき、何が起きているのか

届く書面は「受任通知」と「申入れ」の二層構造

相続の紛争で最初に届く書面は、多くの場合、次の二つを一通にまとめたものです。

  • 受任通知……「○○の代理人に就任しました。以後の連絡は当職宛にお願いします」という代理人就任の通知
  • 具体的な申入れ・請求……遺産分割協議の申入れ、遺留分侵害額の請求、遺産の使い込みに対する返還請求など、相手方が求めている中身

重要なのは後半です。相手方が何を求めているかによって、検討すべき法律上の争点も、対応の期限も変わります。書面の表題ではなく、本文の「よって、下記のとおり請求します」といった部分を読み込んでください。

弁護士がついた=訴えられた、ではない

遺産分割は、相続人全員の協議が調わないときに家庭裁判所の調停・審判で決めることが民法907条に定められていますが、いきなり調停を申し立てるのではなく、まず任意の協議を試みるのが一般的です。届いた書面は「訴訟の予告」ではなく「話し合いの申入れ」であることが少なくありません。

もっとも、相手方が弁護士に依頼したという事実は、本気で解決を図る姿勢の表れでもあります。「そのうち向こうも諦めるだろう」という見通しは、あまり現実的ではありません。

やってはいけない3つの対応

1.無視する

最も損につながりやすいのが、書面の放置です。返事がなければ、相手方は任意の交渉での解決を断念し、遺産分割調停の申立てや訴訟の提起に進みます。手続きに移行すれば、こちらの言い分を述べる機会は裁判所の期日に限られ、日程にも拘束されます。

放置している間も期限は進行します。とくに相続放棄の熟慮期間(民法915条1項)は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月と短く、負債の有無を確認しないまま経過すると選択肢が狭まります。先送りの不利益については遺産分割が長引くとどうなるかを解説した記事もあわせてご覧ください。

2.感情的に直接連絡する

電話口での発言や、感情的なメール・メッセージの文面は、相手方の弁護士に記録され、後の交渉や調停で「本人はこう述べていた」という形で引用されることがあります。とくに、遺産の使い込みや生前の贈与に関する発言は、後から撤回することが難しくなります。

3.内容を理解しないまま署名・押印する

書面に遺産分割協議書の案が同封されていることがあります。「はんこを押してくれれば手続きが終わります」と説明されると押印してしまいがちですが、いったん協議が成立すると、後からやり直すことは容易ではありません。署名押印の前に確認すべき点は、遺産分割協議書へのサインを求められたときの確認点をまとめた記事で詳しく整理しています。

ポイント:この段階ですべきことは、相手方の要求を呑むか拒むかを決めることではありません。まず事実関係と遺産の全体像を確認することです。判断はその後で構いません。

相手方の弁護士と直接やり取りしてよいのか

「相手に弁護士がついたら、こちらは直接連絡してはいけないのではないか」というご質問をよくいただきます。この誤解の元になっているのが弁護士職務基本規程52条で、同条は、弁護士は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない、と定めています。

注意していただきたいのは、これが弁護士に向けられた規律であるという点です。こちらに代理人がついていない段階で、ご本人が相手方の弁護士に連絡することは、この規定によって禁じられているわけではありません。逆に、こちらが弁護士に依頼すれば、相手方の弁護士はご本人に直接連絡することができなくなり、やり取りは代理人同士に一本化されます。「直接連絡が来ること自体をやめさせたい」というのは、弁護士に依頼する実務上のメリットの一つです。

ご本人で対応する場合も、口頭のやり取りは記録が残らず「言った・言わない」になりがちです。重要な事項は書面またはメールで行い、こちらも控えを残しておくことをおすすめします。

届いた書面で必ず確認すべき6つのポイント

返事を書く前に、次の6点を確認してください。

確認項目見るところ・考え方
誰の代理人かどの相続人の代理人か。複数の相続人をまとめて代理していないか
何を求めているか遺産分割協議の申入れか、遺留分侵害額の請求か、使い込みの返還請求か
遺産の範囲遺産目録に漏れがないか。把握している預貯金・不動産・株式・負債が反映されているか
評価額の根拠不動産の評価が固定資産税評価額か、路線価か、業者の査定か。どの価格を採るかで取り分は変わる
特別受益・寄与分生前贈与や介護の負担が考慮されているか。相手方に有利な前提だけが書かれていないか
回答期限いつまでの回答を求めているか。法律上の期限ではないが、放置すれば手続きに移行しうる

とくに評価額と特別受益は、書面の中で「当然の前提」であるかのように書かれていることがあります。前提そのものを争う余地がないか、必ず一度は疑ってください。遺産分割の進め方は、当事務所の相続・遺産分割の取扱分野ページでも解説しています。

見落としやすい期限を確認する

相手方への回答を検討している間にも、相続の法律上の期限は進行します。書面が届いた時点で、次のうちどれが自分に関係するかを確認してください。

期限内容根拠
3か月相続放棄・限定承認の熟慮期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から)民法915条1項
10か月相続税の申告・納付の期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から)相続税法27条1項
1年遺留分侵害額請求権の消滅時効(相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から)民法1048条
3年相続登記の申請義務(所有権を取得したことを知った日から)不動産登記法76条の2
10年経過後は、特別受益・寄与分を反映した具体的相続分による分割を主張できなくなる(例外あり)民法904条の3

こちらが遺留分を侵害されている側である場合は、1年の時効に特に注意が必要です。相手方から遺産分割の申入れを受けて協議している間に、こちらの遺留分侵害額請求権の時効が完成してしまう、という事態はあり得ます。

※相続税の申告の要否や税額の計算は税務の専門的な判断を伴います。個別の取扱いについては、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

自分も弁護士に依頼すべきかの判断基準

相手方に弁護士がついたからといって、こちらも必ず代理人を立てなければならないわけではありません。判断の目安として、次のような事情があるかどうかを考えてみてください。

  • 遺産の全体像が分からない……相手方が財産を管理しており、預貯金や不動産の内容を把握できていない
  • 提示された金額の妥当性が判断できない……不動産の評価や特別受益の扱いで取り分が大きく変わる
  • 争点が複数ある……遺言の有効性、使い込み、寄与分など、法律上の争点が重なっている
  • 相手方と直接やり取りしたくない……感情的な対立が激しく、連絡そのものが負担になっている
  • 期限が迫っている……相続放棄の3か月や遺留分の1年が近い

一つでも当てはまる場合は、少なくとも一度は弁護士に相談し、相手方の主張のどこに争う余地があるのかを確認しておくことをおすすめします。費用の考え方は遺産分割の弁護士費用を解説した記事で、当事務所の料金体系は弁護士費用のページでご確認いただけます。

よくある質問

相手方の弁護士から届いた書面を無視するとどうなりますか。

無視しても相続の問題が消えるわけではありません。任意の話し合いでは解決できないと判断されれば、相手方は遺産分割調停を申し立てたり、遺留分侵害額請求であれば訴訟を提起したりすることが考えられます。手続きに移行すると、言い分を述べる機会は裁判所の期日に限られます。また、放置している間も相続放棄の熟慮期間(民法915条1項)などの期限は進行します。回答の内容が決まらない場合でも、書面を受け取ったこと自体は伝えておくほうが安全です。

相手に弁護士がついたら、こちらも必ず弁護士に依頼しなければなりませんか。

法律上、代理人を立てる義務はありません。ご本人で対応することも、遺産分割調停に本人で出席することもできます。もっとも、相手方には手続きに精通した代理人がついている一方、こちらは初めて相続に向き合うという状態になりますので、事実上の情報の差は生じます。遺産の評価や特別受益・寄与分が争点になっている場合には、少なくとも一度は弁護士に相談し、方針を確認しておくことをおすすめします。

相手方の弁護士に直接電話をしても構いませんか。

こちらに代理人がついていない段階であれば、ご本人が相手方の弁護士に連絡すること自体は禁止されていません。弁護士職務基本規程52条は、相手方に代理人が選任されたときに直接交渉することを弁護士に対して禁じた規律であり、ご本人の行動を制限するものではないからです。ただし、会話の内容は相手方に記録され、後の交渉で前提とされることがあります。重要なことは書面やメールでやり取りするほうが安全です。

書面に書かれた回答期限は必ず守らなければなりませんか。

書面に記載された回答期限は、相手方の弁護士が事務処理の都合で設定したものであり、法律上の効力があるものではありません。期限を過ぎたからといって、直ちに権利を失ったり不利な内容が確定したりするわけではありません。もっとも、無反応のまま放置すれば調停や訴訟に移行する可能性が高まります。検討に時間が必要であれば、いつ頃までに回答できるかを伝えて延長を申し入れるのが実務的な対応です。

相手方の弁護士に、遺産の資料をすべて開示してもらうことはできますか。

相手方に、手持ちの資料をすべて開示する法律上の義務があるわけではありません。もっとも、遺産分割は相続人全員の合意がなければ成立しないため、資料の開示を求めること自体は交渉として自然な要求です。任意に開示されない場合でも、預貯金は相続人の一人として金融機関に取引履歴の開示を求める方法があり、不動産は名寄帳や登記情報から調べる方法があります。弁護士に依頼すれば、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会を利用できる場合もあります。

まとめ

相続で相手方に弁護士がついたときの対応は、次の順序で考えると整理しやすくなります。

  • 書面の表題ではなく、相手方が何を求めているかを読み取る
  • 無視・感情的な直接連絡・内容を理解しないままの署名押印は避ける
  • ご本人が相手方の弁護士に連絡すること自体は禁じられていない。ただし記録の残る方法で行う
  • 遺産の範囲・評価額・特別受益といった前提そのものに争う余地がないかを確認する
  • 相続放棄の3か月、遺留分の1年など、進行している期限を確認する

相続の紛争では、最初の数通のやり取りで固まった前提が、その後の交渉や調停を通じて維持されてしまうことが少なくありません。相手方に代理人がついた段階は、こちらにとっても、事案の全体像と自分の取り分の見通しを一度きちんと確認しておく機会です。判断に迷う点があれば、返事を出す前の段階でご相談いただくのが、結果として選択肢を広く保つことにつながります。

相続で相手方に弁護士がついてお困りの方へ

タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分侵害額請求をはじめとする紛争性のある相続案件を数多く取り扱っております。相手方の代理人から書面が届いた段階でのご相談も承っております。横浜・山下公園の事務所で、弁護士がお話を伺います。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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