タングラム法律事務所

相続で兄弟と同じ弁護士に依頼できる?利益相反の注意点を弁護士が解説

相続で兄弟と同じ弁護士に依頼できる?利益相反の注意点を弁護士が解説

相続で兄弟と同じ弁護士に依頼できる?利益相反の注意点を弁護士が解説

相続で兄弟と同じ弁護士に依頼できる?利益相反の注意点を弁護士が解説

相続で兄弟と同じ弁護士に依頼できる?利益相反の注意点を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月7日 最終更新日:2026年10月7日

「長男が遺産を独り占めしようとしているので、次男の私と妹で一緒に弁護士に頼みたい」「兄弟で費用を出し合って、同じ弁護士に遺留分を請求してもらえないか」――相続のご相談では、このように複数の相続人がまとめて依頼したいという声をよくお聞きします。反対に、「兄が依頼した弁護士に、私の分もまとめてお願いすればよいと言われた」というご相談もあります。

相続人同士は、遺産の取り分をめぐって本来は利害が対立し得る関係にあります。そのため、弁護士が複数の相続人から依頼を受けるときには、「利益相反」というルールに注意しなければなりません。この記事では、相続で兄弟と同じ弁護士に依頼できるのか、できる場面とできない場面、依頼前に確認しておきたいポイントを解説します。

結論として、相続で兄弟が同じ弁護士に依頼することは、依頼する兄弟同士の間に現実の対立がなく、利害が対立するおそれや辞任の可能性について説明を受けたうえであれば、認められる場合があります。一方、すでに対立している相手方の兄弟と同じ弁護士に依頼することはできず、途中で意見が割れた場合には弁護士が辞任することもあるため、依頼前に方針と取り分の考え方をすり合わせておくことが重要です。

相続で「兄弟一緒に同じ弁護士へ」という依頼が生まれる場面

複数の相続人が同じ弁護士への依頼を考えるのは、典型的には次のような場面です。

  • 遺産分割で、遺産を管理している相続人1人に対し、他の兄弟が足並みをそろえて分割を求めたい
  • 「全財産を長男に相続させる」という遺言があり、他の兄弟がそれぞれ遺留分侵害額請求をしたい
  • 遠方に住む兄弟がいて、窓口を一本化したい
  • 弁護士費用を兄弟で分担したい

同じ弁護士に依頼すれば、方針の統一や情報共有がしやすく、相手方とのやり取りも一本化できます。一方で、同じ側に立つ兄弟でも、遺産の取り分という点では利害が完全に一致するわけではありません。この点が、弁護士の利益相反のルールと関わってきます。

弁護士の利益相反のルールとは(弁護士法・弁護士職務基本規程)

弁護士には、依頼者の利益を守るため、利害が対立する事件を扱うことについて法律と規程で制限が設けられています。相続の場面で特に関係するのは次のルールです。

根拠内容(要旨)
弁護士法25条1号
弁護士職務基本規程27条1号
相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件は、職務を行うことができない
弁護士職務基本規程28条3号依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件は、職務を行ってはならない。ただし、その依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は除かれる
弁護士職務基本規程32条同一の事件で複数の依頼者の間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、受任に当たり、依頼者それぞれに辞任の可能性その他の不利益を説明しなければならない
弁護士職務基本規程42条受任後に依頼者相互間に現実に利害の対立が生じたときは、依頼者それぞれに速やかに事情を告げ、辞任その他の適切な措置をとらなければならない

また、民法108条は、同一の法律行為について当事者双方の代理人としてした行為や、代理人と本人の利益が相反する行為を、本人があらかじめ許諾した場合などを除き、代理権を有しない者がした行為とみなすと定めています。遺産分割協議は相続人全員が当事者となる合意ですから、1人の弁護士が複数の相続人を代理して協議を成立させる場面では、こうした点にも配慮が必要になります。

同じ弁護士に依頼できるケース・難しいケース

上記のルールを相続の典型的な場面に当てはめると、おおむね次のように整理できます。最終的な判断は、事案ごとに弁護士が個別に行います。

場面見通し
すでに争っている相手方の兄弟と、同じ弁護士に依頼するできない(弁護士法25条1号等)
相手方が先に相談・依頼している弁護士に、こちらも依頼する原則としてできない
同じ遺言により遺留分を侵害された兄弟2人が、受遺者に対しそれぞれ請求する利害がそろいやすく、説明と同意を経て共同で依頼できる場合が多い
遺産を管理する兄弟1人に対し、他の兄弟が共同で遺産分割を求める依頼者同士の取り分の考え方が一致していれば、説明と同意を経て受任できる場合がある
依頼者同士の間でも、特別受益(生前贈与)や寄与分(介護など)の主張が食い違う利害の対立が現実化しやすく、別々の弁護士への依頼を検討すべき

遺留分侵害額請求は、各遺留分権利者がそれぞれ自分の侵害額を請求する権利であり、兄弟同士で取り分を奪い合う関係になりにくいため、共同での依頼になじみやすい類型です。これに対し、遺産分割は遺産全体を相続人間で分け合う手続ですから、同じ側に立つ兄弟の間でも、誰が実家を取得するか、誰がどれだけ生前に援助を受けていたかによって、利害が分かれることがあります。

兄弟で同じ弁護士に依頼するメリットとリスク

メリット

  • 主張の方針がそろい、相手方に対して一貫した対応ができる
  • 資料や情報を共有しやすく、事実関係の整理が早く進む
  • 弁護士との連絡窓口を一本化できる
  • 事務所によっては、費用面の負担を抑えられることがある

リスク

  • 途中で辞任となる可能性:受任後に依頼者同士で意見が割れると、弁護士は規程42条に基づき辞任などの措置をとることになり、場合によっては双方とも新たな弁護士を探す必要が生じます
  • 期限への影響:遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します(民法1048条)。弁護士の交代で時間を失うと、期限管理に影響するおそれがあります
  • 情報の共有:共同で依頼する以上、事件に関する情報は依頼者同士で共有されるのが通常です。他の兄弟に知られたくない事情がある場合には向きません
  • 言い出しにくさ:自分の取り分について、一緒に依頼した兄弟の前では率直な希望を伝えにくくなることがあります

同じ弁護士に依頼する前に確認しておきたいこと

兄弟で共同して依頼する場合は、次の点を事前に話し合い、弁護士にも伝えておくと安心です。

  • 依頼者同士の間で、遺産の分け方(誰が何を取得するか)について合意ができているか
  • 依頼者のうち誰かに、多額の生前贈与や介護などの貢献がないか(特別受益・寄与分の問題)
  • 意見が割れた場合にどうするか(辞任の可能性について説明を受けたか)
  • 弁護士費用の総額と、各自の負担割合
  • 弁護士との連絡窓口を誰にするか、情報をどこまで共有するか

こうした点は口頭の約束で済ませず、委任契約の段階で確認しておくことが大切です。費用の考え方については「遺産分割の弁護士費用の相場とメリット」や「遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する費用・メリット」もご参照ください。

「相手の弁護士に一緒に頼めばいい」と言われたら

相続のご相談では、相手方の兄弟から「自分が頼んだ弁護士が全員分の手続をしてくれるから、任せておけばよい」と言われるケースがあります。しかし、その弁護士はあくまで依頼した相続人の代理人であり、あなたの利益を守る立場にはありません。示された遺産分割案や協議書が、あなたにとって妥当な内容かどうかは、別途確認する必要があります。

内容に納得できないまま署名押印してしまうと、後から覆すことは簡単ではありません。相手方の対応に疑問がある場合や、話し合いが進まない場合は、ご自身の側の弁護士に相談することを検討してください。話し合いに応じない相続人がいる場合の進め方については「遺産分割協議に応じない相続人への対処法」で解説しています。当事務所の相続分野の取扱いについては、相続・遺産分割・遺留分の取扱分野ページをご覧ください。

よくある質問

兄弟3人のうち2人で、同じ弁護士に遺産分割を依頼できますか?

依頼する2人の間で現実の対立がなく、利害が対立するおそれや辞任の可能性について弁護士から説明を受けたうえで依頼するのであれば、受任してもらえる場合があります。ただし、2人の間でも遺産の取り分は本来対立し得るため、特別受益や寄与分などで意見が分かれそうな場合は、別々の弁護士に依頼したほうがよいこともあります。

依頼した後に兄弟と意見が割れたら、どうなりますか?

弁護士職務基本規程42条により、弁護士は依頼者それぞれに速やかに事情を告げ、辞任その他の適切な措置をとることになります。状況によっては双方の代理人を辞任することもあり、その場合は各自が新たに弁護士を探す必要が生じます。遺留分侵害額請求のように期限がある手続では、時間のロスに注意が必要です。

兄弟で同じ弁護士に依頼すれば、弁護士費用は1人分で済みますか?

費用の決め方は法律事務所ごとに異なります。依頼者ごとに経済的利益を算定する方式もあれば、まとめて受任する場合の取決めを設ける方式もあります。共同で依頼する場合は、費用の総額と各自の負担割合を委任契約の段階で確認しておくことが大切です。

相手方の兄弟が依頼している弁護士に、自分も相談や依頼ができますか?

弁護士法25条1号や弁護士職務基本規程27条1号により、相手方から依頼を受けている事件について、弁護士がこちら側の職務を行うことはできません。その弁護士はあくまで相手方の代理人ですので、ご自身の利益を守るためには、別の弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

  • 相続で兄弟が同じ弁護士に依頼することは、依頼者同士に現実の対立がなく、辞任の可能性などの説明を受けて同意していれば、認められる場合がある
  • すでに対立している相手方と同じ弁護士に依頼することはできない
  • 遺留分侵害額請求は共同依頼になじみやすく、遺産分割は依頼者同士でも利害が分かれやすい
  • 途中で意見が割れると弁護士が辞任することがあり、期限のある手続では特に注意が必要
  • 取り分の考え方・費用負担・情報共有の範囲を、依頼前に確認しておく

共同で依頼するか、別々の弁護士に依頼するかは、相続人同士の関係や遺産の内容によって適切な判断が変わります。横浜で相続の紛争にお悩みの方は、早い段階で弁護士に相談し、ご自身の立場に合った依頼の形を確認することをおすすめします。

兄弟で弁護士への依頼を検討している方へ

タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺産分割・遺留分の事案について、交渉から調停・審判・訴訟まで一貫して対応しております。共同でのご依頼が適切かどうかも含め、ご事情をうかがったうえで進め方をご提案します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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