反社チェックのやり方|取引先の調べ方と該当時の対応を弁護士が解説
反社チェックのやり方|取引先の調べ方と該当時の対応を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月14日 最終更新日:2026年10月14日
「銀行から反社チェックの体制について質問された」「新しい取引先をどこまで調べればよいのか分からない」――反社チェックは大企業だけの話と思われがちですが、中小企業や個人経営の事業者でも避けて通れない実務になっています。
この記事では、反社チェック(反社会的勢力との関係の有無の確認)が必要な理由、具体的な調べ方、反社会的勢力と判明したときの対応を、横浜の弁護士が中小企業向けに整理します。
結論として、反社チェックは「自社でできる調査(登記・記事検索・表明確約書)」を取引開始時と定期的に行い、疑いが残る場合に警察や暴力追放運動推進センター、弁護士に相談する、という段階的な方法で進めるのが現実的です。神奈川県暴力団排除条例22条は事業者に相手方の確認と暴力団排除条項の導入を努力義務として求めており、調査を尽くした記録を残しておくことが、万一の際に会社を守ることにつながります。
反社チェックとは|政府指針が定める基本原則
反社チェックの考え方の出発点となるのが、犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして平成19年(2007年)6月19日に策定された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」です。指針は、反社会的勢力を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」ととらえ、次の2つの観点から判断することを示しています。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 属性要件 | 暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等に当たるか |
| 行為要件 | 暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為等をしているか |
また指針は、基本原則の一つに「取引を含めた一切の関係遮断」を掲げています。反社チェックは、これを実現するための入口の作業といえます。
中小企業にも反社チェックが必要な理由|神奈川県暴力団排除条例
反社チェックを直接義務づける法律はありませんが、各都道府県の暴力団排除条例が事業者の責務を定めています。神奈川県暴力団排除条例(平成22年神奈川県条例第75号。平成23年4月施行)の主な規定は次のとおりです。
- 相手方の確認(22条1項):取引が暴力団の活動を助長し、又は運営に資するおそれがあると認めるときは、取引の相手方や媒介者等が「暴力団員等」又は「暴力団経営支配法人等」でないことを確認するよう努める
- 暴力団排除条項の導入(22条2項):書面で契約を締結するときは、契約の履行が暴力団の活動を助長し、又は運営に資することが判明した場合に解除できる旨を定めるよう努める
- 判明時の解除(22条3項):上記の定めに従って契約を解除するよう努める
- 利益供与等の禁止(23条):暴力団の威力を利用する目的での利益供与等を禁止し、違反には公安委員会の勧告(28条)、勧告に従わない場合の公表(29条)の措置がある
ここでいう「暴力団員等」には、現役の暴力団員だけでなく、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者も含まれます(同条例2条4号)。
さらに実務上は、金融機関の融資や大企業との取引の際に、反社チェック体制や暴力団排除条項の有無を確認されることが一般的です。最高裁平成28年1月12日判決(民集70巻1号1頁)は、金融機関は信用保証協会との関係で、融資先が反社会的勢力か否かを相当に調査すべき義務を負うと判断しました。金融取引の事例ですが、調査を尽くしたかどうかが法的評価を左右し得ることを示すものとして参考になります。
なお、条例は改正が重ねられているため、最新の条文は神奈川県警察のウェブサイト等で確認してください。
反社チェックのやり方|自社でできる5つの調べ方
1. 基本情報の確認
法人であれば商号・本店所在地・代表者・役員、個人であれば氏名・屋号・住所を正確に把握します。法人は登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取得し、役員・本店・事業目的が短期間に頻繁に変更されていないかも確認します。
2. インターネット・新聞記事の検索
会社名・代表者名・役員名と「暴力団」「逮捕」「詐欺」「行政処分」等のキーワードを組み合わせて検索します。可能であれば新聞記事データベースも併用します。同姓同名の別人の可能性があるため、住所等と照らし合わせて慎重に判断します。
3. 反社チェックツール・調査会社の利用
取引件数が多い場合は民間の反社チェックサービス、重要な取引では調査会社の利用も選択肢です。
4. 表明確約書の取り付け
相手方から「自らが反社会的勢力でないこと、将来にわたっても該当しないこと」を表明・確約する書面を取り付けます。虚偽であった場合に解除や損害賠償ができる根拠になるため、契約書の暴力団排除条項とセットで用意します。契約書をひな形から作成する場合の注意点は「契約書のひな形・テンプレートを自分で使うときの注意点」でも解説しています。
5. 記録の保存
いつ、誰が、どの方法で調査し、どのような結果だったかを記録します。取得する個人情報については、個人情報保護法に従って利用目的を特定し(17条)、通知・公表等を行う(21条)必要がある点にも注意してください。
反社チェックのタイミングと社内ルールの作り方
反社チェックは一度行えば終わりではありません。次のタイミングで実施するルールを社内で定めておくことが望まれます。
| タイミング | 確認のポイント |
|---|---|
| 新規取引の開始前 | 上記5つの調べ方を実施し、表明確約書を取り付ける |
| 継続取引中(定期) | 年1回など一定の頻度で記事検索等を再実施する |
| 相手方の役員・株主・商号の変更時 | 新たな役員等について追加で確認する |
あわせて、担当部署と判断権者を決めておきます。暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律14条は、事業者に不当要求防止責任者の選任等を求めており(努力義務)、神奈川県では公益財団法人神奈川県暴力追放推進センターが不当要求防止責任者講習を実施しています。企業法務に関する当事務所の取扱内容は企業法務(契約書・労務・顧問)のページをご覧ください。
疑いが残る場合の相談先|警察・暴追センター・弁護士
自社調査で疑いが残る場合は、外部の専門機関に相談します。
- 警察(組織犯罪対策担当課・最寄りの警察署):相手方が暴力団員等に当たるかを相談できます。一般に、相手方の氏名・生年月日・住所等が分かる資料、取引関係を裏付ける資料、目的外利用をしない旨の誓約書の提出を求められます
- 暴力追放運動推進センター:不当要求への対応等について助言を受けられます
- 弁護士:照会や交渉、契約解除の手続を代理できます
警察等からの回答は暴力団排除の目的にのみ利用でき、社内外に広めることは避けてください。
反社会的勢力と判明したときの対応
新規取引の場合
契約を締結するかは原則として自由であり、取引を断ることができます。理由を告げる必要はなく、「総合的な判断により見送ります」といった回答にとどめるのが一般的です。
既存取引の場合
契約書に暴力団排除条項があれば、その定めに従って解除を検討します。解除通知は内容証明郵便等の書面で行い、担当者個人での面談対応は避けます。解除の手順や通知書の書き方は「契約解除の進め方|催告解除と通知書の書き方」もご参照ください。
解除をきっかけに金銭要求や威圧的な言動が生じた場合は、直ちに警察と弁護士に相談し、やり取りを記録に残してください。不当な要求への基本的な対処法は「悪質クレーマー対応|不当な金銭・返金要求への法的対処法」でも解説しています。いかなる理由があっても、裏取引や資金提供に応じてはいけません。
よくある質問
中小企業でも反社チェックは必要ですか?
すべての取引で反社チェックを義務づける法律はありませんが、神奈川県暴力団排除条例22条は、事業者に対し取引の相手方が暴力団員等でないことを確認するよう努めることを求めています。金融機関等から体制を確認されることも多く、規模にかかわらず取り組むべき事項です。
個人事業主やフリーランスの取引先もチェックすべきですか?
はい。反社会的勢力は法人に限られないため、個人の取引先についても、記事検索や表明確約書の取り付けを行うことが望ましいといえます。
契約書に暴力団排除条項がない取引先が反社と判明したら、契約は解除できませんか?
暴力団排除条項がない場合、相手方の属性だけを理由に直ちに解除することは難しい場面があります。ただし、契約締結時の説明内容によっては取消しや信頼関係の破壊を理由とする解除などを検討できる可能性があります。事案ごとの判断が必要なため、早めに弁護士にご相談ください。
調べても反社かどうか判断できない場合はどうすればよいですか?
調査の内容と結果を記録に残したうえで、表明確約書を取り付け、取引を慎重に進めることが考えられます。疑いが残る場合は、警察や暴力追放運動推進センター、弁護士に相談してください。
まとめ
- 反社チェックは、政府指針の「取引を含めた一切の関係遮断」を実現するための入口の作業
- 神奈川県暴力団排除条例22条は、相手方の確認と暴力団排除条項の導入を事業者の努力義務としている
- 自社調査は「基本情報の確認→記事検索→ツール等の利用→表明確約書→記録の保存」の順で行う
- 疑いが残る場合や反社と判明した場合は、単独で対応せず警察・暴追センター・弁護士に相談する
反社チェックは、暴力団排除条項や表明確約書の整備と一体で進めることで効果を発揮します。判明時にどう動くかを平時に決めておくことが、会社と従業員を守る近道です。不安がある場合は、横浜の弁護士など専門家に早めにご相談ください。
反社チェック体制・暴力団排除条項の整備は弁護士にご相談ください
タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。取引先の反社チェックの進め方、契約書・表明確約書の整備、反社会的勢力と判明した取引先との契約解除についてもご相談ください。
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