タングラム法律事務所

同人誌のトレント共有と著作権|二次創作でも権利は主張されるか

同人誌のトレント共有と著作権|二次創作でも権利は主張されるか

同人誌のトレント共有と著作権|二次創作でも権利は主張されるか

同人誌のトレント共有と著作権|二次創作でも権利は主張されるか

同人誌のトレント共有と著作権|二次創作でも権利は主張されるか

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月24日 最終更新日:2026年10月24日

BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書の対象が、同人誌や同人CG集、同人ゲームなどの同人作品のファイルだった――。「同人誌はもともと原作の二次創作なのだから、著作権を主張できるのか」「原作者の許諾を得ていない作品なら、請求は通らないのではないか」と疑問に思われる方は少なくありません。

この記事では、同人作品に成立する著作権の考え方(オリジナル作品と二次創作の違い、「二次的著作物」の仕組み)、「無許諾の二次創作だから請求できない」という主張についての裁判所の判断、照会者として誰が登場し得るのか、そして意見照会書を受け取ったときに確認すべき点を、発信者側の立場から解説します。

結論として、二次創作の同人誌であっても、同人作家が新たに加えた創作的な部分には著作権が成立し得ると解されており、無許諾の二次創作であることを理由に同人作家の権利行使を権利の濫用とする主張は、裁判例で退けられています。そのため「同人誌だから」「二次創作だから」という事情だけで侵害の主張を免れるとは考えにくく、照会者が誰で、どの部分の権利を主張しているのかを確認したうえで回答の方針を決めることが大切です。

同人作品にも著作権は成立する

著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めています(著作権法2条1項1号)。商業出版かどうか、プロの作家かどうかは、著作物に当たるかどうかの基準ではありません。同人誌として即売会や委託販売、ダウンロード販売で頒布された作品であっても、創作的な表現であれば著作物として保護されます。

同人作品は、大きく次の2つに分けて考えると整理しやすくなります。

作品の種類著作権の考え方
オリジナル作品(創作同人)登場人物や世界観も含めて同人作家が創作した作品。通常の漫画・イラスト・小説と同じく、作品全体が同人作家の著作物として保護され得る
二次創作(既存の漫画・アニメ・ゲーム等をもとにした作品)原作をもとに新たな創作を加えた「二次的著作物」に当たり得る。同人作家の権利は新たに加えた創作的な部分に及び、原作の権利者の権利も併存する

二次創作の同人誌と「二次的著作物」の仕組み

著作権法は、著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化し、その他翻案することにより創作した著作物を「二次的著作物」と定めています(2条1項11号)。原作の著作者は、自分の著作物を翻案する権利を専有しており(27条)、二次的著作物が保護されても原作の著作者の権利には影響しません(11条)。さらに、原作の著作者は、二次的著作物の利用についても、その二次的著作物の著作者と同じ種類の権利を持ちます(28条)。

二次的著作物の著作権がどの部分に生じるかについて、最高裁は、二次的著作物の著作権は、新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通し実質を同じくする部分には生じないと判断しています(最判平成9年7月17日・平成4年(オ)第1443号)。

つまり、二次創作の同人誌については、次のような「重なり合い」が生じ得ます。

  • 同人作家:自分が新たに描き加えた絵柄、ストーリー、コマ割り、台詞などの創作的な部分について権利を持ち得る
  • 原作の権利者:原作と共通する部分について権利を持つほか、二次的著作物の利用についても権利を持つ(28条)

BitTorrentでファイルを送信できる状態に置くことは、公衆送信権(送信可能化を含む。23条1項)の侵害として主張されるのが一般的です。この点は同人作品でも変わりません。

「原作者の許諾がない二次創作だから請求できない」は通用するか

同人作品の無断利用をめぐって、「原作者の許諾を得ていない違法な二次創作なのだから、同人作家が権利を主張するのは信義則違反・権利の濫用だ」という主張がされた事件があります。同人誌として頒布された漫画をウェブサイトに無断で掲載したことについて、同人作家が損害賠償を求めたものです。

知的財産高等裁判所は、登場人物(キャラクター)自体は具体的な表現ではないため著作物に当たらないとして、原作の著作権との関係で問題になり得る範囲を整理したうえで、オリジナリティのある部分に基づく同人作家の請求は権利の濫用に当たらないと判断しました。また、作品に性的な描写が含まれることを理由に公序良俗違反をいう主張についても、公序良俗に違反するとまで認めることはできないとしています(知財高判令和2年10月6日・令和2年(ネ)第10018号。一審の東京地裁判決に対する双方の控訴をいずれも棄却)。

この事件はBitTorrentではなくウェブサイトへの掲載に関するものですが、「無許諾の二次創作だから権利はない」という考え方が裁判所に採用されなかった例として、BitTorrentの事案を考えるうえでも参考になります。性的な表現を含む作品の著作物性については、「アダルト動画は著作権で保護されないのか|トレント意見照会と著作物性」でも解説しています。

照会者は誰か――同人作家・サークル・原作の権利者

同人作品の意見照会書では、照会者が作品を制作した同人作家やサークルであることもあれば、その委託を受けて権利行使を行う会社であることも考えられます。また、原作の著作者は二次的著作物の利用についても権利を持つため(28条)、理論上は原作の権利者が照会者となることもあり得ます。

  • 同人作家・サークルが照会者の場合:オリジナル作品か二次創作か、二次創作であればどの部分の権利を主張しているのか
  • 会社が照会者の場合:同人作家から権利の譲渡や利用許諾を受けていることの根拠が添付資料で示されているか
  • 原作の権利者が照会者の場合:原作のどの部分、あるいは二次的著作物の利用についての権利を主張しているのか

発信者情報の開示を請求できるのは、侵害されたと主張する権利を持つ者です(情報流通プラットフォーム対処法5条1項)。照会者の立場を確認しておくことは、後の示談で「誰との間で、どの範囲を清算するのか」を考える際にも役立ちます。

同人作品ファイル特有の論点

複数の作品・サークルのまとめファイル

同人作品は、1作品ずつのファイルのほか、特定のジャンルや即売会単位で多数の作品をまとめたファイルが流通していることがあります。まとめファイルでは、収録された作品ごとに権利者が異なり得るため、同じファイルについて別々の照会者から照会書が届くこともあります。考え方は「トレントの意見照会書が複数届いたら|作品ごと・回数ごとの対応」で整理しています。

頒布の形態と損害賠償額の考え方

同人作品は、即売会での頒布、書店委託、ダウンロード販売など、頒布の形態や価格がさまざまです。損害賠償額は、作品の性質、正規の頒布の形態・価格、ファイルに含まれる作品の数、共有していた期間、照会の件数などを踏まえて個別に検討されるもので、同人作品だから一律にいくら、という基準があるわけではありません。算定の考え方は「トレントの示談金はどう決まるのか|損害賠償額の算定要素を解説」をご覧ください。

同人作品の意見照会書が届いたときの確認点

照会書を受け取ったら、まず次の点を確認してください。

  • 照会者は誰か(同人作家・サークルか、権利行使を委託された会社か、原作の権利者か)
  • 侵害されたとする権利と、その根拠を示す添付資料(権利の譲渡・利用許諾の有無など)
  • 対象のファイル名・ハッシュ値と、含まれている作品の範囲(単独の作品か、まとめファイルか)
  • 発信日時・IPアドレス・ポート番号と、その時間帯に回線を利用できた人
  • 回答期限と回答書の提出方法

回答書に「二次創作なので権利はないと思った」「無許諾の同人誌だから問題ないと考えた」などと書くと、利用の事実や認識を自ら認めたものと受け取られ、後の交渉で不利になるおそれがあります。横浜の当事務所が意見照会段階でどのように対応しているかは意見照会対応のページでもご紹介しています。BitTorrentの意見照会書への具体的な対応の流れや弁護士費用は、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページでご案内しています。

よくある質問

二次創作の同人誌にも著作権はあるのですか。

原作をもとに新たな創作を加えた作品は「二次的著作物」(著作権法2条1項11号)に当たり得ます。この場合、同人作家には、新たに加えた創作的な部分について著作権が認められると解されています。二次創作だからといって、同人作家の権利がまったくないということにはなりません。

原作者の許諾を得ていない同人誌なら、請求は無効になりませんか。

無許諾の二次創作であることを理由に、同人作家の権利行使は権利の濫用だと主張された事件で、知的財産高等裁判所は、オリジナリティのある部分に基づく請求は権利の濫用に当たらないと判断しています(知財高判令和2年10月6日・令和2年(ネ)第10018号)。無許諾であることだけを理由に請求を免れるのは難しいと考えられます。

同人誌の意見照会書は、誰から来るのですか。

照会者は、作品を制作した同人作家やサークル、その委託を受けた会社であることが考えられます。また、原作の著作者は二次的著作物の利用についても権利を持つため(著作権法28条)、原作の権利者が照会者となることもあり得ます。誰がどの部分の権利を主張しているかは、照会書と添付資料で確認します。

同人誌は値段が安いので、損害賠償も少なくなりますか。

損害賠償額は、作品の性質や頒布の形態・価格、ファイルに含まれる作品の数、共有していた期間、照会の件数などを踏まえて個別に検討されます。頒布価格は考慮される要素の一つですが、それだけで額が決まるわけではなく、一律の基準もありません。

まとめ

同人作品にも著作権は成立し、二次創作の同人誌であっても、同人作家が新たに加えた創作的な部分は二次的著作物として保護され得ます。「無許諾の二次創作だから権利はない」という主張は裁判例で退けられており、この点だけで侵害の主張を免れるとは考えにくいところです。照会者が同人作家なのか、委託を受けた会社なのか、原作の権利者なのか、ファイルにどの作品が含まれているのかによって、回答や後の示談で検討すべき点が変わります。照会書と添付資料を一つずつ確認したうえで回答の方針を決めましょう。

横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。

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同人作品の意見照会書が届いて戸惑っている方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会書への対応から、開示後の損害賠償請求・示談交渉まで数多く取り扱っております。照会書と添付資料を確認し、照会者や対象のファイルについて事情を伺ったうえで、回答の方針をご説明します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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