遺産分割調停に相手が来ない|欠席された場合の進め方を弁護士が解説
遺産分割調停に相手が来ない|欠席された場合の進め方を弁護士が解説
話合いでは遺産分割がまとまらず、ようやく家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てた。ところが、第1回の期日に相手方の相続人が姿を見せない——。「このまま逃げ切られてしまうのではないか」と不安になる方は少なくありません。
しかし、遺産分割調停は、相手方が欠席したからといって行き詰まる手続ではありません。法律は、欠席が続いた場合に手続をどう進めるかをあらかじめ定めています。この記事では、相手方が調停に出席しないときに手続がどう動くのか、そして申立人としてどう対応すべきかを、横浜の弁護士が条文に沿って整理します。
遺産分割調停は相手が欠席しても期日は開かれる
まず押さえておきたいのは、相手方が来なくても期日そのものは開かれるということです。出席した当事者は、裁判官と家事調停委員で構成される調停委員会に対し、自分の主張や提出した資料を説明できます。調停委員会は、欠席した相続人に次回期日への出席を促す連絡を行ったり、書面で意向を確認したりします。
実務上、初回期日を欠席した相続人がその後に出席してくる例は珍しくありません。調停委員会から手続の説明を受けて態度が変わることがあるためです。1回欠席されただけで審判を求める必要はありません。
遺産分割調停の申立て方法や必要書類については、遺産分割調停を自分で申し立てる方法で詳しく解説しています。
正当な理由のない欠席には5万円以下の過料の定めがある
家事事件手続法は、家庭裁判所が事件の関係人を期日に呼び出すことができるとしたうえで(51条1項)、呼出しを受けた関係人は期日に出頭しなければならないと定めています(同条2項本文)。正当な理由なく出頭しないときは、家庭裁判所は5万円以下の過料に処するとされています(同条3項)。これらの規定は、同法258条1項により家事調停の手続にも準用されます。
もっとも、この規定が実際に適用される例は多くないと指摘されています。裁判所の目的は制裁ではなく話合いによる解決にあるためです。また、やむを得ない事由があるときは代理人を出頭させることができ(51条2項ただし書)、事情を裁判所に連絡していれば「正当な理由」が認められる余地もあります。過料を当てにして手続を進めるのは現実的ではありません。
欠席が続くと調停は不成立となり、審判へ自動的に移行する
調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合には、調停が成立しないものとして事件を終了させることができます(家事事件手続法272条1項本文)。相手方が繰り返し欠席し、連絡にも応じない状態が続けば、合意の見込みがないと判断され、調停は不成立となります。
ここが遺産分割調停の重要な点です。遺産分割は家事事件手続法の別表第二に掲げられた事項であるため、調停が不成立で終了した場合には、家事調停の申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされます(同条4項)。改めて審判を申し立てる必要はなく、同じ家庭裁判所で自動的に審判手続へ移行します。相手方が出てこないことで遺産分割が永久に止まることはありません。
| 段階 | 手続の内容 | 相手が欠席した場合 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議 | 相続人全員の話合い | 全員の合意が得られず成立しない |
| 遺産分割調停 | 家庭裁判所での話合い(調停委員会が関与) | 期日は開かれる。欠席が続けば不成立(272条1項) |
| 遺産分割審判 | 裁判官が資料に基づき分割方法を決定 | 調停不成立により自動移行(272条4項) |
審判では、裁判官が相続人の範囲、遺産の範囲と評価、特別受益や寄与分の有無を資料に基づいて判断します。相手方が審判期日にも出席しなければ、その相続人からの主張や立証がないまま判断されるため、結果として欠席した側に不利益が及ぶことも少なくありません。手続の詳細は遺産分割審判とは?調停不成立後の手続き・流れ・判断基準をご覧ください。
「調停に代わる審判」で解決できる場合もある
実質的な争点がなく分割方法の方向性が見えている事案では、家庭裁判所が職権で「調停に代わる審判」をすることがあります。調停が成立しない場合において相当と認めるときに、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、事件の解決のため必要な審判をする制度です(家事事件手続法284条1項)。金銭の支払その他の財産上の給付を命ずることもできます(同条3項)。
ただし、当事者は2週間の不変期間内に異議を申し立てることができ(286条1項・2項、279条2項の準用)、適法な異議があれば審判は効力を失います(286条5項)。その場合も、別表第二の事項については調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ(同条7項)、通常の遺産分割審判へ進みます。なお、この審判の告知は公示送達によってはできません(285条2項)。
相手が来ない理由別の対処法
「来ない」といっても理由はさまざまです。見立てを誤ると、無駄に期日を重ねることになります。
遠方に住んでいる・仕事で平日に出られない
家庭裁判所は、相当と認めるときは当事者の意見を聴いて、家庭裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法で期日の手続を行うことができます(家事事件手続法54条1項。258条1項により調停に準用)。この方法で関与した者は、その期日に出頭したものとみなされます(54条2項)。遺産分割調停では、この方法で調停を成立させることも可能です(268条3項参照)。遠方を理由に難色を示されている場合は、この方法の利用を裁判所に打診するとよいでしょう。
感情的に反発している・関わりたくない
もっとも多いパターンです。調停は当事者が交互に調停室へ入る方式で進むため、原則として相手方と顔を合わせずに済むことを裁判所から伝えてもらうだけで態度が変わることもあります。それでも応じない場合は、期日を重ねすぎず、早めに不成立として審判へ移行させる判断が必要です。
住所がわからない・判断能力に不安がある
呼出しが届かない場合、調停を続けても進展は望めません。戸籍の附票等による調査を尽くしたうえで、不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人を相手方として進める方法が検討されます。また、高齢の相続人が応じない背景に認知症等による判断能力の低下があるときは、成年後見人等の選任を検討することになります。
どの方法が適切かは、相続人の人数、遺産の内容、これまでの経緯によって変わります。紛争性のある遺産分割については、当事務所の相続・遺産分割の取扱分野ページもあわせてご覧ください。
申立人が準備しておくべきこと
相手方の欠席が見込まれる事案では、次の点を意識すると、審判へ移行したときに有利に働きます。
- 遺産目録と裏付け資料を早期に整える:不動産の全部事項証明書、預貯金の残高証明書や取引履歴などをそろえておきます。
- 主張は書面で提出する:書面にしておけば、審判移行後もそのまま判断資料になります。
- 期日を重ねすぎない:出席の見込みがないまま続けても時間を失うだけです。
- 10年の期間制限に注意する:相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割では、原則として具体的相続分による分割を求めることができません(民法904条の3)。
協議にも調停にも応じない相続人への対応全般は、遺産分割協議に応じない相続人への対処法でも解説しています。
自分が欠席せざるを得ないときの対応
逆に、あなた自身が出席できない場合も、無断欠席は避けてください。自分の言い分が記録に残らないまま手続が進むことが最大の不利益です。出席できないとわかった時点で担当の裁判所書記官に連絡し、期日変更を求めるか、書面で意見と資料を提出します。弁護士に依頼していれば弁護士が代理人として出席するため、仕事を休めない方でも手続を止めずに進められます。
よくある質問
相手が遺産分割調停を欠席し続けたら、こちらの言い分どおりに決まりますか。
欠席しても申立人の主張がそのまま認められるわけではありません。合意の見込みがないとして調停が不成立となり(家事事件手続法272条1項)、遺産分割は別表第二の事項であるため、調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされて審判へ移行します(同条4項)。審判では裁判官が資料に基づき分割方法を判断します。
調停を無断で欠席すると、本当に過料を科されるのですか。
呼出しを受けた関係人は期日に出頭しなければならず、正当な理由なく出頭しないときは5万円以下の過料に処するとされています(家事事件手続法51条2項・3項。同法258条1項により調停に準用)。もっとも実務上この規定が適用される例は多くないとされ、過料を当てにして手続を進めるのは適切ではありません。
相手が遠方に住んでいて出席できないと言っています。どうすればよいですか。
家庭裁判所は、相当と認めるときは当事者の意見を聴いて、音声の送受信により同時に通話できる方法(電話会議・ウェブ会議)で期日の手続を行うことができ、関与した者は出頭したものとみなされます(家事事件手続法54条1項・2項、258条1項により準用)。遺産分割調停ではこの方法で調停を成立させることも可能です。
相手の住所がわからず、呼出状も届きません。この場合も調停はできますか。
呼出し自体ができないため、戸籍の附票等による調査を尽くしたうえで、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、管理人を相手方として進める対応が必要になります。長期間生死不明のときは失踪宣告が選択肢となることもあります。
自分の側が仕事の都合で期日に出られないときはどうすればよいですか。
無断欠席は避け、事前に担当書記官へ連絡して期日変更を求めるか、書面で意見を提出してください。やむを得ない事由があるときは代理人を出頭させることができます(家事事件手続法51条2項ただし書)。弁護士に依頼していれば代理人が出席するため、本人が毎回出席する必要は必ずしもありません。
まとめ
- 相手方が欠席しても期日は開かれ、調停委員会は出席を促す働きかけを行う。
- 正当な理由なく出頭しないときは5万円以下の過料の定めがあるが(家事事件手続法51条3項・258条1項)、実際に適用される例は多くない。
- 欠席が続けば調停は不成立となり(272条1項)、遺産分割は別表第二の事項であるため審判へ自動的に移行する(同条4項)。
- 事案によっては「調停に代わる審判」(284条)で解決することもあるが、2週間以内の異議により失効する(286条)。
- 遠方・多忙が理由であれば、電話会議・ウェブ会議の利用(54条、258条1項)で出席を得られる可能性がある。
- 所在不明や判断能力の問題が背景にある場合は、不在者財産管理人や成年後見人等の選任といった別の手当てが必要になる。
相手方が出てこない事案では、「いつまで待つか」「どの時点で不成立として審判に移すか」の見極めが結論を左右します。審判では裁判官が資料に基づいて判断するため、調停の段階から審判を見据えた資料と主張の組立てをしておくことが重要です。横浜の弁護士に依頼すれば、代理人として期日に出席したうえで、こうした判断と書面の作成を行うことができます。
遺産分割調停に相手が出席せずお困りの方へ
タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺産分割・遺留分の事案について、調停から審判まで一貫して対応しております。欠席が続く相手方への対応方針の見極めや、審判を見据えた主張・資料の準備をお手伝いします。
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