タングラム法律事務所

雇止めは違法になる?無期転換ルールと会社の対応を弁護士が解説

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雇止めは違法になる?無期転換ルールと会社の対応を弁護士が解説

雇止めは違法になる?無期転換ルールと会社の対応を弁護士が解説

「契約期間が満了するのだから、更新しないと伝えるだけでよいはずだ」——有期契約のパート・アルバイト・嘱託社員との契約を終了しようとするとき、多くの経営者がそう考えます。ところが実際には、雇止めを告げた数週間後に労働組合や弁護士から通知が届き、「雇止めは無効であり、地位確認と未払賃金を請求する」と主張される事例が後を絶ちません。有期雇用は、契約書の期間さえ守っていれば自由に終了できる仕組みではないからです。

この記事では、有期契約社員を雇用している中小企業の経営者・人事担当者に向けて、雇止めが無効と判断されるのはどのような場合か(労働契約法19条)、通算5年を超えると生じる無期転換ルール(同法18条)の仕組み、そして「無期転換の直前に雇止めをする」という対応がなぜ危険なのかを、横浜の弁護士が使用者側の視点で整理します。あわせて、雇止めを行う際に踏むべき手続と、日常の契約管理で押さえるべき実務ポイントも解説します。

雇止めとは何か——解雇との違いと「期間満了なら自由」ではない理由

雇止めとは、有期労働契約について、期間満了時に使用者が更新を拒絶して契約を終了させることをいいます。契約期間の定めのない労働者を一方的に辞めさせる「解雇」とは、法的な位置づけが異なります。

もっとも、実務上の結論は解雇に近づくことがあります。有期契約であっても、更新が反復され、実質的に期間の定めのない契約と変わらない状態になっていたり、労働者が更新されると期待することに合理的な理由がある状態になっていたりすると、雇止めには解雇に準じた厳しい制限がかかるためです。これは最高裁判例(東芝柳町工場事件・最高裁昭和49年7月22日判決、日立メディコ事件・最高裁昭和61年12月4日判決)によって形成された「雇止め法理」であり、現在は労働契約法19条として明文化されています。

つまり、有期雇用の終了で会社が問われるのは「契約期間が満了したかどうか」ではなく、「その更新拒絶に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえるか」です。ここを取り違えたまま手続を進めると、後から地位確認請求を受け、争っている期間の賃金(バックペイ)まで支払わざるを得なくなるおそれがあります。

雇止めが無効になる2つの類型(労働契約法19条)

労働契約法19条は、次のいずれかに当たる有期労働契約について、労働者が期間満了前(または満了後遅滞なく)に更新の申込みをした場合、使用者の更新拒絶に客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められないときは、従前と同一の労働条件で契約が更新されたものとみなす、と定めています。

類型内容典型的にみられる事情
実質無期型(19条1号)反復更新により、雇止めが期間の定めのない契約の解雇と社会通念上同視できる状態更新回数が多い、更新手続が形骸化して契約書を作り直していない、業務内容が正社員とほぼ同じ
期待保護型(19条2号)期間満了時に契約が更新されると期待することに合理的な理由がある状態採用時に長期勤務を前提とする説明をした、これまで雇止めの前例がない、更新を前提とした業務配分をしていた

裁判所は、契約書の文言だけでなく、業務の恒常性、更新手続の実際、他の有期契約社員の取扱い、上司の言動といった事情を総合的に考慮して判断する傾向にあります。「不更新条項を入れておけば安全」という理解は正確ではありません。条項の存在は考慮要素の一つにとどまり、実際の運用が伴っていなければ決め手にはならないと考えておくべきです。

無期転換ルール(労働契約法18条)の基本と5年のカウント

労働契約法18条は、同一の使用者との間で有期労働契約が更新されて通算契約期間が5年を超える場合、労働者が申込みをすれば、期間の定めのない労働契約に転換されると定めています(平成25年4月1日施行。通算は同日以後に開始した契約が対象です)。会社側に拒否権はなく、申込みがあった時点で次の契約期間の初日から無期労働契約が成立します。

実務上、次の点が誤解されがちです。

  • 「無期転換=正社員化」ではない。 18条1項により、転換後の労働条件は「別段の定め」がない限り直前の有期契約と同一です。賃金や手当を正社員と同一にする義務が当然に生じるわけではありません。
  • 契約が途切れると通算がリセットされることがある(クーリング)。 直前の通算契約期間が1年以上の場合は6か月以上の空白期間、1年未満の場合はその期間に応じたより短い空白期間(おおむね2分の1)で、それ以前の期間は通算されません。ただし、無期転換を回避する目的で意図的に空白期間を設ける運用は、雇止めの効力自体を争われる火種になります。
  • 就業規則の整備が置き去りになりやすい。 無期転換者に定年が適用されるのか、配置転換の範囲はどこまでかを定めていないと、期間の定めだけが外れた社員が生まれ、将来の運用に支障が生じます。
なお、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(有期雇用特別措置法)により、一定の高度専門職と、定年後に引き続き雇用される有期雇用労働者については、適切な雇用管理に関する計画の認定を受けることを条件に、無期転換申込権が発生しない特例が設けられています。認定を受けていない企業には適用されないため、自社の状況を確認してください。

「無期転換ルール逃れ」の雇止めは通用しない

通算5年が近づいた段階で、更新上限(例:通算5年まで)を新たに設けたり、5年目の更新を拒絶したりする対応は、実務でしばしば検討されます。しかし、これは会社にとって最もリスクの高い選択肢の一つです。

長年にわたり契約更新を重ねてきた従業員について、無期転換ルールの導入を機に「通算5年を超えて更新しない」という上限を設けて雇止めをした事案で、上限が設けられる前に既に更新への高い期待が形成されていたとして雇止め法理の適用を認め、合理的な理由がないとして雇止めを無効と判断した裁判例があります(博報堂事件・福岡地裁令和2年3月17日判決)。同判決では、雇止め後の賃金相当額の支払いも命じられています。

ここから読み取るべき実務上の教訓は明確です。更新上限を設けるのであれば、継続雇用への期待が形成される前、すなわち採用の段階から制度として組み込み、契約書と運用の両面で一貫させておく必要があります。既に長期間更新してきた従業員に対して後から上限を設定しても、それだけで雇止めが正当化されるとは限りません。人員削減の必要性から契約終了を検討する場合の考え方は、整理解雇(リストラ)の4要件の記事もあわせてご覧ください。

雇止めを行う際に会社が踏むべき手続

1. 30日前の予告と雇止め理由証明書

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)は、有期労働契約を3回以上更新している場合、または雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している労働者について契約を更新しないこととする場合、少なくとも契約期間の満了する日の30日前までに予告しなければならないとしています(契約締結時に更新しない旨が明示されているものを除きます)。また、労働者から雇止めの理由について証明書を請求されたときは、遅滞なく交付する必要があります。

2. 労働条件明示義務(2024年4月1日施行)への対応

労働基準法施行規則5条の改正により、2024年4月1日から、有期労働契約の締結時および更新時に更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容を明示することが必要となりました。さらに、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨無期転換後の労働条件を明示することが義務づけられています。明示を怠った場合は労働基準法上の罰則(30万円以下の罰金)の対象となり得ます。

3. 2026年10月からのパート・有期雇用の改正にも注意

厚生労働省は、2026年10月からパートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わることを公表しています。雇入れ時(更新時を含む)の明示事項に「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」が追加されるほか、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し、説明方法や公正な評価に関する雇用管理上の措置の追加が予定されています。有期契約社員を抱える企業は、契約書と労働条件通知書の様式を、施行前に一度点検しておくことをおすすめします。

トラブルを防ぐ有期雇用の管理実務

雇止めの紛争は、契約終了の場面で発生するように見えて、実際には日々の運用の積み重ねによって勝敗が決まります。中小企業でも取り組みやすい対策を挙げます。

  • 更新手続を形骸化させない。 期間満了ごとに評価を行い、新しい契約書を作成し、双方が署名・押印する。自動更新のような運用を避ける。
  • 更新の判断基準を契約書に明記する。 業務量、勤務成績、会社の経営状況などの基準をあらかじめ示し、実際にその基準で判断した記録を残す。
  • 期待を生む言動を管理する。 現場管理職が「ずっといてくれて構わない」と伝えることは、後日そのまま更新の期待を基礎づける事情として評価され得る。
  • 通算契約期間を一覧で管理する。 誰がいつ無期転換申込権を取得するかを事前に把握し、方針を決めておく。
  • 無期転換者用の労働条件・就業規則を整備する。 定年、職務、勤務地の範囲を明確にしておく。

また、有期契約社員に対して合意による契約終了を提案する場面では、手続の進め方によっては強要と評価されるおそれがあります。進め方の注意点は退職勧奨の適法な進め方の記事で解説しています。契約書の点検や就業規則の整備といった予防法務については、当事務所の企業法務のページもご参照ください。

よくある質問

契約書に「更新しない場合がある」と書いてあれば、雇止めは自由にできますか?

条項があること自体は有利な事情になりますが、それだけで雇止めが当然に有効になるわけではありません。労働契約法19条の判断は、契約書の文言だけでなく、更新の回数・通算期間、更新手続が形式的に行われていなかったか、上司が継続雇用を期待させる言動をしていなかったかなど、実際の運用を含めて総合的に行われます。条項を置いたうえで、更新のたびに実際に評価と面談を行い、記録を残す運用が重要です。

通算5年を超える前に雇止めをすれば、無期転換は避けられますか?

無期転換申込権の発生前に契約が終了すれば申込権は発生しませんが、その雇止め自体が労働契約法19条により無効と判断される可能性があります。長期間の更新により継続雇用への期待が既に生じていた事案で、無期転換の直前に更新上限を新設して行われた雇止めが無効とされた裁判例(博報堂事件・福岡地裁令和2年3月17日判決)もあります。「5年直前だから」という理由だけで雇止めを行うことはリスクが高いといえます。

無期転換を申し込まれたら、正社員と同じ待遇にしなければなりませんか?

労働契約法18条1項により、無期転換後の労働条件は「別段の定め」がない限り、直前の有期労働契約と同一の労働条件となります。したがって、正社員と同じ賃金や手当にすることが当然に義務づけられるわけではありません。ただし、無期転換者向けの就業規則や労働条件を整備しておかないと、契約期間の定めだけがなくなり、定年の適用や配置転換の可否をめぐって後日争いになりやすい点に注意が必要です。

雇止めの理由を書面で出すよう求められました。応じる義務はありますか?

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)により、労働者から雇止めの理由について証明書を請求されたときは、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないとされています。記載した理由は後の紛争で会社の主張の出発点になるため、事実に基づき、後から言い分を追加しなくて済む内容にしておく必要があります。

定年後に再雇用した嘱託社員も、5年で無期転換の対象になりますか?

原則として対象になりますが、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(有期雇用特別措置法)に基づき、定年後に引き続き雇用される有期雇用労働者について、適切な雇用管理に関する計画を作成して都道府県労働局長(厚生労働大臣)の認定を受けた場合には、無期転換申込権が発生しない特例が適用されます。認定を受けていない場合は特例が使えないため、自社が認定済みかどうかの確認が必要です。

まとめ

有期契約社員の雇止めは、契約期間が満了したという形式だけでは正当化されません。反復更新により実質的に無期契約と変わらない状態になっていたり、更新への合理的な期待が生じていたりすれば、労働契約法19条により、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。通算5年を超えれば無期転換申込権が発生し、その直前に上限を設けて雇止めをする対応は、裁判例に照らしても安全な手段とはいえません。

会社にとって現実的な対策は、契約終了の場面で工夫することではなく、採用時から更新の基準と上限を制度として設計し、更新手続と評価の記録を残し、労働条件の明示義務を確実に履行しておくことです。すでに従業員から異議が出ている場合や、労働組合・弁護士から通知が届いた場合は、対応が長期化する前に方針を固める必要があります。手続に進んだ場合の流れは労働審判を申し立てられたときの会社側の対応の記事で解説しています。弁護士に相談することで、雇止めの有効性の見通しを立てたうえで、和解も含めた選択肢を比較して判断できます。

有期契約社員の雇止め・無期転換への対応は、横浜のタングラム法律事務所へ

タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。雇止めの可否の検討、契約書・労働条件通知書の点検、無期転換に備えた就業規則の整備まで、使用者側の立場でご相談を承ります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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