タングラム法律事務所

過去の逮捕歴のネット投稿は削除できる?最高裁の基準と削除の手順

過去の逮捕歴のネット投稿は削除できる?最高裁の基準と削除の手順

過去の逮捕歴のネット投稿は削除できる?最高裁の基準と削除の手順

過去の逮捕歴のネット投稿は削除できる?最高裁の基準と削除の手順

過去の逮捕歴のネット投稿は削除できる?最高裁の基準と削除の手順

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月14日 最終更新日:2026年10月14日

「何年も前の逮捕のことが、今でもSNSや掲示板に残っている」「自分の名前で検索すると、当時の報道を転載した投稿が出てくる」——生活を立て直した後も、就職や結婚への影響を心配して苦しんでいる方は少なくありません。

この記事では、過去の逮捕歴に関するネット上の投稿を削除できるのかについて、最高裁判所が示した判断基準、検索結果の削除との違い、削除を求める具体的な手順と注意点を、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

結論として、過去の逮捕歴を記載したSNSや掲示板の投稿は、「その事実を公表されない利益」が「投稿を閲覧できる状態に置き続ける理由」に優越する場合には、削除を求めることができます(最高裁令和4年6月24日判決)。経過した年数、事件の性質、本人の社会的立場、投稿の目的などを総合して判断されるため、事情を整理したうえで、サイトへの削除依頼や裁判所の手続を段階的に検討することが大切です。

過去の逮捕歴の投稿はなぜ削除を求められるのか

逮捕された事実や前科は、みだりに公表されないことについて法的な保護に値する利益があると考えられています。報道された時点では社会の関心事であっても、時間の経過とともに、本人が平穏に生活する利益の比重が大きくなっていきます。

刑法34条の2第1項後段は、罰金以下の刑の執行を終えた者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失うと定めています。しかしネット上の投稿は放置すれば残り続けるため、プライバシー(人格権)の侵害を理由に削除を求めることが問題となります。

プライバシー侵害と名誉毀損の違いについては、プライバシー侵害と名誉毀損の違いとは?ネット上の被害への削除請求で詳しく解説しています。

最高裁令和4年6月24日判決が示した削除の判断基準

事案の概要

最高裁判所第二小法廷令和4年6月24日判決(令和2年(受)第1442号、民集76巻5号1170頁)は、ツイッター(現X)に投稿された逮捕歴に関する投稿の削除が争われた事件です。裁判所ウェブサイトに掲載された判決によると、上告人は平成24年4月に旅館の女性用浴場の脱衣所に侵入したとして逮捕され、同年5月に建造物侵入罪で罰金刑を受けて納付しました。逮捕当日、報道記事の一部を転載した投稿が複数されており、転載元の報道記事はすでに削除されていましたが、上告人の氏名で検索すると投稿が表示される状態でした。

判断の枠組み

最高裁は、削除を求めることができるかどうかは、次の要素などを考慮し、「本件事実を公表されない法的利益」と「本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情」を比較衡量して判断すべきであるとしました。

  • 事実の性質及び内容
  • 投稿によって事実が伝達される範囲と、本人が被る具体的被害の程度
  • 本人の社会的地位や影響力
  • 投稿の目的や意義
  • 投稿がされた時の社会的状況とその後の変化

そのうえで、公表されない法的利益が閲覧に供し続ける理由に「優越する場合」には削除を求めることができると判断しました。原審(高等裁判所)は、削除が認められるのは公表されない利益が優越することが「明らかな場合」に限られるとしていましたが、最高裁はそのように解することはできないとして、原判決を破棄し、削除を命じています。

判決は、逮捕から約8年が経過し、刑の言渡しの効力が失われていたこと、投稿が逮捕当日の速報を目的としたもので長期間の閲覧を想定していたとはいえないこと、上告人が公的立場にある者ではないことなどを考慮しています。

検索結果の削除との違い|最高裁平成29年1月31日決定

過去の逮捕歴をめぐっては、検索事業者に対して検索結果の削除を求めた事件で、最高裁判所第三小法廷平成29年1月31日決定(平成28年(許)第45号、民集71巻1号63頁)が先に判断を示しています。この決定は、公表されない法的利益が検索結果を提供する理由に優越することが「明らかな場合」に削除を求めることができるとし、児童買春の事案について削除を認めませんでした。

比較項目最高裁平成29年1月31日決定最高裁令和4年6月24日判決
削除を求めた相手検索事業者(検索結果の削除)SNSの運営者(投稿そのものの削除)
基準公表されない利益が優越することが「明らかな場合」公表されない利益が「優越する場合」
結論削除を認めず削除を認める

そのため実務上は、検索結果の削除よりも、元の投稿そのものの削除を先に検討するほうが合理的な場合が多いといえます。元の投稿が削除されれば、いずれ検索結果にも表示されなくなることが期待できます。検索結果の削除の手続についてはGoogle検索結果に表示される誹謗中傷を削除する方法をご覧ください。

削除が認められやすい事情・認められにくい事情

判断は個別の事情によりますが、二つの最高裁判例の考慮要素を踏まえると、おおむね次のように整理できます。

削除が認められやすい方向の事情削除が認められにくい方向の事情
逮捕から長期間が経過している逮捕から間もない
罰金刑で、刑の言渡しの効力が失われている重大な犯罪で、社会的な非難が今なお強い
本人が公人・著名人ではない一般人である政治家や企業の役員など、公的な立場にある
投稿が速報や転載にとどまり、今日的な意義が乏しい事件の検証や論評など、現在も社会的意義がある
氏名で検索すると容易に表示され、具体的な被害がある伝わる範囲が限られている

逮捕歴の投稿の削除を求める手順

1. 投稿の証拠を保存する

投稿のURL・日時・内容が分かるスクリーンショットを保存し、氏名で検索した結果の画面も残しておきます。

2. サイトの削除依頼・削除申出を利用する

多くのSNSや掲示板には、権利侵害を報告する窓口があります。2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)により、一定規模以上の大規模プラットフォーム事業者には、削除申出の窓口の整備や、申出への対応・通知が義務づけられています。手順は情プラ法の削除申出とは|大手SNS・掲示板に削除を求める手順で解説しています。申出の際は、逮捕からの経過年数、処分の内容、現在の生活状況など、公表されない利益を示す事情を具体的に記載することが重要です。

3. 応じてもらえない場合は裁判所の手続を検討する

任意の削除に応じてもらえない場合は、裁判所に投稿記事削除の仮処分を申し立てたり、削除を求める訴訟を提起したりすることが考えられます。仮処分は比較的短期間で判断が出る手続です。詳しくはネット誹謗中傷の投稿削除を仮処分で求める方法をご覧ください。X・5ちゃんねる・爆サイなど、サイトごとの対応は掲示板・SNS別の削除・投稿者特定のページにまとめています。

削除依頼の内容が公開される仕組みのサイトもあるため、依頼の方法も含めて事前に検討することをおすすめします。

削除と併せて検討したいこと|投稿者の特定

当時の報道の転載にとどまらず、最近になって逮捕歴をことさらに書き込み、職場や家族に知らせるような投稿がされている場合は、投稿者を特定して損害賠償を求めることも考えられます。情プラ法5条1項に基づく発信者情報開示請求では、権利侵害が明らかであることなどが要件とされており、プライバシー侵害の場合も、公表されない利益が優越することを具体的に主張する必要があります。被害者側の手続全体については発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページで紹介しています。

よくある質問

逮捕から何年たてば削除してもらえますか?

何年たてば削除できるという決まりはありません。経過した期間は重要な考慮要素の一つですが、事実の性質や内容、本人の社会的地位、投稿の目的なども含めて総合的に判断されます。最高裁令和4年6月24日判決の事案では逮捕から約8年が経過していましたが、期間だけで結論が決まったわけではありません。

不起訴になった事件の逮捕歴も削除の対象になりますか?

不起訴になった事件の逮捕歴も、プライバシーに属する事実として削除を求めることが考えられます。不起訴になったことや、その後の生活状況は、公表されない利益を主張する際の事情の一つとして整理することが大切です。

ニュースサイトの記事そのものも削除を求められますか?

報道機関の記事についても、運営者に削除や匿名化を求めることは考えられます。ただし報道には公共性があるため、相応の事情を示す必要があります。まずは運営者の問い合わせ窓口に事情を説明して依頼し、応じてもらえない場合に法的手続を検討するのが一般的です。

まとめ|過去の逮捕歴の投稿は事情を整理して削除を求める

  • 過去の逮捕歴の投稿は、公表されない利益が閲覧に供し続ける理由に優越する場合、削除を求めることができる(最高裁令和4年6月24日判決)
  • 検索結果の削除は「明らかな場合」に限られる(最高裁平成29年1月31日決定)ため、元の投稿の削除を先に検討するのが合理的なことが多い
  • 経過年数、事件の性質、社会的地位、投稿の目的など、具体的な事情の整理が結論を左右する
  • サイトへの削除依頼・削除申出から始め、応じてもらえなければ仮処分などの裁判手続を検討する

過去の逮捕歴の削除は、どの事情をどのように主張するかによって結果が左右されやすい分野です。弁護士に相談すれば、削除が見込めるかどうかの見通しや、最も負担の少ない手段を早い段階で検討できます。横浜の弁護士として、ネット上に残る過去の情報にお悩みの方のご相談をお受けしています。

過去の逮捕歴がネットに残ってお困りの方へ

タングラム法律事務所では、SNS・匿名掲示板・口コミサイト等の投稿について、削除請求・発信者情報開示請求の実績を多数有しております。逮捕歴などプライバシーに関わる投稿の削除についても、事情の整理から裁判手続まで一貫してサポートいたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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