タングラム法律事務所

意見照会書の権利者が外国法人のとき|トレント開示請求と準拠法

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意見照会書の権利者が外国法人のとき|トレント開示請求と準拠法

意見照会書の権利者が外国法人のとき|トレント開示請求と準拠法

意見照会書の権利者が外国法人のとき|トレント開示請求と準拠法

プロバイダから届いた意見照会書を開いてみると、「権利を侵害されたと主張する者」の欄に、聞いたことのない英字の会社名が書かれていた——BitTorrent(トレント)に関する発信者情報開示の相談では、こうしたご質問をよくいただきます。日本に事務所があるとも思えない海外の会社が、なぜ日本の通信会社に対して自分の氏名や住所の開示を求められるのか。登録もしていない外国の作品が、どうして日本の法律で守られるのか。素朴ですが、法律的にはきちんと答えのある疑問です。

結論から申し上げると、権利者が外国法人であることそれ自体は、開示を防ぐ理由にはなりません。日本の制度は、権利者の国籍や所在地を要件にしていないからです。もっとも、「だから何も検討することがない」というわけでもありません。この記事では、条文と条約の文言に即して、外国法人が権利者である場合になぜ日本法で判断されるのか、そして意見照会の段階で実際に確認できることは何かを整理します。横浜で発信者側の対応を数多く扱う弁護士の視点から、争っても意味のない点と、確認する価値のある点を切り分けてお伝えします。

意見照会書の「権利者」欄に外国法人名があるとき、まず確認すること

意見照会書は、プロバイダが作成する照会書本体と、権利者側が作成した疎明資料(別紙)の二部構成になっているのが通常です。権利者の名称は照会書本体にも記載されますが、その会社が当該作品とどう結びついているかは、疎明資料を見なければわかりません。

外国法人が権利者として記載されている場合、最初に見ておきたいのは次の点です。

  • 権利者として記載された法人名が、疎明資料に添付された作品の表示(パッケージ・クレジット・ウェブサイト等)と一致しているか
  • 照会の対象とされている作品が特定されているか。ファイル名だけでなく、著作物としての同一性が示されているか
  • 権利の帰属について何らかの説明や資料が付されているか(原始的に取得したのか、譲渡や管理委託を経ているのか)
  • 代理人として記載されているのが日本の法律事務所か

疎明資料の各項目が技術的・法的に何を意味するのかについては、意見照会書の添付資料の読み方(ハッシュ値・IPアドレスの確認)で詳しく解説しています。あわせてお読みいただくと、この記事の内容と接続しやすいと思います。

外国法人でも日本のプロバイダに開示請求できるのか

できます。これは条文を読めばはっきりします。

発信者情報の開示請求の根拠は、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。2025年4月にプロバイダ責任制限法から名称が改められた法律です)5条1項です。同項は、請求できる者を次のように定めています。

「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は……その開示を請求することができる。」

ここに国籍の限定も、所在地の限定も、法人格の種類による限定もありません。自然人でも法人でも、日本人でも外国人でも、「自己の権利を侵害されたとする者」であれば請求の主体になり得ます。

裁判所の管轄も「相手方」を基準に決まる

裁判手続に進んだ場合も同じです。発信者情報開示命令の申立てについて、日本の裁判所が管轄権を有するかを定めた情プラ法9条1項は、法人を相手方とする場合について「相手方の主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき」などと規定しています。ここでいう「相手方」は、開示を求められるプロバイダのことです。

国内のどの地方裁判所に申し立てるかを定める同法10条1項3号も同様で、「相手方の主たる事務所又は営業所」の所在地が基準になります。つまり、管轄を決めるのはプロバイダの所在地であって、申立人がどこの国の会社かは一切問題にならないという構造です。

制度の場面条文権利者の国籍・所在地は要件か
開示請求の主体情プラ法5条1項要件になっていない(「自己の権利を侵害されたとする者」のみ)
日本の裁判所の管轄権情プラ法9条1項要件になっていない(相手方=プロバイダの所在地が基準)
国内の管轄裁判所情プラ法10条1項要件になっていない(同上)
開示の実体的要件情プラ法5条1項1号・2号要件になっていない(権利侵害の明白性と正当な理由)

したがって、回答書に「請求者は海外の法人であり、日本の制度を利用する資格がない」といった趣旨を書いても、条文上の根拠がないため意味を持ちません。かえって、他の主張の説得力を下げることになりかねません。

外国で作られた作品は、日本の著作権法で保護されるのか

次の疑問は、「そもそも海外で制作された作品が、日本の著作権法の保護を受けるのか」というものです。これも条文に答えがあります。

著作権法6条は、保護を受ける著作物を三つに限定して列挙しています。

保護を受ける著作物
1号日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む)の著作物
2号最初に国内において発行された著作物(最初に国外で発行されたが、発行の日から30日以内に国内で発行されたものを含む)
3号前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

海外で制作され、海外で発行された作品は、多くの場合3号に当たります。ここでいう「条約」の中心が、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約です。

ベルヌ条約による内国民待遇と無方式主義

ベルヌ条約3条(1)(a)は、「いずれかの同盟国の国民である著作者」の著作物を、発行されているかどうかを問わず条約によって保護すると定めています。そして5条(1)は、著作者はその著作物の本国以外の同盟国において「その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利」を享有すると定めます。これが内国民待遇の原則です。

さらに5条(2)前段は、次のように定めています。

「(1)の権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない。その享有及び行使は、著作物の本国における保護の存在にかかわらない。」

これが無方式主義です。登録も、納本も、著作権表示も、保護を受けるための条件ではありません。日本の著作権法17条2項も、著作権の享有にいかなる方式の履行をも要しないと定めており、同じ立場です。

ベルヌ条約には、公益社団法人著作権情報センターの著作権関係条約締結状況によれば2023年12月31日時点で179か国が加盟しています。日本も、権利者側の法人が設立されていることの多い国も、その多くが同盟国です。したがって「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」に当たることが通常であり、この点を正面から争える事案は多くありません。

なお、著作権法5条は「著作者の権利及びこれに隣接する権利に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定による」と定めています。条約が国内法に優先して適用される場面があるという意味であり、外国の著作物をめぐる議論では常に条約の文言に戻って考える必要があります。

どの国の法律で判断されるのか——準拠法の考え方

「保護される」ことと、「どの国の法律を使って判断するか」は別の問題です。後者を準拠法の問題といいます。

ベルヌ条約5条(2)後段は、この点について明確に述べています。

「したがつて、保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。」

「保護が要求される同盟国」とは、保護を求めている国、すなわち本件では日本です。日本国内での送信可能化について日本で保護を求めている以上、保護の範囲も救済方法も日本の著作権法によることになります。

損害賠償請求については、法の適用に関する通則法17条が「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による」と定めています。日本国内の回線から日本国内に向けて送信可能な状態が作られたという構成である以上、結果発生地は日本であり、やはり日本法が適用されるのが通常です。

差止請求の準拠法を条約5条(2)の保護国法によるものと整理するか、損害賠償と同様に不法行為の問題として整理するかについては議論がありますが、いずれの整理によっても、本件類型では日本法に行き着きます。権利者が外国法人であることを理由に、外国法で損害額が算定されたり、外国の判決がそのまま日本で効力を持ったりすることはありません。損害額がどのような要素で決まるかについては、トレントの示談金はどう決まるのか(損害賠償額の算定要素)で解説しています。

「外国法人だから」で争えること・争えないこと

ここまでを整理すると、次のようになります。

考えられる主張評価
権利者が海外の法人だから日本の制度は使えない争えない。情プラ法5条・9条・10条に国籍・所在地の要件がない
日本で著作権登録をしていないから権利がない争えない。ベルヌ条約5条(2)前段・著作権法17条2項の無方式主義
作品が海外で制作・発行されたから保護されない争えない。著作権法6条3号とベルヌ条約3条(1)(a)により保護される
外国の法律で判断すべきだ争えない。ベルヌ条約5条(2)後段・通則法17条により日本法による
記載された法人が当該作品の著作権者であることが資料から読み取れない確認の余地がある。権利の帰属は権利者側が示すべき事項
通信が自分に帰属することが示されていない確認の余地がある。国籍とは無関係の、独立した論点

つまり、外国法人であることを争点にするのではなく、国内の権利者であっても同じように検討すべき点を、通常どおり検討するというのが正しい向き合い方です。

権利の帰属をどう確認するか

権利者が誰かという点については、いくつかの推定規定があります。

著作権法14条は、著作物の原作品や公衆への提供・提示の際に著作者名として通常の方法により表示されている者を、その著作物の著作者と推定します。ベルヌ条約15条(2)も、映画の著作物に通常の方法によりその名を表示されている自然人又は法人は、反証のない限りその映画の著作物の製作者と推定されると定めています。

ここで注意が必要なのは、「著作者」や「製作者」の推定と、「現在の著作権者が誰か」は同じではないという点です。著作権は譲渡できる権利ですから、制作時の著作者から現在の権利者までの間に譲渡が介在していれば、その承継の経過は別途示される必要があります。海外で制作された作品では、制作会社・配給会社・権利管理会社が別法人であることも珍しくありません。

意見照会の段階でできるのは、疎明資料に権利の帰属に関する記載や資料があるかを確認し、なければ「その点が示されていない」と事実として指摘することです。「この会社は権利者ではないはずだ」と推測で断定することは、根拠のない主張として扱われるおそれがあり、避けるべきです。

情プラ法5条1項1号は、開示の要件として「権利が侵害されたことが明らかであるとき」を求めています。権利の帰属が資料から読み取れないことは、この「明らか」といえるかという議論に接続する事項です。感想としてではなく、どの資料が何を示していないかという形で書くことが大切です。

開示後の請求・示談交渉で実際に違ってくる点

権利者が外国法人である場合、実務的に違いが出るのは、法律論よりもむしろ交渉の進み方です。

まず、日本のプロバイダや発信者に対する手続は、日本の法律事務所が代理人として行うのが通常です。開示後に届く通知書も日本語で、請求額も日本円で示されるのが一般的で、この点で国内の権利者と大きな違いはありません。一方で、権利者本人が国外にいることから、和解条件について本国の決裁を経る必要があり、回答までの期間が長くなることはあります。

また、和解契約の当事者が外国法人になるため、契約書の記載(法人名の英字表記、署名権限者、和解金の送金方法など)に国内の事案にはない確認事項が生じることがあります。これらは技術的な事項ですが、清算条項の範囲などと同じく、後から問題になりやすい部分です。開示後に通知書が届いた段階の対応については、トレント開示後に損害賠償請求の通知書が届いたらをご覧ください。

なお、意見照会の段階での具体的な対応の進め方は、当事務所の意見照会対応のページでも説明しています。

回答書に書くときの注意

外国法人が権利者である事案で、回答書を作成する際に意識しておきたい点を挙げます。

  • 国籍・所在地を理由にした主張は書かない。条文上の根拠がなく、他の主張の信頼性を損ないます
  • 「登録がない」「マルシー表示がない」と書かない。無方式主義と正面から衝突します
  • 権利の帰属については、資料に何が示されていないかを項目に即して書く。推測で権利者性を否定しない
  • 通信の帰属(誰の行為か)は、国籍と切り離して独立に検討する。こちらが本来の中心論点になる事案は多くあります
  • 回答書に書いた内容は相手方に伝わり得ることを前提にする。業界統一書式の注記もその旨を述べています

BitTorrentの意見照会書が届いた方の具体的な対応の流れ・費用については、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページにまとめています。

よくある質問

権利者が外国の会社なら、日本の法律は関係ないのではないですか。

逆です。日本国内の回線から送信された行為が問題になっている以上、判断の基準になるのは日本の著作権法です。ベルヌ条約5条(2)は、保護の範囲と救済の方法は「保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」と定めており、日本での保護を求める以上は日本法が適用されます。損害賠償についても、法の適用に関する通則法17条により結果発生地である日本の法によるのが原則です。

外国法人は日本で著作権の登録をしていないはずですが、それでも権利を主張できますか。

できます。ベルヌ条約5条(2)前段は「権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない」と定めており、これを無方式主義といいます。登録・納本・マルシー表示などの手続をしていないことは、権利がないことの根拠にはなりません。

日本に事務所も支店もない会社が、日本の裁判所に開示命令を申し立てられるのですか。

申し立てられます。情プラ法9条1項・10条1項は、日本の裁判所の管轄権も国内の管轄裁判所も、いずれも「相手方」すなわちプロバイダの所在地を基準に定めており、申立人の国籍や所在地は要件になっていません。相手方が国内のプロバイダである以上、申立人が外国法人でも日本の裁判所で手続が進みます。

権利者が外国法人であることは、回答書で何の意味もないのでしょうか。

外国法人であること自体は理由になりませんが、「その法人が当該作品の著作権者であること」が疎明資料から読み取れるかは別の問題です。譲渡や管理委託を経ている場合には権利の帰属が資料に現れていないこともあり、意見照会の段階で確認すべき事項の一つになります。ただし推測で「権利者ではないはずだ」と書くことは避けるべきです。

外国法人が相手だと、示談交渉はどのように進むのですか。

実務上は、日本の法律事務所が代理人として就き、日本語の書面で日本円により交渉が行われるのが通常です。相手方が外国法人であることによって請求が甘くなるわけではなく、逆に交渉が特別に難しくなるわけでもありません。ただし決裁に時間を要することなどから、回答までの期間が国内の権利者より長くなる場合はあります。

まとめ

意見照会書の権利者欄に外国法人の名前があっても、制度上の取扱いは国内の権利者と変わりません。情プラ法5条1項は請求できる者に国籍や所在地の限定を置かず、9条1項・10条1項の管轄もプロバイダの所在地で決まります。海外で制作された作品も、著作権法6条3号とベルヌ条約により日本で保護され、登録がないことは理由になりません。適用される法律も、ベルヌ条約5条(2)後段と通則法17条により日本法です。

したがって、「外国法人だから」という切り口で争えることはほとんどありません。意味があるのは、国内の権利者が相手でも同じように検討すべきこと——権利の帰属が資料から読み取れるか、通信がご自身に帰属するといえるか、疎明資料が情プラ法5条1項1号の「明らか」といえる水準に達しているか——を、回答期限内に落ち着いて整理することです。

意見照会書には2週間程度の短い回答期限が設けられているのが通常で、条文と資料を突き合わせて検討する時間は限られています。どの点を書き、どの点を書かないかの判断は結果に直接影響しますので、ご自身での対応に迷われた場合は、期限に余裕があるうちに弁護士にご相談ください。横浜のタングラム法律事務所では、発信者側の立場からの対応を数多く取り扱っています。BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちらをご覧ください。

トレントの意見照会書が届いた方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent著作権侵害に係る発信者情報開示の意見照会について、発信者側の立場からの対応を数多く取り扱っております。権利者が外国法人である事案も含め、回答書の作成から開示後の示談交渉まで対応いたします。回答期限が迫っている場合は、お早めにご連絡ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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