タングラム法律事務所

紙の手形・小切手の廃止はいつ?|企業の対応と注意点を弁護士が解説

紙の手形・小切手の廃止はいつ?|企業の対応と注意点を弁護士が解説

紙の手形・小切手の廃止はいつ?|企業の対応と注意点を弁護士が解説

紙の手形・小切手の廃止はいつ?|企業の対応と注意点を弁護士が解説

紙の手形・小切手の廃止はいつ?|企業の対応と注意点を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月4日 最終更新日:2026年11月4日

「取引銀行から手形帳はもう発行できないと言われた」「取引先から受け取った手形を、この先も現金化できるのか不安だ」。長年手形で決済してきた中小企業の経営者や経理担当の方から、こうした声が聞かれる時期になりました。

この記事では、紙の手形・小切手の廃止スケジュール、振り出す側と受け取る側の注意点、取適法(旧下請法)との関係、でんさいの仕組み、見直すべき契約条項を、横浜の弁護士が解説します。

結論として、電子交換所での紙の手形・小切手の交換は2027年3月31日で廃止されます。もっとも、多くの金融機関はこれに先立って2026年9月30日を最終振出期限としており、10月1日以降に振り出された手形・小切手は、原則として当座勘定から支払えません。手形が法律上直ちに無効になるわけではありませんが、資金化できないおそれがあるため、振込やでんさいへの切替えと、契約書の支払条項・解除条項の見直しを急ぐ必要があります。

紙の手形・小切手の廃止スケジュール|いつまで使えるのか

全国銀行協会(全銀協)は2025年3月、2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止すると決定しました。現在は、2027年3月31日をもって交換を廃止すると案内されています。実務上は、次のとおり金融機関の対応が先行しています。

時期内容
すでに実施多くの金融機関で手形帳・小切手帳の発行終了、2027年4月以降を期日とする手形等の代金取立の受付終了
2026年9月30日期限を公表した金融機関の多くが設定した最終振出期限
2026年10月1日以降上記の金融機関では、この日以降に振り出された手形・小切手は原則として当座勘定から支払えない
2027年3月31日電子交換所における手形・小切手の交換廃止

最終振出期限は法律で一律に定められたものではなく、金融機関ごとに異なります。全銀協のウェブサイトに一覧がありますが、公表と同時に反映されるとは限らないとされています。必ず取引金融機関の案内で確認してください。

手形廃止で手形は無効になるのか|法律上の位置づけ

今回の廃止は、銀行界の決済インフラに関する取組みです。全銀協も、2027年度初から手形・小切手が使用できなくなるものではないとしたうえで、電子交換所を介さない郵送等の相対決済が必要となるため、金融機関の判断で取扱いが変更となる可能性があると説明しています。

手形法自体が廃止されるわけではないため、手形上の権利が交換廃止によって直ちに消滅するものではないと考えられます。もっとも、銀行を通じて資金化できるかは別の問題で、所持人は振出人への直接請求などを迫られる可能性があります。

なお、約束手形の振出人に対する請求権の時効は、満期の日から3年です(手形法78条1項、77条1項8号、70条1項)。売掛金などの原因債権とは時効の管理が別になるため、両方の期限を確認する必要があります。売掛金側の管理については売掛金を「待ってほしい」と言われた場合の対応も参考にしてください。

手形を振り出してきた会社の対応|支払手段の切替え手順

法務の観点からは、次の順序で進めることが大切です。

  1. 代替手段の選択:インターネットバンキングによる振込、でんさいなどから、取引先ごとに決めます。
  2. 取引先との合意:支払方法が契約で手形と定められている場合、一方的な変更は債務不履行などの争いを招くおそれがあります。覚書などで書面に残します。
  3. 資金繰りの再計算:振込に切り替えると支払サイトが短くなることがあります。手形貸付を利用している場合は、代替の融資方法も金融機関と協議します。

2026年10月以降の日付で紙の手形を振り出すことは避けるべきです。たとえば三菱UFJ銀行は、2026年10月1日現在の案内で、10月1日以降に振り出された手形・小切手を「振出期限超過又は交換廃止後の手形等」を事由とする0号不渡として返却するとしています。振出日が空欄の手形も、原則として受け付けない、又は決済されない可能性があるとする金融機関があります。不渡に伴う取扱いの詳細は、取引金融機関に確認してください。

手形を受け取っている会社の対応|資金化できないリスクに注意

手元の手形については、次の事項をすぐに確認してください。

確認事項注意点
振出日支払銀行の最終振出期限を過ぎていないか。振出日が空欄の手形は、補充を求めるか、取扱いを金融機関に確認する
支払期日2027年4月以降を期日とする手形は、代金取立を受け付けない金融機関が多い。受付の可否を事前に確認する
支払場所他行を支払地とする場合、支払銀行の期限により決済されない可能性がある
割引の可否2027年4月以降を期日とする手形や、2026年10月以降を振出日とする手形の割引を停止した金融機関がある

取立に余裕日数を要する金融機関もあるため、持込みを期日の直前まで待たないことが重要です。条件を満たさない手形を受け取った場合は、放置せず、振出人に振込やでんさいへの差替えを早急に求めます。支払期日までに決済されない場合は、手形金の請求と売掛金等の請求のいずれによるか、弁護士に相談して検討するとよいでしょう。

取適法の手形払禁止との関係|対象取引は2026年1月から

交換廃止とは別の規制として、下請法を改正した取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が2026年1月1日に施行され、同日以後に発注された対象取引では、手形の交付が禁止されました(5条1項2号)。

同号は、金銭及び手形以外の支払手段であっても、支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難なものの使用を禁止しています。公正取引委員会と中小企業庁の要請文は、受領日から60日を超える満期を設定した電子記録債権や一括決済方式による支払は原則として禁止されると説明しています。つまり、紙の手形をでんさいに置き換えるだけでは足りず、サイトの見直しが必要な場合があります。

取適法の対象外の取引についても、同要請はサイトを60日以内に短縮し、できる限り現金で支払うよう努めることを求めています。発注者側の実務は下請法(取適法)の発注管理・支払管理チェックリストで解説しています。

でんさい(電子記録債権)とは|手形との違いと法的な仕組み

「でんさい」は、全銀電子債権ネットワークが扱う電子記録債権です。電子記録債権法に基づき、電子記録によって発生し(15条)、譲渡も譲渡記録をしなければ効力を生じません(17条)。善意取得(19条)や人的抗弁の切断(20条)も定められており、手形に似た取引の安全が図られています。

項目紙の手形でんさい
発生・譲渡振出・裏書金融機関を通じた発生記録・譲渡記録
分割できない二つに分割して一部を譲渡できる
支払できないとき不渡支払不能処分

でんさいも、支払期日に決済できなければ処分があります。1回目の支払不能から6か月以内に2回目が生じると取引停止処分となり、2年間、債務者としての利用が停止され、参加金融機関との貸出取引も禁止されます。また、でんさいを譲渡すると、手形の裏書と同様に譲渡人が保証する扱いとなります。

利用料は窓口金融機関が定めています。社内では、請求や承認の権限者を決めておくことが欠かせません。

手形廃止で見直すべき契約書の条項

手形を前提に作られた契約書では、次の条項を確認してください。

  • 支払条項:「手形により支払う」「サイト○日」などの文言を、振込・でんさいに改め、手数料の負担も明記する。取適法の対象取引では、振込手数料を受託側に負担させて差し引くことは「減額」に当たる点に注意する
  • 期限の利益喪失条項・解除条項:「手形・小切手の不渡」だけを信用不安の事由としている場合、でんさいの支払不能処分を追加する

特に期限の利益喪失条項は、手形がなくなると発動のきっかけを失いかねない盲点です。受注側で確認すべき条項の全体は取引基本契約書のチェックポイントを、不渡情報に頼らない信用管理は与信管理のやり方をご覧ください。当事務所の契約書レビューなどの取扱内容は、企業法務のページでご案内しています。

紙の手形・小切手の廃止に関するよくある質問

2027年4月以降、手形は完全に使えなくなるのですか?

全銀協は、2027年度初から手形・小切手が使用できなくなるものではないとしています。ただし電子交換所を介さない決済となり、金融機関の判断で取扱いが変わる可能性があります。多くの金融機関が取扱いを終了しているため、従来どおりの利用はできないと考えて準備することが現実的です。

2026年10月以降の振出日の手形を受け取ってしまいました。どうすればよいですか?

支払銀行の最終振出期限を超えていれば、資金化できないおそれがあります。支払銀行の取扱いを確認したうえで、振出人に振込やでんさいへの差替えを早急に依頼してください。

紙の手形をでんさいに変えれば、取適法の問題はなくなりますか?

当然にはなくなりません。対象取引では、支払期日までに代金満額相当の現金を得ることが困難な支払手段は違反となり得ます。受領日から60日を超える満期の設定は原則として禁止されるため、サイトの見直しが必要です。

まとめ|手形廃止は支払手段と契約書の見直しの機会に

電子交換所での交換は2027年3月31日に廃止されますが、多くの金融機関では2026年9月30日の最終振出期限がすでに過ぎています。振り出す側は振込・でんさいへ切り替えて取引先と書面で合意し、受け取る側は手元の手形の振出日と支払期日を直ちに確認することが重要です。あわせて、取適法への適合性と、期限の利益喪失条項などの契約書の文言も見直す必要があります。不安があれば、早めに横浜などお近くの弁護士に相談することで、回収不能や取引先との紛争を防ぎやすくなります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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