タングラム法律事務所

誹謗中傷の慰謝料を差押えで回収する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の慰謝料を差押えで回収する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の慰謝料を差押えで回収する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の慰謝料を差押えで回収する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の慰謝料を差押えで回収する方法|自分で申し立てる手順

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月7日 最終更新日:2026年11月7日

誹謗中傷の投稿者に対する損害賠償請求で勝訴判決を得たのに、相手が慰謝料を支払わない。督促の連絡にも反応がない。そのようなとき、最終的な回収手段となるのが強制執行(差押え)です。費用をできるだけ抑えるために、差押えの申立ても自分で行いたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、弁護士を付けずに手続を進めたい方に向けて、相手の預金や給与を差し押さえる「債権差押命令」の申立てについて、事前に準備する書類、申立先と費用、預金と給与それぞれの注意点、差し押さえた後の取立てと届出の方法を、民事執行法の条文に沿って解説します。

結論から言うと、判決などの債務名義に執行文と送達証明書をそろえれば、相手の住所地を管轄する地方裁判所に債権差押命令を申し立て、預金や給与を差し押さえることができます。申立手数料は原則4,000円です。ただし、差押えの対象となる銀行の支店や勤務先は申立人が特定する必要があり、給与は原則として4分の3が差押禁止とされるなど、回収できる範囲には法律上の制限があります。

債権差押命令とは|預金・給与を差し押さえる手続

預金や給与は、相手(債務者)が銀行や勤務先(第三債務者)に対して持っている「債権」です。これらに対する強制執行は「債権執行」と呼ばれ、執行裁判所の差押命令によって開始します(民事執行法143条)。

差押命令は、債務者と第三債務者を審尋しないで発せられ、両者に送達されます(同法145条2項・3項)。相手に事前に知らせずに手続が進むため、預金を引き出されるなどの財産隠しを防ぎやすい仕組みです。差押えの効力は、差押命令が第三債務者(銀行や勤務先)に送達された時に生じます(同条5項)。

対象第三債務者特徴
預金銀行等差押え時点の残高が対象。残高がなければ回収できない
給与勤務先差押え後に支払われる給与にも効力が及び、継続的な回収が期待できる(同法151条)

申立ての前に準備するもの|債務名義・執行文・送達証明書

債務名義

強制執行は、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書、強制執行認諾文言付きの公正証書などの「債務名義」に基づいて行います(民事執行法22条)。示談で解決した場合でも、示談書が単なる私文書であれば、そのままでは差押えはできません。

執行文

強制執行は、原則として執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施されます(民事執行法25条)。執行文は、判決や和解調書であれば事件記録のある裁判所の裁判所書記官に申請して付与を受けます(同法26条1項)。裁判所の案内では、仮執行宣言付支払督促と仮執行宣言付少額訴訟判決は執行文が不要とされています。支払督促で債務名義を得る方法は、誹謗中傷の慰謝料を支払督促で請求する方法で解説しています。

送達証明書

強制執行は、債務名義の正本または謄本があらかじめ(または同時に)債務者に送達されていなければ開始できません(民事執行法29条)。そのため、判決をした裁判所で送達証明書の交付を受けておきます。なお、裁判所の案内によれば、電子的に作成された債務名義の場合は「事件特定情報」を提供することで、正本や送達証明書の提出が不要になることがあります。

申立先と費用・必要書類

債権執行の申立先は、原則として債務者の住所地(普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所です(民事執行法144条1項)。相手が横浜市内に住んでいれば、横浜地方裁判所に申し立てることになります。

項目内容
申立手数料原則として4,000円(収入印紙)
郵便料裁判所ごとに異なる
申立書類申立書、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録
添付書類執行力ある債務名義の正本(謄本は不可)、送達証明書、第三債務者が法人の場合はその資格証明書(代表者事項証明書等)

書式や郵便料の額は、申立先の地方裁判所のウェブサイト(横浜地方裁判所であれば「債務名義に基づく差押え」のページ)で確認できます。住所や氏名が債務名義の記載から変わっている場合は、そのつながりを示す住民票等も必要です。

預金を差し押さえる場合の手順と注意点

預金を差し押さえるには、差押債権目録で銀行名だけでなく取扱支店まで特定するのが実務の扱いです。相手の口座がどの銀行のどの支店にあるのか分からない場合は、先に財産調査の手続を利用します。銀行等から預貯金の情報を取得する方法は、誹謗中傷の慰謝料を払わない相手の財産を調べる手続をご覧ください。

  1. 債権差押命令の申立てと同時に、第三債務者に対する陳述催告の申立てをする
  2. 裁判所が差押命令を発令し、銀行と債務者に送達する
  3. 銀行は、差押命令の送達の日から2週間以内に、口座の有無や残高等を陳述する(民事執行法147条1項)
  4. 債務者に差押命令が送達された日から1週間を経過すると、申立人が銀行から直接取り立てられる(同法155条1項)

陳述催告の申立ては、裁判所の案内でも差押命令の申立てと同時に行うよう求められています。陳述書によって空振りかどうかが早く分かるため、次の手を考えるうえで欠かせません。

給与を差し押さえる場合の差押禁止範囲

給料・賃金・賞与などの債権は、支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分が差押禁止とされています。ただし、その4分の3の額が政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分だけが差押禁止となります(民事執行法152条1項)。毎月払いの給与の場合、政令で定める額は33万円です(民事執行法施行令2条1項1号)。

給付の額(月額)差押禁止部分差し押さえられる部分
24万円18万円(4分の3)6万円
40万円30万円(4分の3)10万円
60万円33万円(4分の3が33万円を超えるため)27万円

給与の差押えの効力は、請求債権と執行費用の額に達するまで、差押え後に支払われる給与にも及びます(同法151条)。一方、給与等を差し押さえた場合の取立ては、債務者への送達から1週間ではなく4週間を経過してからとなります(同法155条2項)。退職手当も4分の3が差押禁止です(同法152条2項)。

また、債務者は生活の状況などを理由に、差押命令の取消しや範囲の変更を申し立てることができ(同法153条1項)、差押命令の送達の際にはその旨が債務者に教示されます(同法145条4項)。

取り立てた後の届出を忘れない

第三債務者から支払を受けたときは、直ちに執行裁判所にその旨を届け出なければなりません(民事執行法155条4項)。給与の差押えのように回収が長期に及ぶ場合、取立てができるようになった日から支払を受けないまま2年を経過したときは、その旨の届出も必要です(同条5項)。この届出を怠ると、差押命令が取り消されることがあります(同条6項)。全額を回収できた場合や、回収の見込みがなく手続を終える場合には、取下げなどの手続も必要になります。

自分で進める場合の限界と弁護士に依頼するメリット

債権差押命令の申立ては、裁判所の書式に沿えば本人でも行うことは可能です。一方で、差押債権目録の書き方を誤ると補正を求められたり、差押えが空振りに終わったりすることがあります。預金の差押えは一回勝負の面が強く、どの銀行・支店を、どのタイミングで差し押さえるかが回収の成否を分けます。相手が勤務先を辞めたり、口座から預金を移したりすれば、手続をやり直さなければなりません。

開示請求から損害賠償請求、判決後の回収までの弁護士の関与については、発信者情報開示請求・削除請求のページでご紹介しています。勝訴判決を得るまでの流れは誹謗中傷の損害賠償を自分で提訴する方法で解説しています。横浜の弁護士に相談し、差押えの順番や対象の見通しを立ててから動くのも一つの方法です。

よくある質問

差押えをすると、相手に事前に知られてしまいますか?

差押命令は債務者と第三債務者を審尋しないで発せられるため(民事執行法145条2項)、発令前に相手に知らされることはありません。差押命令は銀行や勤務先と債務者の双方に送達されます。

給与はどのくらい差し押さえられますか?

原則として、支払期に受けるべき給付の4分の1です。ただし、4分の3の額が33万円(毎月払いの場合)を超えるときは、33万円を超える部分を差し押さえることができます(民事執行法152条1項、同法施行令2条1項1号)。

差し押さえた後、いつからお金を受け取れますか?

預金の場合は債務者に差押命令が送達された日から1週間、給与の場合は4週間を経過すると、申立人が第三債務者から直接取り立てることができます(民事執行法155条1項・2項)。

相手の銀行口座が分からなくても差押えはできますか?

差押えの申立てでは、銀行名と支店を特定するのが実務の扱いです。分からない場合は、銀行等から預貯金の情報を取得する手続や財産開示手続を先に利用することを検討します。

まとめ

  • 預金や給与の差押えは、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に債権差押命令を申し立てて行う
  • 債務名義のほか、原則として執行文と送達証明書が必要。申立手数料は原則4,000円
  • 預金は銀行の支店まで特定し、陳述催告の申立てを同時に行う
  • 給与は原則4分の3が差押禁止で、取立ては送達から4週間経過後
  • 支払を受けたら直ちに裁判所へ届け出る。2年間支払がないときも届出が必要

判決を得ても、回収できなければ被害の回復にはなりません。横浜の弁護士として誹謗中傷の損害賠償請求を扱ってきた立場からは、差押えの申立て前に、対象とする財産と順番を慎重に検討することをおすすめします。

慰謝料を支払わない相手への差押えでお困りの方へ

タングラム法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、発信者情報開示請求から損害賠償請求、判決後の回収まで豊富な実績を有しております。ご自身で手続を進めている途中からのご依頼についてもご相談いただけます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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