タングラム法律事務所

ストレスチェック50人未満の義務化|会社の準備を弁護士が解説

ストレスチェック50人未満の義務化|会社の準備を弁護士が解説

ストレスチェック50人未満の義務化|会社の準備を弁護士が解説

ストレスチェック50人未満の義務化|会社の準備を弁護士が解説

ストレスチェック50人未満の義務化|会社の準備を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月7日 最終更新日:2026年10月7日

「うちは従業員が50人もいないから、ストレスチェックは関係ない」。これまで多くの中小企業や個人経営の店舗では、そう考えて問題ありませんでした。ところが、2025年の労働安全衛生法改正により、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられることになり、その施行日が2028年(令和10年)4月1日と決まりました。

この記事では、義務化の時期と根拠、義務と努力義務の違い、外部委託の考え方、プライバシーや不利益取扱いの注意点、施行日までの準備を、横浜の弁護士が中小企業向けに解説します。

結論として、労働者数50人未満の事業場でも、2028年4月1日から年1回のストレスチェックの実施と、高ストレス者から申出があった場合の医師による面接指導が法的義務になります。一方、集団分析・職場環境改善は努力義務で、労働基準監督署への結果報告は不要とされています。小規模事業場では外部機関への委託が推奨されており、社長など人事権を持つ人が個人の結果を見られない体制づくりが準備の中心になります。

ストレスチェック義務化はいつから?50人未満の事業場の施行日

ストレスチェック制度は、2015年12月から労働者数50人以上の事業場に義務付けられてきました(労働安全衛生法66条の10)。50人未満の事業場については、法律の附則により「当分の間」努力義務とされていましたが、2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)により、この扱いが改められ、規模にかかわらず義務となります。

改正法では、この部分の施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされていました。その後、2026年6月10日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」(令和8年政令第195号)により、施行日は2028年(令和10年)4月1日と定められました。

なお、「50人」は会社全体ではなく事業場(支店・店舗・工場などの単位)ごとに数えるのが原則です。会社全体で50人以上でも、50人未満の店舗等はこれまで努力義務でしたが、改正後は義務となります。

50人未満の事業場で「義務」になること・「努力義務」のこと

厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルによれば、50人未満の事業場で求められる事項は次のように整理されています。

項目50人未満の事業場(2028年4月〜)
ストレスチェックの実施(1年以内ごとに1回)義務
結果の本人への通知義務(実施者から直接通知)
高ストレス者が申し出た場合の医師による面接指導義務
面接指導結果に基づく医師の意見聴取・就業上の措置義務
集団分析・職場環境の改善努力義務
労働基準監督署への実施結果の報告不要(50人以上の事業場のみ義務)

対象となる労働者は、一般定期健康診断の対象者と同様に、期間の定めのない契約(又は1年以上の雇用が見込まれる契約)で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の者とされています。パートタイマーでもこの要件を満たせば対象になります。

なお、ストレスチェックを実施しないこと自体に直接の罰則は設けられていませんが、労働基準監督署から是正を求められる可能性があります。また、従業員のメンタルヘルス不調で安全配慮義務(労働契約法5条)が問題となった場面では、法定の対策を講じていなかったことが会社に不利に考慮されるおそれがあります。調査への備えについては労働基準監督署の調査対応の流れを解説した記事もご参照ください。

小規模事業場は外部委託が推奨される理由

ストレスチェックの「実施者」になれるのは、医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られます。また、社長や人事部長など、人事について直接の権限を持つ者は、ストレスチェックの実施の事務に従事できないとされています。

小規模な会社では社長が人事を兼ねることが多く、回答内容が社内に知られると制度の意味がなくなります。そのため厚生労働省のマニュアルは、50人未満の事業場では、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部機関に委託して実施することを推奨しています。

外部委託をする場合は、委託契約書で、実施者・結果の通知方法・個人情報の取扱い(再委託の可否、保存と廃棄)・費用などを明確にしておくことが重要です。

高ストレス者の面接指導を行う医師が社内にいない場合は、全国約350か所に設置されている地域産業保健センター(地産保)で、登録産業医による面接指導等の産業保健サービスを費用負担なく受けられる場合があります。利用条件は所管のセンターにご確認ください。

プライバシーと不利益取扱いの禁止|会社が守るべきルール

特にトラブルになりやすいのが、結果の取扱いと不利益取扱いです。

個人の結果は本人の同意なく会社に渡らない

ストレスチェックの個人の結果は、実施者から本人に直接通知され、本人の事前の同意がなければ会社は結果を受け取れません(労働安全衛生法66条の10第2項)。一方、面接指導の申出があったことや面接指導の結果は、法令に基づく事項として会社が把握できます。面接指導の結果の記録は5年間保存する必要があります。

不利益な取扱いは禁止

面接指導の申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは、法律で禁止されています(同条3項)。さらに厚生労働省の指針では、ストレスチェックを受けないことを理由とする不利益な取扱いや、面接指導の結果に基づく措置として解雇や退職勧奨を行うことなども禁止されています。高ストレスと判定された従業員を安易に配置転換したり、契約を更新しなかったりすると、違法と判断されるおそれがあります。

就業上の措置(労働時間の短縮、業務の変更など)は、医師と本人の意見を聴いたうえで判断します。休職に至った場合の対応は傷病による長期休職への対応手順を解説した記事で詳しく説明しています。

2028年4月までに会社が進めておくべき準備

厚生労働省のマニュアルを踏まえると、準備は次の流れで進めるのが現実的です。

  1. 方針の表明:事業者がストレスチェック制度を導入する方針を決め、従業員に示します。
  2. 関係労働者からの意見聴取:衛生委員会がない50人未満の事業場では、労働安全衛生規則23条の2に基づき、関係労働者の意見を聴く機会を設けて、実施体制や方法を話し合います。
  3. 外部委託先の選定と契約:実施者、調査票(推奨は「職業性ストレス簡易調査票」の57項目)、実施時期、結果通知の方法、面接指導を担う医師を決め、委託契約を締結します。
  4. 社内規程の作成・周知:実施時期、結果の取扱い、同意の取り方、不利益取扱いの禁止などを規程に定め、従業員に周知します。就業規則との関係も整理しておくと安心です。
  5. 担当者の役割分担:人事権を持つ社長等が個人結果に触れないよう、実施事務の担当者(外部委託先との連絡窓口)を決めます。

また、厚生労働局の案内によれば、集団分析は特定の個人を識別できない方法で行うことが労働安全衛生規則に明記され、2027年(令和9年)4月1日から施行されます。少人数の部署で集団分析を行うと個人が特定されやすいため、努力義務とはいえ実施する場合には単位の設定に注意が必要です。

ハラスメントが高ストレスの原因と疑われる場合の会社の責任と対応はパワハラ・セクハラが発生した場合の会社の法的責任を解説した記事をご覧ください。労務管理全般の体制づくりについては、企業法務の取扱分野ページでもご案内しています。

よくある質問

Q. 従業員が10人程度の会社でも義務になりますか?

はい。改正後は事業場の規模にかかわらず、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務となります。ただし、対象となるのは常時使用する労働者であり、週の所定労働時間が短いパートタイマーなどは対象外となる場合があります。

Q. 社長が自分で従業員の回答を集計してもよいですか?

できません。人事について直接の権限を持つ社長や人事部長などは、ストレスチェックの実施の事務に従事できないとされています。小規模事業場では、外部機関に委託して実施することが推奨されています。

Q. 50人未満の事業場も労働基準監督署に結果を報告する必要がありますか?

厚生労働省のマニュアルでは、労働基準監督署への実施結果の報告は50人以上の事業場の義務であり、50人未満の事業場は不要とされています。ただし、実施や面接指導の義務は50人未満の事業場にも課されます。

まとめ

労働者数50人未満の事業場でも、2028年4月1日からストレスチェックの実施と、申出があった高ストレス者への医師の面接指導が義務になります。小規模事業場では外部委託が推奨され、個人の結果を会社が同意なく取得しないこと、受検や面接指導を理由とする不利益取扱いをしないことが重要です。委託先の選定や規程づくりには時間がかかるため、早めの準備が安心です。

委託契約書のチェック、社内規程の整備、休職・復職をめぐるトラブルなど、制度の運用には法的な判断を伴う場面が少なくありません。横浜で企業法務・労務に対応する弁護士として、当事務所でも制度導入の段階からサポートいたします。

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タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。ストレスチェックの外部委託契約や社内規程の整備、メンタルヘルス不調をめぐる労務トラブルについてもご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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